網膜深層出血とOCT検査
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網膜深層出血の所見と網膜出血
網膜深層出血は、神経網膜内の出血のうち「網膜内顆粒層(INL)を栄養する毛細血管網」からの出血として説明され、形態は斑状または点状になりやすい、という整理が実務的です。
同じ「網膜出血」でも、網膜表層(神経線維層)に生じる火炎状出血は神経線維に沿った形をとるため、形態(火炎状か、点状・斑状か)をまず押さえると、深層出血の見落としや過剰診断が減ります。
医療従事者の視点では、眼底写真で“点状出血が散見”という記載だけで終えず、「深層優位か/表層優位か」を言語化しておくと、糖尿病網膜症や高血圧性変化、閉塞性病変の当たりが付けやすくなります。
網膜深層出血の原因と糖尿病網膜症
網膜深層出血の原因には、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、高血圧、血液疾患などが挙げられ、背景疾患の系統立てが重要です。
特に糖尿病がある場合は、眼底所見の説明を“糖尿病網膜症としての出血”に回収しがちですが、深層出血の分布や同時所見(浮腫、無灌流の示唆)によっては、静脈閉塞や血圧急変、血液疾患の合併も視野に入れる方が安全です。
また、薬剤歴(抗凝固・抗血小板)だけで「出血しやすいから」で片付けず、そもそも網膜毛細血管が破綻する土台(微小血管障害、静脈うっ滞、動脈硬化の強さ)を確認することが、再発予防と紹介先選定に直結します。
網膜深層出血のOCT検査
OCTは、網膜を断面で観察できるため、「出血がどの層にあるか」を鑑別しやすく、眼底写真だけでは曖昧になりやすい深さの情報を補完します。
さらに、OCTでは網膜計測の自動解析が便利な一方、セグメンテーションエラー(層の誤認識)で厚み評価がずれることがあり、出血・浮腫・境界病変がある症例ほど“自動値を鵜呑みにしない”運用が必要です。
意外に見落とされる点として、網膜下出血など光の通過を妨げる病変でシャドウイング(影)が生じ、深層の評価が難しくなることがあるため、撮像品質とアーチファクトの見極めが診断精度に影響します。
網膜深層出血と網膜静脈分枝閉塞症
網膜静脈分枝閉塞症は、網膜静脈の枝が詰まり、血流低下により網膜の一部に眼底出血が生じる病気として説明されます。
症状は視野異常、変視、視力低下などが起こり得ますが、無症状のまま経過し、後に新生血管からの硝子体出血で見つかることもあるため、「出血=自覚症状がある」とは限らない点が臨床上の落とし穴です。
検査は眼底検査に加えて、黄斑のむくみ評価としてOCTが用いられ、蛍光眼底造影で循環状態を評価して治療方針決定に役立てる、という流れが基本になります。
治療は黄斑浮腫による視力低下があれば抗VEGF治療が多く、必要に応じてステロイド注射、病変範囲が広い場合のレーザー(網膜光凝固)や、硝子体出血・網膜剥離では硝子体手術も選択され得ます。
網膜深層出血と高血圧の独自視点
高血圧性変化は網膜循環疾患の文脈で重要で、強い血圧上昇に関連して眼底所見が変化し得るため、網膜深層出血を見た際に血圧情報を“必須の検査値”として扱う運用が有効です。
独自視点として、眼科所見の記載を「深層出血あり」だけで終えず、紹介状や院内連携メモに“背景疾患の未評価項目”をチェックリスト化すると、救急外来・内科外来・健診後外来での情報欠落が減り、再発リスクの評価にもつながります。
例えば、次のように短い箇条書きを添えると、次に診る人が判断しやすくなります(入れ子なし)。
・血圧(家庭血圧含む)と降圧薬の内服状況
・糖尿病の罹病期間、HbA1c、腎機能、脂質
・血液疾患の既往、貧血・血小板、抗凝固/抗血小板薬
・OCTで黄斑浮腫の有無、アーチファクトの有無
網膜深層出血(斑状・点状)=「INLを栄養する毛細血管網」由来という整理を軸にすると、糖尿病網膜症・網膜静脈閉塞症・高血圧・血液疾患へと鑑別が自然に展開します。
参考)http://doi.med.wanfangdata.com.cn/10.3760/cma.j.issn.1673-5803.2008.06.010
OCT検査は層の同定と黄斑浮腫評価に強い一方で、セグメンテーションエラーやシャドウイングなどのアーチファクトが読影を誤らせるため、画像品質の評価を習慣化することが実務上の安全策になります。
網膜静脈分枝閉塞症では、眼底出血に加えて黄斑浮腫が視力に直結し、OCT・蛍光眼底造影でタイプや状態を評価して抗VEGF治療などを選ぶ、という流れを押さえるとチーム内の説明が揃います。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11886950/
原因と症状・検査・治療の概説(網膜静脈分枝閉塞症、日本眼科学会)
網膜深層出血の定義・形態(点状/斑状)と原因疾患の列挙(網膜循環疾患コンプリートガイド)
https://www.nakayamashoten.jp/sample/pdf/978-4-521-75056-9.pdf