結膜腫瘤 視診 鑑別診断
結膜腫瘤 視診で押さえたい基本所見
結膜腫瘤の初期評価では、まず「どこに・どのような色で・どのくらいの速さで変化しているか」を系統的に確認することが重要です。
具体的には、病変の局在(球結膜・瞼結膜・輪部など)、表面性状(平滑・乳頭状・顆粒状)、色調(無色~黄白色・赤色・褐色・黒色)をルーチンでチェックし、カルテに定型文ではなく具体的な表現で記録することで後の比較が容易になります。
視診では以下のポイントを組み合わせて良悪性を推定します。
参考)https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/JJOS_PDF/109_573.pdf
- 色調と透明度:無色透明でドーム状の場合は嚢胞性病変を、茶褐色で扁平ならメラノーシスをまず疑います。
- 境界の明瞭さ:境界明瞭で周囲の血管侵入が乏しいものは良性が多く、境界不明瞭で周囲に色素や血管がにじむように広がる場合は悪性の可能性が高まります。
- 隆起と基部の広がり:有茎性で限局したポリープ状病変は炎症性肉芽や乳頭腫が多い一方、基部が広く、白色調の肥厚や角化を伴う場合は扁平上皮系病変を考慮すべきです。
また、腫瘤の「時間軸」を把握することは、画像診断や病理検査に匹敵する情報を与えます。
参考)結膜腫瘍
患者本人の自覚、家族が気づいた時期、過去の診察写真・スマートフォン画像などから増大速度を推定することで、緩徐に増大する母斑と、数か月単位で明らかに変化する悪性黒色腫や扁平上皮癌を区別しやすくなります。
参考)https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/JJOS_PDF/109_385.pdf
結膜腫瘤 良性腫瘤の代表例と特徴
結膜腫瘤として日常診療で遭遇しやすい良性病変には、結膜母斑、結膜乳頭腫、結膜嚢胞(結膜嚢腫)、結膜リンパ管拡張、化膿性肉芽腫などがあります。
多くは充血や異物感を契機に受診し、視診と問診だけでもかなりのところまで診断が絞り込めるため、典型的な所見パターンを頭に入れておくことが効率的です。
代表的な良性結膜腫瘤の特徴は次の通りです。
- 結膜母斑:学童期に発見されることが多く、茶褐色~黒褐色の境界明瞭な色素性病変で、一部に嚢胞様の小さな透亮斑が点在するのが特徴です。
- 結膜乳頭腫:ピンク~赤色の乳頭状隆起で、しばしば涙丘や瞼結膜に発生し、表面は絨毛状で細かい血管が豊富に見られます。
- 結膜嚢胞(嚢腫):半透明のドーム状腫瘤で、内容液により光沢のある滑らかな表面を呈し、多くは無症候ですが大きくなると強い異物感を生じます。
眼瞼・結膜の腫瘤に関する疫学研究では、結膜良性腫瘍では母斑と乳頭腫でほぼ半数を占めると報告されており、これらをまずイメージできるかどうかが診断の第一歩になります。
一方で、化膿性肉芽腫など炎症性増殖病変は、腫瘍性病変ではないものの外観はポリープ状腫瘤のため、結膜腫瘤として患者から説明を求められることが多く、霰粒腫後や外傷後の時間経過と関連付けて説明することが信頼形成には重要です。
結膜腫瘤 悪性腫瘤を疑う視診サインと鑑別診断
結膜腫瘤の中で見逃したくない悪性病変には、結膜悪性黒色腫、原発後天性メラノーシス由来の悪性化病変、扁平上皮癌、基底細胞癌などが含まれます。
良性のように見える病変の中にも悪性が紛れ込むことがあり、眼瞼腫瘍に関する報告では基底細胞癌の臨床診断正診率が1割程度にとどまったというデータもあり、「見た目で安心しない」姿勢が重要です。
悪性を疑うべき視診サインには次のようなものがあります。
- 境界不明瞭な色素性病変:特に輪部周辺で、茶褐色~黒色の色素がじわりと広がり、部位によって厚みや色調が不均一な場合。
- 新たな血管新生・栄養血管:腫瘤に向かう蛇行した拡張血管や、病変表面の異常血管網は悪性黒色腫や扁平上皮癌で注意すべき所見です。
- 急速な増大や再発:数か月で明らかなサイズアップを認める病変や、切除後短期間で同部位に再増殖する結膜腫瘤は精査の対象です。
特に、結膜メラノーシスと結膜母斑の鑑別は、悪性黒色腫との関連から臨床的に重要です。
結膜母斑が隆起と嚢胞を伴うのに対し、結膜メラノーシスは扁平で隆起に乏しく、境界がやや不鮮明な色素斑として認められ、原発後天性メラノーシスは悪性黒色腫への進展例も報告されているため、年単位での経過と写真記録が推奨されます。
結膜腫瘤 画像・病理診断との連携とピットフォール
結膜腫瘤の確定診断は最終的には病理検査に依存するため、切除・生検の適応判断と検体処理の質が予後を左右することがあります。
眼瞼・結膜腫瘍の検討では、悪性腫瘍も含め多くの症例で臨床診断と病理診断が一致しない例が一定数存在し、見た目が良性にみえるからといって病理検査を省略する方針は再考が必要とされています。
結膜腫瘤評価では、以下のようなピットフォールにも注意が必要です。
- 囊胞様やポリープ状病変の中に悪性が紛れる:基底細胞癌が一見囊胞性腫瘤として認識されていた症例が報告されており、「典型例から外れる」印象があれば積極的に切除・病理提出を検討します。
- 部分生検の限界:色素性病変では部位により異型度が大きく異なる場合があり、辺縁部のみの生検では悪性所見を拾いきれないことがあります。可能な範囲で全切除標本による評価を行うことが望ましいとされています。
- 病理所見の解釈と逆鑑別:原発後天性メラノーシスと悪性黒色腫は同一症例内でも部位により所見が混在しうるため、病理診断レポートを読解する際には、どの部位の標本かを意識しながら臨床像と統合する必要があります。
一方で、画像診断は脈絡膜腫瘍など眼内腫瘍では必須ですが、結膜腫瘤においては基本的に視診と病理診断が主で、エコーやMRIは眼窩内進展や他臓器との連続性が疑われる場合に限って利用されることが多い点も押さえておくとよいでしょう。
参考)診断 |眼部腫瘍|九州大学病院のがん診療|九州大学病院 がん…
そのため、結膜表層病変における「見て判断する力」を鍛えることは、他の眼腫瘍診療と比べても特に重要といえます。
結膜腫瘤 臨床現場での説明・フォローアップと医療者の工夫
結膜腫瘤を主訴に受診する患者は、「がんではないか」という不安と、「見た目の変化」への心理的負担を同時に抱えていることが多いため、視診結果をどのような言葉で伝えるかも診療の質に直結します。
良性所見が示唆される場合でも、「現時点の所見からは悪性所見はみられませんが、腫瘍の確定診断は病理検査によって行います」というフレーズを用いることで、過度な安心と過度な不安の両方を避けることができます。
フォローアップでは、写真記録を活用した説明が非常に有用です。
- 初診時と再診時の写真を並べて見せることで、「変化がない」「わずかに増大している」といった評価を患者と共有でき、経過観察方針への納得感を高められます。
- スマートフォンで撮影した患者自身の写真を診察室で一緒に確認する方法も、遠隔地の家族との情報共有や、転医時の情報伝達に役立ちます。
さらに、結膜腫瘤の診療は、看護師や視能訓練士などチーム全体で関わる場面が多く、受付での問診票設計やトリアージも鍵になります。
例えば、疼痛の有無、急な増大の自覚、外傷や手術歴、コンタクトレンズ使用歴などを問診項目として標準化しておくことで、医師が診察室で結膜腫瘤の背景を短時間で把握しやすくなり、視診に集中できる環境づくりにつながります。
結膜腫瘤の視診・鑑別診断に関する詳細な病理学的解説と頻度データ。
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