下眼瞼蜂巣炎 診断 治療 眼窩隔膜前蜂窩織炎

下眼瞼蜂巣炎 診断と治療

下眼瞼蜂巣炎の要点スライド
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眼窩隔膜前蜂窩織炎としての位置づけ

下眼瞼蜂巣炎は多くが眼窩隔膜前蜂窩織炎に相当し、眼窩蜂窩織炎と比較して重症度や合併症リスクが異なるため、早期の鑑別が重要になります。

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診断と画像検査のポイント

視機能評価と身体所見に加え、CTやMRIによる眼窩隔膜の前後を見分ける評価が、治療方針と入院適応を判断するうえで鍵になります。

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抗菌薬治療と合併症予防

起炎菌プロファイルや基礎疾患(糖尿病・悪性腫瘍など)を踏まえた抗菌薬選択と投与期間の調整が、眼窩内進展や視機能障害を防ぐうえで不可欠です。

下眼瞼蜂巣炎 眼窩隔膜前蜂窩織炎の病態と定義

下眼瞼蜂巣炎は、解剖学的には眼窩隔膜より前方の軟部組織に限局した感染であり、国際的には眼窩隔膜前蜂窩織炎(preseptal cellulitis)の範疇に含まれます。眼窩隔膜を越えて眼窩内脂肪や筋群へ炎症が波及した状態が眼窩蜂窩織炎(orbital cellulitis)であり、この境界が重症度と予後を大きく分けるポイントになります。

起炎菌としては、ブドウ球菌や溶血レンサ球菌などグラム陽性球菌が多く報告されており、眼窩蜂窩織炎に進展した症例ではグラム陰性桿菌や嫌気性菌、真菌が増える傾向が示されています。

小児では上気道感染や副鼻腔炎を背景に発症することが多いのに対し、成人では外傷や皮膚バリア障害、涙嚢炎などから波及するケースが目立ちます。基礎に糖尿病悪性腫瘍を持つ患者では、同じ眼窩隔膜前蜂窩織炎であっても全身合併症や眼窩内進展のリスクが高い点に注意が必要です。

また、臨床的には「眼瞼蜂巣炎」「眼窩周囲蜂巣炎」など表現が混在しており、診療記録や論文の読み解きでは眼窩隔膜との位置関係を意識して用語を統一することが、治療方針の共有やチーム間のコミュニケーションに役立ちます。

日本語での病態整理と用語の使い分けに関して詳しい総説が掲載されています。

眼窩隔膜前蜂巣炎および眼窩蜂巣炎における臨床症状の検討(医書.jp)

下眼瞼蜂巣炎 眼窩蜂窩織炎との鑑別と眼窩隔膜の評価

下眼瞼蜂巣炎(眼窩隔膜前蜂窩織炎)と眼窩蜂窩織炎の鑑別では、眼球運動障害・眼球突出・視力障害の有無がベッドサイド評価の中心となります。眼窩蜂窩織炎では眼窩内圧の上昇により疼痛を伴う眼球運動制限や複視、視力低下が出現し、放置すると不可逆的な視神経障害につながるため、早期の鑑別が予後を左右します。

身体所見に加えて、CTもしくはMRIで眼窩隔膜より前方に病変がとどまっているか、後方に波及しているかを確認することが、診断確定と治療方針決定に必須とされています。特に小児例では、眼窩内膿瘍かどうかの評価にCTスキャンが有用であり、重症度評価や外科的ドレナージの要否判断に直結します。

意外なポイントとして、眼窩隔膜前蜂窩織炎の段階でも高い炎症反応を伴う例があり、CRPや白血球増多のみでは眼窩蜂窩織炎との鑑別が難しいことが報告されています。そのため、糖尿病や悪性腫瘍を持つ患者、あるいは免疫抑制状態では、症状が軽度でも早期から画像検査を検討し、診断を先送りしないことが安全側の対応となります。

また、眼窩隔膜前蜂窩織炎と診断されたとしても、上顎洞や篩骨洞など副鼻腔病変を合併している場合、眼窩内へ波及しやすい解剖学的背景があるため、耳鼻咽喉科との連携や副鼻腔CTの評価を意識することが重要です。

眼窩蜂窩織炎と隔膜前病変の画像所見の違いについての詳細な解説があります。

眼窩隔膜前蜂窩織炎および眼窩蜂窩織炎(MSDマニュアル プロフェッショナル版)

下眼瞼蜂巣炎 抗菌薬治療 副鼻腔炎合併例と投与期間

抗菌薬治療では、ブドウ球菌や溶血レンサ球菌などグラム陽性球菌を主対象としつつ、副鼻腔炎や歯性感染の合併が疑われる場合には嫌気性菌もカバーするレジメンが推奨されます。眼窩隔膜前蜂窩織炎では、軽症例なら経口抗菌薬での外来治療も可能とされますが、発熱や著明な腫脹、基礎疾患を有する場合には、入院のうえ静注抗菌薬による集中的治療が安全とされています。

ある日本の施設報告では、眼窩周囲蜂窩織炎(preseptal cellulitis)では1〜2週間程度の比較的短期間の抗菌薬投与で軽快する一方、眼窩蜂窩織炎では静注から経口へ切り替えつつ、合計3〜4週間の治療期間を要したことが示されています。小児副鼻腔炎由来の眼窩内合併症においても、広域ペニシリン・βラクタマーゼ阻害薬や第3世代セファロスポリンの静注後、臨床改善に応じて薬剤変更や経口へのデエスカレーションが行われ、7〜12日程度で退院に至った症例が報告されています。

予想外のポイントとして、眼窩隔膜前蜂窩織炎の段階であっても、起炎菌により治療反応性に差があり、特に耐性ブドウ球菌や嫌気性菌が関与した症例では、臨床的改善までに時間を要したり、薬剤変更を要したりするケースが少なくありません。そのため、血液培養や膿汁培養が得られる場合には可能な限り採取し、感受性結果を踏まえて抗菌薬を絞り込む抗菌薬適正使用の視点が大切です。

また、基礎疾患として糖尿病を有する患者では、血糖コントロール不良例ほど眼窩内進展や全身感染のリスクが高まることが報告されており、抗菌薬治療と並行して内科的な血糖是正を行うことが重要な合併症予防策となります。

眼窩および眼窩周囲蜂窩織炎の起炎菌プロファイルと抗菌薬選択についての検討がまとまっています。

当科で経験した眼窩および眼窩周囲蜂窩織炎19例の臨床的検討(日本小児感染症学会誌)

下眼瞼蜂巣炎 小児の眼窩隔膜前蜂窩織炎と画像診断の実際

小児における下眼瞼蜂巣炎(眼窩隔膜前蜂窩織炎)は、上気道感染や小児急性副鼻腔炎に続発することが多く、臨床的には眼瞼腫脹と発熱で受診するケースが典型的です。イランの基幹病院での5年間の小児preseptal cellulitis症例の解析でも、蜂巣炎は眼窩周囲蜂巣炎の最も一般的な表現型であり、その多くが副鼻腔炎や上気道感染を契機としていたことが示されています。

画像診断については、視力障害や眼球運動障害がない軽症例では必ずしもCTが必須とは限らないものの、眼窩蜂窩織炎や眼窩内膿瘍の疑いがある場合には、早期のCTスキャンが重症度評価と合併症検出に不可欠とされています。特に眼窩内膿瘍では、副鼻腔炎の延長として上顎洞・篩骨洞に病変を認めることが多く、造影CTで眼窩内のリング状濃染などを検出することが外科的ドレナージの適応判断につながります。

保存的治療が奏功した小児急性副鼻腔炎眼窩内合併症4例の報告では、広域ペニシリン系や第3世代セファロスポリンの早期投与により、眼窩蜂窩織炎や膿瘍を含む症例でも外科的介入なしに軽快した例が紹介されています。ただし、いずれの症例でも入院下で連日の眼科診察と画像評価が行われており、経過中に視力や眼球運動に変化がないか慎重なフォローが行われていました。

意外な知見として、小児preseptal cellulitisでは、初期に外見上の腫脹が著明であっても、視機能や眼球運動に異常がなければ、適切な抗菌薬投与で速やかに改善する症例が多く、過剰な外科的介入を避けるためにも、画像診断・眼科所見・全身状態を組み合わせた総合的評価が重要とされています。

小児の眼窩隔膜前蜂巣炎と画像診断の役割に関する海外症例シリーズです。

小児の眼窩隔膜前蜂巣炎:イランの基幹病院における5年間の経験(CareNet抄読)

下眼瞼蜂巣炎 多職種連携と看護ケア 視機能保護の独自視点

下眼瞼蜂巣炎が眼窩隔膜前蜂窩織炎であっても、短期間で眼窩蜂窩織炎へ進展するリスクがあるため、初期から多職種連携を前提にしたマネジメント体制を整えることが重要です。眼科・耳鼻咽喉科・小児科(あるいは内科)に加え、重症例では感染症科のコンサルトを早期に行うことで、抗菌薬選択や画像検査のタイミングを共有しやすくなります。

看護ケアの観点では、眼窩蜂巣炎症例のレポートからも、まぶたの赤みや腫脹、左右差、視力低下の訴え、「物が二重に見える」といったわずかな変化をこまめに観察し、記録することの重要性が強調されています。特に小児では、自覚症状を言語化できない場合も多いため、保護者からの聴取や、普段と異なる行動(まぶたを押さえる、まぶしがる、テレビを見なくなるなど)を拾い上げる感度が、早期の悪化サイン検出につながります。

独自の視点として、視機能保護のための「環境調整」と「説明」が挙げられます。病室の照度をやや落とし、まぶしさや疼痛を軽減することで、無意識の瞬目や眼球運動を減らし、疼痛コントロールに寄与します。また、眼帯を長時間連続して使用すると、観察機会が減少し悪化徴候の見逃しにつながる場合があるため、観察時には必ず外して眼瞼・結膜・眼球運動を評価するなど、ケア手順の中に「観察のために一時的に覆いを外す」プロセスを組み込むことが勧められます。

さらに、患者や家族に対して「眼球運動障害や視力低下が出たら、夜間でもすぐにナースコールを押してよい」ことを具体的に伝えておくことで、症状進行時の受診遅れを防ぐことができます。下眼瞼蜂巣炎を単なるまぶたの炎症として軽視せず、「視機能に直結しうる感染症」であることを、医療従事者だけでなく患者側にも共有することが、予後改善に向けた鍵となるでしょう。

眼窩蜂巣炎患者の看護観察ポイントや学生実習での学びが具体的に紹介されています。

眼窩蜂巣炎―看護学生・実習での観察ポイント(看護系ブログ)