眼瞼炎症 病態分類と治療管理ポイント

眼瞼炎症 病態と診断治療

眼瞼炎症の全体像
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病態と分類の整理

眼瞼皮膚炎・前部眼瞼炎・後部眼瞼炎・眼瞼周囲蜂窩織炎など、眼瞼炎症の基本分類と病態の違いを簡潔に整理します。

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診断・鑑別の実務

視診・問診・生検や画像検査を含めた診断フローと、見落としたくない重症例・肉芽腫性眼瞼炎などの鑑別ポイントを解説します。

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治療戦略とケア指導

抗菌薬・抗ウイルス薬・ステロイドなど薬物治療の選択、眼瞼清拭やマイボーム腺ケアなど慢性例に重要なセルフケア指導をまとめます。

眼瞼炎症の定義と分類(眼瞼皮膚炎・前部眼瞼炎・後部眼瞼炎)

 

眼瞼炎症は「まぶたに生じる炎症性疾患の総称」であり、炎症部位により眼瞼皮膚炎・前部眼瞼炎・後部眼瞼炎に大別される。眼瞼皮膚炎はまぶたの外側皮膚に限局した炎症で、接触皮膚炎アトピー性皮膚炎に伴うことが多く、皮膚科的管理が主体となる。

前部眼瞼炎は睫毛根部周囲の炎症で、ブドウ球菌感染や脂漏性皮膚炎が背景にあることが多く、痂皮・充血・瘙痒を伴いやすい。

後部眼瞼炎は瞼板とマイボーム腺周囲の炎症で、マイボーム腺機能不全(MGD)とオーバーラップしやすく、蒸発亢進型ドライアイや反復する霰粒腫の原因となる。マイボーム腺の出口閉塞や分泌物の粘稠化が起こると、眼表面全体の涙液安定性が損なわれ、結膜充血や異物感など「眼瞼炎症」の主訴として現れる。

参考)眼瞼炎 (がんけんえん)とは

なお、臨床現場では「眼瞼炎」という用語が狭義には前部眼瞼炎を指す場合と、広義にまぶた全体の炎症を含む場合が混在しているため、カルテ記載では病変部位を明記しておくと、治療方針の共有に役立つ。

眼瞼炎症は急性と慢性で臨床像が異なり、急性細菌性では疼痛と発赤が前景に出るのに対し、慢性眼瞼炎では「朝の眼脂」「眼瞼縁のゴロゴロ感」「再発する麦粒腫・霰粒腫」など反復する軽度症状が主体となる。

参考)眼瞼炎

患者は「ドライアイ」「結膜炎」と自己認識していることも多く、初診時に眼瞼縁の詳細な視診と脂質層の評価を行うことが、眼瞼炎症の見逃し防止につながる。

眼瞼炎症の原因とリスク要因(感染性・非感染性・マイボーム腺機能不全)

眼瞼炎症の原因は大きく感染性と非感染性に分けられ、感染性ではブドウ球菌などグラム陽性球菌による前部眼瞼炎、ウイルス(単純ヘルペス、帯状疱疹)による眼瞼皮膚炎が典型的である。

細菌感染例では発赤・腫脹・圧痛・膿性眼脂が目立ち、瘙痒よりも疼痛を訴えることが多く、急性の片側性腫脹として発症しやすい。

非感染性の眼瞼炎症としては、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、薬剤性(点眼薬や化粧品)などがあり、両側性で左右対称、強い瘙痒と落屑を伴うことが多い。

参考)眼瞼炎(症状・原因・治療など)|ドクターズ・ファイル

マスカラやアイライナーなどのアイメイク、まつ毛エクステンションの接着剤、洗顔料・クレンジングなどが原因となることもあり、医療従事者側から具体的な化粧習慣を聞き出す問診が重要となる。

マイボーム腺機能不全(MGD)は後部眼瞼炎の中心的病態であり、高齢者、長時間VDT作業、コンタクトレンズ装用、アトピー性皮膚炎、酒さなどがリスクとされる。

参考)6 【2章 疾患別 診断と治療】 ②眼瞼炎

興味深い報告として、眼瞼縁に常在するデモデックス(ニキビダニ)が前部眼瞼炎やMGDの悪化因子となる可能性が示されており、まつ毛の円筒状鱗屑が目立つ症例ではデモデックス感染を考慮する余地がある。

眼瞼炎症を悪化させる生活習慣として、睡眠不足、乾燥した室内環境、長時間のコンタクトレンズ装用、メイクの落とし残し、ホットビューラーやまつ毛パーマによる慢性的な刺激などが挙げられる。これらは患者側の「当たり前」の美容習慣として埋もれがちであるが、再発例では必ず確認したい項目である。

眼瞼炎症と眼瞼周囲蜂窩織炎の鑑別(見逃してはいけないサイン)

眼瞼炎症の一部は、眼瞼周囲蜂窩織炎や眼窩蜂窩織炎の初期像と類似し、重症感染症の見逃しにつながる可能性がある。眼窩周囲蜂窩織炎は眼窩隔膜より前方の軟部組織の感染で、発赤・腫脹・疼痛を伴うが、眼球運動障害や視力障害は通常みられない。

一方、眼窩蜂窩織炎は眼窩隔膜の後方に炎症が及び、眼痛に加えて眼球突出、眼球運動障害、複視、視力低下、発熱などを呈し、迅速な入院加療と静注抗菌薬が必要となる。

眼瞼炎症と比較して、蜂窩織炎では皮膚の発赤境界が不明瞭で、びまん性に腫脹し、「オレンジ皮様」の皮膚変化を伴うことがあると報告されている。

参考)https://nishiizu.gr.jp/wp-content/uploads/sites/24/2025/03/conference-24_06.pdf

また、小児の眼窩周囲蜂窩織炎では、副鼻腔炎が感染源となることが多く、眼症状に先行する感冒症状や鼻閉・膿性鼻汁の有無が重要な手がかりとなる。

参考)https://www.jspid.jp/wp-content/uploads/pdf/02102/021020112.pdf

蜂窩織炎が疑われる場合のレッドフラッグとして、以下の点が挙げられる。

・高熱や寒気など全身症状の存在

・視力低下、視野異常の訴え

・眼球運動時痛、眼球運動障害、複視

・眼球突出や高度な結膜浮腫(ケミーシス)

・小児での副鼻腔炎の既往や顔面外傷の既往

これらを認めた場合は、眼瞼炎症としての外来管理にとどまらず、速やかな画像検査(CT・MRI)と入院加療を検討すべきである。

参考)蜂窩織炎

治療面では、単純な眼瞼炎症では局所療法主体で完結することが多いのに対し、眼窩周囲蜂窩織炎では全身抗菌薬投与が推奨され、薬剤選択には起炎菌として黄色ブドウ球菌・溶連菌をカバーする広域セファロスポリン(セフトリアキソン、セフォタキシムなど)がよく用いられる。

外見上「ものもらいが少しひどいだけ」に見えるケースでも、疼痛の強さ、発症の急激さ、全身状態を総合的に評価し、早期に重症感染のサインを拾い上げることが、眼瞼炎症診療における安全管理のポイントとなる。

眼瞼炎症に対する治療戦略(抗菌薬・ステロイド・抗ウイルス薬・ケア指導)

眼瞼炎症の治療は、原因に応じた薬物治療と、慢性例では眼瞼衛生を中心としたケア指導の組み合わせが基本となる。細菌感染性眼瞼炎では、ブドウ球菌を想定した抗菌薬点眼や眼軟膏が第一選択となり、症状が強い場合には全身抗菌薬を併用することもある。

局所抗菌薬としては、フルオロキノロン系やセフェム系点眼を用い、眼瞼縁に痂皮が付着している場合は、洗浄後に軟膏を塗布することで薬剤の浸透を高める。

アレルギー性・非感染性眼瞼炎では、原因アレルゲンの回避とともに、短期間のステロイド眼軟膏が用いられることが多い。

ただし、長期連用による皮膚萎縮や眼圧上昇のリスクがあるため、弱〜中等度のステロイドを最小限の期間で使用し、症状のコントロールがついた段階でタクロリムス軟膏などへの切り替えを検討する場合もある。

ヘルペスウイルスによる眼瞼炎症では、抗菌薬ではなく抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビルなど)の全身投与や外用が中心となる。

帯状疱疹眼合併例では、眼瞼炎症だけでなく角膜炎・ぶどう膜炎など眼内合併症のリスクがあるため、皮膚科・眼科の連携と早期治療開始が予後を左右する。

慢性眼瞼炎症やMGDに対しては、薬物治療だけではなく以下のような眼瞼衛生が重要である。

・温罨法:40℃前後の温タオルを数分間当て、マイボーム腺の分泌を促す

・眼瞼縁清拭:専用のウォーマーや洗浄パッド、希釈したベビーシャンプーで睫毛根部を優しく拭う

・コンタクトレンズ装用時間の適正化とレンズケアの見直し

・メイク落としの徹底と、アイラインの粘膜側塗布(インサイドライン)の中止

これらのセルフケアは、短期的な症状改善だけでなく、眼瞼炎症の再発予防やドライアイ症状の軽減にも寄与する。

薬物治療の副作用説明も欠かせない。抗菌薬点眼ではアレルギー性結膜炎や角膜上皮障害、ステロイドでは眼圧上昇や白内障進行のリスクがあり、必要に応じて眼圧測定や定期フォローアップを組み込むべきである。

特に高齢者や糖尿病患者では、眼瞼炎症を契機に蜂窩織炎へ進展するリスクや創傷治癒遅延が高く、早期受診や症状悪化時の再受診基準を明確に伝えることが、患者安全の観点から重要である。

眼瞼炎症と肉芽腫性眼瞼炎・難治性眼瞼腫脹(独自視点)

典型的な眼瞼炎症は外来レベルで改善する一方で、なかには難治性の眼瞼腫脹として長期に持続し、肉芽腫性眼瞼炎など特殊型が背景にあるケースも報告されている。

肉芽腫性眼瞼炎は、持続する上眼瞼腫脹と、病理学的には類上皮細胞性肉芽腫を特徴とする稀な疾患で、接触性皮膚炎や丹毒、甲状腺機能低下症、血管浮腫、皮膚筋炎、リンパ腫、サルコイドーシスなどとの鑑別が問題となる。

通常の眼瞼炎症治療に反応しない上眼瞼腫脹が数か月以上持続する場合、単純な感染性眼瞼炎やアレルギー性眼瞼炎と決めつけず、肉芽腫性眼瞼炎や全身疾患の一徴候として再評価する必要がある。

参考)難治性の上眼瞼腫脹に対し皮膚生検にて肉芽腫性眼瞼炎と診断され…

この際、眼瞼皮膚の生検は診断に非常に有用であり、局所麻酔下での小切除でも病理診断に十分な情報が得られるとされる。

肉芽腫性眼瞼炎の原因として、サルコイドーシスクローン病、金属アレルギーなどが想定されており、単なる眼瞼炎症にとどまらない全身検索が必要となる症例もある。

参考)https://www.tokushima-med.jrc.or.jp/file/attachment/6372.pdf

治療はステロイド外用や全身投与が主体となるが、症例によってはテトラサイクリン系抗菌薬の抗炎症作用を利用した治療が試みられ、「難治性眼瞼炎症に対するドキシサイクリンの少量長期投与」が有効であった報告も存在する。

こうした稀な眼瞼炎症の存在を知っておくことは、日常診療での「違和感」に気づく感度を高めるうえで重要である。

・片側性で持続する眼瞼腫脹

・通常の抗菌薬・ステロイド治療に反応しない

・硬結を伴う、あるいは皮膚色調がやや暗赤色である

・全身症状や他部位の肉芽腫性病変を伴う

といった所見があれば、肉芽腫性病変を疑い、皮膚科や膠原病内科との連携、生検による確定診断を検討したい。

難治性眼瞼腫脹のなかには、眼瞼悪性リンパ腫や悪性腫瘍の初発症状が紛れ込むこともあり、特に高齢発症例では画像検査や血液検査を含めた広い視野での評価が求められる。

眼瞼炎症という一見ありふれた診断の裏に、こうした稀少疾患が隠れている可能性を念頭に置くことが、医療従事者に求められる「見逃さない眼」である。

眼瞼炎症患者への説明・生活指導と多職種連携

眼瞼炎症は生命予後に直結しないことが多く、「軽症」と認識されがちだが、慢性化すればドライアイや視機能の質の低下、QOLの著しい低下につながる。したがって、診断時に病態と治療目標を丁寧に説明し、患者の自己管理意欲を高めることが重要である。

再発を繰り返す患者には、「完治」ではなく「コントロール」の概念を共有し、生活習慣と眼瞼ケアが治療の柱であることを具体的に伝える必要がある。

生活指導としては、以下のようなポイントが有用である。

・毎日の眼瞼清拭と温罨法の具体的な方法と回数

・メイク用品やスキンケア製品の見直し(防腐剤・香料・ラメなどの刺激成分)

・コンタクトレンズの適正な装用時間とレンズ素材の選択

・長時間の画面作業時のまばたき意識と休憩の取り方

・症状悪化時の自己判断での市販薬使用を避け、早期受診すること

これらを紙媒体やデジタル資料で渡すと、患者の理解と実行率が高まる。

眼瞼炎症の診療には、眼科医だけでなく、皮膚科、内科、アレルギー科、場合によっては形成外科やリハビリスタッフが関わることがある。アトピー性皮膚炎合併例では皮膚科での全身管理が、糖尿病や免疫抑制状態の患者では内科での基礎疾患コントロールが、眼瞼炎症の改善に直結する。

さらに、慢性眼瞼炎症による疼痛や見た目の変化が心理的負担となることもあり、必要に応じて心理職や看護師によるサポートを組み込むことが、包括的ケアの観点から有用である。

外来では時間的制約から、眼瞼炎症のセルフケア指導が後回しになりやすいが、看護師による指導やパンフレット・動画教材を活用することで、医師の負担を増やさずに教育効果を高めることができる。

「眼瞼炎症は適切なセルフケアで予後が大きく変わる疾患」であることをチーム全体で共有し、多職種連携のなかで再発予防とQOL向上を目指したい。

眼瞼炎(がんけんえん)とは | 社会福祉法人 恩賜財団 済生会

眼瞼炎の原因・症状・治療法の基礎情報と分類(眼瞼皮膚炎・前部眼瞼炎・後部眼瞼炎)を整理するときの参考リンク

眼瞼炎 | 池袋サンシャイン通り眼科診療所

外来での眼瞼炎症の診療フローや患者説明の具体例、治療法の概要を確認したいときの参考リンク

当科で経験した眼窩および眼窩周囲蜂窩織炎19例の臨床的検討(PDF)

眼瞼炎症と眼窩周囲蜂窩織炎・眼窩蜂窩織炎の違い、抗菌薬選択や重症例対応を深掘りしたいときの参考リンク

肉芽腫性眼瞼炎の1例(PDF)

難治性の眼瞼腫脹や肉芽腫性眼瞼炎の病態・鑑別・生検の意義を具体的症例で確認したいときの参考リンク

眼瞼膿瘍 症状 診断 治療

眼瞼膿瘍 症状 診断 治療
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眼瞼膿瘍の基本を押さえる

ものもらい・霰粒腫との関係や眼瞼蜂窩織炎への進展リスクを含めて、眼瞼膿瘍という病態の全体像を整理します。

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診断と見逃し防止のポイント

眼窩蜂窩織炎や副鼻腔炎由来の感染との鑑別、画像検査の適応、培養検査が必要となる難治例への対応を具体的に解説します。

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治療戦略とチーム医療

外来での切開排膿から入院管理・多職種連携まで、合併症を見据えた抗菌薬選択とタイミングを整理し、臨床で迷いやすい点を補います。

眼瞼膿瘍の症状と眼瞼蜂窩織炎への進展リスク

眼瞼膿瘍は、まぶたの限局性の発赤・腫脹・圧痛に加え、数日の経過で白色~黄白色の膿点が出現し、皮膚あるいは結膜面に小隆起として触知される状態を指す。 初期には瞬目時痛や違和感程度で受診が遅れやすいが、進行すると腫脹が増悪し眼裂が閉鎖傾向となり、視機能の評価が困難になることも少なくない。

病変が眼瞼皮膚の浅層にとどまる段階では局所所見主体だが、乳幼児や免疫不全患者では深部脂肪組織へ炎症が波及し、眼窩蜂窩織炎や眼窩内膿瘍に進展するリスクが高いとされる。 眼窩蜂窩織炎では眼球突出、眼球運動障害、結膜浮腫、視力低下など全身管理を要する所見が前景に立ち、脳膿瘍や髄膜炎など生命予後に関わる合併症も報告されているため、眼瞼膿瘍の段階での早期介入が重篤化防止に直結する。

臨床の現場では「ものもらい」として様子観察されている症例の一部が眼瞼膿瘍を形成し、患者は夜間帯に疼痛のピークを訴えることが多い。疼痛の質が「ズキズキする拍動痛」に変化したり、局所熱感が強くなった場合には、膿瘍形成を疑って早期の切開排膿を検討すべきサインと捉えられる。

参考)まぶた(眼瞼)の病気

眼瞼膿瘍の背景には、麦粒腫や霰粒腫が化膿したケースが少なくなく、特にマイボーム腺梗塞を反復する症例では慢性的なまぶた衛生不良が温床となりやすい。 一見単純に見える眼瞼腫脹であっても、発症様式・疼痛の推移・既往歴を丁寧に聴取することで、蜂窩織炎や悪性腫瘍を見逃さないことが医療従事者には求められる。

参考)https://web.sapmed.ac.jp/prs/eyelid/tumor.html

眼瞼膿瘍と麦粒腫・霰粒腫・眼瞼腫瘍の鑑別

眼瞼膿瘍の多くは麦粒腫(ものもらい)や霰粒腫の経過中に生じるため、これらの基本的な病態を押さえることが鑑別の第一歩となる。 麦粒腫はまぶたの皮脂腺やマイボーム腺の急性感染で、発赤・腫脹・疼痛が急速に進行し、数日以内に膿点を形成することが典型的である。 一方、霰粒腫はマイボーム腺の慢性肉芽腫性炎症で、通常は無痛性のしこりとして始まり、二次感染が起こったときに疼痛・発赤・膿瘍形成が加わる。

眼瞼膿瘍としてみえる病変の中には、良性・悪性の眼瞼腫瘍が紛れ込むこともあるため注意が必要である。 脂腺由来の悪性腫瘍は霰粒腫と酷似した臨床像を示し、反復する同一部位の「霰粒腫」や難治性眼瞼炎として長期間経過観察されることがあるが、進行すると局所浸潤やリンパ節転移をきたすため、組織学的評価を行うタイミングを逃さないことが重要である。

また、眼瞼膿瘍と眼瞼蜂窩織炎・眼窩蜂窩織炎の境界は、皮膚・皮下に限局しているか、眼窩内容まで炎症が及んでいるかで臨床的に区別される。 眼瞼および周囲の発赤・腫脹に加え、眼球痛、視力低下、眼球運動障害、全身倦怠感や発熱を伴う場合には、単純な眼瞼膿瘍ではなく眼窩蜂窩織炎を疑い、耳鼻科や脳外科と連携しながら早期に画像検査を行うことが推奨される。

参考)http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/jkpum/pdf/128/128-3/128-3-183.pdf

難治例では、膿の培養による原因菌同定や薬剤感受性の確認が治療方針に直結する。 黄色ブドウ球菌をはじめとするグラム陽性球菌が主な起因菌だが、歯性感染症や副鼻腔炎に伴う眼窩蜂窩織炎では連鎖球菌や嫌気性菌が関与することも知られており、局所のみならず全身感染症の一部分症として眼瞼病変を捉える視点が有用である。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/iwateishi/75/5/75_181/_pdf/-char/ja

眼瞼膿瘍の診断プロセスと画像検査・培養検査の位置づけ

眼瞼膿瘍の診断は、まず視診・触診による局所所見の把握と、全身状態の評価から始まる。 具体的には、発赤の範囲、腫脹の程度、圧痛の有無と強さ、膿点の有無、眼裂閉鎖の程度、結膜充血や浮腫の有無、眼球運動時痛や複視、視力障害の有無を系統的にチェックすることが重要である。

単純な眼瞼膿瘍が疑われ、全身状態が安定している場合には、必ずしも画像検査は必要ないとされる。 しかし、眼窩蜂窩織炎が疑われる所見(眼球突出、眼球運動障害、視力低下、強い眼痛、高熱など)がある場合や、抗菌薬投与48時間以内に症状の改善がみられない場合には、CTやMRIなどの画像検査が推奨されている。 画像検査では、眼窩内膿瘍の有無や範囲、副鼻腔炎の合併、頭蓋内への炎症波及の有無などを評価でき、外科的ドレナージの必要性を判断するうえで重要な情報が得られる。

日常診療では見落とされがちだが、難治性・再発性の眼瞼膿瘍では、切開時に得られた膿の培養が抗菌薬選択の根拠となる。 特に既往歴として糖尿病やステロイド内服、免疫抑制剤使用などがある症例では、耐性菌や易感染性宿主特有の病原体を念頭に置く必要があり、初期治療の反応性が乏しい場合には培養結果に基づく抗菌薬の見直しが重要になる。

参考)【日暮里眼科クリニック武蔵浦和院】ザ・マーケットプレイス武蔵…

さらに、眼瞼膿瘍の陰に悪性腫瘍が潜むケースでは、画像検査で不整形の腫瘤や骨破壊が示唆されることがあるため、「膿瘍が引いてもしこりが残る」「同じ部位に短期間で再燃する」といった臨床経過を見逃さず、適切なタイミングで生検や病理検査に進むことが求められる。 こうした視点を持つことで、単なる感染症としての眼瞼膿瘍の枠を超え、悪性疾患の早期診断にもつなげることができる。

参考)まぶたが重い原因|飯田橋藤原眼科

眼瞼膿瘍の治療:抗菌薬・切開排膿・入院適応

眼瞼膿瘍の治療の基本は、抗菌薬投与と適切なタイミングでの切開排膿である。 軽症例では、局所の抗菌点眼薬や眼軟膏に加え、必要に応じて経口抗菌薬を併用することで多くが改善するが、膿が明らかに貯留している場合には、針穿刺や小切開による排膿を行った方が治癒が早いと報告されている。

膿瘍形成が眼窩蜂窩織炎や眼窩内膿瘍に及んでいる場合は、静脈内抗菌薬による全身投与が必要となり、症状改善が乏しい場合には外科的ドレナージが推奨されている。 眼窩蜂窩織炎の症例報告では、抗菌薬投与48時間以内に症状改善がみられない場合、あるいは視力低下を伴う場合には外科的介入が望ましいとされており、このタイミング判断は眼科単独ではなく、耳鼻科や脳外科などとの連携の中で行うことが多い。

入院適応としては、乳幼児や高齢者、免疫抑制状態の患者、高熱や全身状態の悪化を伴う例、眼球運動障害や視力障害を伴う例、あるいは外来での内服治療への反応が乏しい例が挙げられる。 一見限局した眼瞼膿瘍に見えても、歯性感染症や副鼻腔炎が原因で眼窩蜂窩織炎を合併しているケースもあり、その場合は原疾患の治療と並行して眼窩内病変への対応を行う必要がある。

眼瞼膿瘍の症例では、切開部位と術後ケアも臨床上のポイントとなる。まぶたの皮膚切開は瘢痕が目立ちやすいため、可能な限り皮膚のシワに沿ったラインで小切開を置き、術後は感染コントロールとともに瘢痕ケアの説明も行うことが望ましい。 さらに、霰粒腫など背景病変が明らかな場合には、単に膿を出すだけでなく、原因となる嚢腫壁の処理や再発予防のためのまぶた清拭指導など、病態に応じた治療戦略を組むことが重要である。

眼瞼膿瘍と全身疾患・生活背景:見落とされがちな視点

眼瞼膿瘍は局所の細菌感染として捉えられがちだが、背景には糖尿病、アトピー性皮膚炎、慢性副鼻腔炎、ドライアイやマイボーム腺機能不全などの全身・局所要因が絡み合っていることが少なくない。 特に糖尿病患者では易感染性に加え創傷治癒遅延も伴うため、一般的な経過よりも膿瘍が遷延しやすく、抗菌薬選択や治療期間の設定に配慮が必要となる。

近年の症例報告では、歯性感染症や副鼻腔炎が眼窩蜂窩織炎・眼窩内膿瘍を介して眼瞼病変を引き起こしたケースも示されており、「眼瞼腫脹で眼科受診した患者が、実は歯科・耳鼻科領域の重篤な感染症を抱えていた」というシナリオも現実的である。 このような症例では、眼瞼の所見だけにとらわれず、顔面痛、鼻症状、歯痛、咀嚼時痛、悪臭のある鼻漏や口臭といった随伴症状の聴取が診断の鍵となる。

生活背景として、コンタクトレンズ装用者では、レンズ装脱着時の手指衛生不良や、まつげエクステ・アイメイクによる慢性的な眼瞼縁への刺激が、マイボーム腺機能不全や眼瞼縁炎を介して眼瞼膿瘍のリスクを高める可能性があると指摘されている。 医療現場では、単に「清潔にしてください」といった一般的な指導にとどまらず、具体的なまぶた洗浄法やアイメイクの工夫(ウォータープルーフ製品の使用頻度を減らす、まつげ根元を避けて塗布する等)を含めた生活指導が重要となる。

参考)【日暮里眼科クリニック】日暮里駅東口バス乗り場すぐ 土日祝も…

また、反復する眼瞼膿瘍を契機に、免疫不全や血液疾患が見つかることも報告されており、「小さなまぶたの膿瘍」を繰り返す患者に対しては、全身的なスクリーニングを検討する価値がある。 一見ありふれた眼瞼膿瘍の症例であっても、背景にある全身疾患や生活習慣に目を向けることで、再発予防だけでなく患者の長期的な健康管理にも寄与しうるのではないだろうか。

参考:眼窩蜂窩織炎と眼窩膿瘍の重症例の診断・治療の詳細解説(診断プロセス・治療方針の参考)

当科で経験した眼窩および眼窩周囲蜂窩織炎19例の臨床的検討

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