抗菌ペプチド ディフェンシンと自然免疫の基礎
抗菌ペプチド ディフェンシンの構造と分類と作用メカニズム
抗菌ペプチド ディフェンシンは、塩基性で分子量数キロダルトン程度の短いペプチドであり、複数のシステイン残基間のジスルフィド結合によって安定した立体構造をとることが特徴です。哺乳類のディフェンシンは大きくαディフェンシンとβディフェンシン、そして旧世界ザルなど一部霊長類に特異的なθディフェンシンに分類され、それぞれシステイン配列とジスルフィド結合パターンが異なります。
ディフェンシンの基本的な抗菌メカニズムは、正電荷と疎水性を活かして細菌や真菌、ウイルスエンベロープの膜に結合し、ポア形成や膜破壊によって内容物の漏出や膜電位崩壊を引き起こすことです。また、単なる「天然の抗生物質」ではなく、樹状細胞やT細胞、好中球の遊走を誘導したり、サイトカイン産生を調節したりする免疫調節分子としての側面も報告されています。
参考)https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-19590708/19590708seika.pdf
αディフェンシンは主に好中球顆粒と小腸Paneth細胞から産生され、急性炎症時や腸管粘膜バリアで強い殺菌活性を発揮します。一方、βディフェンシンは皮膚や呼吸器、尿路など多様な上皮細胞で誘導されることが多く、IL-17やTNFなど炎症性サイトカインによって発現が増強され、上皮バリアの強化に関与します。
参考)腸内細菌と腸管免疫 : ライフサイエンス 領域融合レビュー
ディフェンシンは細菌の膜脂質組成の違いをある程度識別しており、病原菌には強い殺菌作用を示す一方、共生細菌には比較的低い活性しか示さない場合があることが、腸管αディフェンシンの研究から明らかになっています。さらに、一部のディフェンシンはウイルスのエンベロープに結合して侵入を阻害したり、ウイルス受容体の発現を変化させるなど、抗ウイルス活性も持つことが報告されています。
参考)https://www.akita-u.ac.jp/honbu/event/img/pro30815_01_dl.pdf
参考:ディフェンシンの構造・分類・機能をまとめた総説へのリンク(ディフェンシンの基礎理解の補足に有用)
抗菌ペプチド ディフェンシンと腸内細菌叢とPaneth細胞機能
抗菌ペプチド ディフェンシン、とくに小腸のPaneth細胞由来αディフェンシンは、腸管自然免疫の中核となる因子として位置づけられています。Paneth細胞は小腸陰窩の底部に局在し、細菌成分やコリン作動性神経刺激などに応答して、貯蔵顆粒からαディフェンシンを腸管腔内へ分泌し、病原体を素早く排除します。
興味深いのは、Paneth細胞αディフェンシンが病原菌には強力な殺菌活性を示す一方で、腸内の主要な共生細菌にはほとんど活性を示さない「選択性」を持つ点です。この性質により、腸内細菌叢の構成に影響を与えつつも、共生細菌とのバランスを保ち、腸内環境の恒常性維持に寄与していると考えられています。
参考)https://www.kachikukansen.org/kaiho2/PDF/4-4-133.pdf
近年のマウスモデル研究では、Paneth細胞αディフェンシンの発現低下や分泌異常が、腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)を介して炎症性腸疾患、肥満、2型糖尿病、非アルコール性脂肪肝炎、肝硬変、さらには自閉スペクトラム症など、多様な疾患のリスク増加と関連することが示されています。特に、αディフェンシン欠損マウスでは、特定の病原性細菌が過剰増殖しやすくなり、炎症性腸疾患様の病態を呈することが報告されています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/33/3/33_129/_pdf
逆に、外因性にαディフェンシンを投与することで、GVHDモデルマウスの腸内細菌叢の破綻(dysbiosis)を予防し、病態を軽減できたという報告は、ディフェンシンを用いた新たな疾患予防・治療戦略の可能性を示唆しています。ヒトにおいても、炎症性腸疾患患者の一部でPaneth細胞αディフェンシンの発現低下や局在異常が報告されており、病型や予後と関連する潜在的バイオマーカーとして注目されています。
参考)[炎症性腸疾患]抗菌ペプチドαディフェンシンの異常による腸炎…
腸内細菌叢とディフェンシンの関係を概説した日本語総説(腸内細菌叢・IBDとの関連理解に有用)
抗菌ペプチド ディフェンシンと皮膚・呼吸器・高齢者での自然免疫
抗菌ペプチド ディフェンシンは腸管だけではなく、皮膚や呼吸器、尿路、口腔など、外界と接するさまざまな上皮バリアで発現し、自然免疫の「局所砦」として働いています。皮膚角化細胞は、分化の過程でディフェンシンを含む複数の抗菌ペプチドを産生し、アトピー性皮膚炎や乾癬ではその発現変化がバリア機能や易感染性と関連することが報告されています。
呼吸器では、気道上皮細胞や肺胞マクロファージがディフェンシン類を産生し、肺炎桿菌や病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌などの吸入・定着を抑制する役割を果たします。加齢に伴う自然免疫機能の低下に関しても、好中球ディフェンシン(ヒトではHNP-1〜3)の量的・質的変化が、易感染性や肺炎・尿路感染症リスク増大の一因となる可能性が指摘されています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics1964/38/4/38_4_440/_pdf/-char/ja
動物モデルでは、ヒト好中球由来ディフェンシンHNP-1を投与することで、Klebsiella pneumoniaeによる致死的腹膜炎モデルマウスの生存率が改善したとの報告があり、全身性感染症に対する補助的治療薬候補としての可能性も議論されています。ただし、過剰なディフェンシンは宿主細胞毒性や過炎症反応を誘導するリスクもあり、治療応用には濃度・局在・投与経路の最適化が重要とされています。
参考:皮膚自然免疫と抗菌ペプチドの役割に関する日本語報告書(皮膚・アレルギー領域への応用を考える際の補足)
抗菌ペプチド ディフェンシンと炎症性腸疾患・生活習慣病・移植医療
抗菌ペプチド ディフェンシンの異常は、炎症性腸疾患(IBD)、とくにクローン病の一部病型と密接に関連していることが明らかになっています。小腸型クローン病患者では、Paneth細胞αディフェンシンの発現低下や顆粒形成異常が報告されており、腸内細菌叢のdysbiosisを介して慢性炎症が持続するメカニズムの一端を担っていると考えられています。
ディフェンシン遺伝子やPaneth細胞の分化・機能に関与するATG16L1、NOD2などのIBD関連遺伝子多型は、オートファジーや細胞内微生物認識の異常を通じてディフェンシン産生を低下させる可能性が指摘されており、「遺伝子→ディフェンシン→腸内細菌叢→疾患」という連鎖が徐々に具体化しつつあります。一方で、一部の潰瘍性大腸炎患者では、大腸上皮でのβディフェンシン発現亢進が報告され、慢性炎症環境への反応としての二次的変化とも解釈されています。
生活習慣病との関連では、肥満や2型糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患などで腸内細菌叢の変化と粘膜バリア機能低下(いわゆる「リーキーガット」)が指摘されており、ディフェンシン産生の低下がこれらの背景にある可能性が議論されています。αディフェンシンを外因性に補うことで、高脂肪食負荷マウスの腸内細菌叢異常や代謝異常を改善できたという報告は、メタボリック疾患に対する新たな介入ターゲットとしての注目点です。
移植医療の分野では、造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(GVHD)において、Paneth細胞障害とαディフェンシン低下が腸内細菌叢の崩壊と重症GVHD発症に関与することが示されました。αディフェンシンの補充によるdysbiosis予防やGVHD制御の戦略は、従来の免疫抑制療法とは異なる「バリア・マイクロバイオーム志向」のアプローチとして、今後の臨床応用が期待されています。
参考)https://shizenmeneki.org/symposium/202303/nakamura.pdf
最新の内科系総説(αディフェンシン異常とIBD・移植関連腸炎の関係を整理する際に有用)
[炎症性腸疾患]抗菌ペプチドαディフェンシンの異常による腸内細菌叢破綻と疾患
抗菌ペプチド ディフェンシンと臨床応用とバイオマーカーとしての可能性
抗菌ペプチド ディフェンシンは、その強力な殺菌活性から「次世代抗菌薬候補」として注目されてきましたが、近年はそれに加えて、バイオマーカーや免疫調整薬としての役割にも関心が集まっています。動物実験では、ヒト好中球ディフェンシンを投与することで細菌性腹膜炎の致死率を低下させたり、経口あるいは経肛門的にαディフェンシンを投与して腸内細菌叢の破綻を是正し、GVHD様病態を抑制できることが示されており、局所投与を中心とした臨床応用の可能性が示唆されています。
一方で、ディフェンシンは自己・非自己の識別を完全には行わないため、高濃度では宿主上皮細胞への毒性や炎症惹起のリスクが否定できず、そのまま全身投与型の「抗生物質」として用いるには課題も多いとされています。そこで、ディフェンシン様配列を一部改変した「ペプチドミメティクス」や、ナノ粒子・リポソームに封入して局所標的化するドラッグデリバリー技術などが検討されており、より安全で選択性の高い応用形態が模索されています。
臨床現場で比較的実装が近いと考えられているのが、ディフェンシンを炎症や感染症のバイオマーカーとして利用するアプローチです。たとえば、好中球由来ディフェンシン濃度は細菌性感染症で顕著に増加するため、敗血症の早期診断や重症度評価、抗菌薬デエスカレーションの判断補助として用いる可能性が検討されています。また、便中αディフェンシン量やPaneth細胞αディフェンシン発現パターンを評価することで、炎症性腸疾患の病型分類や予後予測に役立てる試みもあり、既存のカルプロテクチンやCRPなどとの組み合わせで診療アルゴリズムに組み込む未来像も描かれています。
さらに、ディフェンシンを「治療薬そのもの」としてではなく、「マイクロバイオーム制御のレギュレーター」と捉える視点も興味深い展開です。プロバイオティクスや食事介入によって上皮細胞からのディフェンシン産生を間接的に増強し、腸内細菌叢・皮膚常在菌叢を介して疾患リスクを低減する戦略は、副作用の少ない長期介入として、今後臨床試験が進むと考えられます。
ディフェンシンの腸管免疫・マイクロバイオーム制御を軸にした新規治療戦略を解説した講演資料(応用を検討する際の全体像把握に有用)
Paneth細胞・αディフェンシンによる腸内細菌叢制御と疾患

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