ナパゲルン軟膏と肩こり
ナパゲルン軟膏と肩こりの適応:肩関節周囲炎と筋肉痛
医療現場で「肩こり」と言われたとき、まず押さえるべきは“症状名”であって“診断名”ではない点です。ナパゲルン軟膏(フェルビナク外用)の効能・効果は、肩関節周囲炎、筋肉痛、腱炎・腱鞘炎、変形性関節症、外傷後の腫脹・疼痛などの鎮痛・消炎であり、「肩こり」という言葉そのものは適応名に書かれていません。
したがって、患者の肩こり訴えを「肩関節周囲炎(凍結肩を含むことがある)」「筋・筋膜性の痛み(筋肉痛に準ずる)」「頸椎・神経根由来」「内科的原因」などに分け、ナパゲルン軟膏が“狙える病態”かを先に見立てるのが安全です。
見立てに役立つ、外用NSAIDsがハマりやすい肩こり(=局所炎症・過負荷が主体)を、短くチェックできる質問例を挙げます。
・「動かすと痛いですか?(挙上・外旋・結帯動作)」→肩関節周囲炎を疑う入口になります(適応に含まれる)。
・「押すと痛い点がありますか?同じ姿勢の後に悪化しますか?」→筋肉痛相当の局所過負荷が示唆され、外用で納得感が出やすいです。
・「しびれ、放散痛、握力低下は?」→外用単独で引っ張りすぎないサインです(適応疾患から外れやすい)。
また、患者の期待値調整も重要です。「こりが取れる=筋弛緩」ではなく、「炎症・疼痛の化学メディエーターを抑えて痛みを下げ、動かしやすさを作る」という説明に寄せると、漫然使用が減ります。
参考)フェルビナク(ナパゲルン軟膏Ⓡ、セルタッチⓇ)にはどのような…
特に肩関節周囲炎では“痛みが軽くなったら可動域訓練に移る”という流れが作りやすく、外用はリハ導入の前段として活きます(適応に肩関節周囲炎がある)。
必要に応じて、患者説明では「この薬は肩こり用というより、肩の炎症や筋肉痛の痛み止めとして使う薬です」と言い換え、ラベリングのズレを補正してください。
この“言い換え”をしておくだけで、効かなかった時に「薬が弱い」のではなく「狙った原因が違う可能性」を自然に話せるようになります。
ナパゲルン軟膏と肩こりの用法:塗擦と1日3〜4回
外用NSAIDsで差が出るのは、薬理よりも「塗布指導の質」であることが少なくありません。ナパゲルン軟膏は使用説明書で、痛いところとその周りに“擦り込む”こと(塗り広げるのではない)を明確に示しています。
この一文は、患者指導の“勝ち筋”なので、そのままの言葉で伝える価値があります。
回数の目安として、通常は1日3〜4回用いるとされ、部位別の1回量目安も示されています。
参考)ナパゲルン軟膏3%の効能・副作用|ケアネット医療用医薬品検索
肩(肩の痛みの場合)は「指2〜3本幅」を目安に取り出す図示があり、腰・膝と同程度の量感で伝えられます。
参考)https://shouen-chintsu.com/materials/pdf/2402_napageln.pdf
この“指〇本幅(FTUに近い運用)”は、患者が自宅で再現しやすく、塗り過ぎ・塗り足りない問題の双方に効きます。
医療者向けには、次のように指導文をテンプレ化すると外来が回ります。
・「肩は、痛い点だけでなく周りも含めて、しっかり擦り込んでください」
・「1日3〜4回が目安です。入浴後や活動後など、症状が出やすいタイミングに合わせてOKです」
・「塗った直後にすぐ服を着るなら、ベタつきが残らない程度まで擦り込むと続けやすいです」
注意点として、傷口や眼、粘膜には使用しないことが明記されています。
「肩こり」訴えの患者でも、掻破痕・湿疹・テーピングかぶれなど、実際には塗ってはいけない皮膚状態が紛れているため、塗布前の皮膚確認は必須です。
さらに、保管上「火の気を避けて保管」と注意喚起があります。
この一文は患者に刺さりやすく、アルコール含有製剤のイメージを持ってもらうことで、ストーブ前での塗布やドライヤー直当てなどの生活リスクを減らす説明につながります。
ナパゲルン軟膏と肩こりの副作用:皮膚炎とアナフィラキシー
外用NSAIDsは全身性副作用が少ないという先入観があり、患者も医療者も“皮膚反応を軽く見がち”です。ナパゲルンの副作用として、皮膚のそう痒、皮膚炎、発赤などが挙げられており、接触皮膚炎や刺激感、水疱も示されています。
肩は衣類の摩擦、汗、保湿剤との重なりが起きやすく、実務上は「悪化したらまず中止して見せてください」と一言添えるだけでトラブルが減ります。
また、重大な副作用としてショック、アナフィラキシー(頻度不明)が記載されている情報源もあります。
参考)ナパゲルンクリーム3%の効能・副作用|ケアネット医療用医薬品…
外用であっても蕁麻疹、血管浮腫、呼吸困難などのサインは緊急性があるため、「全身にじんましんが出た/息が苦しい」場合の行動(中止+受診)を短く伝えるのが安全です。
医療従事者向けの記事では、ここを“脅す”のではなく“行動が明確になる”ように言語化するのがポイントです。
禁忌として、成分に対する過敏症既往、アスピリン喘息(NSAIDs等による喘息発作誘発)またはその既往が挙がる情報源があり、気管支喘息を背景に持つ患者では注意が必要とされています。
「貼付薬はダメだったけど塗り薬なら大丈夫」という自己判断をしがちな層に対して、NSAIDs過敏の既往は外用でも確認する、という姿勢が重要です。
患者説明の例(短く、現場でそのまま使える形)です。
✅「かゆみ・赤み・ぶつぶつが出たら、いったん中止して相談してください」
✅「息苦しさやじんましんが急に出たら、すぐ受診してください」
✅「昔、痛み止めで喘息発作が出たことがある人は、必ず先に伝えてください」
ナパゲルン軟膏と肩こりのエビデンス:臨床成績と改善率
医療従事者向けに説得力を出すなら、「効く人がいる」ではなく、どの病態でどの程度の改善が見込まれたかを数字で示すのが有効です。公開情報では、ナパゲルン(フェルビナク外用)の臨床成績として、肩関節周囲炎の改善率(中等度改善以上)が58.2%(699/1,201)といったデータが提示されています。
同じ資料内に、筋・筋膜性腰痛症70.8%(412/582)、筋肉痛65.6%(575/876)なども並び、筋・筋膜系の疼痛と相性がよいニュアンスを読み取れます。
ここでの実務的なコツは、「肩こりの全員に58.2%効く」と言わないことです。数字はあくまで“肩関節周囲炎など適応病態に寄せたとき”の参考値であり、肩こりの背景が神経根症状や内科疾患なら当然外れます。
逆に、外用で痛みが落ちることで、患部への恐怖回避が減り、リハやセルフエクササイズに進めるケースは多く、外用を“治療の導線”として設計すると臨床価値が上がります。
意外と見落とされる点として、同じ「外用NSAIDs」でも有効成分が異なり、患者の“合う・合わない”が皮膚反応の出やすさや使用感(乾きやすさ等)で分かれることがあります。ナパゲルンの一般名がフェルビナクであることは、薬剤選択の説明(他剤との違いの言語化)に使えます。
「湿布でかぶれた=全部ダメ」ではなく、「成分と剤形で選択肢がある」を示し、同時に禁忌(NSAIDs過敏等)を踏む、というバランスが医療者らしい提案になります。
(論文・資料としての引用例:臨床成績や薬理の背景を確認したい場合)
臨床成績・副作用頻度などの一次情報(公的DB相当):KEGG MEDICUS:ナパゲルン(フェルビナク)
ナパゲルン軟膏と肩こりの独自視点:塗布で拾える“赤旗”と紹介基準
検索上位の一般向け記事は「塗り方」「効果」「副作用」に寄りがちですが、医療従事者向けでは“外用を処方する前後で拾うべき赤旗”を明文化すると実務価値が跳ねます。ナパゲルンの効能には肩関節周囲炎や筋肉痛が含まれる一方で、肩こり様症状の背景には別疾患が紛れ得るため、「外用で様子見してよい肩」と「早期評価が必要な肩」を切り分ける視点が重要です。
現場で使える、紹介・追加評価の目安(例)を箇条書きにします。
・🧭 安静時痛が強く、夜間痛で睡眠が崩れる(肩関節周囲炎でも起こり得るが、感染・腫瘍・重度炎症の鑑別は意識する)。
・🧨 外傷後で変形・激痛が強い、腫脹が増悪する(外傷後疼痛は適応にあるが、骨折等の除外が前提になる)。
・⚡ しびれ・筋力低下・巧緻運動低下が前景に出る(局所NSAIDsの適応病態から外れやすい)。
・🌡️ 発熱、局所の強い熱感・発赤が顕著(「炎症だから塗る」で済ませず、感染性の評価が優先)。
・🩹 皮膚バリアが破綻している(掻破・湿疹・びらん):説明書上、傷口への使用は避けるため、まず皮膚治療・保護を優先する。
この“赤旗チェック”は、ナパゲルンが悪いのではなく、肩こりという言葉が広すぎることへの対策です。
結果として、適応に合う患者では塗擦指導(擦り込む、1日3〜4回、肩は指2〜3本幅)まで一気通貫で説明でき、合わない患者は早めに次の評価へ送れます。
最後に、患者に渡す一言メモ(口頭でも可)として、次を推奨します。
・「赤み・かゆみが出たら中止」
・「息苦しさやじんましんが出たらすぐ受診」
・「肩は“点”ではなく“面”で、周りまで擦り込む」
(参考リンク:患者向けに適応疾患と注意点が簡潔にまとまっており、説明のすり合わせに使える)
患者説明の土台(効能・使い方の概要):くすりのしおり:ナパゲルン軟膏3%

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