ボルタレン錠 効果
ボルタレン錠 効果の作用機序(プロスタグランジン合成阻害)
ボルタレン錠(一般名:ジクロフェナクナトリウム)は、プロスタグランジン合成阻害作用を介して抗炎症・鎮痛・解熱作用を示すと考えられています。
この「プロスタグランジン(PG)を下げる」という一点が、効果の説明にも副作用の説明にもそのままつながります。
たとえば末梢では炎症局所のPG低下により腫脹・発赤・疼痛の増幅が抑えられ、中枢側でも痛覚入力の“増幅器”が弱まるイメージで説明すると、患者理解が進みやすいです。
一方でPGは胃粘膜保護、腎血流維持、血小板機能、循環動態にも関与します。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00055113.pdf
したがって「効くほど胃腸・腎・循環器に負担が出得る」薬理構造であり、症状が強い場面ほど“最小有効量・最短期間”が実務上の落としどころになります。
ボルタレン錠 効果が期待できる疾患(適応)と臨床成績の目安
添付文書上の効能・効果は、関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、腱鞘炎、頸肩腕症候群、神経痛、後陣痛、骨盤内炎症、月経困難症、膀胱炎、前眼部炎症、歯痛、手術後・抜歯後の鎮痛・消炎、急性上気道炎の解熱・鎮痛などです。
国内臨床試験(判定2,690例)では、承認適応全体で有効率(著効+有効)70%とされ、疾患別の有効率も表として示されています。
その表では、抜歯後の疼痛・炎症82.3%、月経困難症80.8%、手術後の疼痛・炎症72.3%などが掲載されており、急性痛の領域での体感に近い数字になりやすい点が実務上参考になります。
ただし添付文書にも明記される通り、消炎鎮痛剤による治療は原因療法ではなく対症療法である点を、処方設計と患者説明の両方で外さないことが重要です。
ボルタレン錠 効果の用法用量(25mg・頓用)と薬物動態(Tmax・半減期)
用法及び用量は、慢性痛・炎症(関節リウマチ、変形性関節症など)では通常、成人で1日量75~100mgを原則3回に分けて経口投与し、頓用の場合は25~50mgとされています。
急性上気道炎の解熱・鎮痛では、成人で1回25~50mgを頓用し、原則1日2回まで・1日最大100mgを限度とし、空腹時投与を避けることが望ましいとされています。
「空腹時を避ける」は胃腸障害の回避だけでなく、“薬を飲む行為”そのものが生活導線に組み込まれ、頓用の濫用を抑える実務的メリットもあります。
薬物動態として、ボルタレン錠25mgを朝食1時間後に単回投与した健康成人9名で、Tmax 2.72±0.55時間、Cmax 415±57ng/mL、AUC0→24 998±84ng/mL・hr、半減期(T1/2)1.2時間が示されています。
半減期が短い一方、炎症局所での薬理作用や行動制限の緩和など“臨床的な持続”は半減期だけで決まりませんが、少なくとも「痛みが出てすぐ飲む」設計より「ピークに合わせる」設計の方が理屈として通しやすい場面があります。
頓用指導では、痛みの予兆(歯科処置後の麻酔が切れるタイミング等)に合わせるか、発作性疼痛での“早めの1回”に寄せるかを、疾患とリスクで使い分けると説明が整理しやすいです。
ボルタレン錠 効果と副作用(消化管・腎機能・心血管系イベント)をセットで説明する
禁忌として、消化性潰瘍、重篤な腎機能障害、重篤な肝機能障害、重篤な心機能不全、アスピリン喘息、妊婦(妊娠の可能性含む)などが明記されています。
重大な副作用として、消化管出血や穿孔を伴う消化管潰瘍、急性腎障害、うっ血性心不全、心筋梗塞・脳血管障害等の心血管系血栓塞栓性事象、重症喘息発作(アスピリン喘息)などが挙げられています。
この薬を「よく効く鎮痛薬」としてだけ捉えると、腎前性のリスク(脱水、利尿薬併用、大手術後、高齢者など)で腎血流が落ちやすい患者に“いつものNSAIDs”として出てしまう事故が起こり得るため、背景因子の棚卸しが実務上の要になります。
意外に見落とされがちなのが、添付文書の「PTP誤飲による食道粘膜損傷・穿孔」の注意や、「多めの水で服用」「就寝直前を避ける」など、投与手技そのものが重篤合併症を左右する点です。
また、長期間投与されている女性で一時的な不妊が認められたとの報告がある、という“その他の注意”も掲載されています。
(権威性のある日本語の参考リンク:禁忌・用法用量・重大な副作用・相互作用・薬物動態の一次情報)
JAPIC:ボルタレン錠25mg(ジクロフェナクNa錠)添付文書PDF
ボルタレン錠 効果を落とさない相互作用(ワルファリン・SSRI・ニューキノロン・CYP2C9)【独自視点】
相互作用の基本は2系統で、(1) 出血・消化管障害を増強する組み合わせ、(2) 腎血流・電解質・痙攣閾値などを悪化させる組み合わせ、に分けると現場で漏れが減ります。
出血リスクでは、抗凝血剤・抗血小板薬(ワルファリン等)との併用で出血の危険性が増大し得るため、凝固能検査等を含めた出血管理が必要とされています。
さらに、SSRI併用で消化管出血があらわれることがあるため注意投与とされており、「消化管粘膜障害(NSAIDs)」+「血小板機能側(SSRI等)」の二重ヒットとして説明すると、処方提案・監査の説得力が上がります。
痙攣リスクでは、ニューキノロン系抗菌剤(レボフロキサシン等)併用により痙攣を起こすおそれがある、と明記されています。
代謝面では、本剤は主にCYP2C9で代謝され、CYP2C9阻害薬(ボリコナゾール等)併用でCmax/AUCが増加することがあるため、用量・副作用監視の考え方が必要です。
また、降圧薬(ACE阻害剤、ARB等)や利尿剤との併用では降圧作用の減弱や腎機能悪化のおそれが記載されており、いわゆる“腎血流が落ちやすい組み合わせ”として、脱水・感染・高齢などのイベント時に一時中断を含めた運用提案が安全性に直結します。
(権威性のある日本語の参考リンク:NSAIDsの心血管系イベントに関する公的データベース研究の概要)