乳糖不耐症 症状 赤ちゃん
乳糖不耐症 症状 赤ちゃんの下痢と腹部膨満
乳糖不耐症は、ミルク(母乳・人工乳を含む)に含まれる乳糖(ラクトース)を分解する刷子縁酵素ラクターゼの活性が低下し、乳糖を消化吸収できずに下痢などを来す状態として整理できる。日本小児栄養消化器肝臓学会の難治性下痢症の解説では、消化されずに大腸に流入したラクトースが浸透圧性下痢(激しい水様下痢)を起こし、さらに腸内細菌による発酵で腹部膨満・腹鳴が強くなる病態が述べられている。特に新生児期〜乳児早期の先天性病態では、哺乳後数時間〜数日で著しい下痢を呈する点が特徴として挙げられている。
臨床現場で強調したいのは、「便の回数が多い」よりも「水様性が強い」「哺乳との時間関係が比較的一貫している」「お腹が張る・ガスが多い・腹鳴が目立つ」など、糖質消化不全らしいセット所見を拾うことだ。小児慢性特定疾病情報センターの診断の手引きでも、主要症状として著しい下痢に加えて腹部膨満、腹鳴、反復性の痙性腹痛が挙げられている。赤ちゃんは腹痛を言語化できないため、啼泣・反り返り・いきむが便が少ない(ガスが多い)などの行動として現れることがある。
また、症状の強さは「乳糖摂取量」と「残存ラクターゼ活性」の掛け算になりやすい。たとえば下痢が軽い日は哺乳量が少ない、あるいは離乳食で固形が増えて相対的に乳糖負荷が減っている、といった臨床的整合性がとれる場合は鑑別の優先度が上がる。逆に、哺乳と無関係に発熱や血便、嘔吐が前景に立つ場合は感染性腸炎や他疾患を優先し、乳糖不耐症は「二次的に合併して長引く」シナリオも含めて位置づける。
- 哺乳後に水様便が目立つ(浸透圧性下痢を疑う)
- 腹部膨満・腹鳴(ゴロゴロ)が強い
- 体重増加不良がある場合は重症化や持続負荷を疑う
- 感染性腸炎後に下痢が長引く場合は二次性乳糖不耐症を鑑別に入れる
乳糖不耐症 症状 赤ちゃんの便pHと還元糖
乳糖不耐症の評価で、現場で比較的扱いやすい客観指標が「便のpH」と「便中還元糖」である。小児慢性特定疾病情報センターの診断の手引きでは、下痢便のpH<5.5、便中の還元糖検出が重要な検査所見として明記されている。難治性下痢症の解説でも、便の生化学的検査としてpH<5.5、便中Na+<70 mEq/Lなどが挙げられている。
便pHが低下する背景は、未消化糖が大腸で発酵して有機酸が増えるため、という病態生理で説明できる。ここは医療従事者向け記事として、単に「酸性便」ではなく、なぜ酸性になるのか(発酵と有機酸)を言語化しておくと説明力が上がる。便中還元糖は「糖が便に漏れている」ことの間接指標で、便pHと同じく“糖質吸収障害らしさ”の補強材料になる。
ただし注意点として、これらは「乳糖に特異的」ではない。難治性下痢症の解説では、糖質吸収障害の評価として経口糖質負荷や呼気水素ガス測定なども触れられており、乳糖以外の糖質(例:スクロース、マルトース)による酵素欠損症も鑑別に入ることが示されている。つまり、便pH低下や還元糖陽性を見た瞬間に乳糖不耐症へ直結させず、食事内容・発症のタイミング・改善と悪化の因子を再確認する姿勢が重要だ。
- 便pH<5.5は乳糖不耐症の重要所見(ただし非特異)
- 便中還元糖は糖質の消化吸収不全を示唆
- 問診で「負荷(哺乳)→症状」「除去→改善」を必ずセットで確認
乳糖不耐症 症状 赤ちゃんの診断と除去負荷
乳糖不耐症の診断は、検査値よりも「臨床反応(除去・再負荷)」が実装しやすく、かつ有用である。小児慢性特定疾病情報センターの診断の手引きでは、乳糖除去によって便性が正常化し、再摂取により腹部症状が再現することが重要な臨床所見として整理されている。難治性下痢症の解説でも、無乳糖ミルクへの切り替えで症状改善が確認できる場合に本症が疑われる、という流れが示されている。
赤ちゃんの診療では「試験的に無乳糖にする」介入は比較的行いやすい一方で、介入の設計が曖昧だと評価不能になる。例えば、感染性胃腸炎の回復期は自然軽快のタイミングと重なりやすく、たまたま改善したのか乳糖除去が効いたのか判別しにくい。そこで、医療者向け記事としては、次の3点を明確にするのが実務的だ。
- 観察期間:症状がどのくらいの時間スケールで変動したか(「数時間〜1日で改善」など)
- アウトカム:便回数ではなく便性状(完全水様→軟便)と全身状態(哺乳量、尿量、体重)
- 再負荷:自己判断で急に通常ミルクへ戻すのではなく、症状再現の評価は医療者がリスク管理して行う
さらに、鑑別の観点を一段深掘りすると「先天性(新生児・乳児早期から強い)か、二次性(腸炎後などで一時的)か」が重要になる。難治性下痢症の解説では、ここで扱う乳糖不耐症は新生児・乳児早期に発症する先天的ラクターゼ活性低下に基づく病態を指す、と整理されている。つまり、一般外来で遭遇する“よくある”乳糖不耐は二次性が多い一方で、「出生直後から哺乳のたびに激しい水様下痢・体重増加不良」のようなパターンでは先天的な重症病態も想起し、早期に専門的評価へつなぐ価値が高い。
乳糖不耐症 症状 赤ちゃんのミルクと母乳の調整
治療の中心は、乳糖負荷を減らして症状を抑え、同時に脱水・栄養不良を回避することにある。難治性下痢症の解説では、新生児・乳児期は母乳や通常ミルクの摂取を中止して無乳糖ミルクに切り替える、離乳期以降も乳糖・乳製品摂取を禁止する、という先天性病態を前提とした原則が述べられている。また、同解説にはβ-ガラクトシダーゼ製剤(ミルラクト等)がラクターゼ活性を補助するが、先天性乳糖不耐症では酵素活性が不十分で効果が低い、という実務上の注意も記載されている。
一方、二次性乳糖不耐症が疑われる場面では「一時的な乳糖負荷軽減」で回復の足場を作る、という使い方が現実的になりやすい。小児慢性特定疾病情報センターの診断の手引きでも、診断要素として乳糖除去で便性が正常化することが位置づけられており、除去が治療と評価を兼ねる構造が示唆される。現場での説明は、「母乳=悪」ではなく、「今は腸粘膜が弱り、乳糖が処理しきれず下痢が長引くことがあるため、期間を区切って負荷を調整する」という言い方が誤解を減らす。
ここで“意外と盲点”になりやすいのが、ミルク変更・酵素補助をしても、脱水評価が追いついていないケースだ。乳糖不耐症の議論は便に引っ張られやすいが、乳児にとっては尿量、哺乳量、活気、体重推移の方が優先順位が高い。下痢が続くほど、皮膚トラブル(おむつかぶれ)や授乳リズムの乱れも起こるため、ケアの要点も併記すると現場記事としての完成度が上がる。
- 優先順位:脱水・栄養評価(尿量、哺乳、体重)→乳糖負荷調整
- 無乳糖ミルクは「診断補助」と「治療」の両面で有用になり得る
- 先天性が疑わしい場合は長期管理(乳糖・乳製品の厳格管理)を視野に
- おむつかぶれ対策:便回数が多い時は皮膚保護を強化
乳糖不耐症 症状 赤ちゃんの独自視点:先天性の頻度と遺伝子
検索上位の一般向け記事では「乳糖不耐症=よくある」「ミルクを変えればOK」と単純化されがちだが、医療従事者向けに一段深い視点として“先天性の稀少性と遺伝学”を押さえておくと、重症例の見落としを減らせる。難治性下痢症の解説では、先天性乳糖不耐症は稀で、最も高頻度とされるフィンランドでも60,000出生に1人とされる、と記載されている。また、病態としてラクターゼの構造遺伝子であるLCT遺伝子変異が原因となることが述べられている。
この情報が臨床にもたらす意味は、「多くは二次性」だとしても、“出生直後からの激烈な水様下痢”というシグナルを軽視しない、という一点に集約される。さらに同解説では、ラクターゼ活性は加齢とともにさらに低下し、少量のラクトースで著しい水様下痢と腹鳴、腹部膨満を呈するようになる、とされている。つまり「月齢が進むと自然に良くなる」ではなく、「先天性ではむしろ負荷耐性が厳しくなる」方向性もあり得るため、長期の栄養設計や家族指導(食品表示、乳製品回避、代替栄養)へ早期に舵を切る判断が重要になる。
そして、鑑別の“落とし穴”として、同解説内で乳児期の慢性非感染性下痢の原因として、乳糖不耐症と食物アレルギー(乳、大豆など)の鑑別が必要である、と明記されている点は臨床的に価値が高い。無乳糖ミルクにしても改善が乏しい場合、単に「乳糖じゃなかった」で終わらせず、アレルギー、他の二糖類分解酵素欠損、吸収不良、感染の遷延など、次の分岐へ進む判断材料にできる。
- 先天性乳糖不耐症は稀(ただし重症で見逃しが致命的)
- LCT遺伝子変異が原因となり得る
- 慢性下痢では食物アレルギー等との鑑別が重要
先天性乳糖不耐症の病態・診断・治療(便pH<5.5、呼気H2など)を詳述:日本小児栄養消化器肝臓学会:小児難治性下痢症診断アルゴリズムとその解説
診断の手引きとして主要症状・検査所見(便pH<5.5、便中還元糖など)を整理:小児慢性特定疾病情報センター:乳糖不耐症 診断の手引き

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