プレガバリンとリリカは同じ薬なのか
プレガバリンとリリカの基本的な違いは先発品と後発品
医療現場で頻繁に処方されるプレガバリンとリリカですが、これらの関係性を正確に理解することは、患者さんへの説明責任を果たす上で非常に重要です 。結論から言うと、リリカが「先発医薬品」であり、プレガバリンはリリカの「後発医薬品(ジェネリック医薬品)」です 。
先発医薬品とは、最初に開発・承認された薬のことで、開発には莫大な費用と時間がかかります 。そのため、特許期間中は開発した製薬会社が独占的に製造・販売する権利を持ちます 。一方、後発医薬品は、先発医薬品の特許が切れた後に、他の製薬会社が製造・販売する医薬品です 。
後発医薬品は、先発医薬品と「治療学的に同等」であることが厳格な試験によって証明されています 。具体的には、以下の点が同じである必要があります。
- 有効成分の種類と量
- 用法・用量
- 効能・効果
つまり、プレガバリンとリリカは、有効成分である「プレガバリン」を同量含んでおり、原則として同じ効果が期待できる薬と言えます 。しかし、全く同じというわけではありません。後発医薬品は、薬の味や色、形、そして有効成分以外の「添加物」を自由に変更することが認められています 。この添加物の違いが、後述する副作用の微妙な差異や、患者さんの飲みやすさに影響を与える可能性があるのです。
ジェネリック医薬品であるプレガバリンは、開発コストが抑えられているため、先発医薬品のリリカよりも薬価が安く設定されています 。これは、患者さんの経済的負担を軽減するだけでなく、国の医療費削減にも貢献するという大きなメリットがあります。
プレガバリンとリリカの効果と適応症に違いはあるのか
プレガバリンとリリカの有効成分は同一であるため、その効果と適応症に本質的な違いはありません 。「ビリビリ」「ジンジン」と表現されるような神経の痛み、すなわち「神経障害性疼痛」や「線維筋痛症に伴う疼痛」に対して処方されます 。
プレガバリンの作用機序は、過剰に興奮した神経系を鎮めることにあります 。痛みの信号伝達に関わるカルシウムイオンチャネルの機能的なサブユニットである「α2δ(アルファ2デルタ)サブユニット」に結合します 。これにより、神経終末からの興奮性神経伝達物質(グルタミン酸など)の放出が抑制され、鎮痛作用を発揮すると考えられています 。この作用機序は、プレガバリンが単なる痛み止めではなく、神経の過敏な状態そのものを改善する薬であることを示しています。
プレガバリンとリリカの添付文書を確認しても、適応症に違いは見られません 。どちらも以下の疾患・症状に対して有効です。
臨床試験においても、プレガバリンはプラセボと比較して有意な鎮痛効果を示すことが数多く報告されています 。例えば、帯状疱疹後神経痛患者を対象とした国内の臨床試験では、プレガバリン投与群はプラセボ群と比較して、疼痛スコアを有意に改善させました 。
医療従事者としては、患者さんに対して「名前は違いますが、中身の成分は同じで、同じ痛みに効くお薬ですよ」と説明することで、ジェネリック医薬品への変更に対する不安を和らげることができます。ただし、後述するノセボ効果のように、心理的な要因が効果の実感に影響を与える可能性も念頭に置く必要があります 。
参考:プレガバリンの有効性に関する臨床研究論文
Pregabalin in acute and chronic pain (Anesth Essays Res. 2011)
プレガバリンとリリカで比較する副作用と重大な注意点
プレガバリンとリリカは有効成分が同じであるため、副作用の種類や頻度も原則として同等です 。最も頻繁に報告される副作用は、めまい、傾眠(眠気)、浮腫(むくみ)、体重増加です 。これらの副作用は、中枢神経系への作用に起因するもので、特に投与初期や増量時に現れやすい傾向があります 。
以下の表は、プレガバリン(リリカ)の主な副作用とその注意点をまとめたものです。
| 主な副作用 | 割合の目安 | 特に注意すべき点 |
|---|---|---|
| 傾眠(眠気) | 約20~45% | ⚠️ 自動車の運転など危険を伴う機械の操作は絶対に行わないでください。日常生活にも支障が出る場合は医師・薬剤師に相談が必要です。 |
| 浮動性めまい | 約20~38% | ⚠️ 転倒のリスクが高まります。特に高齢者は骨折につながる可能性があるため、立ち上がりや歩行時に注意が必要です。 |
| 体重増加 | 約5~19% | 食事内容や運動習慣の見直しを促すことが重要です。原因不明の体重増加が続く場合は、心不全などの初期症状の可能性も考慮します。 |
| 浮腫(むくみ) | 約5~12% | 心不全や腎不全の徴候である可能性もあります。特に息切れや体重増加を伴う場合は、速やかに受診が必要です。 |
これらの一般的な副作用に加えて、まれではあるものの重大な副作用にも注意が必要です 。
- 意識消失: めまいや傾眠から進行し、意識を失うことがあります 。
- 心不全、肺水腫: 全身のむくみ、急激な体重増加、息切れなどの症状が現れた場合は、直ちに投与を中止し、医師に連絡する必要があります 。
- 腎不全: 尿量の減少、むくみ、倦怠感などが初期症状として現れることがあります 。
- 横紋筋融解症: 筋肉痛、脱力感、赤褐色の尿などの症状が見られた場合は、すぐに受診が必要です 。
特に重要な注意点として、自己判断での急な中止は絶対に避けるべきです 。長期間服用していた薬を突然やめると、不眠、頭痛、吐き気、下痢、不安などの離脱症状が現れることがあります 。減薬や中止を希望する場合は、必ず医師の指示のもとで徐々に量を減らしていく必要があります。
参考:医薬品の添付文書情報(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 PMDA)
添付文書の検索が可能です。
プレガバリンとリリカの薬価と剤形(OD錠)の違い
患者さんにとって、治療の継続性に関わる重要な要素が「薬価」です 。先述の通り、プレガバリンはリリカのジェネリック医薬品であるため、薬価が大幅に安く設定されています 。
2024年時点での薬価を比較してみましょう(薬価は改定されるため、最新の情報をご確認ください)。
| 剤形・規格 | リリカ(先発品)の薬価 | プレガバリン(後発品)の薬価 |
|---|---|---|
| 25mg(カプセル/OD錠) | 約31.8円 | 約11.4円 |
| 75mg(カプセル/OD錠) | 約58.1円 | 約21.0円 |
| 150mg(カプセル/OD錠) | 約83.8円 | 約25.3円 |
※薬価は参考値です。3割負担の場合、窓口での支払額はこの約3分の1になります。
このように、規格が大きくなるほど価格差も広がる傾向にあります 。慢性的な痛みで長期にわたって服用が必要な患者さんにとって、この薬価の違いは経済的負担を大きく左右します 。
もう一つの重要な違いが「剤形」のバリエーションです。リリカにはカプセル剤とOD錠(口腔内崩壊錠)があります 。プレガバリンも同様に、多くの製薬会社からカプセル剤とOD錠が発売されています 。
OD錠のメリットと注意点
- メリット 💡: OD錠は、唾液で速やかに溶けるため、水なしでも服用できます 。これは、嚥下機能が低下した高齢者や、水分摂取に制限がある患者さんにとって大きな利点となります。
- 注意点 💧: OD錠は湿気に弱いという性質があります。そのため、服用直前にPTPシートから取り出す必要があります。また、製薬会社によって味や溶けやすさが異なるため、患者さんの好みに合わない場合もあります 。中には甘い味付けがされているものもあり、これがかえって飲みにくいと感じる患者さんもいるかもしれません 。
医療従事者は、患者さんの嚥下能力、生活スタイル、そして味の好みなども考慮して、最適な剤形を選択する手助けをすることが望まれます。
プレガバリンへの変更で注意すべきこと【独自視点】
先発品のリリカから後発品のプレガバリンへ切り替える際、医療従事者は「有効成分は同じなので効果も同じです」と説明することが一般的です 。しかし、臨床現場では、患者さんから「ジェネリックに変えたら効き目が弱くなった気がする」「前と違う副作用が出た」といった声を聞くことがあります 。これは単なる気のせいなのでしょうか。
この現象を説明する一つのキーワードが「ノセボ効果(Nocebo effect)」です 。これは、偽薬でも効果が現れる「プラセボ効果」とは逆に、「薬が効かないかもしれない」「副作用が怖い」といったネガティブな思い込みが、実際に効果を減弱させたり、予期せぬ有害事象を引き起こしたりする現象を指します 。
患者さんがジェネリック医薬品に対して「安かろう悪かろう」という先入観を持っている場合、プレガバリンへの変更がノセボ効果を誘発する可能性があります 。特に、価格の安さが「効果が低いからだ」という誤った認識につながることがあります 。
この問題を回避するためには、丁寧な説明と信頼関係の構築が不可欠です。
- 十分な情報提供: なぜ薬価が安いのか(開発費がかからないため)、国が推奨している制度であること、厳格な品質試験をクリアしていることなどを具体的に説明します 。
- 患者の不安に寄り添う: 「効かなくなったと感じたら、いつでも元のお薬に戻せますよ」と伝えることで、患者さんの心理的負担を軽減できます 。
- 見た目の変化への配慮: 薬の色や形が変わることは、患者さんにとって想像以上のストレスになることがあります。特に高齢者では、服薬過誤の原因にもなりかねません。変更前後の薬剤を実際に見せながら説明するなどの工夫が有効です。
また、見過ごされがちですが「添加物」の違いも無視できません。例えば、OD錠の味付けに使われる甘味料や香料が患者さんの好みに合わなかったり、ごくまれにアレルギー反応の原因となったりする可能性はゼロではありません 。
さらに、治療効果が思うように得られなくなるタイミングと、ジェネリックへの切り替え時期が偶然重なることもあります 。疾患の自然経過や、薬剤への耐性獲得などが真の原因であるにもかかわらず、「ジェネリックに変えたせいだ」と誤って認識されてしまうケースです 。
プレガバリンへの切り替えは、単なる薬剤の変更ではなく、患者さんの心理状態やコンプライアンスにも影響を与える医療行為です。我々医療従事者は、生物学的同等性という科学的根拠だけでなく、患者さん一人ひとりの背景にある心理的・社会的要因にも目を向け、きめ細やかなフォローアップを実践していく必要があります。
参考:ジェネリック医薬品に関する厚生労働省の資料
後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進について
