ブスコパンが胃痛に効かないときの原因と対処法
ブスコパンが効かない胃痛の主な原因と見分け方
ブスコパンを服用しても胃痛が改善しない場合、その痛みはブスコパンの作用が適さない種類の胃痛である可能性が考えられます 。ブスコパンは、「抗コリン薬」に分類され、主に胃腸の異常な緊張や痙攣(けいれん)を和らげることで効果を発揮する薬です 。そのため、「キリキリ」「キューッ」と差し込むような痙攣性の痛みには有効ですが、他の原因による胃痛には効果が期待できないことがあります 。「ブスコパンが効かない」と感じる胃痛の主な原因には、以下のようなものが挙げられます。
- 胃酸過多による痛み: 胃酸が出過ぎることで胃の粘膜が刺激され、ズキズキ、シクシクとした痛みが生じます 。特に空腹時に痛みが強くなる傾向があります。これは逆流性食道炎などでも見られる症状です 。
- 胃粘膜の炎症(胃炎)による痛み: 暴飲暴食、ストレス、ピロリ菌感染などによって胃の粘膜が荒れて炎症を起こし、重苦しい痛みや持続的な痛みを感じます 。
- 消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍): 胃酸によって胃や十二指腸の粘膜が深く傷ついた状態で、食事中や食後に強くなるみぞおちの痛みが特徴です 。
- 機能性ディスペプシア(FD): 胃カメラ検査などで明らかな異常が見つからないにもかかわらず、胃もたれや胃痛が慢性的に続く状態です 。ストレスや自律神経の乱れが関与していると考えられています 。
これらの胃痛を見分けるには、痛みの種類やタイミングを観察することが重要です。痙攣性の差し込むような痛みであればブスコパンが適している可能性がありますが、持続する鈍い痛みや、食事との関連性が強い痛みの場合は、他の原因を疑う必要があります 。
参考:機能性ディスペプシアの症状や原因について詳しく解説されています。
機能性ディスペプシア(ストレスで腹痛・胃痛・胸やけ) – 大島駅前内科・外科クリニック
ブスコパンの作用機序と効果的な胃痛の種類
ブスコパンの有効成分は「ブチルスコポラミン臭化物」です 。この成分は、消化管の運動を活発にするアセチルコリンという神経伝達物質の働きをブロックする「抗コリン作用」を持っています 。ストレスや何らかの刺激によってアセチルコリンが過剰に分泌されると、胃や腸の筋肉(平滑筋)が異常に緊張・収縮し、痙攣性の痛みが発生します 。ブスコパンは、このアセチルコリンの働きを抑えることで、筋肉の異常な緊張を和らげ、痛みを鎮めるのです 。
この作用機序から、ブスコパンが効果を発揮するのは、主に以下のような疾患や症状における痙攣性の痛みです 。
一方で、胃酸の分泌そのものを抑えたり、胃粘膜の炎症を直接修復したりする作用はないため、胃酸過多や胃炎による持続的な痛みに対しては、根本的な解決には至りません 。つまり、ブスコパンは「痛みの原因」ではなく、「痛みを引き起こす痙攣」を抑える対症療法薬であると理解することが重要です。
なお、ブスコパンには口の渇き、便秘、目のかすみといった副作用が現れることがあります 。また、緑内障や前立腺肥大症の患者さんは症状を悪化させる可能性があるため、使用には注意が必要です 。
ブスコパンが効かない場合に試せる市販薬と選び方の違い
ブスコパンが効かない胃痛の場合、原因に応じた別の市販薬を試すことが有効です 。市販の胃薬は、作用の仕組みによっていくつかのタイプに分類されます。症状に合わせて適切な薬を選ぶことが、つらい胃痛を和らげる鍵となります 。
以下に、主な市販薬の種類と特徴、選び方のポイントを表にまとめました。
| 薬の種類 | 作用 | こんな症状に | 代表的な成分・商品名例 |
|---|---|---|---|
| H2ブロッカー | 胃酸の分泌を強力に抑える | 空腹時の胸やけ、ズキズキする胃痛 | ファモチジン(ガスター10など) |
| プロトンポンプ阻害薬(PPI) | 胃酸の分泌をさらに強力に、かつ持続的に抑える | 繰り返す胸やけ、逆流感 | オメプラゾール(オメプラールSなど) |
| 制酸薬 | 出過ぎた胃酸を中和する | 一時的な胸やけ、胃の不快感 | 炭酸水素ナトリウム、水酸化マグネシウム(サクロンなど) |
| 胃粘膜保護・修復薬 | 胃の粘膜を保護し、荒れた部分の修復を促す | 胃もたれ、食べ過ぎ、飲み過ぎによる胃の不快感 | スクラルファート(スクラート胃腸薬)、テプレノン(セルベール) |
| 漢方薬 | 胃腸の働きを整えたり、ストレスを和らげたりする | ストレス性の胃痛、冷えによる胃の不調 | 安中散(あんちゅうさん)、四逆散(しぎゃくさん) |
自分の症状が「胃酸の出過ぎ」によるものか、「胃粘膜の荒れ」によるものかを見極めることが重要です。例えば、空腹時や夜間に胸やけや胃痛を感じる場合は胃酸過多の可能性が高いため、H2ブロッカーやPPIが適していると考えられます 。一方で、食べ過ぎや飲み過ぎで胃が重い、もたれるといった症状には、胃粘膜保護薬が効果的です。ストレスを感じると胃が痛くなるという方は、漢方薬を試してみるのも良いでしょう 。
参考:症状別におすすめの市販薬が紹介されています。
症状別に見る医師おすすめの市販の胃薬について徹底解説 – たまプラーザ南口胃腸内科クリニック
ブスコパンで改善しない胃痛とストレスや消化管知覚過敏の関係
市販薬を試しても胃痛が改善しない場合、特に検査で異常が見つからないケースでは、「機能性ディスペプシア(FD)」が背景にある可能性を考える必要があります 。機能性ディスペプシアは、ストレスや自律神経の乱れが深く関与している疾患で、胃の運動機能の低下や、胃が刺激に対して過敏になる「消化管知覚過敏」が主な原因とされています 。
消化管知覚過敏とは、健康な人なら感じないような、ごくわずかな胃の動きや刺激を「痛み」として感じてしまう状態です 。これは、脳と腸が互いに影響を及ぼし合う「脳腸相関」というメカニズムの不調が原因の一つと考えられています 。強いストレスや不安は自律神経のバランスを乱し、脳腸相関を介して消化管の知覚過敏を引き起こすことがあるのです 。
ブスコパンは胃の痙攣を抑えるため、知覚過敏によって生じる不快な症状を一時的に和らげることがあるかもしれません。しかし、根本的な原因であるストレスや自律神経の乱れ、知覚過敏そのものを改善するわけではないため、効果が限定的であったり、症状が再発したりすることが多いのです 。このような状態の治療には、抗不安薬や抗うつ薬が有効な場合があることからも、ストレスとの関連が深いことが伺えます。
意外なことに、この消化管の知覚過敏に対して、胃食道逆流症(GERD)の治療に用いられることがある「バクロフェン」という筋弛緩薬の効果を示唆する研究もあります 。これは、消化管の過剰な反応を抑制する可能性を示しており、従来の胃薬とは異なるアプローチの重要性を示唆しています。根本的な改善を目指すには、薬物療法だけでなく、ストレスマネジメントや生活習慣の見直しが不可欠です。
論文:慢性的な腹痛に対する鎮痙薬の選択肢についての分析が記載されています。
Antispasmodics for Chronic Abdominal Pain: Analysis of North American Treatment Options – PMC
ブスコパンが効かない場合に病院を受診すべき危険な胃痛のサイン
ほとんどの胃痛は市販薬や生活習慣の改善で対応可能ですが、中には重大な病気が隠れている危険な胃痛も存在します 。市販のブスコパンや他の胃薬を試しても症状が改善しない、あるいは悪化する場合は、自己判断を続けずに速やかに医療機関を受診してください 。特に、以下のようなサインが見られる場合は、緊急性が高い可能性があります 。
- 🚨 冷や汗が出るほどの激しい痛み: 胃穿孔(胃に穴が開く)や急性膵炎などの可能性があります。
- 🚨 じっとしていられない、歩くと響くような痛み: 腹膜炎など、炎症が腹部全体に広がっているサインかもしれません。
- 🚨 吐血や黒色便(タール便): 胃や十二指腸からの出血(消化管出血)を示唆します。潰瘍やがんが原因のことがあります。
- 🚨 原因不明の体重減少: 食欲不振を伴う体重減少は、慢性的な炎症や悪性腫瘍(がん)の可能性があります 。
- 🚨 高熱や強い嘔吐を伴う: 感染性胃腸炎や胆嚢炎、虫垂炎なども考えられます。
- 🚨 背中の痛みも伴う: 膵炎や、時には心筋梗塞など、胃以外の臓器の病気でもみぞおちの痛みとして感じることがあります。
これらの症状は、命に関わる病気の兆候である可能性も否定できません。ブスコパンが効かないという事実は、単に「薬が合わなかった」というだけでなく、「ブスコパンが適応とならない、より深刻な病態」が隠れているサインかもしれないのです 。特に、これまで経験したことのないような強い痛みや、上記のような随伴症状がある場合は、ためらわずに消化器内科などの専門医を受診し、適切な診断と治療を受けることが最も重要です。
参考:危険な胃痛の症状について解説されています。
胃痛の原因と検査|嘔吐(吐き気)を伴う胃痛は要注意 – 内山内科クリニック

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