双極性障害の休職はどれくらい?期間の目安と復職までの具体的な過ごし方

双極性障害の休職はどれくらい必要か

双極性障害による休職と復職への道のり
📅

休職期間の目安

初回は1〜3ヶ月が一般的。症状により延長も。焦らず治療に専念することが大切です。

📝

休職中の過ごし方

十分な休養と規則正しい生活が基本。服薬を継続し、心身の安定を図ります。

💼

復職への準備

リワーク支援などを活用し、再発防止のスキルを習得。職場との連携も重要です。

双極性障害の休職期間の目安と診断書の役割

 

双極性障害による休職期間は、個々の症状や治療の経過によって大きく異なりますが、一般的には **1ヶ月から3ヶ月程度** が最初の目安とされています 。症状が重い場合や、治療効果がなかなか現れない場合には、6ヶ月以上に及ぶことも少なくありません 。重要なのは、焦らずに十分な休養を取り、治療に専念することです 。休職期間は、単に仕事を休むだけでなく、心身のエネルギーを回復させ、病状を安定させるための重要な時間です 。
休職を申請する際に不可欠なのが、医師が発行する 診断書 です 。診断書には、病名(双極性障害)、現在の症状、そして休職が必要な理由と期間が具体的に記載されます 。この書類を職場に提出することで、正式な休職手続きが開始されます 。診断書は、本人の状態を客観的に証明し、職場側の理解と協力を得るための重要な役割を担います 。診断書の有効期限は、通常2週間から数ヶ月で設定され、症状に応じて延長の手続きが必要になる場合があります 。

参考)双極性障害による休職方法|診断書の必要性や手続きの進め方を解…


以下に、休職期間の目安を症状の段階別に示します。

  • 急性期(症状が最も不安定な時期):
  • 回復期(症状が落ち着き始める時期):
  • 復職準備期(復職を視野に入れる時期):

    休職期間はあくまで目安であり、最終的には主治医と相談の上、個々のペースで復帰を目指すことが何よりも大切です 。

    参考)【即日休職する方法】診断書発行から会社への伝え方、お金の話ま…


    休職中の経済的な支援については、傷病手当金の制度があります。詳細は以下のリンクが参考になります。
    傷病手当金について | よくあるご質問 | 全国健康保険協会

    双極性障害の休職中の症状安定に向けた過ごし方と治療

    双極性障害の休職期間は、症状の波をコントロールし、心身を安定させるための極めて重要な時間です 。治療の根幹をなすのは **薬物療法** であり、医師の指示通りに服薬を継続することが再発防止の鍵となります 。気分安定薬非定型抗精神病薬などが用いられ、これによって躁状態うつ状態の振れ幅を小さくしていきます。自己判断で薬を中断することは、症状の再燃を引き起こす最も危険な行為の一つであり、絶対に避けなければなりません 。
    薬物療法と並行して、 精神療法(心理社会的アプローチ) も重要です 。特に、認知行動療法(CBT)は、自身の思考パターンや行動の癖に気づき、ストレスへの対処法を身につける上で有効とされています 。また、疾患についての正しい知識を学ぶ「心理教育」も、自己管理能力を高め、再発のサインを早期に察知するために役立ちます 。

    参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11888578/


    休職中の過ごし方には、いくつかの段階があります。

    1. 休養期(初期) 🛌:
    2. リハビリ期(中期) 🚶‍♀️:
      • 症状が少し落ち着いてきたら、生活リズムを整えることを意識します 。

        参考)双極性障害のうつ状態での過ごし方を解説|注意点や各状態の期間…

      • 毎日決まった時間に起床・就寝し、日中は散歩などで軽く体を動かし、太陽の光を浴びることが推奨されます 。​
      • 自分の体調の変化を記録する「気分グラフ」などをつけると、気分の波を客観的に把握しやすくなります 。​
    3. 復職準備期(後期) 🏢:
      • 図書館で過ごしたり、短時間の外出を試みたりと、少しずつ活動範囲を広げていきます 。​
      • 復職後の生活に近いリズムで過ごし、体力をつけていく時期です 。​
      • この段階で、後述するリワークプログラムの利用を検討し始めます 。​

    国際的な研究でも、薬物療法と心理社会的治療を組み合わせた統合的ケアアプローチが、双極性障害を持つ人々の社会的機能の回復に重要であると指摘されています 。休職は治療の一環であり、この期間を有効に使うことが、その後の安定した社会生活につながります 。

    参考)https://www.cambridge.org/core/services/aop-cambridge-core/content/view/46737FF64052D0857951E7C6EFD806DD/S092493382301492Xa.pdf/div-class-title-fitness-to-work-decision-for-bipolar-disorder-patients-about-4-cases-div.pdf

    双極性障害からの復職準備とリワーク支援の活用法

    症状が安定し、体力も回復してきたら、いよいよ復職に向けた準備を開始します 。しかし、焦りは禁物です。休職前と同じようにすぐに働けると考えるのではなく、段階的に負荷を上げていく「ならし運転」の期間と捉えることが成功の鍵です 。この段階で非常に有効なのが、 **リワーク支援(復職支援プログラム)** の活用です 。
    リワーク支援は、精神疾患により休職中の方々が、スムーズに職場復帰し、再休職することなく働き続けることを目的としたリハビリテーションプログラムです 。医療機関、地域障害者職業センター、就労移行支援事業所などが提供しています 。

    参考)Redirecting…


    リワーク支援では、主に以下のようなプログラムが行われます。

    • オフィスワーク 💻: パソコン作業や書類作成など、実際の業務に近い課題に取り組み、集中力や持続力を回復させます 。​
    • グループワーク 👥: 他の利用者と共同で作業を行うことで、コミュニケーション能力や対人関係のスキルを再確認します 。​
    • 心理教育プログラム 🧠: 認知行動療法などを通じて、ストレスへの対処法(コーピングスキル)を学び、自己理解を深めます 。

      参考)リワーク|うつ病などの方の復職支援|医療法人昭友会

    • 体力回復プログラム 💪: 軽い運動やストレッチなどを通じて、通勤や長時間のデスクワークに耐えうる体力をつけます 。​

    リワークを利用するメリットは数多くあります。

    メリット 具体的な内容
    生活リズムの確立 決まった時間に施設に通うことで、自然と規則正しい生活が身につく ​。
    客観的な評価 職員からのフィードバックを通じて、自分の状態を客観的に把握できる。
    再発防止スキルの習得 ストレスマネジメントやアサーション(適切な自己主張)などを学び、再発リスクを低減できる ​。
    仲間との交流 同じような悩みを持つ仲間と交流することで、孤立感が和らぎ、安心感が得られる ​。


    ある研究では、リワークプログラムを利用することで、復職後の定着率が3.5倍向上したというデータもあります 。主治医や会社の産業医と相談の上、「復職可能」という判断が出たら、リワーク施設の利用を検討してみましょう 。復職はゴールではなく、安定して働き続けるための新たなスタートです。そのための準備として、リワーク支援は非常に強力なサポートとなります 。

    参考)参考ツール紹介


    リワーク支援については、大阪市など各自治体でも情報提供が行われています。
    こころの病気のため休職中の方の復職を支援します(リワーク支援)

    双極性障害を持つ医療従事者の休職と復職における特有の課題

    双極性障害は誰にでも起こりうる疾患ですが、特に医療従事者が罹患した場合、その休職と復職には特有の難しさが伴います 。責任感が強く、他者の健康を守るという職業柄、自身の不調を認め、助けを求めることに抵抗を感じるケースが少なくありません 。
    医療現場特有の課題としては、以下のような点が挙げられます。

    • 不規則な勤務体系 🌙: 夜勤やオンコールなど、不規則な勤務は生活リズムを乱しやすく、双極性障害の症状を増悪させる大きな要因となります 。特に躁状態を誘発するリスクが指摘されています。

      参考)双極性障害の休職から復職まで 過ごし方のポイント

    • 高いストレス環境 😥: 人の命に関わるプレッシャー、緊急時の迅速な判断、複雑な人間関係など、医療現場は常に高いストレスに満ちています 。これらのストレスは、再発の引き金になりかねません。

      参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10373327/

    • スティグマ(偏見)への恐怖 🤫: 医療従事者自身が、精神疾患に対する知識があるからこそ、「自分が罹患したことを同僚に知られたくない」「患者からの信頼を失うのではないか」といったスティグマへの強い恐怖を抱きがちです 。これにより、治療の開始が遅れたり、休職をためらったりする傾向があります。​
    • 完璧主義の傾向 ✨: 医療従事者には完璧主義の傾向を持つ人が多く、自身のパフォーマンスが少しでも落ちることを許容できない場合があります。復職時に「以前と同じように完璧にできなければ」というプレッシャーが、過剰な負担となることがあります。

    実際に、双極性障害と診断された医療専門職の事例研究では、職場復帰の可否を判断する際に、これらの職業特有の要因を慎重に評価する必要性が示されています 。復職にあたっては、単に症状が安定しているだけでなく、不規則勤務の制限や、ストレスの多い部署からの異動、業務量の調整といった、具体的な職場環境の調整が不可欠です 。

    Occupational Health Nurse(産業看護師)の役割に関する論文では、双極性障害を持つ労働者が職場で活躍するためには、適切な治療、睡眠衛生、ストレス回避に加え、修正された休憩時間や柔軟な勤務スケジュールといった「合理的配慮」が重要であると述べられています “Bipolar Disorder in the Working Population: The Occupational Health Nurse’s Role.” 。医療従事者の復職支援においては、こうした専門職としてのプライドと現実的な負担軽減の両面に配慮した、きめ細やかなアプローチが求められます。

    双極性障害の再発防止に向けた職場との連携と合理的配慮

    双極性障害からの復職を成功させ、安定した就労を継続するためには、本人の努力だけでなく、 **職場との円滑な連携** が欠かせません 。再発率が比較的高い疾患であるため、いかに再発を防止するかという視点に立った環境調整が重要になります 。その核となるのが、「合理的配慮」の考え方です。
    合理的配慮とは、障害のある人がない人と平等に社会参加できるよう、個々の状況に応じて提供される配慮や調整のことです 。2016年に施行された障害者差別解消法により、事業者には合理的配慮の提供が義務付けられています。双極性障害もこの法律の対象となります。

    復職時に職場に依頼すべき合理的配慮の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。

    配慮の種類 具体的な内容例
    勤務時間に関する配慮 ・時短勤務から開始し、段階的に通常勤務に戻す・残業や休日出勤の制限・夜勤や交代制勤務の免除
    業務内容に関する配慮 ・プレッシャーの少ない業務への一時的な配置転換・業務量の調整、複数担当制の導入・短期間での異動を避ける
    コミュニケーションに関する配慮 ・定期的な上司との面談(1on1)の実施・指示を明確かつ具体的(口頭だけでなくメールなどでも)にしてもらう・産業医や人事担当者との連携体制の構築
    通院に関する配慮 ・平日の通院のための休暇取得への理解


    これらの配慮を求める際は、まず主治医に相談し、「職場復帰支援に関する情報提供依頼書」などの書類を作成してもらうのが有効です 。そこに、必要な配慮事項を具体的に記載してもらい、産業医や上司、人事担当者と面談の上で、具体的な支援内容を決定していきます。

    重要なのは、一方的に配慮を要求するのではなく、 自分の状態や再発のサインを正直に伝え、協力して働きやすい環境を作っていく という姿勢です 。例えば、「気分の落ち込みが続くときは、短期集中の作業が難しくなる傾向があります」「躁的になり、多弁になっているときは、自分でも気づけないことがあるので指摘してほしい」など、具体的な情報を共有することが、無用な誤解を防ぎ、適切なサポートにつながります。

    近年の研究では、精神障害を持つ労働者の病気休暇の期間に、心理社会的および組織的な職場要因が関連していることが指摘されています “Psychosocial and organisational work factors as predictors of sickness absence among professionally active adults with common mental disorders” 。良好な職場環境は、再発防止における最も有効な”薬”の一つと言えるでしょう。

    以下の厚生労働省のサイトでは、メンタルヘルス不調からの職場復帰支援に関するマニュアルが公開されており、事業者側の対応の参考になります。
    心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き

    双極症のための社会リズム療法ワークブック