インフルエンザでロキソニンが処方された場合の注意点
インフルエンザでロキソニンが原則禁忌とされる理由と脳症リスク
インフルエンザ治療において、ロキソプロフェンナトリウム水和物(商品名:ロキソニン®など)を含む非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用が原則として禁忌、あるいは慎重投与とされる背景には、重篤な合併症である「インフルエンザ脳症」の発症および重症化との関連が指摘されているためです 。
特に15歳未満の小児においては、ロキソニンの使用がインフルエンザ脳症のリスクを著しく高める可能性があるとされています 。さらに、肝臓や脳に異常をきたす「ライ症候群」という重い病態を引き起こす危険性も報告されており、国の通知によっても小児のインフルエンザに伴う発熱への使用は原則禁忌とされています 。
インフルエンザ脳症の正確な発症メカニズムは未だ完全には解明されていませんが、NSAIDsが免疫反応や血管内皮細胞の機能に影響を与えることで、病態を増悪させる可能性が研究で示唆されています 。ある研究では、NSAIDsの使用により炎症性サイトカインが増加することが報告されています 。実際に、解熱剤としてNSAIDsの使用が減少するにつれて、インフルエンザ脳症による死亡率が著しく低下したという疫学データも存在します 。
以下の表は、インフルエンザの際に特に注意が必要なNSAIDsをまとめたものです。
| 薬剤名(成分名) | 代表的な商品名 | インフルエンザにおけるリスク |
|---|---|---|
| ジクロフェナクナトリウム | ボルタレン® | インフルエンザ脳症との関連が強く疑われ、原則禁忌 |
| メフェナム酸 | ポンタール® | インフルエンザ脳症との関連性が指摘され、慎重投与 |
| ロキソプロフェンナトリウム | ロキソニン® | 添付文書で「慎重投与」。特に小児で脳症・ライ症候群のリスク |
これらの情報から、インフルエンザが疑われる患者、特に小児に対しては、安易にロキソニンなどのNSAIDsを処方・使用することのリスクを医療従事者は十分に認識しておく必要があります 。
参考リンク:インフルエンザ脳症の発症機序に関する研究については、以下のリンクで詳細な報告がなされています。
急性脳症における解熱剤の薬物動態に関する研究
インフルエンザでもロキソニンが処方される大人のケースと安全性
小児への投与が原則禁忌である一方、成人に対してはインフルエンザでもロキソニンが処方されるケースがあります 。これは、成人の場合、インフルエンザ脳症の発症率が極めて低く、ロキソニンとインフルエンザ脳症やライ症候群との明確な関連性が認められていないためです 。
ただし、成人であっても「安全である」と断言できるわけではなく、あくまで「慎重投与」という位置づけです 。ロキソニンの医薬品添付文書にも、「インフルエンザの患者」は慎重投与の対象として明記されており、その理由として「インフルエンザ脳炎・脳症が重症化したとの報告があるため」と記載されています 。
では、どのような場合に成人に処方されるのでしょうか。主なケースは以下の通りです。
- ✅ 38.5℃以上の高熱で、患者が非常につらいと訴える場合
- ✅ 高熱や関節痛、頭痛などの症状が強く、睡眠や水分補給が困難な場合
- ✅ 代替薬であるアセトアミノフェンで効果が不十分な場合
- ✅ 基礎疾患がなく、重症化のリスクが低いと医師が判断した場合
医師はこれらの状況を総合的に判断し、リスクとベネフィットを比較衡量した上で、必要最小限の処方を行います。ロキソニンには強力な解熱・鎮痛作用があるため、つらい症状を迅速に和らげる効果が期待できますが、同時に免疫反応を抑制してしまう可能性や、胃腸障害などの副作用も考慮しなければなりません 。
したがって、成人にロキソニンが処方された場合でも、漫然と使用するのではなく、症状が強い時に限定して服用する「頓服」としての使用が原則となります。服用中に異常を感じた場合や、5日以上高熱が続く場合、一度解熱した後に再び発熱した場合は、速やかに医療機関に再相談することが重要です 。
インフルエンザ治療で推奨されるアセトアミノフェンの役割と注意点
インフルエンザの際の解熱鎮痛薬として、現在最も安全性が高いとされ、第一選択薬として推奨されているのが「アセトアミノフェン」です 。
アセトアミノフェン(商品名:カロナール®、アンヒバ®など)は、ロキソニンなどのNSAIDsとは異なる作用機序を持つ解熱鎮痛薬です。NSAIDsがインフルエンザ脳症との関連性が指摘されているのに対し、アセトアミノフェンはそのような報告がなく、小児から高齢者まで比較的安全に使用できるとされています 。
アセトアミノフェンが推奨される主な理由は以下の通りです。
- 👍 安全性の高さ: インフルエンザ脳症のリスクを増加させるという報告がなく、小児に対しても安全に使用できることが確立されています 。
- 👍 穏やかな作用: 作用が比較的マイルドで、急激な体温低下を起こしにくく、身体への負担が少ないとされています 。
- 👍 副作用の少なさ: NSAIDsで問題となりやすい胃腸障害や腎機能への影響が少ないため、幅広い患者に使用しやすい特徴があります 。
ただし、アセトアミノフェンも医薬品であるため、使用には注意が必要です。最も注意すべき副作用は「肝機能障害」です。定められた用量・用法を守らずに過量摂取すると、重篤な肝障害を引き起こす可能性があります。特に、アルコールを日常的に摂取する人や、元々肝機能が低下している患者には慎重な投与が求められます。
インフルエンザ治療における解熱剤の基本的な考え方は、「熱を無理に下げる」ことではなく、「高熱による苦痛を和らげ、体力の消耗を防ぐ」ことです 。体温が38℃程度で、本人が比較的元気な場合は必ずしも解熱剤を使用する必要はありません 。水分補給を十分に行い、休息を取ることが基本となります。
参考リンク:日本小児科学会は、アセトアミノフェンの適正使用に関する情報を発信しています。
アセトアミノフェン製剤の在庫逼迫に伴う、成人患者への解熱鎮痛薬の供給についての協力依頼
インフルエンザにおけるロキソニンの副作用と市販薬の正しい使い方
インフルエンザの際に医師の判断でロキソニンを使用する場合や、インフルエンザと知らずに市販のロキソニンSなどを服用してしまうケースも考えられます。その際に注意すべき副作用と、市販薬の適切な使用法について理解しておくことが重要です。
ロキソニンの主な副作用は以下の通りです。
- 🤢 消化器症状: 胃部不快感、腹痛、吐き気、食欲不振など。重篤な副作用として消化性潰瘍や穿孔が起こることもあります 。
- किडनी 腎機能障害: 尿量の減少、むくみ、倦怠感など。長期使用や過量投与で急性腎障害を引き起こすリスクがあります。
- 💨 喘息発作(アスピリン喘息): 喘息の既往がある患者では、喘息発作を誘発することがあります。
- その他: 発疹、眠気、めまいなど。
インフルエンザの症状(高熱、関節痛など)と副作用の症状(倦怠感など)は区別がつきにくい場合があるため、服用後に普段と違う症状が現れた場合は注意が必要です。
次に、市販薬のロキソニン(ロキソニンSシリーズなど)を使用する際の注意点です。
- インフルエンザが疑われる場合は使用を避ける: 発熱、悪寒、関節痛などインフルエンザ様症状がある場合、自己判断で市販のロキソニンを服用するのは避けるべきです 。まずは医療機関を受診し、適切な診断を受けることが最優先です。
- 15歳未満は絶対に使用しない: 市販のロキソニンSシリーズの外箱には、「15歳未満の小児は使用しないでください」と明記されています。インフルエンザ脳症やライ症候群のリスクがあるため、絶対に守る必要があります。
- 他の解熱鎮痛薬との併用を避ける: 市販の総合感冒薬などにもアセトアミノフェンや他のNSAIDsが含まれていることがあります。成分が重複し、過剰摂取につながる恐れがあるため、併用は避けてください。
- 長期連用しない: 症状が改善しない場合は、何か他の原因が考えられます。市販薬を漫然と使い続けず、医療機関を受診してください。
医療従事者としては、患者から市販薬の使用について相談された際に、これらのリスクを明確に伝え、インフルエンザの可能性がある場合は受診を強く勧めることが求められます。
【独自視点】インフルエンザ流行期のアセトアミノフェン不足と薬局での代替調剤
インフルエンザ治療の第一選択薬であるアセトアミノフェンですが、近年、新型コロナウイルス感染症の流行なども相まって、特に冬季の需要期に供給が不安定になるという問題が顕在化しています 。製造企業の増産努力にもかかわらず、需要の急増に供給が追い付かず、医療現場や薬局では在庫の逼迫が深刻な課題となっています 。
この供給不足は、処方を行う医師だけでなく、処方箋を受け取る薬剤師にとっても大きな問題です。特に小児用のドライシロップや細粒といった剤形が不足しがちで、薬局では様々な工夫を凝らして対応にあたっています 。
薬局で行われている具体的な対応例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 📝 疑義照会による処方変更: アセトアミノフェンの在庫がない場合、処方医に連絡(疑義照会)し、在庫のある他の解熱鎮痛薬(ただしインフルエンザの病態を考慮し、NSAIDsは避ける)や、同じアセトアミノフェンでも異なる剤形(例:シロップから細粒へ)への変更を提案します。
- 💊 錠剤の粉砕による自家製剤: 5歳以上などで錠剤の服用が可能と判断される場合に、医師の許可を得て成人用の錠剤を粉砕し、賦形剤(乳糖など)を加えて散剤として調剤する方法です 。これは用量調整に細心の注意を払う必要があり、薬剤師の専門性が問われる対応です。
- ⚖️ 在庫のある剤形での用量調整: 例えば、カロナール細粒20%の在庫がなく、50%のものしかない場合、処方された用量に合わせてグラム数を精密に計算し直して調剤します。
このような状況は、患者への安定的な薬剤提供を困難にするだけでなく、医療機関と薬局間の連携をより一層重要にしています。医師は処方時に特定のメーカーや剤形にこだわらず、「アセトアミノフェンとして」の一般名処方を心がけることや、薬局の在庫状況を考慮することが求められます。また、薬剤師は代替調剤の技術や知識、そして医師への的確な情報提供能力が不可欠です 。
アセトアミノフェンの供給問題は、対症療法薬の安定確保という医薬品供給網の脆弱性を示しており、医療従事者は常に最新の供給状況を把握し、連携して対応策を講じる必要があります。
参考リンク:厚生労働省は解熱鎮痛薬の安定供給に関する情報を随時更新しています。
医療機関・薬局向けに解熱鎮痛薬の安定供給に関する相談窓口設置

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