アペール症候群の症状
アペール症候群の頭蓋顔面症状
アペール症候群の最も顕著な症状は、頭蓋骨縫合の早期癒合による頭蓋変形なんです。通常、新生児の頭蓋骨は7つの骨片が縫合部で連結されており、脳の成長に合わせて拡大していきますが、アペール症候群では冠状縫合がほぼ全例で両側性に癒合し、多くの症例で矢状縫合やラムダ縫合にも早期癒合が生じます。
参考)アペール症候群(指定難病182) href=”https://www.nanbyou.or.jp/entry/4679″ target=”_blank”>https://www.nanbyou.or.jp/entry/4679amp;#8211; 難病情報セ…
この頭蓋縫合早期癒合により、短頭蓋や頭囲拡大といった特徴的な頭蓋形態が形成されるんですね。さらに顔面骨の低形成も合併し、眼球突出、眼窩間距離開大(目と目の間が広い)、上顎骨低形成による受け口などの顔貌の特徴が現れます。
参考)アペール (Apert) 症候群 概要 – 小児慢性特定疾病…
眼科的症状としては、眼球突出のほかに斜視、眼瞼裂斜下、GRJ Apert症候群(アペール症候群)
アペール症候群の骨性合指症の特徴
アペール症候群を他の頭蓋縫合早期癒合症候群と鑑別する最も重要な症状が、全例に認められる骨性合指症(趾症)なんです。手の第2から第4指が骨レベルで癒合し、時には第1指や第5指にも合指が及ぶことがあります。その外観は「ミトン状の手」と呼ばれることもあり、第3-4指の爪が癒合して1つの爪となる合爪(synonychia)も特徴的です。
足趾についても合趾症が認められますが、一般的に手のほうに強く現れます。足趾の癒合パターンは、外側3本の趾、第2-5趾、全足趾といった様々なバリエーションがあり、足趾については合爪の報告はみられないという点も手との違いなんですね。
参考)合指症|日本形成外科学会
関節形成不全も重要な症状で、肩関節や肘関節の形成不全により可動域制限が生じることがあります。特に肩関節形成不全に起因する肩の可動制限は、上腕の前屈域や外転域が減少していくに従って進行していく傾向があり、日常生活の「頭上の」作業が困難になっていきます。
アペール症候群の呼吸器・耳鼻科症状
アペール症候群では複数部位の気道閉塞が生じる可能性があり、これが生命予後に大きく影響します。上気道閉塞、後鼻孔狭窄または閉塞、鼻腔内の気道狭窄、舌根レベルでの気道閉塞、喉頭気管奇形など、多レベルでの気道障害が特徴的なんです。
睡眠時無呼吸症候群を合併する症例も多く、いびき、喘鳴、無呼吸、呼吸窮迫といった症状が現れます。中顔面骨の低形成と上気道狭窄により、乳児期には哺乳障害が生じることもあり、数回吸啜した後に口呼吸を行うために乳首から口を放すといった特徴的な摂食パターンがみられます。
参考)「アペール症候群」の初期症状はご存知ですか? 早期発見のポイ…
耳鼻科的症状としては、外耳道狭窄または閉鎖、伝音性難聴が約80%の症例に認められます。難聴の原因は中耳疾患、耳小骨の異常、外耳道の狭窄または閉鎖であり、さらに半規管の異常が罹患者の70%にみられるという報告もあります。
アペール症候群の神経学的症状と発達
神経学的症状としては、水頭症と脳室拡大が重要です。罹患者の約60%に非進行性脳室拡大が、6-13%に水頭症がみられ、進行性の脳室拡大は水頭症の存在を示すものである可能性があるため、内視鏡下での第三脳室開口術や脳室腹腔シャントに向けた評価が必要になります。
頭蓋内圧亢進に伴う症状として、頭痛や嘔吐、吐き気などが起こることがあり、これらの症状が現れた場合には速やかな対応が必要なんです。小脳扁桃下垂(キアリ奇形)も合併することがありますが、アペール症候群では約2%と比較的稀とされています。
参考)アペール症候群(指定難病182) href=”https://www.nanbyou.or.jp/entry/4678″ target=”_blank”>https://www.nanbyou.or.jp/entry/4678amp;#8211; 難病情報セ…
精神運動発達については、患者さんの約50%に発達遅滞が認められますが、大多数のアペール症候群罹患者は知能について正常か軽度の知的障害を示します。ただし、一部には中等度から重度の知的障害を有する例も報告されているため、個別の発達評価と早期介入が重要です。
頸椎の異常も神経学的合併症のリスク要因となります。罹患者の68%に頸椎の癒合がみられ、そのうち最も多いのはC5-C6の癒合で、環軸関節亜脱臼も約7%に認められます。これらの異常は脊髄損傷のリスクとなるため、脊椎外科医との協議や予防策の策定が必要なんですね。
アペール症候群の多臓器症状と合併症
心血管系の合併症として、約10%の症例で心臓の構造異常を認めます。最も多いのは心室中隔欠損と大動脈騎乗ですが、複雑心異常を有する症例も報告されており、複雑心異常を有する子どもは早期に死亡するリスクが高いとされています。
消化器系の症状としては、口蓋裂や高口蓋が認められ、これらにより摂食障害が生じることがあります。腸回転異常が15人中1人に認められたという報告もあり、実際の頻度は報告された数値より高い可能性が指摘されています。遠位食道狭窄や肛門形成異常の報告もみられるんです。
腎尿路生殖器系の異常は約9.6%の症例にみられ、水腎症と停留精巣が最も多い合併症です。多嚢胞性腎や双角子宮といった異常も報告されており、全身的なスクリーニングの重要性が認識されています。
皮膚症状としては、難病情報センター「アペール症候群」では、診断基準や重症度分類の詳細情報が公開されており、医療従事者向けの包括的な情報源となっています。
GRJ Apert症候群には、遺伝学的検査や臨床的マネジメントに関する詳細なガイドラインが掲載されており、多職種チームによる治療アプローチの参考になります。