漏斗胸手術の費用と保険適用の詳細

漏斗胸手術の費用と保険適用

漏斗胸手術の費用概要
💰

初回手術の総額

健康保険適用前の総医療費は約120万円~150万円。3割負担の場合、約40万円~50万円が基本的な自己負担額となります。

📋

バー抜去手術の総額

2回目のバー抜去手術は総額約80万円。初回手術より低額ですが、こちらも保険適用と各種制度が利用できます。

🏥

保険適用の範囲

漏斗胸手術は健康保険の対象で、診療報酬点数も定められています。Nuss法による胸腔鏡手術は39,260点として収載されています。

漏斗胸手術における初回費用の内訳

漏斗胸の手術治療では、一般的にNuss法(ナス法)という術式が採用されており、金属製のバーを胸郭に挿入して胸骨を矯正します。この初回手術にかかる総医療費は、検査費用や入院費用を含めて約120万円から150万円となっています。

参考)治療の費用について – 香川大学医学部形成外科・漏斗胸専門サ…


健康保険が適用されるため、3割負担の方は約40万円から50万円を一旦お支払いいただく形になりますが、実際にはこの金額をすべて負担する必要はありません。手術時間は通常1時間から2時間程度で、入院期間は5日から10日程度が標準的です。

参考)漏斗胸治療の費用・公的支援制度|漏斗胸・胸郭変形なら松山笠置…


入院中の費用には手術そのものの技術料のほか、チタンバーなどの医療材料費(1本あたり約18万円)、胸腔鏡使用の加算(約10万円)、麻酔費用、病室代などが含まれています。付き添いが必要な小さなお子様の場合、個室料として1日あたり4,644円から7,560円が別途必要になることもあります。

参考)【公式】よくある質問|湘南鎌倉総合病院


特定機能病院である大学病院で手術を受けても、基本的な治療費用は一般の医療機関と変わりませんので、紹介状を持参して受診することをおすすめします。​

漏斗胸のバー抜去手術にかかる費用

漏斗胸の治療は二期的手術となっており、初回手術でバーを挿入した後、2年から5年程度経過してから金属バーを取り除く手術が必要です。このバー抜去手術の総医療費は約80万円となっており、初回手術と比較すると低額です。

参考)漏斗胸に関してのご相談、治療を検討している方、お気軽にご相談…


3割負担の場合、約24万円から27万円が基本的な自己負担額となりますが、こちらも高額療養費制度の対象となるため、実質的な負担はさらに軽減されます。バー抜去手術は初回手術より侵襲が少なく、入院期間も短めに設定されることが多いです。

参考)ナス法について|漏斗胸・胸郭変形なら松山笠置記念心臓血管病院


初回手術から抜去手術までの期間は、患者さんの年齢や体格、骨の成長具合によって変わります。この間、定期的な外来受診や画像検査が必要になりますが、半年後以降は電子メールでの経過観察となる施設もあり、通院の負担を減らす工夫がなされています。

参考)1回目の漏斗胸手術のあと|漏斗胸・胸郭変形なら松山笠置記念心…


抜去手術の診療報酬点数は「胸骨挙上用固定具抜去術」として6,530点が設定されており、これを基準に医療費が算定されます。

参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_10_1_7_2%2Fk487.html

18歳以上の方が利用できる高額療養費制度

18歳以上で漏斗胸手術を受けられる方は、全国健康保険協会が定める「高額療養費制度」を利用できます。この制度では、月あたりに支払うべき医療費に上限が設定され、上限を超える部分については還付されます。​
限度額適用認定証を事前に取得しておけば、窓口での支払い時点で上限額までの負担で済むため、一時的に高額な費用を立て替える必要がありません。上限額は所得に応じて異なり、一般的な所得区分では月額約8万円から10万円程度となっています。

参考)よくあるご質問|漏斗胸|診療のご案内|琉球大学病院 形成外科


より詳しく見ると、収入が少ない方の場合は月額2万4,600円、一般的な所得の方で8万円から10万円程度、高所得の方で10万4,100円程度が上限となります。例えば、治療費の自己負担分が45万円で上限医療費が8万円である場合、差額の37万円については事後に還付されます。​
この制度を利用するには、加入している公的医療保険(協会けんぽ、健康保険組合、国民健康保険など)の窓口で限度額適用認定証の申請を行う必要があります。申請から発行まで時間がかかることがあるため、手術日が決まったら早めに手続きを進めることが推奨されます。

参考)漏斗胸外来のお知らせ|呼吸器外科の主な病気|慶應義塾大学医学…


全国健康保険協会の公式サイトでは、医療費が高額になりそうなときの詳細な情報が提供されています。​

18歳未満の方向けの自立支援医療制度

18歳未満のお子さんが漏斗胸手術を受ける場合、自立支援医療(育成医療)という優遇制度を利用できます。この制度を申請すれば、実質的な自己負担額は約2,500円から10,000円程度まで軽減されます。

参考)漏斗胸|呼吸器外科の主な病気|慶應義塾大学医学部呼吸器外科


育成医療は、身体に障害のある児童や、そのまま放置すると将来障害を残すと認められる疾患がある児童に対して、生活能力を得るために必要な医療を提供する制度です。漏斗胸は呼吸器機能障害として、この制度の対象疾患に含まれています。

参考)自立支援医療(育成医療)について


自己負担額は世帯の所得水準に応じて段階的に設定されており、低所得世帯では月額2,500円、市町村民税非課税世帯で5,000円、一般的な所得世帯で約10,000円程度となっています。原則として医療費の1割が自己負担となりますが、この上限額が設定されているため、高額な手術でも負担は限定的です。

参考)自立支援医療(育成医療)|広島市公式ウェブサイト


ただし、ご家庭が高収入の場合は育成医療の所得制限により制度を利用できないことがあり、その場合は18歳以上と同様に高額療養費制度を利用することになります。また、地域によっては小児医療費助成制度もあり、対象年齢(12歳、15歳、または18歳以下など)は自治体によって異なります。

参考)小児外科 href=”https://jikeisurgery.jp/archives/group_under_2/pedi-surg-6-1″ target=”_blank”>https://jikeisurgery.jp/archives/group_under_2/pedi-surg-6-1amp;#8211; 漏斗胸


申請手続きはお住まいの市区町村の保健福祉課で行いますので、手術が決まったら早めに相談することをおすすめします。​
厚生労働省の公式サイトでは、自立支援医療(育成医療)の概要について詳しい情報が提供されています。​

漏斗胸手術の適応基準と医療従事者の判断

医療従事者が漏斗胸の手術適応を判断する際には、絶対的適応と相対的適応という2つの基準があります。絶対的適応は、呼吸機能や循環機能に明らかな影響を及ぼしている高度の変形を指し、この場合は医学的な観点から手術が強く推奨されます。

参考)漏斗胸


しかし実際の臨床現場では、絶対的適応となる症例は少数派です。多くの患者さんは機能的には大きな問題がなく、美容的な側面や精神的な負担から手術を希望される相対的適応のケースとなります。

参考)https://www.hyo-med.ac.jp/department/pedsurg/ope-routokyou.htm


相対的適応での手術適応判断には、CT画像による客観的評価が用いられます。陥凹最深部の横断面において、前胸部左右の最突出部を結ぶ直線の長さ(W)と、そこから陥凹底部までの垂線の長さ(D)を測定し、陥凹率(D/W)を算出します。一般的に小児では0.15以上、成人では0.1以上が手術適応の目安とされています。​
ただし、患者さんの体格や陥凹の形状(広く浅いか、狭く深いか、左右対称かなど)は個人差が大きく、数値だけで正確に表すことには限界があります。そのため、最終的な手術適応の決定は、医療従事者が患者さんやご家族と十分に話し合い、身体的・精神的な負担と治療による利益を総合的に判断して行われます。

参考)http://www.aichi-med-u.ac.jp/keiseigeka/routokyo.html


女児の場合、漏斗胸を放置すると乳房の左右差が生じる可能性があるため、乳房発達が始まる前の時期に手術を検討することが推奨されています。また、学童期には他の子どもとの外見の違いから精神的負担を感じることもあり、こうした心理的側面も適応判断の重要な要素となります。​

費用項目 18歳以上 18歳未満
初回手術総額 約120万円~150万円
3割負担時 約40万円~50万円
制度利用後の実質負担 月額2.4万円~10.4万円(高額療養費制度) 約2,500円~10,000円(育成医療)
バー抜去手術総額 約80万円
入院期間 5日~10日程度

参考として、松山笠置記念心臓血管病院の漏斗胸治療の費用・公的支援制度では、具体的な金額と制度利用方法が詳しく解説されています。​
香川大学医学部形成外科の治療の費用についてのページでは、年齢別の制度利用方法と実質負担額について分かりやすく説明されています。​
慶應義塾大学病院呼吸器外科の漏斗胸に関する情報では、費用だけでなく治療全般について医療従事者向けの詳細な情報が提供されています。​