過眠症の症状と特徴的な鑑別診断のポイント

過眠症の症状と鑑別診断

過眠症の主な症状と特徴
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日中の強い眠気

夜間に十分な睡眠をとっているにもかかわらず、日常生活に支障をきたすほどの日中の眠気が3ヶ月以上続く状態

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複数のタイプ

ナルコレプシー、特発性過眠症、反復性過眠症など、それぞれ特徴的な症状を示す

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鑑別診断の重要性

睡眠不足症候群や睡眠時無呼吸症候群など、他の睡眠障害との鑑別が治療方針決定に不可欠

過眠症における日中の過度な眠気の臨床的特徴

過眠症の中核症状は、日中の過度な眠気(Excessive Daytime Sleepiness; EDS)なんです。夜間に十分な睡眠時間を確保していても、会議中、食事中、運転中など、通常は起きていられる状況で強い眠気に襲われることが特徴的ですよ。

参考)過眠症とは|睡眠障害の種類|不眠・眠りの情報サイト スイミン…


この症状は単なる生理的な眠気とは異なり、日常生活や仕事のパフォーマンスに深刻な影響を及ぼします。医療従事者として重要なのは、患者が「いつ、どのような状況で眠気が生じるか」を詳細に問診することなんです。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3506799/


一般的な健康な人でも体内時計の影響で午後に眠気を感じることはありますが、過眠症では集中力の著しい低下や居眠りのため、学業や仕事などの日常生活に支障をきたす場合が該当します。日本人の20歳以上の約15%が昼間の眠気を自覚しているとされていますが、全てが過眠症というわけではありません。

参考)過眠症/過眠障害とは – 相談e-眠り


国立精神・神経医療研究センターの報告によると、過眠症の有病率はhttps://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2362500/


不眠・眠りの情報サイト スイミンネット – 過眠症の詳しい解説

過眠症のタイプ別症状と鑑別のポイント

過眠症は複数のタイプに分類され、それぞれ特徴的な症状を示すため、正確な鑑別診断が求められます。​

タイプ 居眠りの特徴 夜間睡眠時間 目覚め後の状態 特異的症状 発症年齢
ナルコレプシー 10~30分以内と短い 6~7時間程度 一時的にすっきりする 情動脱力発作、入眠時幻覚、金縛り 10歳代が多い
特発性過眠症 1時間以上と長い 10時間以上が多い すっきりせず眠気が持続 覚醒困難(睡眠慣性) 10~20歳代
反復性過眠症 数日~数週間持続 傾眠期は著しく長い 傾眠期と正常期を繰り返す 感染や飲酒が引き金 10歳代(男性に多い)

ナルコレプシーの眠気は非常に強く、試験中や危険な作業中など、通常なら居眠りするとは考えられない状況でも我慢できない睡魔に襲われることが特徴です。居眠り後は一時的にすっきりするという点が、特発性過眠症との重要な鑑別ポイントになります。

参考)過眠症はどんな病気ですか


特発性過眠症では、いったん眠り込むと目覚めるまでに1時間以上かかることが多く、目覚めたときに爽快感がないという点がナルコレプシーと異なるんです。夜間の睡眠が11時間以上と著しく長い場合もあり、朝起きるのが非常に困難で、目覚まし時計を何個も使っても起き上がれない「覚醒困難」が特徴的です。

参考)しっかり寝ても眠い…過眠症の治し方!病院に行くべき?治療法ま…


反復性過眠症は非常にまれな疾患で、強い眠気を呈する時期(傾眠期)が3日から3週間持続し、自然に回復して症状がなくなりますが、その後不定の間隔で傾眠期が繰り返し出現します。

参考)反復性過眠症 (はんぷくせいかみんしょう)とは


相談e-眠り – 過眠症の種類と診断

過眠症診断における除外診断の重要性

過眠症の診断において、まず最も重要なのは睡眠不足症候群の除外なんです。本来健康な人でも、短時間の睡眠が慢性的に続くと、過眠症と類似した症状がみられる場合があります。特に働いている若い人は、睡眠不足を自覚していないことも多いため、睡眠日誌やアクチグラフィを用いて実際の睡眠時間を評価することが必要です。

参考)過眠症


https://medicalnote.jp/diseases/%E9%81%8E%E7%9C%A0%E7%97%87


薬剤性の過眠も見逃してはいけません。風邪薬や抗アレルギー薬などの薬を服用することが眠気をもたらすことがあり、抗ヒスタミン薬抗精神病薬、鎮静作用のある薬が原因となることがあります。服薬歴を詳細に聴取し、原因薬剤の中止または変更で症状が改善するかを確認することが重要ですよ。​
精神疾患による過眠も鑑別が必要な領域です。双極性感情障害のうつ病相期や非定型うつ病患者のなかにも過眠症状を呈する場合があり、過眠が認められた場合には抑うつ症状の有無を確かめる必要があります。​

過眠症の診断に必要な検査と評価方法

過眠症の確定診断には、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)と反復睡眠潜時検査(MSLT)が必須となります。

参考)過眠症の症状・診断・治療 – 田町三田こころみクリニック 内…


PSGは寝ている間の脳波、眼球運動、心電図、筋電図、呼吸曲線、いびき、動脈血酸素飽和度などを一晩中測定する検査で、入院が必要です。この検査によって、睡眠不足や眠気を来す身体の病気を除外するとともに、夜間の睡眠の質を評価します。​
MSLTは日中に2時間ごとに4~5回、ベッドに横になり眠るまでの様子を記録する検査なんです。1回の睡眠は20~30分程度で、日中の眠気や入眠の状態を客観的に評価します。通常、PSGを前夜に行い、翌朝から実施されます。

参考)反復睡眠潜時検査とは【MSLTによる過眠症の診断】


特発性過眠症の診断基準では、日中の過剰な眠気が3ヶ月以上続くことを確認し、MSLTの結果において平均睡眠潜時が8分未満かつ入眠時レム睡眠の出現が2回未満であることが必要とされています。

参考)過眠症の診断基準を教えてください。 |過眠症


検査は少なくとも1週間睡眠不足を解消してから行うことが推奨されており、睡眠不足症候群と区別するために重要なポイントです。病歴聴取では、症状を自覚した時期、睡眠の状況、服用している治療薬などについて細かく確認する必要があります。

参考)過眠症の杜 kaminsho no mori


反復睡眠潜時検査(MSLT)の詳細解説

過眠症患者における医療従事者の気づきと支援のポイント

医療従事者として、過眠症患者の日常生活への影響を理解し、適切な支援を提供することが重要なんです。過眠症は学業や仕事のパフォーマンス低下、対人関係の問題、事故のリスク増加など、深刻な影響を及ぼす可能性があります。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9688316/


特に注意すべきなのは、疲労、抑うつ、睡眠慣性といった併存症状です。研究によると、これらの症状は過眠症の経過に影響を与え、特に女性患者において顕著であることが報告されています。患者が眠気以外にどのような症状で困っているかを把握することで、より包括的な治療計画を立てることができます。

参考)https://www.mdpi.com/2076-3425/12/11/1491/pdf?version=1667455003


若年者の過眠症状を訴える患者においては、単に「年頃だから仕方がない」と片付けず、詳細な問診と必要に応じた専門医への紹介が求められます。実際の症例では、22時に就寝しても11時過ぎまで起きられない、月に1回は半日以上寝続けてしまう、アラームを分刻みでかけても聞こえず起きられないといった深刻な症状を呈する患者もいるんです。

参考)https://seiwakai-shimane.com/blog/?page_id=865


治療面では、原因に応じた薬物療法(モダフィニル、メチルフェニデート、ペモリンなど)に加えて、睡眠習慣の調整が重要です。規則正しい就寝・起床時間の設定、昼寝の適切な活用(10~15分程度、午後3時まで)、カフェイン・アルコール・ニコチンの摂取制限などの生活指導も効果的ですよ。

参考)中枢性過眠症


患者自身が病気の経過や生活習慣を記録する睡眠日誌は、診断だけでなく治療効果の判定にも有用です。医療従事者は患者に2~4週間程度の睡眠日誌をつけるよう指導し、受診時に確認することで、より正確な評価が可能になります。​
国立精神・神経医療研究センター – 中枢性過眠症の治療