無月経の症状
無月経とは、月経が一度も来ない状態、あるいはこれまで来ていた月経が止まった状態を指します。通常、初めての月経(初経)は18歳までに生じ、その後閉経までの間、25~38日ほどの周期で月経が来ますが、何らかの原因でこのサイクルが機能しなくなることがあるんです。
参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E7%84%A1%E6%9C%88%E7%B5%8C
無月経には、妊娠や出産・閉経による「生理的無月経」と、それ以外の「病的な無月経」があります。病的な無月経は、原発性無月経と続発性無月経に分けられ、それぞれ異なる症状や原因を持っているんですよ。
無月経に伴う身体的症状
無月経の状態では、月経が来ないという直接的な症状に加えて、様々な身体的変化が現れます。無排卵性月経と関連する症状として、生理周期の異常、出血量や出血期間の異常、むくみなどが特徴的に見られるんです。
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月経不順や無月経の患者さんは、下腹部や腰痛などの一般的な生理痛に加え、頭痛、悪心、嘔吐などの症状を伴うこともあります。これらの症状は、ホルモンバランスの乱れによって引き起こされることが多いんですよ。
参考)【月経異常】月経困難症・月経前症候群(PMS)・過多月経・無…
また、長期にわたる無月経では、骨粗鬆症が最も懸念される病態として知られています。体重減少による無月経のほとんどは視床下部性無月経であり、患者の内因性エストロゲンは低値を示すため、骨量が低下しやすくなるんです。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspog/24/3/24_207/_pdf
無月経と心血管系への影響
無月経や月経不順は、将来的な心血管疾患のリスクを高めることが複数の研究で明らかになっています。月経周期の異常は、代謝症候群、冠動脈疾患、2型糖尿病、関節リウマチなどの様々な疾患と関連していることが報告されているんです。
英国の大規模な後ろ向きコホート研究では、月経周期の不規則性や頻発月経・稀発月経の既往がある女性は、後年における心代謝系疾患のリスクが増加することが示されました。月経不順の既往がある場合、ハザード比は1.52~1.98と有意に高くなることが確認されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10029324/
エストロゲンは心血管系を保護する作用があるとされており、無月経によるエストロゲン不足は心血管系の健康にも悪影響を及ぼす可能性があるんですよ。このため、月経歴は女性の心代謝系健康状態を定期的に評価する上で有用なツールとなり得ます。
参考)原発性無月経とは?18歳になっても生理が来ない原因・治療・受…
無月経がもたらす心理的症状
無月経は身体的な症状だけでなく、心理的な影響も大きいんです。月経が来ないことや将来の妊娠への不安は、患者さんに大きな精神的ストレスをもたらします。
月経異常は不安感、憂うつ、イライラ、怒りっぽさ、集中力低下などの精神症状を引き起こすことがあり、これらの症状は日常生活の質を著しく低下させることがあるんです。特に若い女性にとっては、将来の妊娠が困難となる可能性への不安が大きな心理的負担となります。
参考)月経不順とホルモン異常|西船橋駅近くの婦人科 – 西船橋レデ…
https://assets.cureus.com/uploads/review_article/pdf/197833/20231121-17611-19h12ii.pdf
無月経における独自の臨床的特徴
無月経患者の中には、一般的な症状とは異なる独特な臨床的特徴を示すケースも存在します。例えば、ターナー症候群に伴う原発性無月経では、骨粗鬆症に加えて甲状腺機能低下症を高頻度に合併することが知られています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/60/6/60_495/_pdf/-char/ja
さらに、大動脈縮窄症などの先天奇形がみられることもあり、大動脈瘤破裂は突然死の原因として要注意とされているんです。また、高血圧、糖尿病、脂質異常症があり、これらは動脈硬化症や虚血性心疾患のリスクファクターとなります。
女性アスリートにおける慢性的な月経異常(無月経・稀発月経)は、女性アスリート三主徴の一部として骨密度や心血管系に悪影響を及ぼすことが報告されており、エネルギー不足による視床下部-下垂体系の抑制が原因と考えられているんですよ。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3307967/
<参考>厚生労働省の女性の健康に関する情報は、厚生労働省 女性の健康で確認できます。女性特有の健康課題について包括的な情報が提供されています。
無月経の原因と分類
無月経における原発性と続発性の違い
無月経は、原発性無月経と続発性無月経の2つに大きく分類されます。原発性無月経とは、18歳を過ぎても初めての月経(初経)が来ないことを指し、生じる頻度はごくまれで0.3~0.4%といわれています。定義上は18歳となっていますが、15~16歳ごろになっても初経が発来しない場合には婦人科に受診することが望ましいんです。
参考)無月経
原発性無月経の原因としては、染色体異常や遺伝子異常、先天性の生殖器の形態異常が関与することが多いんですよ。障害部位別の原因として、視床下部性(Kallmann症候群、特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症など)、下垂体性、卵巣性(ターナー症候群、卵巣発育不全など)、腟・子宮性(子宮形態異常、処女膜閉鎖症など)があります。
一方、続発性無月経とは、これまで月経が来ていたにもかかわらず3か月以上止まった状態を指します。月経のある人であれば、思春期から閉経期までのさまざまなライフステージで生じる可能性があるんです。
無月経の内分泌学的原因
無月経の原因を理解する上で、内分泌学的な視点が非常に重要なんです。視床下部-下垂体-卵巣という3つのレベルでホルモンの調節が行われており、このどの部位に障害が生じても無月経を引き起こす可能性があります。
下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)は卵巣に働きかけ、卵巣からはエストロゲン(E2)が分泌されます。また、乳汁分泌に関連し下垂体で分泌されるプロラクチン(PRL)も無月経に関与するんです。
参考)続発性無月経に対する検査と意味 – 世田谷区の産婦人科なら冬…
甲状腺ホルモンも無月経に密接に関連しており、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)と、二種類の甲状腺ホルモン(fT3、fT4)も検査対象となります。血中ゴナドトロピンが高値であれば卵巣性の障害であり、正常ないし低値であれば視床下部・下垂体の障害を疑うことができるんですよ。
視床下部のホルモンを負荷投与して脳下垂体ホルモンの分泌状態を見るGnRH負荷試験やTRH負荷試験は、無月経の障害部位を調べる重要な検査方法となっています。
無月経とストレス・体重変化の関係
続発性無月経の主な原因はストレスとされており、過度なダイエット、急激な体重変化も大きな要因となるんです。強いストレスや急激な体重変化、過度な運動、ホルモンバランスの乱れ、さらには子宮や卵巣の病気などが挙げられます。
参考)https://sophia-lc.jp/blog/amenorrhea/
特に10代~20代前半の思春期から青年期は、過度なダイエット、無理な食事制限、過食・拒食、勉強・仕事のプレッシャーなどのストレスによりホルモンバランスが崩れやすくなります。強いストレスが長期間続くと、脳ではホルモンの調整がうまくいかなくなり、ホルモン分泌に異常が生じて排卵障害や月経異常が引き起こされるんです。
参考)多嚢胞性卵巣症候群とストレスの関係は?対処法や治療方法、妊娠…
体重減少性無月経の場合、そのほとんどが視床下部性無月経であり、適正体重に戻すことがホルモン治療よりも優先されるんですよ。痩せている方は、食事の見直しを行って体重を適正に保つことが重要で、バランスの良い食事を1日3食摂り、必要な栄養素とカロリーを摂取することが求められます。
参考)若年女性の続発性無月経に対するホルモン治療 ~カウフマン療法…
無月経と多嚢胞性卵巣症候群の関連
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、無月経や月経不順の重要な原因の一つとなっています。PCOSでは、卵巣内に多数の小さな卵胞が存在し、排卵が正常に起こらない状態が続くため、月経周期が不規則になったり無月経になったりするんです。
参考)生理周期(生理長い?短い?正常な生理期間)|埼玉県さいたま市…
ストレスはPCOSの直接的な原因であるとは証明されていませんが、発症や症状の悪化に関与すると考えられています。強いストレスが長期間続くと、脳ではホルモンの調整がうまくいかなくなり、アンドロゲンが過剰となって排卵障害や月経異常が引き起こされるんです。
PCOSは生活習慣やストレスの見直しで改善が見込める疾患であり、特に肥満を伴うPCOSの場合、痩せるだけで自然排卵や月経が再開することもあるんですよ。高プロラクチン血症も続発性無月経の原因として挙げられ、薬の副作用が関連することもあります。
参考)仕事でのストレスが【多嚢胞性卵巣症候群】を悪化させる?!
<参考>日本産科婦人科学会による無月経の詳細な情報は、日本産科婦人科学会の公式サイトで確認できます。専門的な診療ガイドラインも公開されており、医療従事者にとって有用な情報源となっています。
無月経の診断と検査
無月経診断における問診と身体診察
無月経の診断は、まず詳細な問診から始まります。月経歴、既往歴、家族歴、生活習慣(食事・運動・ストレス)、体重変化などの情報を丁寧に聴取することが重要なんです。
身体所見の評価では、身長・体重の測定、乳房発育や陰毛の発生など第二次性徴の発現程度を評価します。外性器、内性器の診察は内診および超音波検査により行いますが、経腟超音波検査を施行できない場合が多く、経腹超音波検査や経直腸超音波検査、場合によりMRIを行って子宮や腟の有無を確認するんです。
原発性無月経の診断では、第二次性徴の有無が重要な鑑別点となります。乳房発育がみられるかどうか、子宮が存在するかどうかによって、原因疾患を絞り込んでいくことができるんですよ。
無月経における血液検査とホルモン測定
内分泌学的検査は無月経の鑑別診断に非常に有用で、視床下部-下垂体-卵巣の障害部位を判定するために行われます。血液検査では、LH、FSH、PRL、エストラジオール(E2)、テストステロン、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモンなどの値を測定するんです。
下垂体から分泌し卵巣に働きかける卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)、乳汁分泌に関連がある下垂体で分泌されるプロラクチン(PRL)、そして卵胞から分泌されるE2を検査します。また、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンも無月経に関連しているため、下垂体から分泌し甲状腺に働きかける甲状腺刺激ホルモン(TSH)、二種類の甲状腺ホルモン(fT3、fT4)も合わせて調べるんです。
血中ゴナドトロピンが高値であれば卵巣性の障害であり、一方正常ないし低値であれば視床下部・下垂体の障害を疑うことができます。卵巣の障害が疑われる場合は染色体検査により、ターナー症候群、アンドロゲン不応症などが判明するんですよ。
無月経診断のための画像検査
画像検査は無月経の診断において重要な役割を果たします。経腟超音波検査は子宮や卵巣の形態、子宮内膜の厚さ、卵胞の発育状態を評価するための基本的な検査なんです。
経腟超音波検査を施行できない場合は、経腹超音波検査や経直腸超音波検査を行い、必要に応じてMRI検査で子宮や腟の有無、形態異常を確認します。これらの検査結果から無月経の原因を推定し、治療を進めていくことができるんです。
超音波検査では、卵巣の多嚢胞性変化(PCOSの特徴)や子宮内膜の厚さを評価することで、ホルモン分泌の状態を間接的に知ることができるんですよ。定期的な超音波検査により、治療効果の判定や卵胞発育の観察も可能となります。
参考)無月経 – 婦人科
無月経診断における負荷試験の意義
無月経の障害部位を調べる検査方法として、ホルモン負荷試験が重要な役割を果たします。GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)やTRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)という視床下部のホルモンを負荷投与して、脳下垂体ホルモン(LH、FSH、プロラクチン)の分泌状態を見るんです。
これらのホルモン負荷試験の結果と、卵巣ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの検査、経腟超音波検査を組み合わせることで、無月経の原因を大体把握することができるんですよ。たまには甲状腺ホルモン、男性ホルモン、副腎皮質ホルモン、抗核抗体などを同時に調べることもあります。
ゲスターゲン試験(黄体ホルモン負荷試験)やエストロゲン・ゲスターゲン試験も、無月経の程度を評価するために行われることがあります。これらの試験により、第1度無月経(エストロゲンは分泌されているが排卵がない状態)と第2度無月経(エストロゲンの分泌も低下している状態)を鑑別することができるんです。
<参考>日本内分泌学会による内分泌疾患の診療情報は、日本内分泌学会の公式サイトで確認できます。ホルモン異常に関する専門的な情報が医療従事者向けに提供されています。
無月経の治療方法
無月経に対するホルモン療法の実際
無月経の治療において、ホルモン療法は中心的な役割を果たします。ホルモンの不均衡が無月経の原因である場合、エストロゲンとプロゲステロンの補充療法がよく用いられるんです。これにより月経周期を正常化し、子宮内膜の健康を維持することができます。
参考)無月経について – mimiレディースクリニック三越前
代表的なホルモン療法として、ホルムストローム療法とカウフマン療法があります。ホルムストローム療法は、エストロゲンが十分に分泌されている第1度無月経の患者に対して、黄体ホルモン製剤を投与して子宮内膜をはがし生理を引き起こす治療法なんです。
参考)【医師監修】生理がこない「無月経」、原因や将来への影響とは/…
カウフマン療法は、エストロゲンとプロゲステロンの両方が分泌されていない第2度無月経の患者に対して行う治療で、エストロゲン製剤と黄体ホルモン製剤を投与して生理を引き起こします。この療法は、女性ホルモンを一定の周期で服用または使用することで、月経周期を人工的に作り出すんですよ。
参考)カウフマン療法とは?無月経・不妊治療への効果と副作用を解説
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や甲状腺機能障害など、特定のホルモン異常が確認された場合には、それに適したホルモン剤が処方されます。プロラクチンの過剰分泌が原因である場合は、ドーパミンアゴニストが使用されることもあるんです。
無月経治療におけるカウフマン療法の意義
カウフマン療法は、無月経や生理不順、不妊治療の一環として行われる重要なホルモン補充療法の一つです。この治療は、脳(視床下部・下垂体)から卵巣へのホルモン分泌の指令がうまくいっていない場合や、卵巣の働きが低下している場合など、自身の力で正常な月経周期を維持できない状態に対して行われるんです。
治療の主な目的は、無月経や不規則な月経周期を改善し、子宮内膜を適切に育てることです。これにより、子宮内膜が薄くなることで起こりうる将来的な子宮の機能低下を防いだり、妊娠を希望する際に子宮内膜を妊娠に適した状態に整える準備をするんですよ。
長期間無月経が続くとエストロゲンが不足し骨粗鬆症のリスクが高まるため、それを予防する効果も期待できます。さらに、この治療によって脳や卵巣が一時的に休息することで、治療終了後に自力での月経周期が回復する可能性もあるんです。
参考)卵巣を休ませるカウフマン療法とは?効果や副作用について解説
カウフマン療法は主に第2度無月経に対して行いますが、体重減少性無月経の場合は適正体重に戻すことがホルモン治療よりも優先されます。一般的な治療期間は3~6か月とされています。
無月経における生活習慣改善の重要性
生活習慣の改善は無月経治療において非常に重要な要素なんです。適度な運動と休息のバランス、バランスの取れた食事、ストレス管理、十分な睡眠が推奨されています。
痩せている方は、食事の見直しを行って体重を適正に保つことが重要で、バランスの良い食事を1日3食摂り、必要な栄養素とカロリーを摂取することが必要です。特に体重減少性無月経の場合、適正体重に戻すことがホルモン治療よりも優先されるんですよ。
摂食障害やストレスなどが原因の場合は、カウンセリングが有効なこともあります。無理なダイエットをして低体重となっている方にも、心理的アプローチが効果的なんです。
改善には数週間から数か月の期間を要することがありますが、PCOSなどでは生活習慣やストレスの見直しで改善が見込める場合も多いんです。特に肥満を伴うPCOSの場合、痩せるだけで自然排卵や月経が再開することもあります。
無月経治療における経過観察と併用療法
治療期間中は経過観察が非常に重要で、定期的な検診が必要となります。主な観察項目として、基礎体温測定(毎日、排卵の確認のため)、血中ホルモン検査(月1~2回、ホルモンバランスの評価のため)、超音波検査(月1~2回、卵胞発育の観察のため)、子宮内膜厚測定(月1回、子宮内膜の状態確認のため)があります。
主な治療と併用して行われる治療も効果的なんです。ホルモン療法と漢方薬の併用は体質改善に、排卵誘発と栄養指導の併用は卵巣機能の向上に、生活改善と鍼灸治療の併用は全身状態の調整に、心理カウンセリングとリラクセーション療法の併用はストレス軽減に有効とされています。
原因別の治療期間は、ホルモン異常に対するホルモン療法が3~6か月、排卵障害に対する排卵誘発剤が3~6か月、心理的要因に対するカウンセリングが3~12か月とされています。器質的異常に対する手術療法は個別に判断されるんですよ。
無月経の予後は原因によって大きく異なりますが、適切な対応により多くの場合改善が期待できます。ただし、再発のリスクもあるため継続的な管理が大切なんです。
<参考>日本女性医学学会による女性のヘルスケアに関する情報は、日本女性医学学会の公式サイトで確認できます。女性の生涯にわたる健康管理について専門的な情報が提供されています。