天疱瘡と類天疱瘡の違い

天疱瘡と類天疱瘡の違い

天疱瘡と類天疱瘡の基本的違い
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発症メカニズム

天疱瘡:デスモグレイン攻撃、類天疱瘡:基底膜攻撃

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治療難易度

天疱瘡:重症度高く入院多い、類天疱瘡:外来治療中心

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好発年齢

天疱瘡:中高年、類天疱瘡:70-90歳高齢者

天疱瘡の病態と症状の特徴

天疱瘡は表皮細胞間接着因子デスモグレインに対するIgG自己抗体により、皮膚や粘膜に水疱・びらんを生じる自己免疫性水疱症です 。天疱瘡は主に尋常性天疱瘡と落葉状天疱瘡に分類され、それぞれ異なる臨床像を呈します 。

参考)天疱瘡(指定難病35) href=”https://www.nanbyou.or.jp/entry/300″ target=”_blank”>https://www.nanbyou.or.jp/entry/300amp;#8211; 難病情報センター

尋常性天疱瘡は天疱瘡の中で最も頻度が高く、口腔粘膜に認められる疼痛を伴う難治性のびらん・潰瘍が特徴的な臨床所見となります 。デスモグレイン3に対する自己抗体が産生され、口腔粘膜症状は頻度の高い初発症状として知られています 。約半数の症例で皮膚にも弛緩性水疱やびらんを生じ、一見正常な部位に圧力をかけると表皮が剥離する「ニコルスキー現象」が見られます 。

参考)天疱瘡とはどんな病気?原因について徹底解説します|あさ美皮フ…

落葉状天疱瘡は皮膚のみに病変が生じる疾患で、デスモグレイン1に対する自己抗体により発症します 。60歳代に多く、男女比は1:5で女性に多い傾向があります 。小さく破れやすい水疱が皮膚浅層に形成され、落屑(らくせつ)を伴うびらんとなるのが特徴で、その様子が落ち葉のように見えることから命名されました 。

参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E5%A4%A9%E7%96%B1%E7%98%A1/contents/150819-000003-DTIUPW

類天疱瘡の病態と診断基準

類天疱瘡は皮膚の表皮と真皮の間にある基底膜の蛋白に対するIgG自己抗体により発症する疾患です 。水疱性類天疱瘡ではBP180やBP230、粘膜類天疱瘡ではBP180やラミニン332、後天性表皮水疱症ではVII型コラーゲンを標的とする自己抗体が検出されます 。

参考)天疱瘡 Q16 – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会…

類天疱瘡の診断基準では、皮膚に多発する瘙痒性紅斑、緊満性水疱およびびらんが臨床的診断項目として挙げられています 。病理組織学的には表皮下水疱を認め、蛍光抗体直接法により皮膚の表皮基底膜部にIgGあるいは補体の沈着を確認できます 。血液検査では抗BP180抗体、抗BP230抗体、抗VII型コラーゲン抗体などの自己抗体が検出されます 。

参考)類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)(指定難病162) href=”https://www.nanbyou.or.jp/entry/4526″ target=”_blank”>https://www.nanbyou.or.jp/entry/4526amp;#…

水疱性類天疱瘡は70-90歳台の高齢者に多く見られ、日本の高齢化社会の進展により患者数は増加傾向にあります 。かゆみを伴う浮腫性紅斑、大小の緊満性水疱(パンパンに張った破れにくい水ぶくれ)が特徴的で、ニコルスキー現象は陰性となります 。

参考)天疱瘡・類天疱瘡とは?|免疫グロブリン療法を受ける患者さんと…

天疱瘡の治療法と予後管理

天疱瘡の治療では、ステロイドの飲み薬による症状抑制が基本となります 。症状が軽い患者は外来治療となりますが、重症例では入院治療が必要となり、入院が必要な患者は10人中1人程度の割合です 。

参考)天疱瘡 (てんぽうそう)とは

尋常性天疱瘡では中-重症例でPSL 20-40mg/日を要し、難治性の場合には血漿交換療法とステロイドパルス療法が併用されます 。併用する免疫抑制剤としてアザチオプリンシクロスポリンシクロフォスファミドミゾリビンが用いられますが、重篤な副作用の発現に厳重な注意を要します 。

参考)皮膚疾患分野

大量ガンマグロブリン静注療法の有効性も報告されており、副作用も少なく使用すべき治療法として位置づけられています 。天疱瘡は重症化すると全身やけどのような状態となり、命にかかわるため、早期診断と適切な治療開始が重要です 。

類天疱瘡の治療戦略と薬物療法

類天疱瘡の治療では重症度によって治療法が選択され、自己抗体の産生抑制と炎症反応の抑制を目的とします 。軽症例では抗菌薬のテトラサイクリンとビタミンB群の一種であるニコチン酸アミドを併用する療法が有効とされています 。

参考)水疱性類天疱瘡 (すいほうせいるいてんぽうそう)とは

中等症から重症の水疱性類天疱瘡では、テトラサイクリン、ニコチン酸アミドを併用しながら、ステロイド薬(プレドニゾロン20~30mg/日)を内服します 。非常に重症の場合は、ステロイド薬を大量に点滴するパルス療法、免疫抑制剤の投与、血漿交換療法、免疫グロブリン製剤の注射などが行われます 。
類天疱瘡治療において「高齢」がリスクファクターとして高く、服薬管理、副作用回避、栄養管理、皮膚ケア等のチーム医療が重要となります 。水疱性類天疱瘡は天疱瘡と比較して比較的早期に寛解する傾向があり、外来治療が中心となることが多いです 。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspen/32/5/32_1459/_pdf

天疱瘡における少子高齢化社会の影響と診療の進歩

日本の少子高齢化社会の進展は、天疱瘡と類天疱瘡の診療に大きな影響を与えています。特に類天疱瘡は高齢者に好発する疾患であり、70-90歳台の患者が大部分を占めるため、高齢化により患者数の著しい増加が予測されています 。

参考)類天疱瘡(水疱症) Q2 – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本…

高齢者における治療では、多剤併用による薬物相互作用や副作用のリスクが高く、ステロイド治療による骨粗鬆症糖尿病、感染症などの合併症管理が重要となります。また、認知機能の低下により服薬コンプライアンスの問題も生じやすく、家族を含めた包括的なケアが必要です。

一方で診断技術の進歩により、ELISA法やCLEIA法による特異的自己抗体の検出が可能となり、早期診断と適切な治療選択が行えるようになりました 。蛍光抗体法による免疫学的診断も確立され、病理組織学的所見と合わせた確定診断が標準化されています 。

参考)https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/File/162-202404-kijyun.pdf

近年の治療法の進歩として、従来のステロイド治療に加えて免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)の有効性が確立され、副作用の少ない治療選択肢として注目されています 。また、軽症例に対するテトラサイクリン・ニコチン酸アミド併用療法により、ステロイドを使用せずに寛解に導ける症例も増加しており、高齢者の治療において重要な選択肢となっています 。