性ホルモン種類とその分類について

性ホルモンの種類と基本分類

性ホルモンの主要分類

女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)

卵巣で分泌され、生殖機能や女性特有の身体機能を調節

男性ホルモン(アンドロゲン類)

精巣で分泌され、男性特有の身体機能や筋肉発達を調節

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ステロイドホルモン構造

コレステロールを基本骨格とする脂溶性ホルモン群

性ホルモンの基本概念と定義

性ホルモンは、主に性腺(卵巣・精巣)から分泌されるステロイドホルモンの総称であり、生殖機能の調節を最大の役割とします 。これらのホルモンは脊椎動物において共通の働きを示し、男性ホルモン(アンドロゲン)と女性ホルモンに大別されます 。

参考)健康や生殖、心にも作用する「性ホルモン」

興味深いことに、男性ホルモンは男性に、女性ホルモンは女性に相対的に多く存在しますが、実際には男女ともに量的な差はあるものの両方の性ホルモンを分泌しています 。性ホルモンの影響は第一次性徴(外性器の特徴)と第二次性徴(思春期の体の変化)において明確に現れます 。
コレステロールを骨格とするステロイドホルモンとしての性ホルモンは、細胞膜を通過しやすい脂溶性の特徴を持ち、ホルモン受容体は核や細胞質に存在します 。これにより遺伝子転写を直接制御し、長期的な生理作用を発揮します 。

参考)ホルモンの化学構造|内分泌

性ホルモンの分泌調節システムと視床下部-下垂体-性腺軸

性ホルモンの分泌は、視床下部下垂体-性腺軸という精密な調節システムによって制御されています 。視床下部から分泌される性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)が脳下垂体に作用し、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の産生・分泌を促進します 。

参考)性ホルモン – Wikipedia

下垂体から分泌されるこれらのゴナドトロピンは、男性では精巣を、女性では卵巣を刺激して性ホルモンの産生を調節します 。特にLHは主にライジッヒ細胞の受容体と結合し、コレステロールからのテストステロン合成を促進する重要な役割を担います 。

参考)https://www.genken.nagasaki-u.ac.jp/genetech/genkenbunshi/pdf/H25.7.17.pdf

このシステムは、血液中の性ホルモン濃度を視床下部が常にモニタリングし、ネガティブフィードバック機構によって分泌量が適切に調節される仕組みになっています 。精子や卵胞の発達段階によって必要とされるFSHとLHの量は異なるため、この微細な調節機構が生殖機能の維持に不可欠です 。

性ホルモンの種類別詳細分析(エストロゲン系統)

エストロゲンは、エストロン(E1)、17β-エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)の3種類が主要な構成要素として知られています 。この中で17β-エストラジオールが最も活性が強く、生体におけるエストロゲン活性の大半を担います 。

参考)エストロゲン – 脳科学辞典

エストロン(E1)は卵巣や副腎、肝臓、脂肪組織で作られ、閉経後は卵巣でエストラジオール(E2)に変換されます 。閉経後はこの成分が主要なエストロゲンとなりますが、体脂肪率の上昇などでエストロンが増えすぎると、乳腺や子宮の組織を刺激し、乳がんや子宮がんのリスクが高くなる可能性があります 。

参考)ナチュラルホルモン補充療法(BHRT)

エストリオール(E3)は上記の2つの成分を肝臓で変換して作られ、乳腺や子宮に対する刺激が弱いため、乳がんや子宮がんを誘発せず、逆にこれらのがんから体を守る働きがあります 。妊婦においては胎盤や肝臓でエストロンやエストラジオールが変換されて作られ、3種のうちで最も作用が弱い特徴があります 。

参考)女性ホルモンの基礎知識・仕組みと種類|町田市鶴川の産婦人科|…

性ホルモンの種類別詳細分析(アンドロゲン系統とプロゲステロン)

男性ホルモン(アンドロゲン)は、テストステロン、ジヒドロテストステロン(DHT)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)が主要な構成要素です 。テストステロンは男性ホルモンの代表格として精巣で分泌され、心身の活力や筋肉・骨の維持に重要な役割を果たします 。

参考)男性ホルモンの種類と役割の基礎知識

DHT(ジヒドロテストステロン)はテストステロンから変換され、テストステロンより強力な活性を持ちますが、AGA薄毛)や前立腺肥大の原因としても知られています 。一方、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)は副腎で作られるホルモンで、体内でテストステロンや女性ホルモンに変換されるため「マザーホルモン」と呼ばれます 。
プロゲステロン黄体ホルモン)は、卵巣の黄体で形成され、排卵後に分泌量が増加します 。受精卵が着床しやすくする変化を子宮に起こし、子宮内膜機能層のらせん動脈をより増生させる重要な働きがあります 。また、プロゲステロンは高い気分改善効果があり、エストロゲンとバランスをとって効果を高め、骨粗鬆症や心疾患、子宮癌、乳癌リスクを低下させる作用も報告されています 。

参考)男と女のホルモンの違い – 三上内科クリニック

性ホルモンの健康影響と臨床的意義

性ホルモンは認知機能骨密度、心血管系に広範囲な影響を与えます 。高齢者における認知症、骨粗鬆症、サルコペニアといったフレイル症状の発症にも関与するため、一生にわたり健康長寿において重要な役割を担います 。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/59/4/59_59.430/_pdf

エストロゲンは更年期以降の疾患を減少させる働きがあり、充足していると心血管疾患、骨粗鬆症、認知症、尿路感染、白内障などの疾患を防ぐとともに心の健康、幸福感をもたらします 。また、抗酸化作用を有し、神経細胞において酸化ストレスアポトーシスに対する保護作用を示すことが報告されています 。
テストステロンは充実感、気分、幸福感を高め、筋肉量を増やして代謝を向上させます 。コラーゲンを健全な状態に保ち、すべての脂質・糖質のパラメーターを改善し、活力向上、骨密度の増加、性機能改善を通じて人生の質を向上させます 。更年期以降の疾患予防における男性のための最良の薬として位置づけられています 。

性ホルモン療法の最新アプローチと医療応用

ホルモン補充療法(HRT)は、分泌低下した女性ホルモンを補うことで更年期障害の症状改善・予防をするとともに、女性の若さと活力を保つことを目的とした薬物療法です 。外からエストロゲンを補うことにより、視床下部-下垂体-卵巣軸の混乱を収め、自律神経の乱れを改善します 。

参考)更年期のホルモン補充療法ってどんな治療法?

現在のHRTでは、エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)が経口剤、貼付剤、ゲル剤及び注射剤として使用されています 。治療による心血管疾患、骨密度低下、認知機能低下のリスク軽減効果が期待されており、必要最小限の量を補充するアプローチが取られています 。

参考)https://pharmacist.m3.com/column/special_feature/5850

男性においても、テストステロン補充療法が注目されています。テストステロンが急激に減少する際には前立腺癌のリスクも増加するとされており、適切なモニタリングのもとでの補充療法により、中高年以降の病気を防ぐ効果が期待されています 。これらの治療法は個別化医療の観点から、患者の症状や体質に応じた最適な選択が重要です 。

参考)ホルモン補充療法(HRT)|ローズレディースクリニック|更年…