腎動脈どこから分岐するかと血管解剖

腎動脈どこから分岐するかと血管解剖

腎動脈の分岐と血管解剖の要点
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腎動脈の起始部位

腹部大動脈からL1-L2椎体レベルで分岐、上腸間膜動脈の約1-2cm下方

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詳細な分岐パターン

4-5本の分節動脈に分岐後、葉間動脈、弓状動脈、小葉間動脈に枝分かれ

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臨床的重要性

血管造影、腎移植、IVR手技において解剖学的変異の理解が不可欠

腎動脈起始部の詳細な解剖学的位置

腎動脈は腹部大動脈から分岐する重要な血管であり、その正確な起始位置は医療従事者にとって基本的な知識です。腎動脈の起始部は第1腰椎(L1)椎体の下1/3から第2腰椎(L2)椎体の上1/3の高さに位置しており、上腸間膜動脈の分岐部から約1-2cm尾側で腹部大動脈から分岐します。

参考)腎動脈を2本,3本認める過剰腎動脈とは?腎動脈のanomar…

この解剖学的位置は、診断画像や血管内治療において重要な指標となります。右腎動脈は左腎動脈よりもやや高い位置から分岐する傾向があり、下大静脈の背側を右方に走行する点も特徴的です。お臍の少し上あたりで大動脈から分かれるという表現もあり、臨床現場では体表面からの目安として活用されています。

参考)腎(2) (臨床泌尿器科 44巻5号)

腎動脈の起始部は、腹部大動脈の臓側枝として分類され、全身の血流の約20-25%を腎臓に供給する重要な血管です。この豊富な血流は、腎臓の濾過機能を維持するために必要不可欠であり、心拍出量の最大3分の1が腎動脈を通過することもあります。

参考)腎臓の働きと機能 – 【公式】こうまつ循環器科内科クリニック

腎動脈分節動脈への分岐パターン

腎動脈は腎門に入る前に、通常4-5本の分節動脈に分岐する特徴的なパターンを示します。この分節動脈への分岐は、腎臓の機能的な区域構造と密接に関連しており、各分節動脈が特定の腎実質部位を支配しています。

参考)https://www.morpholetter.com/jour/article/download/651/770

分節動脈は腎実質内で多数の葉間動脈に分岐し、皮質髄質境界を腎表面に向かって走行します。葉間動脈は腎錐体を縁取るように弯曲した後、弓状動脈となり皮質と髄質の境界部を走行します。弓状動脈からは皮質方向に向かって多数の小葉間動脈が分岐し、最終的に輸入細動脈、糸球体、輸出細動脈という微細構造に繋がります。

参考)腎臓の構造と働き|腎臓・高血圧内科

この詳細な分岐パターンの理解は、腎動脈造影やIVR手技において重要です。特に分節動脈の走行や支配領域を把握することで、選択的血管内治療や腎部分切除術などの外科手技において、より安全で効果的な治療が可能になります。

腎動脈狭窄症と超音波診断技術

腎動脈狭窄症の診断において、超音波ドプラ法は非侵襲的で有用な検査方法として広く活用されています。超音波検査では造影剤を使用せずに血流速度を測定でき、放射線被曝の心配もなく繰り返し検査が可能です。

参考)超音波検査での腎動脈狭窄の計測ポイント (検査と技術 36巻…

腎動脈狭窄症のスクリーニングには、腎動脈超音波ドプラ法、MRアンジオグラフィ(MRA)、またはCT血管造影が推奨されています。超音波検査では複数腎動脈の検出も可能で、血管径の測定により複数腎動脈の予測カットオフ値を設定する研究も行われています。

参考)https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_J/ethics/pdf/be0b3ffdd0cb4a168d8721d447d96aa2f7cb54c5.pdf

CTやMRAの検査精度については、造影MRAの感度は88-100%、特異度は76-94%とされており、単純MRAも造影MRと同等の検出力を持つという報告があります。CT血管造影の感度は59-96%、特異度は82-99%と報告されており、技術の進歩により診断精度は向上し続けています。

参考)https://jsn.or.jp/guideline/pdf/CKD_evidence2013/06honbun.pdf

腎動脈ステント治療の最新動向

腎動脈狭窄症に対するカテーテル治療は、特に高度狭窄例において効果的な治療選択肢となっています。ステント治療は腎動脈起始部病変の多い粥状硬化性腎動脈狭窄症に適用され、動脈硬化性の腎動脈起始部病変の治療において重要な役割を果たしています。

参考)腎血管性高血圧href=”https://www.ccj.or.jp/01_shinryoubu/diseaseAndTreatment/rht.html” target=”_blank”>https://www.ccj.or.jp/01_shinryoubu/diseaseAndTreatment/rht.htmlamp;nbsp;-href=”https://www.ccj.or.jp/01_shinryoubu/diseaseAndTreatment/rht.html” target=”_blank”>https://www.ccj.or.jp/01_shinryoubu/diseaseAndTreatment/rht.htmlamp;nbsp;北関東循環器病院 統…

最新の治療報告として注目されるのは、難治性心不全患者の腎動脈閉塞症に対するステント治療の成功例です。これまで腎動脈閉塞のステント治療は世界で7例の報告がありましたが、すべて高血圧腎不全の改善を目的としたものでした。しかし、心不全治療としてのステント治療により、閉塞した腎動脈を再開通させることで速やかな心不全改善が得られた画期的な症例が報告されています。

参考)難治性心不全患者(腎動脈閉塞症合併)へのステント治療 により…

ステント留置手技では、腎動脈の狭窄部分に細い針金を通してバルーンで病変を開大させ、金属の支持器具であるステントを留置することが標準的な方法となっています。線維筋性異形成の場合はバルーンで比較的容易に拡張できることが多いのに対し、動脈硬化性病変では長期的な内腔維持のためにステント留置が効果的です。

参考)腎動脈ステント留置術・頚動脈ステント留置術|循環器内科|診療…

腎動脈解剖変異と臨床的意義

腎動脈の解剖学的変異は臨床において重要な考慮事項であり、約40%の症例で何らかの変異が認められるとされています。腎動脈が腹部大動脈から1本ずつ分岐し、腎全体に分布するのは全体の約60%のみで、残りの40%では複数の動脈が存在します。
過剰腎動脈(accessory renal artery)は20-30%の頻度で2本や3本、最大4本の腎動脈が同側に見られる変異です。これらの過剰動脈はTh11~L4レベルの下横隔膜動脈から内腸骨動脈の間で生じ、腎門を通過するhilar arteryと、腎門を通らず直接皮質から腎内に侵入するpolar arteryに分類されます。
こうした解剖学的変異は、腎移植、血管内放射線学的手技、泌尿器科手術、腎動脈塞栓術、血管形成術、先天性および後天性病変に対する血管再建術において困難をもたらす可能性があります。特に過剰腎動脈の交叉部が尿路狭窄の原因となることもあり、事前の詳細な画像診断が重要です。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10421583/

馬蹄腎などの腎奇形では多数の腎動脈が見られ、下方では腸骨動脈から栄養動脈を認めることがしばしばあります。癒合腎、変位腎、回転異常腎などの先天性腎奇形を合併した腹部大動脈瘤の手術では、これらの変異血管に対する適切な処置が術後の腎障害回避において重要となります。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsvs/21/7/21_829/_pdf