電解質一覧とその主要機能
電解質とは何か
電解質とは、水に溶けることで陽イオンと陰イオンに分離し、電気を通す物質の総称です。人体内では細胞外液と細胞内液に存在し、体液の浸透圧調節、神経伝達、筋肉収縮など生命維持に不可欠な役割を担っています 。
参考)電解質とは? 電解質の働きや種類・電解質異常の症状を詳しく解…
人体を構成する元素のうち、電解質に分類されるミネラルは約4%を占めており、その16種類すべてが必須ミネラルとして機能しています 。これらの電解質は体内で合成されないため、食事からの継続的な摂取が必要です 。
電解質は水中で電気を帯びたイオンとなり、細胞膜を介したイオンの移動により、神経細胞の電気信号や筋肉の収縮・弛緩を制御します 。この電気的性質により、心電図や脳波などの生体電気現象が生じています。
電解質の主要種類一覧
主要な電解質には、多量ミネラルと微量ミネラルの区分があり、1日に100mg以上必要なものが多量ミネラルに分類されます 。
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多量ミネラル(主要電解質)
- ナトリウム(Na+):体液量・浸透圧調節、神経伝達
- カリウム(K+):心臓機能・筋収縮制御、神経刺激伝達
- カルシウム(Ca2+):骨格形成・血液凝固・筋神経機能
- マグネシウム(Mg2+):酵素活性化・筋収縮・骨歯形成
- クロール(Cl-):浸透圧調節・胃酸分泌・水分バランス
- リン(P):エネルギー代謝・細胞膜構造・骨歯構成
微量ミネラル
鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、モリブデン、コバルト、クロムなどが含まれ、酵素やホルモンの作用に関与します 。
電解質の正常基準値と検査意義
血液検査における電解質の正常基準値は、体内バランスの評価に重要な指標となります。日本臨床検査学会が定める主要な基準値を以下に示します。
主要電解質の基準値
- ナトリウム(Na):135-148 mEq/L
- カリウム(K):3.5-5.0 mEq/L
- クロール(Cl):98-110 mEq/L
- カルシウム(Ca):8.2-10.5 mg/dL
- マグネシウム(Mg):1.7-2.2 mg/dL
電解質検査の目的は、身体の恒常性(ホメオスタシス)機能を評価することです 。血液中のイオン濃度測定により、浸透圧維持や体内バランスの異常を早期発見できます。
検査は通常、ナトリウム、カリウム、クロール、カルシウム、マグネシウムを同時測定し、腎臓、心臓、内分泌系の機能評価に活用されます 。
電解質異常の症状と臨床的意義
電解質異常は、異常を起こす電解質の種類と程度により多様な症状を呈します。早期発見と適切な治療介入が重要です 。
参考)電解質異常
高ナトリウム血症・低ナトリウム血症
高カリウム血症・低カリウム血症
- 高値:徐脈、血圧低下、重篤な不整脈、筋麻痺
- 低値:筋力低下、筋けいれん、腸管麻痺
カルシウム異常
- 高値:意識障害、悪心、嘔吐、腎結石
- 低値:テタニー、筋けいれん、しびれ
マグネシウム異常
- 高値:血圧低下、呼吸抑制
- 低値:筋けいれん、食欲不振、不整脈
これらの症状は脱水、下痢、嘔吐、腎疾患、内分泌異常、薬物副作用など様々な原因で発生し、迅速な対応が求められます 。
電解質バランス維持のための食事と管理
電解質バランスの維持には、適切な食事選択と生活習慣の管理が重要です。特に運動時や病的状態では、意識的な電解質補給が必要となります。
電解質を豊富に含む食品
- ナトリウム:ブイヨンスープ(300-600mg)、味噌汁、漬物
- カリウム:バナナ、オレンジ、メロン、サツマイモ、葉物野菜
- カルシウム:ギリシャヨーグルト、乳製品、小魚類
- マグネシウム:かぼちゃの種(大さじ2杯で74mg)、ナッツ類、全粒穀物
- クロール:オリーブ、トマト、レタス
運動時の電解質管理
運動による発汗では、特にナトリウムの損失が顕著となります 。チョコレートミルクは運動後の理想的な回復飲料として、炭水化物:タンパク質が3:1の比率で電解質補給と筋肉回復を促進します。
臨床現場での輸液管理
等張電解質輸液(生理食塩液、リンゲル液、乳酸リンゲル液)は循環血液量減少時に、低張電解質輸液は細胞内外の水分・電解質補給に使用されます 。