アンピシリンとアモキシシリンの違い

アンピシリンとアモキシシリンの違い

アンピシリンとアモキシシリンの違い
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基本的な特徴

同じアミノペニシリン系抗菌薬で抗菌スペクトラムは同等ですが、吸収率と投与ルートが異なります

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薬物動態の違い

アモキシシリンの方が経口吸収率が高く、血中濃度も高値を維持します

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適応と使い分け

アンピシリンは注射薬、アモキシシリンは内服薬として主に使用されます

アンピシリンの基本的特徴と作用機序

アンピシリン(ABPC:Ampicillin)は1961年から臨床使用されているβ-ラクタム系抗生物質の一種で、アミノペニシリングループに属しています 。化学構造的にはペニシリンGにアミノ基を付加した半合成ペニシリンで、この構造的特徴により広範囲の細菌に対して抗菌活性を示すことができます 。

参考)アンピシリン水和物(ビクシリン) href=”https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-medicine/ampicillin-hydrate/” target=”_blank” rel=”noopener”>https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-medicine/ampicillin-hydrate/amp;#8211; 呼吸器治療…

アンピシリンの作用機序は、細菌の細胞壁合成を阻害することにあります。具体的には、細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカンの合成に不可欠なペニシリン結合タンパク質(PBPs)と結合し、その機能を阻害します 。

  • PBPsとの結合による細胞壁合成阻害
  • ペプチドグリカン構造の不安定化
  • 細胞壁形成不全による細菌の脆弱化
  • 浸透圧変化に対する耐性喪失と細菌の死滅

トランスペプチダーゼを不活性化することにより、細菌の細胞壁の合成(ペプチドグリカンの架橋)を阻害し、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の一部に有効です 。

参考)製品紹介|理化学研究機器・消耗品のBMS - バイオメディカ…

アモキシシリンの特性と薬物動態

アモキシシリン(AMPC:Amoxicillin)はペニシリン系の広域抗生物質で、アンピシリンの構造的類似体です 。アンピシリンにヒドロキシ基を付加することで、より腸管吸収率が高くなるように設計されています 。

参考)第三回:似たもの同士!!アンピシリンとアモキシシリン – ど…

アモキシシリンは経口投与後速やかに吸収され、血漿中濃度は投与1~2時間以内にCmax(>5 μg/mL)に達します 。経口投与における吸収は、アンピシリンと比較して大幅に改善されており、以下のような特徴があります :

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC444250/

  • 平均最高血中濃度:アモキシシリン7.6 μg/ml vs アンピシリン3.2 μg/ml(500mg経口投与時)
  • 尿中排泄率:アモキシシリン60% vs アンピシリン34%(8時間後)
  • 血清半減期:両薬剤ともに約60分

アモキシシリンの優れた腸管吸収は、消化管の副作用が少なく、投与回数を減らせるため、アンピシリンより多く使用される傾向があります 。

参考)ペニシリン系 – 16. 感染症 – MSDマニュアル家庭版

アンピシリンの抗菌スペクトルと適応症

アンピシリンは以下の微生物に対して抗菌活性を示します :

参考)https://kumamoto.jcho.go.jp/pharm2/wp-content/uploads/sites/4/2024/11/2023antibiotics.pdf

主な抗菌スペクトラム

  • レンサ球菌、肺炎球菌などのグラム陽性球菌
  • E. faecalis(腸球菌)
  • リステリア・モノサイトゲネス
  • 腸内細菌科のうち、Proteus mirabilis、一部の大腸菌

主な適応症

  • 扁桃炎で内服困難な場合
  • E. faecalis感染症
  • リステリア感染症(菌血症髄膜炎
  • B群溶連菌保菌妊婦の経膣分娩時の新生児感染予防
  • 感受性のある大腸菌やProteus mirabilis、B群溶連菌による急性腎盂腎炎

標準的投与量は2g を4〜6時間毎(40kg以上で適応)で、主に静脈内投与で使用されます 。

アモキシシリンの臨床応用と特殊用途

アモキシシリンは経口薬として幅広い感染症に使用されます :

主な適応症

  • 扁桃炎、咽頭炎
  • 丹毒・蜂窩織炎(レンサ球菌による場合)
  • 中耳炎(高用量での使用が推奨される)
  • 感受性のある大腸菌やProteus mirabilis、B群溶連菌による膀胱炎
  • 肺炎球菌肺炎
  • E. faecalis感染症

ヘリコバクター・ピロリ除菌での特殊な役割

アモキシシリンは胃潰瘍の原因となるヘリコバクター・ピロリの除菌に使われる重要な薬剤の一つです 。除菌療法では、1種類の「胃酸の分泌を抑える薬」と2種類の「抗菌薬」の合計3剤を同時に1日2回、7日間服用します 。

参考)アモキシシリンの効果・効能や飲み合わせ禁忌は?併用可能な市販…

除菌治療における組み合わせ。

標準的投与量は500mg を1日3回(30kg以上で適応)で、除菌療法では750mg(力価)を1日2回投与します 。

参考)医療用医薬品 : アモキシシリン (アモキシシリンカプセル1…

アンピシリンとアモキシシリンの安全性と副作用

両薬剤は基本的に同様の副作用プロファイルを示しますが、投与経路の違いにより注意点が異なります。

共通の副作用

参考)http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se61/se6131002.html

  • 消化器症状:吐き気、嘔吐、下痢
  • アレルギー反応:発疹、じんま疹からアナフィラキシーまで
  • 障害:間質性腎炎

特殊な注意事項

アンピシリンとアロプリノールとの併用により、発疹の発現が増加するとの報告があります 。また、EBウイルス感染症や、アロプリノール投与時には発疹が出現することがありますが、これらは真のアレルギーではなく、再投与が可能です 。

参考)医療用医薬品 : ビクシリン (ビクシリン注射用0.25g …

アモキシシリンは経口薬として、消化管での副作用がアンピシリンより少ないという利点があります 。ただし、クラブラン酸との配合剤では、クラブラン酸による嘔気が問題となることがあります 。

参考)感染症の治療 プライマリ・ケアのための感染症情報サイト

妊婦・授乳婦への投与は両薬剤とも可能ですが、腎機能に応じた用量調整が必要な場合があります 。