大腸炎の種類と特徴
大腸炎の主要な種類と病態
大腸炎は病因や発症部位によって複数の種類に分類され、それぞれ異なる特徴を持ちます 。最も代表的なものが 潰瘍性大腸炎 で、大腸の粘膜に原因不明の慢性炎症を引き起こす疾患です 。この疾患は厚生労働省によって特定疾患(難病)に指定されており、患者数は年々増加傾向にあります 。
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次に重要な種類として 感染性腸炎 があります 。これは細菌、ウイルス、寄生虫などの病原体によって引き起こされる急性炎症で、腸管出血性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクター、アメーバなど様々な原因菌が関与します 。感染性腸炎の多くは一過性で、適切な治療により数日から数週間で完治するのが特徴です 。
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クローン病 も重要な大腸炎の一種で、口から肛門までの消化管全域に炎症が起こる可能性があります 。潰瘍性大腸炎とは異なり、腸管壁全体に炎症が及び、飛び飛びに病変が現れる(スキップ病変)のが特徴的です 。
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その他の種類として、薬剤性大腸炎、虚血性大腸炎、放射線性大腸炎などがあり、それぞれ特定の原因によって引き起こされます 。これらの大腸炎は原因除去により改善することが多く、慢性化することは比較的稀です。
参考)大腸炎
潰瘍性大腸炎の分類と病変範囲
潰瘍性大腸炎は炎症の広がりによって 直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型 の3つに分類されます 。直腸炎型は肛門に近い直腸のみに病変が限局するタイプで、坐剤などの局所製剤が特に有効です 。
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左側大腸炎型は炎症が脾彎曲部まで広がっているタイプで、横行結腸の左側に炎症が起きるのが特徴です 。この型では内服薬による全身治療に加えて、注腸製剤などの局所製剤が有効とされています。
全大腸炎型は最も重篤な型で、炎症が脾彎曲部を越えて大腸全体に広がります 。この場合、局所製剤だけでは治療が困難で、内服薬、血球成分除去療法、注射剤などによる集学的治療が必要になります 。
病変の進行は通常、直腸から始まり徐々に上行性(口側)に広がっていく性質があります 。また、重症度は排便回数、血便の程度、発熱、貧血などの基準により軽症、中等症、重症、激症の4段階に分類されます 。
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感染性腸炎の種類と特徴的症状
感染性腸炎は原因病原体によって 細菌性腸炎、ウイルス性腸炎、寄生虫性腸炎 に大別されます 。細菌性腸炎では腸管出血性大腸菌(O157など)、サルモネラ、カンピロバクター、赤痢菌などが代表的な原因菌で、血便を伴うことが多いのが特徴です 。
腸管出血性大腸菌腸炎とアメーバ性大腸炎は半数以上が血便を伴い、カンピロバクター腸炎とサルモネラ腸炎でも22~23%の症例で血便が認められます 。一方で、腸管出血性大腸菌腸炎では発熱は軽度かみられず、激しい腹痛が特徴的で虫垂炎と間違われることがあります 。
ウイルス性腸炎では ノロウイルス腸炎 と ロタウイルス腸炎 が代表的です 。ノロウイルス腸炎は嘔吐と下痢が多く、発熱はないかあっても軽度で、主に水様性の下痢を呈します 。ロタウイルス腸炎は乳幼児に多く、発熱、下痢、嘔吐がみられ、白色便が特徴的です 。
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毒素型の細菌感染(黄色ブドウ球菌、セレウス菌など)では、食物内で産生された毒素が経口摂取され、潜伏時間が1~6時間と短く、嘔気・嘔吐の症状が強い急性胃腸炎型の症状を認めます 。
クローン病の病変部位による分類
クローン病は病変の発生部位により 小腸型、小腸・大腸型、大腸型 の3つに分類されます 。小腸型では主に回腸末端部に病変が集中し、腹痛と下痢が主症状となります。栄養吸収障害により体重減少や栄養不良を来たすことが多いのが特徴です 。
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小腸・大腸型は最も頻度が高い型で、小腸と大腸の両方に病変が存在します 。この型では腹痛、下痢、血便、発熱など多彩な症状を呈し、肛門病変(痔瘻、肛門周囲膿瘍)を合併することが多いのが特徴的です 。
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大腸型では主に大腸に病変が限局し、潰瘍性大腸炎との鑑別が重要になります 。しかし、クローン病では縦走潰瘍や敷石状病変といった特徴的な内視鏡所見があり、組織学的には非乾酪性類上皮細胞肉芽腫の存在が診断の決め手となります 。
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クローン病では消化管外合併症として、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、アフタ性口内炎、関節炎、強直性脊椎炎、胆石・腎結石などを認めることがあります 。これらの合併症は活動期に一致して出現することが多く、腸管病変の活動性と相関することが知られています。
大腸炎診断における鑑別点と特殊な病型
大腸炎の診断において、各疾患を鑑別するための重要なポイントがあります 。潰瘍性大腸炎では直腸から連続的に炎症が起き、炎症は粘膜に限定されるため穿孔を起こすことはほとんどありません 。一方、クローン病では口から肛門まで消化管全体に炎症が起こり、病変が飛び飛びで、腸管壁全体に炎症が及ぶため穿孔のリスクがあります 。
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感染性腸炎では急性発症が特徴的で、発症前の食事歴や海外渡航歴、集団発生の有無などが診断の手がかりとなります 。便培養検査により原因菌の同定が可能で、多くは自然治癒または抗菌薬治療により短期間で改善します 。
特殊な病型として、アメーバ性大腸炎 があります 。これは赤痢アメーバによる寄生虫性腸炎で、HIV感染者などの免疫不全状態で劇症化することがあり、死亡率が極めて高いことが知られています 。内視鏡所見ではタコイボ状の多発性潰瘍が特徴的で、組織診でアメーバ原虫を確認することで診断されます。
参考)302 Found
また、抗生物質関連大腸炎(偽膜性大腸炎)も重要な病型で、クロストリジウム・ディフィシル感染により引き起こされ、抗生物質使用歴のある患者に発症します 。治療には原因抗生物質の中止とメトロニダゾールやバンコマイシンの投与が必要です。