食道がんステージの分類と治療選択

食道がんステージの分類と診断

食道がんステージ別の概要
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ステージ0-I期(早期がん)

粘膜内から粘膜下層までの浸潤で転移のない状態。5年生存率79.1%

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ステージII-III期(進行がん)

筋層以深への浸潤やリンパ節転移を認める状態。手術と集学的治療が必要

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ステージIV期(切除不能がん)

遠隔転移や周囲臓器浸潤を認める状態。化学放射線療法中心の治療

食道がんステージ分類の基本原則

食道がんのステージ分類は、国際的なTNM分類と日本食道学会の分類が併用されています。TNM分類では、腫瘍の深達度(T因子)、リンパ節転移の程度(N因子)、遠隔転移の有無(M因子)の3要素を総合的に評価します。

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T因子では、がんが食道壁のどこまで達しているかを評価し、T1a(粘膜内)からT4b(大血管や気管への浸潤)まで細分化されます。N因子は領域リンパ節転移の個数で分類され、N0(転移なし)からN3(7個以上の転移)まで段階があります。

参考)https://shikoku-cc.hosp.go.jp/hospital/learn/results11/

M因子では遠隔転移の有無を評価し、M1aは郭清効果の期待できる領域外リンパ節転移、M1bはそれ以外の遠隔転移を指します。これらの組み合わせにより、0期からIVB期までの病期が決定されます。

食道がんステージ0-I期の特徴と治療選択

ステージ0期は粘膜内にとどまる早期がんで、転移のない状態を指します。この段階では内視鏡的治療(ESD・EMR)が第一選択となり、開胸手術を避けることができます。内視鏡治療の適応は、腫瘍の深さが浅く病変の広がりが限局している場合に限られます。

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ステージI期は粘膜下層までの浸潤で転移のない状態です。5年生存率は79.1%と良好な予後を示しており、早期診断の重要性が明らかです。ただし、食道がんは比較的早い段階からリンパ節転移を起こしやすい特徴があるため、小さな病変でも手術適応となる場合があります。

参考)外科的治療 |食道がん|九州大学病院のがん診療|九州大学病院…

治療選択では、患者の全身状態や年齢、病変の位置なども考慮し、個別化医療の観点から最適な治療法を決定します。早期がんでも患者背景により治療方針が異なるため、多職種チームでの検討が重要です。

食道がんステージII-III期の進行がん管理

ステージII期とIII期は進行がんに分類され、筋層以深への浸潤やリンパ節転移を認める状態です。これらの病期では外科手術が治療の中心となりますが、単独治療ではなく集学的治療が標準的なアプローチとなります。
外科手術では、三領域リンパ節郭清(頸部・胸部・腹部)が行われることが多く、術後合併症のリスクも高くなります。近年では鏡視下手術(胸腔鏡・腹腔鏡手術)の導入により、出血量の減少や術後回復の早期化が図られています。

参考)食道がん|外科|独立行政法人国立病院機構 京都医療センター

手術支援ロボット(ダヴィンチ)の導入により、より精密な手術が可能となり、3次元画像による立体的な臓器認識や手ぶれ補正機能により、安全性と正確性が向上しています。ステージII期の5年生存率は48.8%、III期は28.2%と病期進行に伴い予後が悪化するため、早期の集学的治療介入が重要です。

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食道がんステージIV期の集学的治療戦略

ステージIV期は切除不能がんに分類され、IVa期とIVb期に細分化されます。IVa期では化学放射線療法が標準治療とされ、IVb期では化学療法が中心となります。この段階での5年生存率は9.7%と厳しい予後を示しており、緩和医療の視点も重要となります。

参考)食道がんのステージと治療の選択

切除不能な食道がんでも、通過障害による嚥下困難や気管食道瘻などの症状に対してバイパス術ステント留置などの姑息的手術が検討されます。患者のQOL改善を目的とした治療選択が重要で、多職種チームによる包括的なケアが必要です。
化学療法においては、患者の全身状態や臓器機能を慎重に評価し、個別化治療を実践する必要があります。また、根治的化学放射線療法後のサルベージ手術は高い技術と専門知識を要する治療であり、経験豊富な医療機関での実施が推奨されます。

食道がん年齢別リスク評価と治療調整

食道がんの発症は年齢と強い関連があり、50歳以降から発症率が急増し、60-70代が全体の約70%を占めます。男性では40代から増え始め、人口10万人あたり30代では1人だったものが、60代後半では90人まで増加します。

参考)食道がんができやすい年齢はどのくらいですか? |食道がん

高齢患者における食道がん手術では、2期分割低侵襲手術や多職種周術期管理チームによる支援体制が重要となります。超高齢者や多重合併症を併存する患者では、術前から社会復帰までを見据えた集学的低侵襲外科治療が検討されます。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/1872c01c9173451ddef2ec5c07459218d61c01d0

年齢による生理機能の低下を考慮し、リスク評価に基づく治療法選択が必要です。特に呼吸器・循環器合併症のある高齢者では、開胸手術のリスクが高く、縦隔鏡下非開胸食道切除などの低侵襲手術が選択されることもあります。個々の患者の機能予備能を適切に評価し、安全性と根治性のバランスを考慮した治療戦略の立案が重要です。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/7b18965c05bff59b7cdd806fd70ea9faf1c0efd3