下垂体ホルモンの種類と機能異常

下垂体ホルモンの種類と機能

下垂体ホルモンの分類と特徴
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前葉系ホルモン(6種類)

視床下部からの刺激により分泌される刺激ホルモンと効果器ホルモン

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後葉系ホルモン(2種類)

視床下部で産生され下垂体後葉から直接分泌されるホルモン

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全身への統制機能

内分泌系の中枢として他の内分泌腺の活動を調節する役割


下垂体は「内分泌の司令塔」として、人体の恒常性維持に不可欠な8種類のホルモンを分泌する臓器です 。構造的に前葉と後葉に分けられ、それぞれ異なる機能を持ちます 。前葉は視床下部からの放出ホルモンの刺激を受けて6種類のホルモンを分泌し、後葉は視床下部で産生された2種類のホルモンを貯蔵・放出します 。

参考)ホルモン

下垂体前葉ホルモンの種類と機能

下垂体前葉から分泌される6種類のホルモンは、それぞれ特定の標的器官に作用して重要な生理機能を制御します 。これらのホルモンは、刺激ホルモンと効果器ホルモンの2つのカテゴリーに分類されます 。

参考)下垂体前葉ホルモン|内分泌

刺激ホルモンには以下の4種類があります。

効果器ホルモンには以下の2種類があります。

下垂体後葉ホルモンの働き

下垂体後葉から分泌される2種類のホルモンは、視床下部の神経分泌細胞で産生され、軸索を通じて後葉に輸送されて分泌されます 。これらのホルモンは直接的な生理作用を示す特徴があります 。

参考)下垂体後葉ホルモン|内分泌

抗利尿ホルモン(ADH/バソプレッシン)は腎臓の集合管に作用して水の再吸収を促進し、尿を濃縮します 。また血管収縮作用により血圧調節にも関与し、ストレス反応や社会的行動の制御にも影響を与えます 。

参考)下垂体 – 脳科学辞典

オキシトシンは分娩時の子宮収縮や乳汁排出反射を促進する古典的な機能に加え、母子の絆形成や社会的行動の調節にも重要な役割を果たします 。近年の研究では、オキシトシンが表情認知や社会的認知機能に影響を与えることが明らかになっています 。

参考)長期的・短期的な母乳授乳経験とオキシトシンホルモンが母親の情…

下垂体ホルモンの分泌調節機構

下垂体ホルモンの分泌は、視床下部-下垂体-標的器官軸(HPO軸)により精密に調節されています 。この調節機構では、視床下部が上司、下垂体前葉が中間管理職、各内分泌器官が部下の役割を果たす階層構造が形成されています 。

参考)下垂体|あると内科クリニック|鷺沼の内科/糖尿病内科/内分泌…

多くの下垂体ホルモンは一定間隔で一気に分泌される脈動的分泌パターンを示し、概日リズムに従って変動します 。副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、成長ホルモン、プロラクチンは目覚める直前が最高値となり、眠りにつく直前が最低値になる日内変動を示します 。一方、性腺刺激ホルモンは月経周期に合わせて変動するなど、ホルモンごとに異なる分泌リズムを持ちます 。

下垂体機能異常による疾患

下垂体ホルモンの分泌異常は、機能低下症と機能亢進症の2つのパターンに分類されます 。これらの疾患は患者の生活の質に深刻な影響を与えるため、早期診断と適切な治療が不可欠です 。

参考)下垂体腫瘍(ホルモンの病気)

下垂体機能低下症では、複数のホルモンが同時に不足することが多く、全身倦怠感、疲労感、体重変化、体温調節障害などの非特異的症状が現れます 。内分泌系症状として、甲状腺機能低下症状(代謝低下、寒がり、便秘)、副腎皮質機能低下症状(低血圧、低血糖)、性腺機能低下症状(性欲減退、月経不順)が見られます 。

参考)下垂体機能低下症 – 12. ホルモンと代謝の病気 – MS…

下垂体機能亢進症の代表例である先端巨大症では、成長ホルモンの過剰分泌により手足の肥大や顔つきの変化、血圧・血糖値の上昇、発汗過多、関節痛などが生じます 。腫瘍による圧迫症状として頭痛や視野障害も併発することがあります 。

参考)下垂体性成長ホルモン分泌亢進症 (かすいたいせいせいちょうほ…

下垂体疾患の診断と治療戦略

下垂体疾患の診断には、臨床症状の評価、ホルモン値測定、負荷試験、画像検査の組み合わせが必要です 。ホルモン値は年齢、性別、生理周期、日内変動などの要因により正常範囲が変化するため、負荷試験による詳細な評価が重要となります 。
治療法はホルモン補充療法、薬物療法、外科的治療に大別されます 。ホルモン補充療法では、ACTHやTSH低下症例では副腎皮質ホルモンを先行投与し、その後甲状腺ホルモンの補充を行うなど、適切な順序で治療を進めることが重要です 。

参考)https://kannoukasuitai.jp/archive/file/20240316_1.pdf

下垂体腫瘍に対する外科的治療では、経鼻内視鏡手術が標準的アプローチとなっています 。この手術法は、鼻腔から下垂体に最短距離で到達でき、頭蓋骨を大きく開ける必要がないため患者負担を軽減できます 。術後は創部が鼻腔内の粘膜のみとなり、美容的な問題も少ないという利点があります 。

参考)https://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/nogeka/homepage/images/shimin_2021.pdf