頭蓋骨縫合早期癒合症の手術と費用
頭蓋骨縫合早期癒合症の手術費用の実態
頭蓋骨縫合早期癒合症の手術は、保険適用となる医療行為です。入院費用を含めた総額は、術式や入院期間により大きく異なります。一般的な頭蓋形成術では、3割負担前の医療費総額が100万円以上になるケースも珍しくありません。ただし、実際の患者負担額は高額療養費制度により大幅に軽減されます。
参考)当院における頭蓋(骨)縫合早期癒合症に対する頭蓋形成術の最近…
手術時期は生後3ヶ月から1歳前後が推奨されており、早期に治療を開始することで脳の発達への影響を最小限に抑えることができます。単一縫合の早期癒合では、1歳になるまでに手術を行えば影響は少ないとされています。複数の縫合が早期癒合している症候群性の場合は、より早い時期や複数回の手術が必要となり、それに伴い費用も増加します。
輸血が必要になるケースでは追加費用が発生することもあり、手術の難易度や小さな赤ちゃんへの全身管理が必要なため、専門的な医療体制を持つ医療機関での治療が求められます。
頭蓋骨縫合早期癒合症手術の高額療養費制度と自己負担上限
高額療養費制度を利用することで、月ごとの医療費自己負担額に上限が設定されます。所得区分により自己負担上限額は異なりますが、一般的な所得の世帯では月額8万円程度が上限となります。事前に「限度額適用認定証」を取得しておくことで、医療機関窓口での支払い時から上限額のみの支払いで済みます。
参考)https://ameblo.jp/kamogawa-sakura/entry-11872066488.html
乳幼児医療費助成制度は各自治体が実施しており、多くの自治体では未就学児の医療費を無料または一部負担で受けられます。この制度を利用すれば、高額療養費制度と組み合わせることで、実質的な患者負担をほぼゼロに近づけることが可能です。ただし、助成の内容や対象年齢は自治体により異なるため、事前に居住地の自治体窓口で確認することが重要です。
参考)小児慢性特定疾病医療費助成制度について|西宮市ホームページ
医療費控除の対象にもなるため、確定申告時に治療費や通院費、付き添いの宿泊費などを申告することで、所得税の還付を受けられる可能性があります。
参考)【医師監修】ヘルメット治療の費用は?安くない理由、初診や通院…
頭蓋骨縫合早期癒合症の骨延長術と従来法の費用比較
頭蓋形成術には従来法と骨延長術があり、それぞれ費用構造が異なります。従来法は変形している頭蓋骨を切り出して組み直す方法で、手術時間が長く出血量も多い傾向があります。一方、骨延長術は頭蓋骨に刻みを入れて延長器を装着し、術後に徐々に拡大する方法です。
参考)形成外科|頭蓋骨縫合早期癒合症(狭頭症)治療・手術|順天堂大…
骨延長術の利点として、出血が少なく手術時間の短縮が図れることから、手術当日の費用は従来法より抑えられる傾向にあります。しかし、入院期間が1ヶ月程度と長くなり、延長器を抜去する二次手術が必要になるため、トータルの入院費用は増加する可能性があります。順天堂大学医学部附属順天堂医院の報告では、1999年から2006年までに施行した頭蓋形成術40例のうち77%で骨延長法を採用しています。
術式の選択は患者の年齢、変形の程度、癒合部位により決定され、それぞれの症例に最適な方法が検討されます。
参考)頭蓋縫合早期癒合症
頭蓋骨縫合早期癒合症の内視鏡支援下手術と費用対効果
近年、生後3ヶ月以内の低月齢症例に対して、内視鏡支援下縫合切除術と術後ヘルメット療法を併用する低侵襲治療が行われるようになりました。この方法は、2〜3cmの小さな皮膚切開で済み、手術時間は約1時間、出血量も20ml程度と少ないのが特徴です。入院期間も術後1週間程度と短く、従来法や骨延長術と比較して入院費用を抑えられます。
ただし、内視鏡手術後にはヘルメット療法が必要となり、ヘルメット費用は保険適用外の自費診療となります。ヘルメット治療の費用は医療機関により異なりますが、30万円から60万円程度が相場です。ヘルメット治療費は医療費控除の対象となるため、確定申告で一部還付を受けられます。
参考)【医師解説】ヘルメット治療とは?治療の仕組みや費用、治療の危…
矢状縫合早期癒合による舟状頭蓋が最も多く、全体の5〜6割を占めており、この症例では内視鏡手術の適応となることが多いです。
参考)頭蓋骨縫合早期癒合症
頭蓋骨縫合早期癒合症と小児慢性特定疾病医療費助成制度
頭蓋骨縫合早期癒合症は小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象疾病に指定されています。この制度を利用すると、医療費の自己負担割合が2割となり、さらに所得に応じた月額自己負担上限額が設定されます。申請には指定医による診断書と各種書類が必要で、都道府県や政令指定都市の窓口で手続きを行います。
助成対象となるのは、認定された疾病の治療にかかる医療費で、全国の指定医療機関で受診した健康保険適用分の医療費です。入院時の食事療養費の一部も助成されます。認定を受けるためには、医師による診断と治療の必要性が認められることが条件となります。
令和7年4月1日からは疾病名が「頭蓋骨早期癒合症」から「頭蓋骨縫合早期癒合症」に正式に変更されます。既に認定を受けている方は、自動的に新しい疾病名での認定に移行されます。
参考)https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/251376.pdf
頭蓋骨縫合早期癒合症の症候群性と非症候群性による費用の違い
頭蓋骨縫合早期癒合症は、非症候群性と症候群性に分類され、治療費も大きく異なります。非症候群性は全体の75〜80%を占め、単一の頭蓋縫合の早期癒合が多く、1回の手術で治療が完結することが一般的です。この場合、前述の高額療養費制度や乳幼児医療費助成を組み合わせることで、患者負担を最小限に抑えられます。
症候群性頭蓋骨縫合早期癒合症(クルーゾン症候群、アペール症候群、ファイファー症候群など)では、複数の縫合が早期癒合し、水頭症や中顔面の後退、上気道狭窄などを合併することが多いです。このため、複数回の手術が必要となり、長期的な医療費負担が発生します。遺伝子検査が必要になる場合もあり、検査費用も追加されます。
症候群性では頭蓋内圧亢進により生命に関わることもあるため、1歳よりも早い年齢で手術を行う必要があり、より慎重な周術期管理が求められます。このような複雑なケースでは、脳神経外科、形成外科、小児科など多診療科の連携による治療が必要となり、トータルの医療費も高額になりますが、小児慢性特定疾病医療費助成制度の活用により負担軽減が図れます。
日本頭蓋顎顔面外科学会誌「当院における頭蓋(骨)縫合早期癒合症に対する頭蓋形成術の最近の入院費用および周術期患者負担について」
手術費用や周術期の患者負担に関する詳細なデータが掲載されています。
順天堂大学医学部附属順天堂医院 形成外科「頭蓋骨縫合早期癒合症(狭頭症)治療・手術」
骨延長術を用いた頭蓋形成術の実績と治療方法の参考情報です。