増殖糖尿病網膜症 治療
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増殖糖尿病網膜症 治療 適応 病期分類
増殖糖尿病網膜症(PDR)は、新生血管(乳頭新生血管/網膜新生血管)を形成し、硝子体出血・網膜前出血・線維血管膜・牽引性網膜剝離といった“構造破綻”に直結する段階です。ここまで進むと、症状が出てからでは視機能温存が難しくなるため、「病期分類に基づく適切な時期の治療介入」が重要とガイドラインでも強調されています。
実臨床では、国際重症度分類・Davis分類・新福田分類が混在しやすく、紹介状や連携手帳の表記が一致しないことがあるため、所見(新生血管の有無、硝子体出血、牽引所見)を“翻訳”して共有する姿勢が必要です。分類の目的はラベル付けではなく、「増殖化の確率」と「治療選択(光凝固/手術/薬物併用)」を合意するためにあります。
また、PDRは眼底所見の割に自覚症状が乏しいことがあり、黄斑浮腫や硝子体出血、牽引性網膜剝離が起きて初めて視力障害として認識されるケースもあるため、糖尿病診断時点からの眼科受診の啓発が治療成績そのものを左右します。
【臨床での確認ポイント(例)】
・新生血管:乳頭/網膜、活動性、出血の有無
・牽引:黄斑牽引、牽引性網膜剝離の範囲
・透光体:硝子体出血で眼底が見えるか(治療手段が変わる)
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/411c6e030af14424611b2dc5d4430f61e032a771
増殖糖尿病網膜症 治療 網膜光凝固 汎網膜光凝固
増殖糖尿病網膜症の治療でまず中核になるのが、虚血網膜をターゲットにしてVEGFドライブを弱める網膜光凝固(汎網膜光凝固:PRP)です。進行した網膜症の進行阻止に手術や光凝固などの眼科的治療が推奨されることが、糖尿病診療ガイドラインでも明示されています。
PRPは「新生血管を直接焼く」よりも、「虚血網膜の酸素需要を下げ、虚血刺激を減らす」ことが本質で、時間をかけて新生血管の活動性を落とす設計になります(したがって、今日やって明日ゼロになる治療ではありません)。この“時間差”を患者説明に織り込むと、治療中断(通院離脱)を減らしやすくなります。
一方、PRP後の視機能にはトレードオフがあり、ガイドラインでも汎網膜光凝固後の周辺感度低下や視野狭窄に触れつつ、必要な症例では進行阻止の利益が上回るという整理で運用されています。現場では、運転や暗所作業の有無など生活背景を確認し、視機能の“困りごと”を事前に言語化しておくと説明がスムーズです。
【PRP前後で起きやすい論点(医療者向けメモ)】
・治療適応:重症非増殖~増殖初期、活動性PDR、硝子体出血を伴う場合は可及的速やかに検討
・治療後評価:新生血管の退縮、出血の再発、黄斑浮腫の増悪(併存DMEがあると特に)
・患者説明:目的(失明予防)と副作用(視野・暗順応)をセットで提示pmc.ncbi.nlm.nih+1
増殖糖尿病網膜症 治療 硝子体手術 硝子体出血 牽引性網膜剝離
硝子体出血が遷延して眼底が評価できない、牽引性網膜剝離が黄斑を脅かす、線維血管膜による牽引が強い――このように“物理的に視機能を壊す要素”が前面に出ると、硝子体手術が選択肢の中心になります。糖尿病診療ガイドラインでも、硝子体手術は硝子体出血や牽引性網膜剝離など視力障害の原因病変を除去する目的で行われ、進行した増殖網膜症に対する有用性がRCTで確認されている、という位置づけです。
手術の理解を難しくするのは、「出血を取れば終わり」ではなく、出血の背景にある増殖膜・牽引・虚血を同時に“片づける”必要がある点です。ガイドラインでも、眼底所見として線維血管膜、牽引性/裂孔原性網膜剝離、硝子体出血の把握が重要で、所見に応じて網膜硝子体手術や光凝固の範囲評価が必要とされています。
さらに、術前後の合併症リスク(例:血管新生緑内障、白内障進行、再出血)を見越してフォロー計画を立てることが、実は“術式選択”と同じくらい重要です。特に糖尿病患者は前眼部合併症も多く、眼圧・隅角・虹彩ルベオーシスの観察が診療の安全性を左右します。
【硝子体手術を検討する状況(整理)】
・遷延する硝子体出血で眼底治療(PRPなど)が困難
・黄斑を含む/脅かす牽引性網膜剝離
・線維血管膜による高度牽引、網膜前出血の反復
・術後管理まで含めた通院継続が現実的(ここが見落とされがち)pmc.ncbi.nlm.nih+1
増殖糖尿病網膜症 治療 抗VEGF 併用 注意
抗VEGFは糖尿病網膜症の病態(虚血→VEGF→新生血管)に対して理屈が明快で、実際に「PRP vs ranibizumab」のような臨床試験も存在し、近年はPDRへの抗VEGFの有用性が国際的に議論されてきました。糖尿病診療ガイドラインでも、PDR治療は網膜光凝固や進行例の硝子体手術が選択される一方で、ラニビズマブ併用による新生血管発症抑制の報告に触れ、抗VEGFの有用性が検討されている、と記載されています。
ただし日本の臨床では“使えるか”が別問題で、同ガイドラインは「本邦では増殖糖尿病網膜症に対する抗VEGF薬の使用は認可されていない」と明記しており、適応外使用の位置づけ・説明・施設ルールが重要になります。さらに、抗VEGF後の眼内炎リスクや、脳血管障害・心筋梗塞など血管イベントへの注意が必要とも記載されています。
意外に見落とされやすいのは、抗VEGFの“効いている期間”が有限である点です。通院間隔が空きやすい患者では、抗VEGF単独での疾患コントロールが破綻しやすく、結果として硝子体出血や牽引のイベントを呼び込むことがあります(治療選択は薬剤の強さだけでなく、受診継続性とセットで決めるのが現実的です)。
【抗VEGFを考えるときの臨床論点】
・目的:新生血管の活動性低下、出血リスク低減、手術前の血管新生活動性コントロールなど
・制約:日本での適応、説明と同意、院内ルール
・安全性:眼内炎、全身血管イベント、既往(脳・心血管疾患)確認semanticscholar+1
増殖糖尿病網膜症 治療 血糖コントロール early worsening
検索上位で“眼科治療だけ”に偏る記事が多い一方、医療従事者向けに重要なのは、全身管理がPDRの発症・再燃と直結する点を、眼科側の言葉で具体化することです。糖尿病診療ガイドラインは、網膜症の発症・進行抑制に血糖コントロールが推奨される(推奨グレードA)と明確に述べています。
さらに“意外と知られているようで運用が難しい”のが、急速な血糖改善で網膜症が一時的に悪化するearly worseningです。糖尿病網膜症診療ガイドラインは、急速な血糖コントロールが網膜症を悪化させる現象があり、すでに網膜症が存在する場合は開始後早期の悪化所見に注意し、内科医と連携して緩やかな血糖改善を目指すことが望ましい、と記載しています。
この論点は、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬など“薬剤名”の話にすり替わりがちですが、現場で効くのは「HbA1cがどれくらいの速度で変化しているか」「直近で治療強化が入っていないか」「眼底フォロー間隔を短縮すべきタイミングか」という運用です。PDR治療は眼科内で完結せず、受診間隔の設計(例:網膜症が進んだ例ほど頻回受診が効果的)まで含めて、治療計画として提示する必要があります。
【連携で伝えると効果的な項目】
・直近3か月のHbA1c推移(“値”より“変化速度”が重要)
・低血糖の頻度(重症低血糖はリスクとして言及あり)
・血圧、腎機能、脂質(同じくリスク因子として整理)
・眼科フォロー間隔:網膜症の程度・血糖状態・罹病期間に応じて短縮/延長を検討semanticscholar+1
増殖糖尿病網膜症の診療指針(分類・治療・受診間隔などの実務に直結)。
糖尿病診療ガイドライン2024「糖尿病網膜症」章(推奨グレード、PRP・硝子体手術・抗VEGFの位置づけ)。
