増殖性網膜剥離と硝子体手術と増殖膜

増殖性網膜剥離と増殖膜

増殖性網膜剥離と増殖膜の要点
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病態の核心

増殖膜が収縮して牽引が強まり、通常の網膜剥離より復位が難しくなる。

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治療の中心

硝子体手術で増殖膜を除去し、レーザーで裂孔周囲を凝固し、ガス/シリコンオイルで固定する。

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術後説明の山場

体位制限、再手術(特にシリコンオイル抜去)、再発の可能性を具体的に共有する。


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増殖性網膜剥離の増殖膜と収縮

増殖性網膜剥離で臨床的に厄介なのは、「剥がれている」こと自体より、網膜表面や網膜の裏面に生じた増殖組織(増殖膜)が時間経過とともに硬くなり、収縮して牽引力を生む点です。

この牽引が残ると、たとえ網膜下液を排出して一見“復位”できても、網膜にシワが残って再接着が不安定になったり、再剥離を誘発したりします。

現場の説明では「膜が張って縮むことで、網膜が引っ張られて戻りにくくなる」と言語化すると、患者の不安(なぜ難治なのか、なぜ複数回手術があり得るのか)に直結しやすいです。

【参考:病態と手術の全体像(増殖膜、ガス/シリコンオイル、体位制限、再手術の説明に有用)】

倉敷成人病センター 眼科「増殖硝子体網膜症」

増殖性網膜剥離の硝子体手術とレーザー

増殖性網膜剥離(増殖性変化を伴う難治例)では、硝子体手術で増殖膜を可能な限り取り除き、網膜の下に溜まった液体を除去して網膜を復位させ、裂孔(原因となった穴)の周囲をレーザーで凝固する、という流れが核になります。

通常の網膜剥離の硝子体手術でも、牽引している硝子体を切除し、空気置換で復位→裂孔周囲の網膜光凝固(レーザー)→ガス注入という手順が説明されており、増殖性網膜剥離では「膜を徹底的に切除する工程」がより前面に出てきます。

術前説明では「レーザーは裂孔周囲を“溶接”する役割」「復位は“位置合わせ”、固定は“内側から押さえる”」と役割分担で話すと、手術が複合技であることが伝わりやすいです。

【参考:硝子体手術と強膜内陥術、レーザー、ガス、シリコンオイル、術後注意の全体像】

眼科三宅病院「網膜剥離、増殖性硝子体網膜症」

増殖性網膜剥離のガスと体位制限

術後管理で見落としやすいのが、ガスやシリコンオイルといった「眼内を置換して網膜を押さえる材料」によって、生活上の制限やリスクが変わる点です。

ガスを入れた場合、裂孔が上になる姿勢(うつむき・横向き等)の体位制限が重要で、ガスの浮力を利用して網膜を内側から押さえ、レーザー凝固斑が癒着して再接着しやすくする、という説明がされています。

また、ガスが残存している状態で飛行機など気圧の低い環境に行くと眼内ガスが膨張し眼圧が極端に高くなる危険があるため、予定がある場合は事前相談が必要という注意喚起が明確です。

患者説明を厚くする工夫として、体位制限は「期間」よりも「なぜ必要か(力学)」を添えると遵守率が上がりやすい印象があります。たとえば「ガスは風船のように上へ浮くので、裂孔を上に向けると“ふた”になる」という比喩は、医療従事者間でも共有しやすい説明フレームです。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/b63ebfca0a3c2e792964161498b7a5f3ccb178b2

増殖性網膜剥離のシリコンオイルと再手術

増殖性網膜剥離の重症例では、増殖膜を切除して網膜のシワを伸ばしたうえで、裂孔周囲をレーザーで処置し、眼内をシリコンオイルで満たして固定する、という方針が示されています。

シリコンオイルは自然吸収されないため、網膜がしっかり再接着したと確認できた後に抜去の再手術が必要で、一定期間(例:数か月)を見込む説明が重要です。

さらに、術後に増殖膜や網膜剥離が再発して複数回手術が必要になることがある一方、「再増殖は永遠に続くわけではない」という見通しも併記されており、希望と現実のバランスを取った説明材料になります。

臨床現場では「オイルを入れた=終わり」ではなく、「固定力と引き換えに“抜くイベント”が一つ増える」点を、家族を含めた同意形成の場で明確化することが安全側に働きます。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/f41e8a460285301f3553f31cccd643d7780d434a

増殖性網膜剥離の説明と心理

(独自視点:検索上位の“手術解説”に寄りすぎない、説明設計の話)

増殖性網膜剥離は、患者側の体験として「一度治ったと言われたのに再発する」「手術が複数回になる」「体位制限が生活を崩す」というストレスが重なりやすく、医療者の説明が“情報量”だけでなく“順序”と“言葉選び”で成否を分けます。

たとえば説明順は、①失明リスクと治療が必要な理由→②増殖膜=難治化の正体→③硝子体手術とレーザーの役割→④ガス/シリコンオイルと体位制限→⑤再手術の可能性、のように「納得の階段」を作ると、途中の不安(なぜここまでやるのか)が減りやすいです。

また、予後の話では「網膜が治っても元の視力に回復しないことが多い」「視力改善に時間がかかることがある」といった現実を早い段階で共有しつつ、通院頻度や経過観察の見通し(退院後の受診間隔など)もセットで示すと、漫然とした恐怖が具体化されやすいです。

  • 説明で特に誤解されやすい語:復位(位置が戻る)=視力が戻る、ではない。
  • 強調したい因果:増殖膜の収縮→牽引→再接着困難/再剥離のリスク。
  • 行動に直結するポイント:体位制限と気圧変化(飛行機等)の注意。
論点 現場での説明要点 根拠
難治性の理由 増殖膜が収縮し、網膜を引っ張って復位・再接着を妨げる。
手術の柱 増殖膜除去+網膜下液除去で復位+裂孔周囲レーザー+ガス/シリコンオイルで固定。
術後生活 ガスは体位制限が重要で、残存ガスがある状態での飛行機は眼圧上昇リスク。
再手術 シリコンオイルは自然吸収されず、抜去の再手術が必要になることがある。