ゾニサミド先発とエクセグランとトレリーフ
ゾニサミド先発エクセグランの適応と特徴
ゾニサミド先発のルーツは、住友ファーマが合成した抗てんかん薬エクセグランであり、1989年から国内で発売されてきた比較的歴史の長い薬剤です。 てんかん領域では、混合発作、全般強直間代発作、焦点性てんかんなど幅広い発作型に適応を持ち、日本の成人てんかん薬物療法ガイドラインでも既存薬として位置づけられています。
エクセグランはT型カルシウムチャネル遮断、ナトリウムチャネル遮断、炭酸脱水酵素阻害作用など複数のメカニズムを併せ持ち、興奮性ニューロンの過剰発火を抑制する点が特徴です。 また、他の抗てんかん薬に比べ体重減少や食欲低下が比較的目立つという報告もあり、肥満を合併する患者ではメリットとなる一方、低体重や高齢者では注意が必要になります。
エクセグランの先発薬価は、錠100mgで1錠あたり15円、散20%で1gあたり29.9円と比較的低薬価であり、既にジェネリックも豊富に存在します。 例えば、ゾニサミド錠100mg「アメル」やゾニサミド錠100mgEX「KO」などが後発品として収載されており、薬価は11.7円と先発よりさらに低く設定されています。 抗てんかん薬は長期投与になることが多いため、ゾニサミド先発と後発のコスト差がトータルの医療費に与えるインパクトは決して小さくありません。
ゾニサミド先発トレリーフのパーキンソン病への位置づけ
ゾニサミド先発は、後年パーキンソン病領域でトレリーフとして再登場し、レボドパ賦活剤という独特のポジションを築きました。 トレリーフOD錠25mg・50mgはパーキンソン病治療薬として承認されており、レボドパ製剤との併用でwearing-off症状の改善やon時間の延長に寄与することが報告されています。
トレリーフはドパミン神経終末でのドパミン代謝調節に加え、一部MAO-B阻害作用や神経保護作用が示唆されており、単なる補助薬以上の役割を期待する報告も見られます。 さらに、日本ではレビー小体型認知症に伴うパーキンソニズムに対する適応も取得しているゾニサミド製剤があり、パーキンソン病様症状へのアプローチの幅を広げています。
薬価面では、トレリーフOD錠25mgが1錠618.5円、50mgが920.7円と、ゾニサミド先発エクセグランより大幅に高い設定になっています。 一方で、トレリーフのAG(ゾニサミドOD錠25mgTRE「SMPP」など)や各種ジェネリック(ゾニサミドOD錠25mgTRE「サワイ」「日医工」など)は25mg1錠275円、50mg1錠414.4円と、先発の半額以下に抑えられています。 パーキンソン病治療では薬剤数が増えがちなため、ゾニサミド先発と後発の使い分けを経済性の観点から説明できると、患者の納得感も高まりやすくなります。
参考)https://med.sawai.co.jp/preview.php?prodid=4821
ゾニサミド先発とジェネリックの薬価・剤形の違い
ゾニサミド先発とジェネリックの比較では、薬価だけでなく剤形とブランドの違いも押さえておくと処方設計がしやすくなります。 てんかん領域ではエクセグラン錠・散が先発として存在する一方、錠・散ともに複数社のジェネリックが収載されており、同効薬比較サイトでも「先発品(後発品あり)」として整理されています。
| 製品名 | 区分 | 規格 | 薬価(1単位) |
|---|---|---|---|
| エクセグラン錠100mg | 先発 | 100mg錠 | 15円 |
| ゾニサミド錠100mg「アメル」 | 後発 | 100mg錠 | 11.7円 |
| トレリーフOD錠25mg | 先発 | 25mgOD錠 | 618.5円 |
| ゾニサミドOD錠25mgTRE「サワイ」 | 後発 | 25mgOD錠 | 275円 |
| ゾニサミドOD錠25mgTRE「日医工」 | 後発 | 25mgOD錠 | 275円 |
パーキンソン病領域のゾニサミドOD錠TREシリーズは、各社から25mg・50mgのOD錠が発売されており、薬価はほぼ横並びで、先発トレリーフの約半額〜3分の1程度に設定されています。 エイジングを考慮すると、飲み込みやすさや服薬アドヒアランスの観点からOD錠へのスイッチが望ましい症例も多く、先発・後発の選択だけでなく剤形選択も重要な検討ポイントになります。
ゾニサミド先発の血中濃度と相互作用・意外なリスク
ゾニサミド先発は、他の抗てんかん薬との併用や減量・中止のタイミングで血中濃度が大きく変動しうる点が知られています。 フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタールなど肝代謝酵素を誘導する薬剤を減量・中止すると、ゾニサミドの血中濃度が上昇して中毒症状を引き起こす可能性があり、日本の添付文書でも注意喚起されています。
さらに、ゾニサミドと三環系・四環系抗うつ薬、MAO-B阻害薬などとの併用で、高血圧や失神、不全収縮、発汗、てんかん発作の変化、筋強剛などの症状が現れ、死亡例も報告されているというインタビューフォームの記載は、意外と知られていないリスク情報です。 パーキンソン病患者ではうつ症状を合併しやすく、セロトニン作動薬やMAO-B阻害薬が併用されるケースも多いため、ゾニサミド先発(トレリーフ)を追加する際は、血圧や意識レベル、運動症状の悪化を慎重にフォローする必要があります。
参考)パーキンソン病の治療薬:各論⑤ ゾニサミド(トレリーフⓇ) …
また、ゾニサミドは炭酸脱水酵素阻害作用に起因して代謝性アシドーシスや尿路結石リスクが上昇することがあり、長期投与時には血中重炭酸イオンのモニタリングや水分摂取指導が推奨されます。 体重減少も25mg群で約5%、50mg群で約5%以上と一定頻度でみられるため、パーキンソン病患者のサルコペニアを助長しないよう栄養状態の評価も欠かせません。
参考)ゾニサミド(エクセグラン・トレリーフ)の特徴・作用・副作用に…
ゾニサミド先発を活かす臨床的なひと工夫(独自視点)
ゾニサミド先発の特徴を整理すると、「抗てんかん薬としての背景」「パーキンソン病・レビー小体型認知症への適応」「体重減少傾向」「血中濃度変動と相互作用」という複数の性質が同時に見えてきます。 これらを逆手に取り、肥満を合併したてんかん患者や、体重増加しやすい他剤(バルプロ酸など)からの切り替え時にゾニサミド先発を選択することで、発作コントロールと体重管理の両面を狙うという戦略も考えられます。
パーキンソン病領域では、レボドパの増量でジスキネジアが悪化してしまう症例に対し、トレリーフからゾニサミドOD錠TREなどへのスイッチあるいは増量を検討することで、on時間を維持しながらレボドパ用量を抑えることが期待できます。 また、レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズムで、抗コリン薬やドパミンアゴニストでは認知機能悪化が心配なケースに、ゾニサミド先発系製剤を少量から導入するという発想も、認知症診療とパーキンソン病診療の橋渡しになる視点です。
さらに、ゾニサミド先発とジェネリックの薬価差を患者に具体的な数字で示し、「年間でどの程度コストが変わるか」を共有すると、長期服薬への納得感が高まります。 てんかん・パーキンソン病はいずれも慢性疾患であるからこそ、ゾニサミド先発の特性を理解したうえで、病態・合併症・生活背景にあわせたオーダーメイドな処方を検討してみてはいかがでしょうか。
パーキンソン病とゾニサミドの作用機序や臨床データを確認したいときに有用な総説的解説です。
ゾニサミド先発とジェネリック、各社製剤の薬価を一覧で確認する際に便利なデータベースです。
成人てんかんの薬物療法におけるゾニサミドの位置づけと相互作用の整理に役立つガイドラインです。