絶対半盲と視野検査と視交叉病変

絶対半盲と視野検査

絶対半盲の臨床で押さえる要点
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「絶対」は視野の深さ

絶対半盲は「半分の視野が欠ける」だけでなく、その欠損が強い光でも反応しない“絶対暗点”レベルである点が重要です。

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視野検査で定量化する

ゴールドマン視野計・静的視野計で欠損の形(垂直経線を守るか等)と深さ(絶対/比較)を分けて評価します。

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半側空間無視と混同しない

半盲は視覚入力の欠損、半側空間無視は注意の偏りが本質で、代償や介入も変わります。


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絶対半盲の定義と絶対暗点

絶対半盲という言い回しは、臨床の現場では「半盲(hemianopia)のうち、欠損側が“絶対暗点”として振る舞う」ことを強調したい場面で使われやすい概念です。半盲自体は「視野の半分が見えない」状態で、視路(視交叉より後方を含む)や視覚中枢の障害で生じます。半盲のタイプ(同名半盲・異名半盲など)は病変局在の推定に直結するため、まず“どの半分が欠けるか”を言語化できることが重要です。半盲の背景には脳梗塞・脳出血などの脳血管障害、腫瘍、外傷などがあり、原因検索には画像検査が組み合わされます。

一方で「絶対暗点」は、提示された刺激が“いちばん強い光でも感知できない”領域を指します。臨床的には、暗点を絶対暗点と比較暗点に分けて考えると、病態の深さ(機能脱落の程度)が整理しやすくなります。例えば緑内障の説明でも、比較暗点が進行して絶対暗点へ変化することがある、という形で“深さ”が語られます。したがって、絶対半盲を説明するなら「欠損の形(半盲)+欠損の深さ(絶対暗点)」の二軸で捉えるのが、チーム内の共通理解を作りやすい実務的な言い方です。

また、制度・書類の文脈では「暗点は絶対暗点を採用し、比較暗点は採用しない」など、評価上“絶対暗点”が重視される場面があります。診断書作成や等級判定の補助をする職種(医師、視能訓練士、医療ソーシャルワーカーなど)が関わる場合、「絶対半盲」という表現が、単なる“見えにくい”ではなく“見えない(強い刺激でも反応しない)”を示す意図で使われている可能性を意識すると齟齬が減ります。

参考:視野障害の評価で「暗点は絶対暗点を採用」とする記載(制度・書類の文脈の根拠)

眼の障害に関する障害等級認定基準について 別紙

絶対半盲の視野検査(ゴールドマン視野計・静的視野計)

半盲の評価では、視野欠損の“形”と“境界”をまず押さえます。典型的な半盲は垂直経線を守る(vertical meridian respecting)ため、検査結果を見たときに「欠損が注視点を通る垂直線を越えないか」という観点が病変局在の推定に効きます。視野検査の説明としては、半盲は「注視点を通る垂直点を境として、両眼の視野の左右いずれかが見えなくなる」もの、と整理されます。

次に“絶対”を評価するには、刺激強度に対する反応を見ます。ゴールドマン視野計の説明では、マリオット盲点が“絶対暗点”として表れること、また暗点には絶対暗点と比較暗点があることが、比較的わかりやすく解説されています。視野結果を読む側としては、「欠損がある」だけでなく「どの視標でも反応しない(絶対暗点)」のか、「強い視標なら反応する(比較暗点)」のかを言語化し、患者説明やリハビリ依頼の情報として渡せると質が上がります。

実務でよくある落とし穴は、視野検査の“深さ”を十分に拾えていないまま、病変局在だけを議論してしまうことです。例えば「半盲っぽい」訴えがあっても、検査では境界が不鮮明だったり、疲労や注意で反応が揺れたりします。医療従事者としては、検査条件(固視、理解、疲労、失認の有無)を含めて結果を読む必要があります。加えて、視野の欠損が“絶対暗点”であるかどうかは、転倒リスクや屋外歩行の危険性評価、運転可否の相談など、患者の生活支援の現場に直結します。

参考:ゴールドマン視野計での絶対暗点(マリオット盲点)や比較暗点の説明

ゴールドマン視野計 | 池袋サンシャイン通り眼科診療所
池袋駅前の一般眼科、池袋サンシャイン通り眼科診療所の「ゴールドマン視野計」です。見える範囲と、見える光の感度を調べる検査機器です。病気の診断の他に身体障害者の視覚障害による等級判定にも用いられます。

絶対半盲の原因(視交叉・視索・視放線・後頭葉)

半盲の病変局在は「視交叉より前か後か」で大きく分かれます。視交叉部の障害は異名半盲(代表例:下垂体腺腫による両耳側半盲)を起こしやすく、視交叉後(視索、外側膝状体、視放線、後頭葉)では同名半盲が典型です。実臨床では、脳血管障害が半盲の重要な原因として挙げられ、後頭葉や視放線の損傷で同名半盲が生じ得ます。

局在のディテールとして、視放線には側頭葉を回る束(いわゆるマイヤーループ)と頭頂葉を回る束がある、という理解は、四分盲や上1/4盲などの説明で役立ちます。視放線の走行に沿って「どの視野が欠けるか」が変わるため、神経内科・脳外科・眼科・リハビリの共通言語として押さえておく価値があります。さらに、視交叉では交叉線維と非交叉線維があり、非交叉線維の障害が視野欠損に関係する、という神経眼科学的な基本も、異名半盲の理解の土台になります。

原因疾患の鑑別では、半盲を訴える患者に対して、視野検査だけで終えず、原因検索としてCT/MRI等の画像検査へつなぐ臨床判断が重要です。医療情報サイトでも、脳梗塞や脳腫瘍、外傷などが原因となり得るため頭部CTやMRIを行う、という流れが説明されています。特に“急に欠けた”“頭痛や麻痺がある”“片側のぶつかりが増えた”などの状況では、絶対半盲という言葉以前に、緊急性評価が優先されます。

参考:半盲の原因疾患と画像検査(CT/MRI)

半盲について
半盲とは、視野の半分が見えなくなってしまう状態を指します。半盲には、同名半盲や異名半盲といった種類があります。脳の病気や外傷などが原因となります。原因に対する治療が行われ、手術や放射線療法、化学療法などが選択されます。半盲の症状が固定...

絶対半盲と半側空間無視の違い

半盲(視野欠損)と半側空間無視(注意障害)は、現場で混同されやすい代表例です。半盲は視覚情報そのものの入力が欠損しており、患者は「見えない」ことを自覚して頭位や眼球運動で代償しようとすることが多い、と説明されます。これに対して半側空間無視は、空間性注意が偏ることで、左側(または右側)の情報が“意識に上りにくい”状態として理解されます。つまり、同じ「左側にぶつかる」でも、視野欠損なのか注意の偏りなのかで、介入の方向性が変わります。

臨床での鑑別のコツは、視野検査(特に両眼での評価)と、机上課題(線分二等分、抹消試験など)や日常場面(食事の皿の残し方、車椅子操作、病室内の探索)を組み合わせて、説明モデルを二重化することです。半盲なら視野の地図として欠損が再現性を持って現れやすい一方、無視は課題や注意負荷で変動しやすいことがあります。さらに、半盲と無視が併存するケースもあり、単純に二択にしない姿勢が安全です。

チーム医療の観点では、医師が局在診断と原因検索を行いつつ、視能訓練士が視野欠損の定量と生活上の困りごとに近い評価を行い、OT/PTが探索訓練や環境調整を提案する、という役割分担が噛み合うと、患者の転倒・衝突リスクを下げやすくなります。半側空間無視については学会ページ等でも“空間性注意の偏り”として説明されており、半盲との違いを言語化する際の参考になります。

参考:半側空間無視の基本概念(空間性注意の偏り)

半側空間無視:左のほうを見てくれません|神経心理学的な代表的症候|神経心理学への誘い|日本神経心理学会

絶対半盲の独自視点:盲視(blindsight)と“見えていないのに反応する”

ここは検索上位の一般向け解説では触れられにくい、しかし医療従事者が知っておくと患者理解が深まる論点です。視覚野(一次視覚野V1)損傷により同名半盲があっても、主観的には「見えない」と報告しながら、刺激の検出や弁別が一定程度できる現象が報告されており、これが盲視(blindsight)として研究されています。つまり、視野検査上は“絶対半盲に近い”所見に見えても、行動レベルでは残存処理が存在する可能性があり、患者の「見えない」という言葉だけで機能を決めつけない姿勢が重要になります。

盲視の臨床的な含意は2つあります。一に、リハビリの目標設定で「欠損をゼロに戻す」以外の現実的な道(探索戦略の学習、注意配分、視線誘導、環境調整)を取りやすくなることです。第二に、患者が自分の反応の一部を「気のせい」「たまたま」と捉えて不安になるのを、医療者側が説明で支えられることです。視覚の“意識”と“処理”が必ずしも一致しない、という前提を共有できると、訓練の納得度が上がりやすい場面があります。

もちろん、盲視は診療で簡単に判定できるものではなく、研究的手法(刺激提示条件、反応バイアスの制御など)が絡みます。それでも「視野欠損=処理ゼロ」と短絡しない視点は、特に若手教育や多職種カンファレンスで役立ちます。視覚皮質損傷後の残存視機能(盲視)を扱ったレビューや研究は、現場の説明の引き出しを増やす資料として参照価値があります。

参考:盲視(blindsight)の概念と、絶対的な皮質盲の視野で残る機能の議論

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2805433/