喘息の薬一覧|吸入薬の効果と種類を医師が解説

喘息の薬一覧

喘息治療薬の分類と特徴
💊

吸入ステロイド薬(ICS)

気道の炎症を強力に抑制する喘息治療の基本薬

🫁

気管支拡張薬

LABA・LAMAが気管支を広げて呼吸を楽にする

配合剤

複数の作用機序を組み合わせた効率的な治療選択

喘息の薬の基本分類と治療効果

喘息治療に使用される薬剤は、主に「長期管理薬(コントローラー)」と「発作治療薬(リリーバー)」に分類されます。長期管理薬が治療の基本となり、その中でも吸入ステロイド薬(ICS)が最も重要な位置を占めています。

主要な薬剤分類:

  • ICS(吸入ステロイド薬):気道の慢性炎症を抑制
  • LABA(長時間作用性β2刺激薬:12時間以上の気管支拡張作用
  • LAMA(長時間作用性抗コリン薬):アセチルコリンをブロックして気管支拡張
  • SABA(短時間作用性β2刺激薬):発作時の救急薬
  • SAMA(短時間作用性抗コリン薬):短時間の気管支拡張作用

吸入ステロイド薬が普及してから、喘息死や入院患者数が大幅に減少したことが報告されており、現在の喘息治療における中核的な役割を担っています。ICSの効果として、肺機能改善、気道過敏性低下、症状抑制、発作頻度・重症度の軽減、QOL改善、入院リスク減少が証明されています。

治療効果の機序:

  • 気道の炎症細胞浸潤を抑制
  • 炎症性メディエーターの産生を阻害
  • 気道壁のリモデリングを予防
  • 気道過敏性を長期的に改善

喘息の薬の吸入ステロイド単剤一覧

吸入ステロイド単剤は喘息治療の基礎となる薬剤群です。各製剤には特徴的な薬物動態と臨床効果があります。

主要なICS単剤:

パルミコート(ブデソニド) 🌟

  • 配合成分:ブデソニド
  • 剤形:タービュヘイラー、吸入液
  • 特徴:小児喘息治療で長年使用され、高い安全性を持つ
  • 使用法:1日1-2回吸入
  • 適応:気管支喘息、COPD

フルタイド(フルチカゾンプロピオン酸エステル)

  • 配合成分:フルチカゾンプロピオン酸エステル
  • 剤形:エアゾール、ディスカス
  • 特徴:強力な抗炎症作用、全身への影響が少ない
  • 使用法:1日2回吸入

オルベスコ(シクレソニド)

  • 配合成分:シクレソニド
  • 剤形:HFAエアゾール
  • 特徴:肺内で活性化されるプロドラッグ型
  • 使用法:1日1-4回吸入(200μg規格)

キュバール(ベクロメタゾンジプロピオン酸エステル)

  • 配合成分:ベクロメタゾンジプロピオン酸エステル
  • 剤形:エアゾール
  • 特徴:従来から使用されている標準的なICS

アズマネックス(モメタゾンフランカルボン酸エステル)

  • 配合成分:モメタゾンフランカルボン酸エステル
  • 剤形:ツイストヘラー
  • 特徴:1日1回投与で効果持続

副作用として口腔カンジダ症、嗄声、口腔内乾燥などが知られており、吸入後の十分なうがいが重要です。また、高用量の長期投与では副腎皮質機能への影響も報告されています。

喘息の薬のLABA配合剤一覧

LABA(長時間作用性β2刺激薬)とICSの配合剤は、抗炎症作用と気管支拡張作用を併せ持つ効率的な治療選択肢です。

2剤配合(ICS+LABA)の主要製剤:

アドエア(サルメテロール/フルチカゾン) 💪

  • 配合成分:サルメテロール + フルチカゾンプロピオン酸エステル
  • 剤形:ディスカス、エアゾール
  • 強さランキング:大関クラス(500は大関、250は関脇)
  • 特徴:250ディスカスと125エアゾールはCOPD適応あり
  • 使用法:1日2回吸入

レルベア(ビランテロール/フルチカゾンフランカルボン酸エステル)

  • 配合成分:ビランテロール + フルチカゾンフランカルボン酸エステル
  • 剤形:エリプタ(ドライパウダー吸入器)
  • 強さランキング:大関クラス(200は大関、100は関脇)
  • 特徴:1日1回投与、100エリプタは喘息・COPD両方に適応
  • 使用法:1日1回吸入

シムビコート(ホルモテロール/ブデソニド) 🔄

  • 配合成分:ホルモテロール + ブデソニド
  • 剤形:タービュヘイラー
  • 強さランキング:関脇クラス
  • 特徴:維持療法+発作時屯用可能(SMART療法)
  • 使用法:1日4回まで吸入可能

アテキュラ(インダカテロール/モメタゾン)

  • 配合成分:インダカテロール + モメタゾンフランカルボン酸エステル
  • 剤形:吸入用カプセル
  • 強さランキング:大関・関脇クラス
  • 特徴:デスモプレシン併用時は禁忌
  • 使用法:1日1回吸入

フルティフォーム(ホルモテロール/フルチカゾン)

  • 配合成分:ホルモテロール + フルチカゾンプロピオン酸エステル
  • 剤形:エアゾール
  • 強さランキング:関脇クラス
  • 使用法:1日4回まで吸入

アニュイティ(ビランテロール/フルチカゾンフランカルボン酸エステル)

  • 配合成分:ビランテロール + フルチカゾンフランカルボン酸エステル
  • 剤形:エリプタ
  • 強さランキング:関脇クラス(200規格)
  • 使用法:1日1回吸入

これらの配合剤は、単剤の併用と比較して服薬アドヒアランスの向上と治療効果の最適化が期待できます。特にエリプタデバイスを使用する製剤は1日1回投与で患者負担が軽減されます。

喘息の薬の3剤配合剤一覧

3剤配合剤(ICS+LABA+LAMA)は、重症喘息やCOPDの治療において画期的な選択肢となっています。

トリプル配合剤の一覧:

エナジア(インダカテロール/モメタゾン/グリコピロニウム) 👑

  • 配合成分:インダカテロール + モメタゾンフランカルボン酸エステル + グリコピロニウム
  • 剤形:吸入用カプセル
  • 強さランキング:横綱・大関クラス
  • 製造元:ノバルティス(スイス)
  • 特徴:最強クラスの抗炎症・気管支拡張効果
  • 使用法:1日1回吸入

テリルジー(ビランテロール/フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ウメクリジニウム) 🏆

  • 配合成分:ビランテロール + フルチカゾンフランカルボン酸エステル + ウメクリジニウム
  • 剤形:エリプタ
  • 強さランキング:横綱・大関クラス
  • 製造元:グラクソスミスクライン(イギリス)
  • 特徴:重症喘息・COPD治療の第一選択
  • 使用法:1日1回吸入

ビレーズトリ(ホルモテロール/ブデソニド/グリコピロニウム)

  • 配合成分:ホルモテロール + ブデソニド + グリコピロニウム
  • 剤形:エアロスフィア
  • 特徴:3成分の相乗効果による強力な治療効果
  • 使用法:1日2回吸入

3剤配合剤の治療効果:

  • ICSによる強力な抗炎症作用
  • LABAによる長時間の気管支拡張
  • LAMAによる異なる機序での気管支拡張
  • 3つの作用機序の相乗効果で治療効果最大化

これらの製剤は、従来の2剤配合では十分な症状コントロールが得られない重症例や、COPDを合併した喘息患者において特に有効です。ただし、抗コリン薬を含有するため、閉塞隅角緑内障や前立腺肥大による排尿障害には禁忌となります。

喘息の薬選択における患者背景別考慮事項

喘息治療における薬剤選択は、患者の年齢、重症度、併存疾患、ライフスタイルなど多角的な評価が必要です。

年齢別考慮事項: 👶👦👨‍🦳

小児患者(6-12歳)

  • パルミコートは小児での安全性が確立
  • レルベア小児用50エリプタは喘息専用適応
  • 吸入手技の習得状況を評価
  • 成長への影響を定期的にモニタリング

青年期(13-18歳)

  • 服薬アドヒアランスの問題に注意
  • 1日1回製剤(エリプタデバイス)の活用
  • スポーツ活動との両立を考慮

成人・高齢者

  • 併存疾患(COPD、心疾患)を考慮
  • 認知機能と吸入手技の評価
  • 多剤併用時の相互作用チェック

重症度別治療戦略: 📊

重症度 第一選択 増量・追加選択 最重症時
軽症持続型 ICS低用量 ICS中用量 ICS+LABA
中等症持続型 ICS+LABA ICS高用量+LABA 3剤配合
重症持続型 ICS高用量+LABA 3剤配合 生物学的製剤

併存疾患別注意点: ⚠️

COPD合併例

  • 3剤配合剤(エナジア、テリルジー)が有効
  • LAMAの追加効果が期待できる
  • 感染リスクの増加に注意

心疾患合併例

  • β2刺激薬の心血管系副作用を監視
  • 不整脈、頻脈の出現に注意
  • 必要に応じて心電図モニタリング

緑内障・前立腺肥大

  • LAMA含有製剤は禁忌
  • ICS+LABAの2剤配合を選択
  • 眼圧や排尿状態の定期チェック

妊娠・授乳期

  • ブデソニド(パルミコート)が比較的安全
  • 妊娠カテゴリーBの薬剤を優先
  • 母体の症状コントロールを最優先

職業・ライフスタイル考慮: 🏃‍♂️

運動選手

  • WADA禁止薬物リストとの照合
  • 競技前の症状予防戦略
  • パフォーマンスへの影響評価

医療従事者

  • 職場環境での曝露対策
  • 夜勤時の投与タイミング調整
  • 院内感染予防との両立

デバイス選択の実践的考慮: 🔧

  • 手指の巧緻性と認知機能評価
  • 視力・聴力障害への対応
  • 携帯性と使用頻度のバランス
  • 薬剤費用と患者負担の検討

治療効果のモニタリングには、症状日記、ピークフロー値、肺機能検査、炎症マーカー(FeNO)などを活用し、個々の患者に最適化された治療戦略を継続的に見直すことが重要です。

環境再生保全機構の喘息治療薬解説(治療薬の基本的な分類と作用機序について詳細に解説)