在宅残薬調整加算1と2の違い算定要件

在宅残薬調整加算 1と2の違い

在宅残薬調整加算1と2の違い:最短で理解する
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結論は「処方箋の前か後か」

在宅の残薬調整は、処方箋を受け付けた後の照会で変更なら「1」、処方箋交付前の提案が反映されて受け付けたら「2」という整理が実務の軸になります。

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薬歴の書き方で可否が決まる

とくに「2」は処方箋交付前に何を・いつ・なぜ提案したかが薬剤服用歴等の根拠になりやすく、記録が薄いと説明不能になります。

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残薬理由の分析が重要

残薬が出た背景(アドヒアランス、飲み忘れ、処方過多、重複、生活導線など)を分析し、必要に応じて処方医へ情報提供する姿勢が制度上も求められます。

在宅残薬調整加算の算定要件と点数

在宅の「残薬調整」は、制度上は単独の“在宅残薬調整加算”というより、在宅領域での残薬確認・疑義照会・処方変更を評価する枠組みの中に位置づきます。特に在宅では、薬局が在宅患者に関与する中で、残薬の確認や整理、処方調整の提案を行い、処方変更につながった場合の評価が整理されています。

在宅における処方調整の評価として代表的なのが「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」で、残薬調整に係るものとそれ以外で点数が分かれ、令和6年度改定で残薬調整に係る点数が見直されました。

また、算定にあたっては「残薬及び重複投薬が生じる理由を分析し、必要に応じて処方医へ情報提供する」趣旨が示されており、単なる日数調整だけでは説明が弱くなりがちです。

参考:制度改定の全体像(残薬対策の位置づけ、在宅での評価項目の関係)

中医協資料「残薬対策(個別事項その19)」

在宅残薬調整加算1の違い:処方箋受付後の疑義照会

「1」と「2」を分ける実務上の最重要ポイントは、処方箋を“受け付けた後”に、処方医へ連絡・確認(疑義照会を含む)して処方変更が起きたかどうかです。

処方箋受付後の照会で、残薬を理由に投与日数の短縮・薬剤中止・剤形変更などが行われ、結果として処方内容が変更された場合に「1」で整理するのが基本線になります。

現場の落とし穴は、「残薬がある」という患者申告だけで短縮したケースです。処方変更が“医師の同意を得て”成立しているか、照会内容と回答が薬剤服用歴等に残っているかが監査対応の強度を左右します。

また、残薬が生じた理由を分析し、必要に応じて処方医に情報提供することが求められているため、「飲み忘れ」だけで終わらせず、生活背景(認知機能、介護力、服薬回数、剤形、残薬保管状況)を踏まえた提案に落とすと、同じ日数調整でも説得力が増します。

在宅残薬調整加算2の違い:処方箋交付前の処方提案

「2」は、処方箋が患者に交付される“前”の段階で、薬剤師が医師と処方内容を相談し、提案が反映された処方箋を受け付けた場合に整理される考え方です。

つまり、患者宅で残薬や服薬状況を確認し、その場(またはICT等)で医師に提案し、次に発行される処方箋に反映された形で薬局が受け付ける流れが典型です。

「2」が難しいのは、処方箋が存在しないタイミングの介入であるため、根拠が薬剤服用歴等の記載に寄りやすい点です。

参考)在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料算定要件をわかりやすく…

提案内容(具体的な処方変更案)、提案に至った薬学的検討と理由、実施日時を、第三者が読んで追跡できる形で残しておかないと、後から「1と2どっち?」ではなく「そもそも何を根拠に?」になりやすいので注意が必要です。

在宅残薬調整加算の薬歴・レセプト記載ポイント

薬剤服用歴等は「単に全部を書けばよい」のではなく、要点をまとめつつ、算定の根拠と指導内容が読み取れる記録が求められます。

特に残薬関連では、残薬の状況(量・品目・発生時期の推定)、発生理由の分析、患者・家族・介護者から得た情報、処方医への連絡内容と回答(または処方前提案の内容と日時)を押さえると、監査耐性が上がります。

記載を強くするコツは、「結果(○日短縮)」の前に「根拠(残薬がなぜ起きたか)」を置くことです。中医協資料でも、残薬の確認は患者とのやりとりがきっかけになりやすい一方、患者が薬を全て持参しない、確認に時間がかかるなどの課題が示されており、在宅では特に“見える化”の工夫が重要になります。

例えば、次のような絵文字付きチェックで薬歴の観点を揃えると、チーム内の記録品質が均一になりやすいです(入れ子にせず列挙)。

  • 📦 残薬の保管場所と集約状況(複数箇所か)
  • 🗓️ 服薬カレンダー等の使用状況
  • 👪 介護者の与薬関与(誰がいつ渡しているか)
  • 💊 一包化剤形変更の必要性
  • 📞 医師連絡の日時、手段、結論(変更の有無)

参考:調剤報酬・薬歴記載の原則(調剤報酬点数表の構造、薬剤服用歴等に求められる事項)

厚労省「保険調剤の理解のために(令和7年度)」

在宅残薬調整加算の独自視点:残薬を「発生原因別」に分解すると提案が通る

検索上位の記事は「1は受付後、2は交付前」という形式要件の説明に寄りがちですが、在宅現場で本当に差が出るのは“残薬が生じる理由の分解精度”です。

残薬の原因を、単なる飲み忘れではなく「処方の問題」「服薬行動の問題」「生活環境・介護力の問題」「多剤・重複の問題」「剤形・服用回数の設計問題」に分けると、医師への提案が“薬学的観点の提案”になり、処方前提案(2)にもつながりやすくなります。

意外に見落とされるのが、「患者が残薬を整理したいと思っていない」層の存在です。中医協資料の患者調査では、自宅に残薬がある患者が約半数いる一方、整理したいと答えたのは約2割というデータが示されており、介入の入口を“残薬整理”ではなく“困りごとの解消”に置き直すと進みやすいことがあります。

例えば、患者・家族が本当に困っているのが「薬が多い」ではなく「服薬回数が多くて生活が回らない」なら、服用回数の集約、合剤化、一包化、配薬タイミングの再設計など、残薬を減らすより前に“発生を抑制する処方設計”へ提案を進められます。

参考:残薬・疑義照会の経済効果や業務分析(研究・学術情報の入口)

J-STAGE「重複投薬・相互作用等防止加算関連業務の分析と経済効果」