在宅麻薬等注射指導管理料算定要件と在宅自己注射指導管理料等の違い

在宅麻薬等注射指導管理料の算定要件と実務ポイント

在宅麻薬等注射指導管理料の算定全体像
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対象患者と疾患

悪性腫瘍・ALS・心不全など、在宅で医療用麻薬等の持続注射を行う患者をどこまで含めてよいかを整理します。

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算定要件と頻度制限

訪問・指導内容・記録の要件、他の在宅療養指導管理料との関係、月1回算定の考え方を解説します。

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他算定項目との使い分け

在宅自己注射指導管理料や在宅患者訪問薬剤管理指導料と競合しないレイアウトとチーム連携の工夫を紹介します。

在宅麻薬等注射指導管理料の算定要件と対象疾患の整理

在宅麻薬等注射指導管理料は、在宅で注射による医療用麻薬等を投与している患者に対し、医師が注射手技や投与量、保管方法、副作用の有無などについて計画的な指導管理を行った場合に評価される在宅療養指導管理料の一つです。

現行の点数では、悪性腫瘍筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋ジストロフィー心不全または呼吸器疾患など、強い疼痛や呼吸困難に対し在宅で持続注射を行うケースが対象とされ、いずれの疾患も「通院が困難で在宅療養を行っていること」が前提とされています。

在宅麻薬等注射指導管理料は「入院中の患者には算定できない」が原則で、退院日に退院後の在宅で行う麻薬持続注射に向けた具体的な指導を実施した場合には算定が認められる点が、一般の在宅療養指導管理料と共通する特徴です。

参考)医療事務の基礎知識(22)

また、同一患者に同一月内で複数医療機関が同じ管理料を算定することは原則認められませんが、在宅自己注射指導管理料のように疾患が異なる場合に限り複数算定が認められる例外があるため、在宅麻薬等注射指導管理料との組み合わせでは疾患と管理の主従関係を明確にしておく必要があります。

在宅麻薬等注射指導管理料の「麻薬等」には、通常のモルヒネ製剤だけでなくフェンタニルやヒドロモルフォンなども含まれ、持続皮下注やPCAポンプ、中心静脈栄養ラインからの合併投与など、多様な投与ルートが現場で問題となります。

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特に心不全や呼吸器疾患では、オピオイドの少量持続投与による呼吸困難の緩和が科学的に支持されつつあり、緩和ケア医や在宅医の間で在宅麻薬等注射指導管理料の活用機会が増えていることは、あまり周知されていない実情と言えます(呼吸困難に対するモルヒネ持続投与の研究の一例)

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在宅自己注射指導管理料・在宅患者訪問薬剤管理指導料との違いと使い分け

在宅自己注射指導管理料は、外来患者が在宅で自ら自己注射を行う場合に、自己注射手技や廃棄物処理などの指導管理を行った際に月1回算定できる管理料であり、インスリンや生物学的製剤、抗凝固薬など慢性疾患の自己注射が典型例です。

一方、在宅麻薬等注射指導管理料は、患者自身ではなく家族や在宅医・訪問看護師による持続注射が前提となることが多く、疼痛や呼吸困難などの症状緩和を目的とした「医療用麻薬等」に対象が限定される点が大きな違いです。

在宅患者訪問薬剤管理指導料は、在宅療養中の患者で通院が困難な者に対し、薬剤師が居宅を訪問して薬学的管理・指導を行った場合に算定される薬学管理料であり、医師が算定する在宅麻薬等注射指導管理料とは主体も評価の枠組みも異なります。

しかし、在宅患者訪問薬剤管理指導料には「在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算」が設定されており、医療用麻薬の持続注射を行っている患者に対する薬剤師の管理指導を評価する点で、在宅麻薬等注射指導管理料と臨床現場ではしばしば同じ患者を対象に併存しうる関係となります。

在宅自己注射指導管理料と在宅麻薬等注射指導管理料が同一患者で同月に並立するかどうかは、主たる管理内容と症状の重みで判断され、在宅療養指導管理料のルール上は「点数が高い管理料を主たる管理料として一本化する」ことが求められます。

参考)https://www.phchd.com/jp/medicom/park/idea/management-self-injection-billing

例えば、末期がん患者がインスリン自己注射とモルヒネ持続注射を併用している場合、疼痛とQOLへの影響が大きい後者を在宅麻薬等注射指導管理料として主とし、糖尿病管理は外来通院や訪問診療の別の枠組みでフォローする運用が、行政指導上も説明しやすい選択肢になります。

在宅患者訪問薬剤管理指導料の麻薬関連加算と在宅麻薬等注射指導管理料は、算定主体が「薬剤師」と「医師」で異なるため、両者を同一月に算定すること自体は可能ですが、訪問回数や指導内容が重複しないよう計画を共有しておくことが重要です。

特に、在宅患者訪問薬剤管理指導料は末期悪性腫瘍や医療用麻薬持続注射、中心静脈栄養法の患者では週2回かつ月8回まで算定可能であり、在宅麻薬等注射指導管理料(月1回)とのバランスを意識した訪問スケジュールが求められます。

参考)在宅患者訪問薬剤管理指導料と服薬管理指導料 それぞれの算定要…

在宅麻薬等注射指導管理料の頻度・記録・レセプト記載の実務

在宅療養指導管理料の共通ルールとして、各管理料は原則として暦月1回算定であり、在宅麻薬等注射指導管理料も同様に「月1回の包括評価」で算定しますが、その1回の中に複数回の電話指導や訪問が含まれていても問題ありません。

ただし、在宅患者訪問薬剤管理指導料と組み合わせる場合、医師による在宅麻薬等注射指導管理料の指導日と薬剤師の訪問薬剤管理指導日を意図的にずらし、レセプト上もカルテ上も役割分担が分かるように記録することが重要です。

記録として最低限残しておきたいのは、疾患名と在宅療養中であること、使用している麻薬製剤名と投与経路、投与量・投与速度の設定、疼痛や呼吸困難の評価スケール、確認した副作用、保管や廃棄に関する指導内容などです。


特に、疼痛や呼吸困難の評価にNRSやmMRCなどのスケールを定期的に用いることで、麻薬用量の調整が医学的に妥当であることを客観的に示せるため、診療ガイドラインに準じた形で評価を残すとレセプト審査や個別指導でも説得力が増します(日本緩和医療学会ガイドライン)

レセプト記載では、在宅医療区分の欄に在宅療養指導管理料として「在宅麻薬等注射指導管理料」を明記し、疾患名欄に悪性腫瘍やALS等の主病名と、疼痛・呼吸困難など麻薬使用の適応症状を併記すると、審査側が意図を読み取りやすくなります。

参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_2_1%2Fc008.html

また、同月に在宅自己注射指導管理料や他の在宅療養指導管理料を算定している場合には、どの管理料を主たる管理料と判断したかを診療録に明示しておくと、後日の返戻や疑義照会のリスクを下げられます。

あまり知られていないポイントとして、在宅自己注射指導管理料と同様に、在宅麻薬等注射指導管理料でも「退院日に行った指導が在宅療養を前提とする場合には算定が可能」であり、病棟で行った最終指導を在宅移行支援として評価できるケースがあります。

参考)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000134416.pdf

この場合、退院後に在宅医へ引き継がれる麻薬持続注射のレジメンや管理方法を明確に文書化し、患者・家族への説明内容と併せてカルテに残すことで、病院と在宅側の双方で連続した管理を根拠付けることができます。

在宅麻薬等注射指導管理料の多職種連携とリスクマネジメントの独自視点

在宅麻薬等注射指導管理料が求める「指導管理」の中には、医師単独では完結しない多職種連携が暗黙の前提として含まれていますが、診療報酬上はこの連携の質までは評価されないため、逆に実務側が構造化しておかないとリスクになりやすい領域です。

例えば、訪問看護ステーションとの間で、PCAポンプのアラーム対応や持続注射ラインの閉塞・抜去時の初期対応、夜間の疼痛増悪時の連絡フローなどを事前に合意しておくことで、在宅麻薬薬物療法に伴う急変リスクをかなり低減できます。

薬局との連携では、在宅患者訪問薬剤管理指導料の麻薬関連加算を算定している薬剤師から、在宅医へ副作用や残薬量、家族の不安などの情報がフィードバックされる仕組みを作ると、在宅麻薬等注射指導管理料の指導内容がより具体的かつ患者個別化されます。

特に、便秘や悪心・嘔吐、せん妄などのオピオイド関連副作用は、薬剤師が早期に拾い上げやすいため、その情報をもとに在宅医が用量調整や補助薬追加を行うことで、結果的に在宅麻薬等注射指導管理料の「指導管理の質」が向上します。

リスクマネジメントの観点では、「家族が意図せず過量投与してしまうリスク」や「麻薬の盗難・紛失リスク」への対応も、在宅麻薬等注射指導管理料の指導内容の一部として明示的に扱うべきです。

具体的には、投与量やボーラス回数の上限を家族にも視覚的に分かる形で提示する、施錠できる保管場所を指示する、廃棄針や残薬の回収方法を共有するなど、診療報酬上は細かく規定されていないものの、事故防止のために現場レベルで標準化したい項目が多く存在します。

一歩踏み込んだ独自視点として、在宅麻薬等注射指導管理料を「患者本人だけでなく、介護者のバーンアウト予防を評価する枠組み」と捉え直すことが挙げられます。


持続注射中の患者を支える家族は、夜間の疼痛や不安への対応で睡眠不足に陥りやすく、医師が管理料算定のタイミングで介護負担や抑うつ症状の有無を系統的に確認することで、早期にレスパイト入院や訪問看護の増回を検討する「介護者の安全弁」として本管理料を活用する余地があります(介護者負担と在宅緩和ケアに関する海外文献の一例)

在宅麻薬等注射指導管理料の算定を安定させるチェックリストと現場の工夫

在宅麻薬等注射指導管理料を安定して算定するためには、「対象患者か」「在宅か入院か」「主たる管理料か」「記録は十分か」という4つの観点でチェックリストを作成し、訪問前後に短時間で確認できる仕組みを持つと実務負荷が大きく下がります。

とくに主たる管理料の選定は、同月に複数の在宅療養指導管理料が算定可能な患者ほど迷いやすいため、点数だけでなく、症状の重さや急変リスク、患者・家族が最も困っているポイントなど、臨床的な優先順位も含めてチームで話し合って決めることが望まれます。

一例として、以下のようなシンプルなチェック項目を導入している在宅医療チームでは、レセプト返戻が大幅に減ったという報告があります。

  • 今月の在宅麻薬等注射指導管理料の対象疾患と主症状は何か
  • 入院中ではなく在宅療養であるか、退院日の指導の場合は退院後の在宅療養が前提か
  • 自己注射や他の在宅療養指導管理料が同時算定される場合、どれを主たる管理料として位置付けるか
  • 麻薬製剤名・投与ルート・用量・副作用評価・保管/廃棄指導が記録されているか
  • 薬剤師・訪問看護との情報共有や連絡フローが明文化されているか

また、在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している薬局に対し、医療機関側から「在宅麻薬等注射患者の情報共有フォーマット」を提案し、疼痛評価や副作用、残薬量などを定期的に共有してもらうことで、双方の算定根拠が補完し合う形になり、個別指導に対する説明もしやすくなります。

このような書式の標準化は、地域連携パスやICTを用いた多職種カンファレンスと組み合わせることで、在宅麻薬療法の質と安全性を同時に底上げする有効なツールとなります。

在宅麻薬等注射指導管理料を「点数を取りこぼさないための項目」としてだけでなく、「在宅麻薬療法の安全装置」として位置付け直すことで、医療従事者の意識や記録の取り方も変わり、結果として患者と家族のQOL向上につながります。

その意味で、本管理料の算定要件を正確に理解しつつ、在宅自己注射指導管理料や在宅患者訪問薬剤管理指導料と上手に組み合わせることが、これからの在宅緩和ケア・慢性期医療の現場に求められる実務スキルと言えるでしょう。

在宅麻薬等注射指導管理料の算定要件や他の在宅関連の算定項目との関係について、条文レベルで確認したい場合に有用な資料です。

在宅における注射による麻薬の投与に係る評価(在宅麻薬等注射指導管理料)PDF

在宅患者訪問薬剤管理指導料や麻薬関連加算の点数と要件を整理する際の参考になります。

C008 在宅患者訪問薬剤管理指導料(診療点数早見)

在宅自己注射指導管理料の算定要件や記録のコツを押さえることで、在宅麻薬等注射指導管理料との違いがより明確になります。

在宅自己注射指導管理料算定のポイント解説