在宅患者調剤加算 廃止 在宅薬学総合体制加算 要件

在宅患者調剤加算 廃止

在宅患者調剤加算 廃止で最初に把握すること
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「どの点数が消え、何に置き換わったか」

在宅患者調剤加算は廃止され、調剤基本料の加算として在宅薬学総合体制加算(1/2)が新設されました。点数は同じ15点の区分もありますが、評価の軸が「調剤行為」から「体制・実績」へ寄ります。

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算定の入口は「対象患者の処方箋」

算定できるのは、在宅患者訪問薬剤管理指導料等(医療保険)や居宅療養管理指導費等(介護保険)を算定している患者の処方箋を受け付けた場合に限られます。

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「届出」「周知」「研修」が実務の壁

在宅薬学総合体制加算は届出だけでなく、地域への周知、研修・学会参加、麻薬・無菌製剤等の体制など、監査で説明できる“証跡”づくりが重要になります。

在宅患者調剤加算 廃止と在宅薬学総合体制加算

 

在宅患者調剤加算は2024年度の調剤報酬改定で廃止され、在宅薬学総合体制加算が新設された、という整理がまず起点です。

位置づけの違いも重要で、従来は「薬剤調製料の加算」だったものが、改定後は「調剤基本料の加算」として評価される形に変わりました。

この変更は、単に名称が変わったというより、国が薬局の在宅対応を“個別の調剤行為”ではなく“地域で継続提供できる体制”として評価したい意図が透けます。

現場で混乱が起きやすいのは、「廃止=在宅の評価が下がった」ではない点です。

参考)在宅薬学総合体制加算とは?1・2の算定要件や施設基準について…

むしろ、点数は15点の区分を残しつつ、上位区分として50点が設けられ、体制が整っている薬局ほど評価が厚くなりました。

参考)https://pharmacist.m3.com/column/chouzai_santei/6314

結果として、在宅の実績がある薬局ほど“取りこぼし”と“算定の最適化”の差が経営に直結しやすくなります。

参考)https://pharmacist.m3.com/column/penguin_chozaihoshu2/5101

在宅患者調剤加算 廃止後の算定要件

在宅薬学総合体制加算の算定は、誰の処方箋でも良いわけではなく、在宅系の指導料・指導費を算定している患者の処方箋が入口になります。

医療保険側の対象は、在宅患者訪問薬剤管理指導料に加え、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急時等共同指導料が含まれます。

介護保険側では、居宅療養管理指導費、介護予防居宅療養管理指導費が対象として整理されています。

もう一段、実務で効いてくるのが「実績回数」の考え方です。

改定前(在宅患者調剤加算)では直近1年で10回が要件だったのに対し、改定後は24回以上/年に引き上げられています。

ただし同時に、実績回数の対象が広がり、緊急訪問系や共同指導系も“実績”としてカウントできるため、体制さえ整えば到達可能性が上がる薬局もあります。

運用での落とし穴は、「在宅の処方箋を受け付けた」事実と、「在宅の指導料等の算定が適正に行われている」事実が、薬局内で分断されやすい点です。

例えば、在宅の算定状況をレセ担当が把握していないと、対象処方箋なのに加算を付けない、逆に対象外に付けて返戻、という両方向の事故が起こり得ます。

対策としては、処方箋受付時点で「在宅算定患者フラグ」を見える化し、受付→監査→請求まで同じルールで判定できる運用を先に固めるのが安全です。

在宅患者調剤加算 廃止後の施設基準

在宅薬学総合体制加算は「1」と「2」の区分があり、2は1の要件を満たした上で、より高度な体制を追加で求められます。

加算1の施設基準には、在宅患者訪問薬剤管理指導の届出、在宅薬剤管理の実績(24回以上/年)、開局時間外の在宅業務対応、地域への周知、研修(認知症・緩和・ターミナル等)や学会参加、医療材料・衛生材料の供給体制、麻薬小売業者免許などが並びます。

つまり、在宅の現場力だけでなく、「地域連携できる薬局であること」を書面で示す仕組みが前提条件になります。

加算2は、在宅に強い薬局の“到達点”として設計されており、点数が50点と大きく跳ねます。

追加要件には、開局時間中に2名以上の保険薬剤師が勤務している体制や、かかりつけ薬剤師指導料等の算定回数(合計24回以上/年)、高度管理医療機器販売業の許可が含まれます。

さらに、ターミナルケア(医療用麻薬の備蓄・注射剤含む6品目以上、無菌室やクリーンベンチ等の整備)または小児在宅の実績(小児特定加算・乳幼児加算の算定6回以上/年)のいずれかが求められます。

ここで意外にハマるのが「設備の共同利用」です。

疑義解釈ベースで、無菌製剤処理設備を他薬局と共同利用する形では、加算2の要件を満たさないと明記されています。

設備は“持っているだけ”でも不十分で、清掃やフィルター管理、清浄度などの保守点検が求められるため、購入より運用コストが論点になりやすい点も見落としがちです。

在宅患者調剤加算 廃止で周知活動

在宅薬学総合体制加算の施設基準には「在宅業務実施体制に係る地域への周知」が含まれ、ここが実務で最も手間がかかりやすい部分です。

周知先として、行政機関、保険医療機関、訪問看護ステーション、福祉関係者、地域住民などが例示されており、限定的な周知(例:薬剤師会の会員だけ)では要件を満たさないとされています。

周知内容も、開局時間外の対応可否と対応可能時間帯、医療用麻薬(注射薬含む)の取扱い、高度管理医療機器、無菌製剤処理、小児在宅、医療材料・衛生材料の取扱いなど、具体項目が示されています。

現場でのコツは、「周知した」ことを口頭で説明できるだけでは弱い点です。

監査や指導の観点では、周知文書、配布先リスト、配布日、更新履歴、問い合わせ窓口、24時間対応の連絡体制など、第三者が追える形の証跡があるほど安定します。

また、地域への周知は“作って終わり”ではなく、体制が変わった時(例:麻薬注射剤の在庫方針、無菌設備の稼働状況、対応時間帯)に更新しないと、周知内容と実態がズレてリスクになります。

在宅患者調剤加算 廃止の独自視点:実績24回

在宅患者調剤加算が廃止され、実績要件が「10回→24回」に上がったことで、在宅を“やった感”では到達できない薬局が増えやすくなりました。

一方で、実績対象が拡大し、緊急訪問薬剤管理指導料や緊急時等共同指導料も実績として数えられる設計になっているため、単に訪問件数を増やす以外のルートが生まれています。

ここから先は、検索上位でもあまり強調されにくい「現場設計」の話として、24回の意味を“訪問回数のノルマ”ではなく“連携品質の指標”として捉え直すと運用が安定します。

具体的には、在宅の実績を増やす施策を、営業や関係構築だけに寄せないことが重要です。

在宅は患者導入のタイミングが偶然に左右される一方、緊急時対応・共同指導・ターミナル対応などは「求められた時に確実に動ける体制」があるほど発生しやすく、結果として実績カウントにもつながりやすい構造があります。

そのため、薬局内では次のような“意外と効く整備”が、点数の取りこぼし防止と、地域の信頼形成の両方に効いてきます。

  • 受付時に「在宅算定患者(医療・介護)」「緊急対応可否」「麻薬対応可否」をフラグ化し、誰が見ても同じ判定にする。
  • 24時間連絡体制を、電話番号の掲示だけでなく、当番表・折り返しルール・対応記録のテンプレまで整備する。
  • ターミナルや小児在宅は“症例が来たら考える”では遅く、麻薬・無菌・医療材料の供給体制を平時から運用しておく。
  • 地域への周知を、医療機関向けと住民向けで出し分け、更新履歴を残す(古い周知が残るのが一番危険)。

この視点のポイントは、在宅薬学総合体制加算が「届出した薬局へのボーナス」ではなく、「地域が安心して依頼できる薬局を選別するためのラベル」に近い、ということです。

実績24回を“目標数値”として追うと疲弊しますが、緊急対応・多職種連携・物品供給の仕組みを先に作ると、実績が後からついてくるケースが出やすくなります。

結果として、患者・医師・訪看からの依頼が途切れにくくなり、算定の安定化と現場の納得感が両立しやすくなります。


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