在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料の算定と対象患者の条件

在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料について

 

在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料の基本
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算定点数

2,500点(令和6年度診療報酬)

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算定期間

最初に算定した日から1年間限定

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対象者

胃瘻造設後1年以内で経口摂取回復を目指す患者

 

在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料は、2018年度の診療報酬改定で新設された管理料です。この管理料は、経口摂取の回復を目的として胃瘻造設を実施した患者さんが、在宅で半固形栄養法を行う場合に算定できます。特に注目すべき点は、胃瘻造設後1年以内に半固形栄養法を開始した患者さんが対象となり、算定期間も最初に算定した日から1年間に限られていることです。

この制度は、単に胃瘻からの栄養摂取を継続するだけでなく、患者さんの経口摂取能力の回復を促進することを目的としています。そのため、半固形栄養法の指導だけでなく、経口摂取回復に向けた包括的な指導管理が求められています。

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在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料の算定条件と対象患者

在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料の算定には、いくつかの明確な条件があります。まず対象となる患者さんは以下の条件を満たす必要があります。

  • 経口摂取が著しく困難なため胃瘻を増設している
  • 医師が経口摂取の回復に向けて在宅半固形栄養経管栄養法を行う必要性を認めている
  • 胃瘻造設術後1年以内に半固形栄養法を開始している

この管理料は入院中の患者さんには算定できず、在宅での療養を行っている患者さんが対象となります。また、算定期間は最初に算定した日から起算して1年を限度としています。これは、経口摂取の回復という目標に向けた期間を設定することで、リハビリテーションの効果を高める意図があると考えられます。

算定にあたっては、レセプトに胃瘻造設日および初回算定日をコードで記載する必要があります。これにより、適切な算定期間の管理が可能となります。

在宅半固形栄養経管栄養法で使用できる栄養剤と投与方法

在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料の算定対象となるのは、特定の栄養剤を使用した場合のみです。具体的には以下の条件を満たす栄養剤が対象となります。

  1. 薬価基準に収載されている高カロリー薬(例:ラコールNF配合経腸用半固形剤)
  2. 薬価基準に収載されていない流動食(市販品に限る)で、投与時間の短縮が可能な形状にあらかじめ調整された半固形状のもの

注意すべき点として、単なる液体状の栄養剤等、半固形栄養剤以外のものを用いた場合は対象外となります。また、薬価基準に収載されていない流動食を使用する場合は、入院中の患者さんに対して退院時に当該指導管理を行っている必要があります。

半固形栄養剤のメリットとしては、以下の点が挙げられます。

  • 投与時間の短縮が可能
  • 逆流性食道炎のリスク低減
  • 下痢などの消化器症状の軽減
  • 患者さんの活動時間の確保

これらのメリットにより、患者さんのQOL向上と経口摂取回復に向けたリハビリテーション時間の確保が期待できます。

在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料と経口摂取回復への取り組み

在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料を算定する上で最も重要な点は、経口摂取の回復に向けた指導管理を併せて行うことです。この指導管理には口腔衛生管理も含まれます。

経口摂取回復に向けた指導管理は、胃瘻造設術を実施した保険医療機関から提供された情報を活用して行います。具体的には以下のような情報が含まれます。

  • 嚥下機能評価の結果
  • 嚥下機能訓練等の必要性や実施すべき内容
  • 嚥下機能の観点から適切と考えられる食事形態や量の情報
  • 嚥下調整食の内容等

これらの情報を基に、患者さんの状態に合わせた経口摂取訓練プログラムを作成し、実施することが求められます。また、定期的な嚥下機能の再評価も重要です。

経口摂取回復のためのアプローチとしては、以下のような取り組みが効果的です。

  1. 口腔ケアの徹底:口腔内の清潔を保ち、誤嚥性肺炎のリスクを減らす
  2. 嚥下訓練:間接訓練(口や舌の運動)と直接訓練(実際に食物を用いた訓練)の組み合わせ
  3. 姿勢調整:適切な食事姿勢の指導
  4. 食形態の調整:患者さんの嚥下能力に合わせた食形態の提案

これらの取り組みを多職種連携で行うことで、効果的な経口摂取回復が期待できます。

在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料の算定と栄養管セット加算

在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料を算定している患者さんに対しては、在宅経管栄養法用栄養管セット加算も算定することができます。この加算は、栄養管セットを使用した場合に所定点数に加算されるものです。

ただし、在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料が算定できなくなった場合(算定期間の1年を超えた場合など)には、在宅経管栄養法用栄養管セット加算も算定できなくなります。

また、在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料を算定している患者さんについては、鼻腔栄養(区分番号「J120」)の費用は算定できません。これは、胃瘻からの栄養摂取と鼻腔からの栄養摂取を同時に行うことは想定されていないためです。

算定の際の実務的なポイントとしては、以下の点に注意が必要です。

  • 胃瘻造設日と初回算定日をレセプトにコードで記載する
  • 経口摂取回復に向けた指導内容を診療録に記載する
  • 使用している栄養剤が算定要件を満たしているか確認する
  • 算定期間(1年間)を適切に管理する

在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料の多職種連携アプローチ

在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料の効果的な運用には、多職種連携が不可欠です。特に経口摂取の回復という目標に向けては、様々な専門職の知識と技術を結集することが重要です。

多職種連携における各職種の役割は以下のようになります。

医師

  • 半固形栄養法の適応判断と処方
  • 経口摂取回復の可能性評価
  • 全体的な治療方針の決定

看護師

  • 半固形栄養法の実施指導
  • 胃瘻部のケア方法指導
  • バイタルサインや全身状態の管理

管理栄養士

  • 栄養評価と栄養計画の立案
  • 適切な栄養剤の選択
  • 経口摂取訓練時の食形態の提案

言語聴覚士

  • 嚥下機能評価
  • 嚥下訓練プログラムの立案と実施
  • 安全な経口摂取方法の指導

歯科医師・歯科衛生士

  • 口腔内評価
  • 専門的口腔ケアの実施
  • 義歯調整など咀嚼機能の改善

これらの専門職が定期的にカンファレンスを開催し、患者さんの状態や進捗を共有することで、より効果的な支援が可能になります。

院内での勉強会や症例検討会を通じて、チームとしての共通認識を醸成することも重要です。例えば、ファミリークリニック蒲田では、多職種で集まり輸液・経腸栄養に関する勉強会を実施し、それぞれの経腸栄養剤のメリット、デメリットや使用事例などを現場の状況を踏まえながらディスカッションしています。

ファミリークリニック蒲田の多職種勉強会の事例

このような取り組みにより、患者さん一人ひとりに最適な栄養管理と経口摂取回復支援が可能となります。

在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料は、単なる診療報酬項目ではなく、患者さんの経口摂取回復という明確な目標に向けた包括的なアプローチを促進するための制度です。この制度を適切に活用することで、患者さんのQOL向上と機能回復を効果的に支援することができます。

在宅医療の現場では、この制度の趣旨を理解し、多職種連携のもとで患者さん中心の支援を行うことが求められています。特に、経口摂取の回復という目標に向けては、単に栄養状態を維持するだけでなく、患者さんの嚥下機能や全身状態を総合的に評価し、段階的なアプローチを行うことが重要です。

また、患者さんやご家族への教育・支援も欠かせません。半固形栄養法の実施方法だけでなく、経口摂取訓練の意義や方法、目標設定などについても丁寧に説明し、ご理解とご協力を得ることが成功の鍵となります。

医療機関としては、この制度を活用するための体制整備と、スタッフへの教育が重要です。算定要件や対象患者の選定基準、必要な指導内容などについて、院内での共通理解を形成することが必要です。

在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料は、患者さんの経口摂取回復という明確な目標に向けた取り組みを評価する制度であり、適切に活用することで、患者さんのQOL向上と機能回復を効果的に支援することができます。多職種連携のもと、患者さん一人ひとりの状態に合わせた個別的なアプローチを行うことが、この制度の本来の趣旨を実現することにつながるでしょう。