幽門バルーン拡張カテーテルと内視鏡と狭窄と手技

幽門バルーン拡張カテーテルと手技

幽門バルーン拡張カテーテルの要点
🧭

狙うのは「狭窄の情報」

径・長さ・硬さを見誤ると、適切なバルーン径や拡張圧の選択が崩れやすくなります。まずは評価手順を固定して、手技のブレを減らします。

🛠️

圧と時間は「段階」が基本

拡張は一気に決めず、段階的に到達させる発想が安全側に働きます。インフレーションチャートと圧力計監視が中核になります。

🩹

合併症は「予防」と「初動」

穿孔・出血・粘膜損傷をゼロにはできません。起きやすい場面を先に潰し、起きた時の動きをチームで揃えるのが実務的です。

幽門バルーン拡張カテーテルの適応と狭窄

 

幽門バルーン拡張カテーテルの臨床的な出発点は「狭窄の解除」で、上部消化管では良性潰瘍による幽門狭窄やCrohn病の幽門・十二指腸狭窄などが、内視鏡的バルーン拡張術(EBD)の対象になり得ます。

一方で、長さが5cmを超えるような長い狭窄、強い屈曲、活動性の炎症や潰瘍性病変を伴う狭窄は適応外となり得るため、画像と内視鏡所見で「やってよい狭窄」かを最初に切り分けます。

適応を“疾患名”で覚えるより、(1)経口摂取障害など症状が狭窄に起因していること、(2)炎症活動性が強い狭窄ではないこと、(3)狭窄長が長すぎないこと、という条件で整理すると、チーム内で判断基準が共有しやすくなります。

また意外に見落とされやすいのが、「狭窄の硬さ(線維化の強さ)」が拡張の“抵抗感”として術者の体感に出やすい点です。

硬い狭窄ほど、同じバルーン径でも到達圧や拡張時間の設計が変わり、無理に同じ設計で押し切ると粘膜損傷や穿孔リスクの説明責任が重くなるため、評価段階で“硬さ”を記録に残す運用が有効です。

幽門バルーン拡張カテーテルのバルーン径と拡張圧

バルーン拡張では、狭窄の状態(径・長さ・硬さ)により、選ぶバルーン径(太さ)や拡張圧、拡張時間が変わる、という前提をまず共有します。

実装面では、消化管用バルーンダイレータのように「バルーン径と拡張圧がチャートで対応している」製品があり、例えば複数の径に対しそれぞれ規定の拡張圧(bar/atm)が設定されています。

この“規定圧で規定径まで到達する”設計は、現場での再現性を上げる一方、圧を上げれば径がどこまでも増えるわけではないため、狙い径とチャートの一致確認が安全管理として重要になります。

「ガイドワイヤ径」「鉗子チャンネル径」の制約も、実務ではトラブル源です。

例として、特定の消化管用バルーンダイレータでは適用ガイドワイヤが0.035inch以下、組み合わせ可能な内視鏡チャンネル径が2.8mm以上とされています。

夜間・緊急の場面ほど“あるもの合わせ”になりがちなので、施設内で「よく使うスコープとバルーンの組み合わせ表」を1枚作っておくと、手技の時間短縮とヒヤリハット低減に直結します。

意外な落とし穴は、拡張液の選択です。

添付文書レベルでは、拡張は滅菌生理食塩水や滅菌水、あるいは造影剤との混合液で行い、空気やその他の気体は使用しないことが明記されています。

「圧が入っているのに拡がらない」など違和感がある時、液の粘度や混合比、ライン内の空気残存が絡んでいることがあるため、インフレーションデバイス側も含めた“準備手順の固定化”が効きます。

幽門バルーン拡張カテーテルの内視鏡とガイドワイヤ

EBDの基本手順は、狭窄部観察→造影→バルーン挿入→バルーン拡張→再観察(スコープ通過の確認)という流れで整理されます。

このとき、バルーンにはOTW(over-the-wire)とTTS(through-the-scope)があり、手技が簡便で最近は大径もあるためTTSが汎用される、という整理が臨床上よく使われます。

幽門バルーン拡張カテーテルをTTSで扱う場合、鉗子チャンネル内をバルーンが通る際に抵抗を感じることがある、という注意点が添付文書にも記載されており、抵抗時の手順(鉗子栓のフタを外す等)をチームで共有しておくと手技が止まりにくくなります。

ガイドワイヤ運用では、「プレロードされたガイドワイヤを外し、すでに留置された別のガイドワイヤに置換できる」運用が想定されている機器もあります。

狭窄が強い症例ほど、ワイヤ先行でルートを確保してからバルーンを追従させるほうが、無理な押し込みを減らしやすく、結果的に粘膜損傷リスクを下げやすい構造になります。

また、バルーンが視野内に入らない場合はX線透視で位置確認する、という記載があり、「見えていない状態で拡張しない」をルール化するのが重要です。

参考:消化管狭窄に対するEBDの適応外(5cm超の狭窄、活動性炎症など)や、OTW/TTS、基本手順(観察→造影→拡張→再観察)の整理

医書.jp/ガストロ用語集:内視鏡的バルーン拡張術

幽門バルーン拡張カテーテルの合併症と穿孔

バルーン拡張術の合併症として、穿孔や出血、粘膜損傷などが添付文書の有害事象として挙げられています。

この領域の安全設計でポイントになるのは、「拡張前に位置確認」「最大拡張圧を超えない」「圧力計で監視する」という、当たり前に見えて崩れやすい作法を徹底することです。

特に最大拡張圧を超える使用はバルーン破裂リスクを高め、患者傷害につながり得るとされているため、“狙い径”が決まっているときほど、圧の上げ方を急がない運用が安全側です。

実務での初動として覚えておきたいのは、「拡張中に圧が低下した/破裂した場合の扱い」です。

添付文書では、破裂や液漏れが起きた場合は内視鏡とともにゆっくり引き抜く、破裂したバルーンを内視鏡から単独で引き抜かない、といった注意が示されています。

こうした“引き抜き方”は、穿孔の有無が未確定の状況でも起こり得るため、術者だけでなく介助者も同じ絵を持つよう、タイムアウト時に確認しておくのが現実的です。

参考:消化管用バルーンダイレータ添付文書(禁忌:再使用禁止、拡張液のみ使用、拡張圧上限、位置確認、破裂時の対応、有害事象の例など)

オリンパス:消化管用バルーンダイレータ 添付文書(PDF)

幽門バルーン拡張カテーテルの独自視点と再使用禁止

幽門バルーン拡張カテーテル運用で、検索上位の一般解説では触れられにくいのが「再使用禁止を“感染”だけでなく“性能”として扱う」視点です。

添付文書では再使用禁止が明記され、さらに「内視鏡に挿入する前にバルーンの拡張点検をしない(畳み直すと性能低下や不具合につながる可能性)」といった、形状記憶・折り癖・摩擦の問題に踏み込んだ注意が書かれています。

つまり、清潔操作を満たしても、バルーンの折り畳み状態が崩れると「通過抵抗」「拡張の均一性」「抜去のしやすさ」に影響し得るため、“使い捨て”は品質保証の一部として捉えるのが合理的です。

この視点をチーム教育に落とすなら、手技のKPIを「拡張成功」だけにせず、以下のような“工程品質”を入れると改善が回りやすくなります。

  • 位置確認の方法(直視/透視)を記録し、拡張前に必ずチェック欄を埋める。
  • 使用バルーンの径と到達圧(チャート値)を記録し、最大拡張圧超過が起きない設計にする。
  • 抜去時の抵抗有無、抵抗時に「内視鏡と共に抜去」に切り替えたかを振り返る。

さらに“意外な実務ポイント”として、バルーンの空気抜き(脱気)が不十分だと、圧の挙動が読みにくくなり、狙い径到達の判断が鈍ることがあります。

添付文書では使用前に残留空気を完全に抜く手順が具体的に示されているため、手技トラブルが多い施設ほど、チェックリスト化して新人教育に落とし込む価値があります。

観点 実務でのチェック 根拠にできる記載
再使用 再使用しない(在庫切れ時の代替手順を整備) 再使用禁止の明記。
拡張前確認 内視鏡画像または透視で位置確認してから拡張 拡張前の位置確認を怠ると傷害につながるおそれ。
拡張媒体 空気は使わず、拡張液のみで運用 空気やその他の気体を使用しない旨。
圧管理 チャートと圧力計監視、上限圧を超えない 最大拡張圧超過の禁止、圧力計の必要性。


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