羊水検査の費用と保険適用
羊水検査は妊娠中に胎児の染色体異常を調べる確定診断として重要な役割を果たしますが、費用面では大きな負担となります。検査費用は医療機関や検査内容によって約6万円から25万円と幅があり、全額自己負担となります。保険適用がない理由は、羊水検査が「治療」ではなく「検査」に分類されるためです。現時点では染色体異常に対する根本的な治療法が確立されていないため、公的健康保険の対象外となっています。
参考)羊水検査の費用はいくら?保険適用可否をやその他検査費用もご紹…
費用に差が生じる主な要因は、検査後の入院の有無と採用する検査方法です。胎児細胞を培養して全ての染色体の数的異常を調べるG-band法を用いる場合は10万円から20万円、培養せずに一部の染色体異常を調べるFISH法では比較的安価ですが、全ての染色体異常を診断できないというデメリットがあります。さらに微小欠失検査やマイクロアレイ検査などのオプションを追加すると、30万円近くまで費用が上がることもあります。
参考)羊水検査の費用・検査料について|5つの出生前診断と比較
羊水検査の費用相場と内訳
羊水検査の基本的な費用構成は、検査前の超音波検査、羊水採取の技術料、染色体分析費用、検査後のフォローアップ費用から成り立っています。検査前の超音波検査で胎児の状態を確認する費用が5,000円から1万円、羊水採取と染色体分析の費用が主要部分を占めます。
地域別の費用差も顕著で、東京都内の医療機関では15万円から25万円が相場となっており、大学病院や専門クリニックでは高度検査により高額になる傾向があります。関西圏では12万円から22万円、地方都市やその他地域では10万円から18万円程度が一般的です。地方では基本的なG-band法検査が中心で、高度検査が必要な場合は都市部の専門施設を紹介されることがあります。
検査方法によっても費用は大きく異なります。G-band法は羊水中の胎児細胞を培養して全ての染色体を顕微鏡で観察する最も正確な検査法で、結果が出るまでに2週間かかります。一方、FISH法は培養せずに13番、18番、21番染色体と性染色体の異常を調べる方法で、検査時間は短いものの診断精度が100%ではないため、人工妊娠中絶などの重要な決断をする場合はG-band法の結果を待つことが推奨されています。
参考)羊水検査 – 大阪府|胎児ドック|出生前診断|産婦人科
羊水検査と保険適用の関係
羊水検査に公的健康保険が適用されない理由は、検査が「治療」ではなく「診断」に該当するためです。公的健康保険は病気や怪我の治療費のみを対象としており、治療につながらない検査は適用外となります。現在、ダウン症などの染色体異常に対する根本的な治療法が確立されていないため、保険の対象外と判断されています。
同様に高額療養費制度も利用できません。この制度は一ヶ月の医療費の自己負担額が一定額を超えた場合に超過分を支給するものですが、羊水検査は治療につながらない検査として適用外です。ただし、羊水検査によって破水など母体への治療が必要になった場合は、治療費に限り保険適用となる可能性があります。
参考)https://www.premama.clinic/clm/clm-647/
民間の医療保険についても、多くの場合は羊水検査そのものは補償対象外です。妊娠や出産は病気ではないという考え方から、検査費用は補償されないケースがほとんどです。ただし、検査に伴う合併症が発生し治療が必要になった場合は、保険金が支払われる可能性があります。
参考)https://crowdloan.jp/guide/freeloan19/
羊水検査と医療費控除の適用範囲
医療費控除は1月1日から12月31日までの1年間で支払った医療費が10万円を超えた場合に申請できる制度で、妊娠中の定期検診や不妊治療費などは対象となります。しかし羊水検査は基本的に医療費控除の対象外です。
参考)NIPT検査料金は医療費控除の対象ですか? – 新型出生前診…
この理由は、医療費控除の対象が「何らかの症状に対し治療を行った費用」に限定されているためです。羊水検査は人間ドックや健康診断と同じく、症状があるかどうかを調べるための費用という位置づけになります。国税庁の見解でも、母体血を用いた出生前遺伝学的検査の費用は医療費控除の対象外とされています。
参考)https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/80.htm
ただし例外的なケースも存在します。健康診断であっても検査をきっかけに重病が見つかり治療が行われると、医療費控除の対象となることがあります。同様に羊水検査によって破水などが生じ、母体への治療が必要になった場合には対象となる可能性があります。通常の妊婦定期検診の費用は医療費控除の対象となるため、羊水検査以外の妊娠・出産関連費用は積極的に控除申請することができます。
参考)https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/10.htm
羊水検査の費用負担を軽減する方法
公的な補助制度は2022年5月時点で存在しませんが、一部の医療機関では独自の補助制度を設けています。特にNIPT(新型出生前診断)を実施している施設では、NIPT検査で陽性結果が出た場合に、確定検査である羊水検査の費用を補助するサービスを提供していることがあります。
参考)【2025年最新】羊水検査の費用相場完全ガイド|病院別料金比…
例えばミネルバクリニックでは「互助会(カトレア会)」という制度を運営しており、NIPTを受ける際に互助会に加入すると(NIPT1回につき8,000円)、陽性結果が出た場合の羊水検査費用を全額負担してもらえます。高額な羊水検査費用(10万円から20万円)の心配なく、安心してNIPTを受けることができる仕組みです。
その他の医療機関でも、検査費用の一部補助や支払い方法の柔軟な対応(分割払いなど)を行っている施設があります。医療機関の費用補助制度を利用する場合は、補助対象となる検査の範囲、入院費や診察料が補助対象に含まれるか、他院で羊水検査を受ける場合の対応、補助を受けるための手続き方法と必要書類を必ず確認しましょう。
自治体による妊婦健康診査費用の助成金制度は多くの地域で実施されていますが、これは通常の妊婦健診を対象としており、羊水検査のような特殊な検査は対象外となっています。ただし自治体によって制度内容が異なるため、お住まいの地域の自治体に直接問い合わせることをお勧めします。
参考)羊水検査の検査費用の補助はありますか? – 新型出生前診断 …
羊水検査を受ける時期とリスク管理
羊水検査は一般的に妊娠16週から22週の間に実施されますが、特に20週までに受けることが推奨されます。妊娠16週を過ぎると羊水の量が十分に増え、検査に必要なサンプルを安全に採取できるようになります。20週までが望ましい理由は、検査結果が出るまでの時間を考慮し、万が一異常が発見された場合に適切な対応を取るための余裕を持たせるためです。
羊水検査のリスクとして最も重要なのが流産です。子宮に細い針を刺して羊水を採取する際、羊膜の損傷による羊水漏出や破水、針による刺激での子宮収縮、稀に胎盤損傷による胎盤早期剥離などが生じる可能性があります。流産率は従来0.3%とされていましたが、2019年の国際的な研究データによると0.12%で、検査を受けた人と受けていない人との間に有意差はないとされています。
参考)羊水検査の特徴と注意すること – 新型出生前診断 NIPT …
感染症のリスクも存在し、針を通じて細菌が子宮内に侵入し絨毛膜羊膜炎などを引き起こす可能性があります。発生頻度は0.1%未満(1,000人に1人以下)とされており、発熱・悪寒、下腹部痛、子宮収縮、陣痛様の痛みなどの症状が現れることがあります。羊水検査後には感染予防のための抗生剤や子宮収縮を抑える薬を内服しますが、合併症のリスクを正しく理解した上で検査を受けるかどうか決める必要があります。
参考)羊水検査のリスクは?流産確率0.1-0.3%の最新データと安…
双子の場合の流産率は3.57%と単胎児と比べて高くなります。ただし羊水検査をしなくても後期流産(12週から22週に起きる流産)は1.7%の割合で起きているため、極端に高い割合ではないと指摘する専門家もいます。検査の実施を決定する際は、これらのリスクと検査から得られる情報の価値を十分に比較検討することが重要です。
参考)NIPT(新型出生前診断)と羊水検査の違いとリスク【医師監修…
<参考リンク>
羊水検査の費用と内訳について詳しく知りたい方は、以下をご参照ください。
羊水検査の費用はいくら?保険適用可否をやその他詳細情報 | CEMクリニック
羊水検査のリスクと最新データについては、以下が参考になります。
羊水検査のリスクは?流産確率0.1-0.3%の最新データと安全性 | ミネルバクリニック
医療費控除の適用について詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。