溶血性尿毒症症候群における小児の予後について

溶血性尿毒症症候群における小児の予後

溶血性尿毒症症候群 小児予後の概要
⚠️

典型的HUS予後

腸管出血性大腸菌による典型的HUSは死亡率1-5%で比較的良好な予後

🚨

非典型HUS予後

補体異常による非典型HUSは死亡率25%と重篤で長期治療が必要

💊

治療による改善

エクリズマブ投与により非典型HUSの治療成績が大幅に向上

溶血性尿毒症症候群の小児における病型別死亡率

小児の溶血性尿毒症症候群(HUS)は、病型により予後が大きく異なります 。腸管出血性大腸菌感染による典型的HUS(STEC-HUS)の場合、死亡率は1-5%程度で比較的良好な経過をたどります 。しかし、非典型HUS(aHUS)では致死率が約25%と極めて高く、予後不良の疾患として知られています 。

参考)血液・凝固系疾患分野

海外のデータでは、非典型HUSの発症率は毎年100万人あたり成人で2人、小児では100万人に7人と報告されており、小児での発症頻度が高いことが特徴的です 。特に5歳未満の乳幼児での発症が多く、年齢が低いほど重篤な経過を示すことが知られています 。

参考)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000064434.pdf

📊 病型別死亡率データ

  • 典型的HUS:1-5%
  • 非典型HUS:約25%
  • 脳症合併例:より高い死亡率

溶血性尿毒症症候群による小児の腎機能長期予後

腎機能の長期予後についても、病型による明確な差が存在します 。典型的HUSでは、急性期を乗り越えた症例の大部分で腎機能は完全回復し、末期腎不全への移行率は5-10%程度です 。一方、非典型HUSでは約半数が末期腎不全に至り、50%以上の患者で血液透析、腹膜透析、腎移植が必要となります 。

参考)https://www.nagoya2.jrc.or.jp/content/uploads/2016/11/13.7_HUS_aHUS.pdf

腎生検による病理学的検査では、皮質壊死や50%以上の糸球体に血栓性微小血管症を認める場合には、長期の腎予後が不良であることが明らかになっています 。平均観察期間16.7ヶ月での予後調査では、異常なしが80%、後遺症ありが13%、不明が7%という報告があります 。

参考)https://kobecity-kmss.jp/files/publicfiles/11f7cba8586a1d1eb1d92c0fe048bde9.pdf

🔍 長期腎機能予後の特徴

  • 尿異常(蛋白尿、血尿)の継続
  • 血清クレアチニン値の慢性的上昇
  • 糸球体濾過率の低下

溶血性尿毒症症候群小児患者における脳症合併症の予後

神経系合併症は、小児HUS患者において最も重篤な合併症の一つです 。腸管出血性大腸菌感染によるHUSでは、約30%の症例で脳症を含む中枢神経障害を合併し、その一部は重篤な経過をたどり予後不良となります 。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpn/22/2/22_2_161/_pdf/-char/ja

脳症の発症機序は複雑で、志賀毒素による血管内皮細胞の直接障害、血液脳関門の破綻による神経組織への毒素移行、血栓性微小血管症による脳血管病変などが関与します 。特にThrombotic microangiopathyによる器質的病変は非可逆性であり、長期的な神経学的後遺症を残すリスクが高くなります 。
臨床症状は全汎型と局所型に分類され、全汎型では頭痛、傾眠から始まり、けいれん、意識障害へと進行します 。局所型では片麻痺、皮質盲、失語、不随意運動、焦点性けいれん発作などの局所症状を示します 。

溶血性尿毒症症候群におけるエクリズマブ治療による小児予後改善

近年、補体C5に対するモノクローナル抗体であるエクリズマブ(eculizumab)の導入により、非典型HUSの治療成績が大幅に改善されています 。特に診断後早期の投与が推奨されており、適切なタイミングでの治療開始が予後改善の鍵となります 。

参考)非典型溶血性尿毒症症候群 概要 – 小児慢性特定疾病情報セン…

自宅での尿検査による早期発見例では、エクリズマブ投与により症状が速やかに改善した症例も報告されています 。家族歴のある症例では、ワクチン接種などの発症契機となりうるエピソード後に注意深い観察を行い、早期発見・早期治療を行うことが重要です 。

参考)自宅での尿検査により早期発見された非典型溶血性尿毒症症候群の…

エクリズマブ治療により、従来の血漿交換療法による死亡率50%から25%への改善をさらに上回る治療成績が期待されています 。ただし、長期にわたる補体阻害薬の投与が必要となることが多く、再発リスクも高いため継続的なフォローアップが必要です 。

参考)https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/h26-1-063-al.pdf

💡 エクリズマブ治療のポイント

  • 早期投与が治療成績向上の鍵
  • 補体制御異常による症例に特に有効
  • 長期投与による維持療法が必要

溶血性尿毒症症候群小児例における独自の治療アプローチとリハビリテーション予後

従来の治療アプローチに加えて、小児HUS患者では廃用症候群の予防とリハビリテーションが重要な要素となります 。特に非典型HUSで心不全・腎不全を合併する症例では、体位ドレナージも禁忌となり、積極的な運動療法の実施が困難な状況となることがあります 。

参考)非典型溶血性尿毒症症候群にて入院中にギラン・バレー症候群を併…

ギラン・バレー症候群などの神経合併症を続発した症例では、自発的な身体活動を喪失し、廃用症候群の進行が不可避となることがあります 。このような症例では、理学療法士が中心となり、多職種連携による車椅子乗車時間の確保や、カルボーネン法による運動強度管理下での安全な運動療法を実施します 。
急性期から回復期にかけての総合的な管理により、従来の疾患単独での予後評価を超えた、包括的な機能回復を目指すアプローチが重要となっています 。透析療法期間中も、腎機能回復の程度に応じて段階的なリハビリテーションを実施し、長期的な生活の質の向上を図ることが現在の治療トレンドとなっています 。

参考)溶血性尿毒症症候群(HUS)

🏥 統合的治療アプローチ

  • 多職種連携による包括的ケア
  • 段階的リハビリテーションプログラム
  • 家族を含めた長期支援体制