横紋筋融解症に伴うAKIとCKと輸液

横紋筋融解症に伴うAKI

横紋筋融解症に伴うAKI:臨床で外さない要点
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まずは病態を1枚絵で把握

ミオグロビン中心の「尿細管障害+腎血流低下+酸化ストレス」を前提に、治療は早期輸液が軸になります。

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検査はCK・Cr・K・尿所見

CKはリスク層別化、Crと尿量でAKI診断、Kは致死性不整脈回避、尿潜血と沈渣の乖離でミオグロビン尿を疑います。

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治療の優先順位

原因是正→循環血液量確保→電解質・酸塩基の補正→必要時に腎代替療法。尿アルカリ化・マンニトールは「ルーチンではない」を原則にします。

横紋筋融解症に伴うAKIの病態とミオグロビン

 

横紋筋融解症に伴うAKIは、筋細胞内容物(代表はミオグロビン)が血中に流出し、腎で障害を起こす病態として理解すると全体が整理しやすくなります。

古典的には、①尿細管閉塞、②腎血管攣縮、③酸化ストレスの3本柱が説明され、いずれもミオグロビンが中心的役割を担うとされています。

ミオグロビンは腎毒性そのものに加えて、患者側の「脱水・低灌流」を合併したときにダメ押しでAKIを引き起こしやすく、治療が“早期輸液”に寄る理由になります。

参考)http://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-tokyoiryo-151029.pdf

また、横紋筋融解症では筋へのthird spacingで循環血漿量が低下しうること(重症例では四肢1肢あたり最大10Lの水が貯留しうる、という説明)もあり、腎血流の観点からも輸液の重要性が強調されます。

意外性のある近年の話題として、ミオグロビン/ヘムを「血小板が感知」し、マクロファージ細胞外トラップ(METs)形成を介して腎障害が増幅される、という機序が報告されています。

さらに、ラクトフェリン(Lf)の静脈投与が横紋筋融解症後AKIを予防し得る可能性が示された、という基礎〜橋渡しの文脈もあり、現時点で特効薬がない領域の将来像として押さえておく価値があります。

研究背景(METs・ラクトフェリンの話題)。

AMED成果情報:横紋筋融解症によるAKIの新たなメカニズム(血小板・METs・ラクトフェリン)

横紋筋融解症に伴うAKIの診断とCKと尿潜血

AKIの診断は「血清クレアチニン(sCr)変化」と「尿量」で行い、KDIGOでは例として「48時間以内にsCrが0.3mg/dL以上上昇」または「基礎値の1.5倍以上(7日以内)」などが基準です。

医療現場では尿量を厳密に追えない状況もあるため、sCrの時間変化をまず押さえつつ、可能なら尿量も合わせて重症度を組み立てるのが現実的です。

横紋筋融解症の“筋障害の程度”を表す代表指標はCKで、統一基準はないものの「正常上限の5倍以上」または「1000 U/L以上」で横紋筋融解症とされることが多い、という整理がよく用いられます。

AKI予防をいつ本格化するかの目安として、CK>5000 U/LをAKIリスク上昇の指標として扱う運用が紹介されています(ただし原因・背景でリスクは変動します)。primary-care.sysmex+1​

尿所見は現場で強力です。尿潜血陽性でも尿沈渣で赤血球陰性(乖離)なら、試験紙がヘムを拾っているだけで、ミオグロビン尿を疑う所見になります。

参考)https://primary-care.sysmex.co.jp/speed-search/disease/index.cgi?c=disease-2amp;pk=3

ミオグロビンは血中半減期が短く、測定タイミングで値が大きく揺れるため、診断やAKI予測に“ミオグロビンそのものを必須にする”運用は一般的でない、という点も知っておくと検査オーダーの迷いが減ります。

横紋筋融解症に伴うAKIの治療と輸液と尿量

横紋筋融解症に伴うAKIの予防・治療で、最もコンセンサスが得られている中心は「なるべく早期に、積極的な輸液を行う」ことです。

輸液の狙いは腎血流維持と、尿細管内でのミオグロビン希釈であり、病態から見ても最優先の介入になります。

具体的プロトコールは文献間で幅があり、例えば生理食塩水を400mL/hで開始し尿量>200mL/hを目標、といった提案が並びますが、輸液量や目標尿量を比較した試験がないため“一律プロトコール”には根拠が乏しいとされています。

実務としては、最初に細胞外液をボーラスで入れて利尿が立つかを確認し、年齢・心肺機能・既存CKDなどに合わせて過剰輸液を避けつつ、尿量を確保する設計が現実的、という整理がされています。

輸液製剤は生食がスタンダードとされる一方で、大量のCl負荷は有害かもしれない、また生食による尿の酸性化が理論上ミオグロビン沈殿を促す可能性がある、という注意点も挙げられています。

乏尿でなく高Kの懸念が低い場面では、乳酸リンゲルなど生理的Cl濃度の細胞外液製剤も選択肢になり得る、という“実務寄りの逃げ道”が提示されている点は、現場で役に立ちます。

この領域は「輸液がAKIを予防した」と言い切れる前向き試験が乏しい一方で、輸液開始の遅れがAKI増加と関連する観察研究が背景にあり、結果として輸液が“行わなければならない治療”として受け入れられている、という立ち位置です。

横紋筋融解症に伴うAKIの尿アルカリ化とマンニトール

尿アルカリ化は「ミオグロビン沈殿は酸性環境で促進される」という理屈から提案されてきましたが、前向き比較試験はなく、コホート研究では輸液のみと比べアウトカム改善を示していない、と整理されています。

そのため、尿アルカリ化やマンニトールは“ルーチンで行うべき治療ではない”という見解が明確に書かれており、実施するなら適応・副作用・モニタリング負荷を踏まえた選択になります。

尿アルカリ化の具体例として、重度低Ca血症、動脈血pH>7.5、血清HCO3- >30mEq/Lでは避ける、といった注意点、また投与中は動脈血pHや血清Caを頻回にモニターする、といった運用が提示されています。

マンニトールも「乏尿では使用しない」「大量投与でAKIを誘発し得る」などの注意があり、やるなら“漫然投与しない”ことが強調されます。

臨床的に意外と見落とされやすいのは、尿アルカリ化やマンニトールの議論が“輸液が十分にできている”ことを前提に乗っている点です。まず循環血漿量と利尿の確立が軸で、追加オプションはその後に検討する、という順番が安全です。

横紋筋融解症に伴うAKIの鑑別と運動後急性腎障害

「運動後に腎機能が悪い=運動性横紋筋融解症でミオグロビン尿」と短絡しないことは、救急・総合内科でも重要です。

Mindsの資料では、運動後急性腎障害(EIAKI)は“運動性横紋筋融解により生じるミオグロビン尿を伴ったAKIとは異なる病態”と考えられている、と整理されています。

この鑑別の実務ポイントは、症状(強い腰背部痛が目立つなど)、検査(CKやミオグロビンが高度上昇しないことがある)、そして尿所見の整合性(尿潜血と沈渣の乖離が弱い/ない等)を総合して、横紋筋融解症に伴うAKIのフレームから一度外して考えることです。congress.jamt+1​

特に腎性低尿酸血症に関連したEIAKIの話題は腎臓内科では重要で、同じ「運動後AKI」でも輸液の強度や説明(再発予防、生活指導、薬剤)に差が出ます。

参考)https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00377_chapter5.pdf

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【臨床で使えるミニ整理(箇条書き)】

・まず確認する3点

・治療の優先順位

  • 原因の同定と中止(薬剤、熱中症、圧挫など)。​
  • 早期の輸液(最重要、ただし過剰輸液は避ける)。​
  • 尿アルカリ化/マンニトールはルーチンにしない(やるなら厳密な適応と監視)。​
  • 腎代替療法は「予防目的では行わず」、AKI発症後に腎適応で検討する。​

【表:尿潜血陽性の“乖離”で考えること】

所見 解釈 次の一手
尿潜血(+)+沈渣RBC(−) ミオグロビン尿を疑う(横紋筋融解症の支持所見) CK・Cr・Kを同時に評価し、輸液設計へつなぐ
尿潜血(+)+沈渣RBC(+) 真の血尿を示唆(別疾患も並走し得る) 尿路・糸球体疾患の鑑別を追加


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