薬剤師の居宅療養管理指導と算定要件と単一建物居住者

薬剤師の居宅療養管理指導

薬剤師の居宅療養管理指導:現場で迷わない要点
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算定要件は「指示・計画・訪問・情報提供」

医師/歯科医師の指示、薬学的管理指導計画に基づく訪問、ケアマネ等への情報提供が核になります。

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単一建物居住者で単位が変わる

同一建物に何人介入しているか(同一月の人数)で評価が変わるため、月内の人数変動の扱いも要確認です。

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連携は「文書で残す」が事故を防ぐ

訪問結果は医師やケアマネに共有し、残薬・副作用・服薬困難などは具体例つきで伝えるとケアプランに反映されやすくなります。

薬剤師の居宅療養管理指導の算定要件と単位数の基本

 

居宅療養管理指導は、要介護状態でも利用者が可能な限り居宅で自立した生活を営めるよう、通院が困難な利用者の居宅を訪問し、心身の状況や環境を把握した上で療養上の管理・指導を行うサースです。厚労省資料では、薬剤師は「医師又は歯科医師の指示に基づく薬学的な管理及び指導」と「居宅介護支援事業者に対する居宅サービス計画の策定等に必要な情報提供」が求められると整理されています。

この「情報提供」は、単なる報告ではなく、ケアプラン(居宅サービス計画)が安全に回るための材料提供です。例えば、残薬の多さ、服薬拒否、誤服用、口腔内出血や便秘・下痢といった生活状況の変化は、ケアマネが医師・歯科医師・薬剤師へ情報伝達する例として示されています。つまり薬剤師側も、訪問で得た“生活の変化”を薬学的に翻訳して返すことが、制度上も実務上も価値になります。

また、算定の前提として「通院が困難」であることが明確化され、少なくとも独歩で家族・介助者の助けなく通院できる者などは算定対象外とする考え方が示されています。現場では、患者本人の移動能力だけでなく、認知機能や服薬管理能力、家族支援の有無も含めて“実質的な通院困難”を丁寧に評価し、関係職種と認識をそろえることが重要です。

薬局薬剤師の単位数は、単一建物居住者が1人の場合509単位、2~9人の場合377単位、10人以上の場合345単位という体系が示されています。加えて、特別地域加算(+15/100)や中山間地域等の小規模事業所加算(+10/100)等も枠組みとして用意されています。

ここで誤解されやすいのが「単位が低い=やることが少ない」ではない点です。単一建物居住者の評価は、移動時間や滞在時間など“効率性”の差を反映するための制度設計であり、必要な薬学的ケアの質そのものを下げる根拠にはなりません。むしろ集合住宅や施設では、情報が一気に集まる分、誤服用の連鎖や薬剤取り違えが起きた場合の影響が大きく、標準化した運用が求められます。

薬剤師の居宅療養管理指導の薬学的管理指導計画と情報提供

薬剤師の居宅療養管理指導では、医師・歯科医師の指示に基づき、薬局薬剤師が薬学的管理指導計画を策定することが制度上の前提として示されています。厚労省資料でも、薬剤師の算定要件の中に「医師又は歯科医師の指示(薬局の薬剤師にあっては、指示に基づき当該薬剤師が策定した薬学的管理指導計画)に基づき…訪問し…情報提供」と明記されています。

計画書の中身は「書けば良い」ではなく、訪問の目的と観察項目を定義する“臨床の設計図”になります。たとえば、薬剤の保管・管理方法、相互作用や副作用の確認、実施すべき指導内容、訪問回数・間隔などを計画段階で明文化することが、訪問結果の評価(計画→実施→再評価)を可能にします。自治体の説明資料でも、訪問前の計画策定や保存の考え方が整理されています。

情報提供の相手は、主にケアマネ(居宅介護支援)と、必要に応じて医師・歯科医師です。厚労省資料では「居宅サービス計画の策定等に必要な情報提供」が算定要件に位置づけられ、さらに多職種間の情報共有の重要性が繰り返し論点として扱われています。

実務では、報告書を「薬の説明をしました」で終わらせると、ケアマネのケアプランやサービス調整に乗りにくくなります。以下のように“行動につながる書き方”にすると、同じ事実でもチームの動きが変わります。

・残薬:残薬量(例:14日分余り)、発生パターン(昼のみ抜ける等)、原因仮説(嚥下困難、眠前のせん妄、理解度低下、配薬導線の問題)

・副作用/有害事象:症状、発現時期、疑わしい薬、重症度、対応案(減量提案、剤型変更、頓用化、モニタリング頻度)

・服薬支援:一包化、カレンダー、服薬タイミング変更、家族/ヘルパーの関与方法

・生活課題:食事量低下、便秘/下痢、口腔内出血、皮膚状態など(薬学的評価を添える)

こうした情報は、訪問介護やケアマネが医師・歯科医師・薬剤師へ伝達すべき情報例としても列挙されており、制度側も“生活変化を拾って医療につなぐ”ことを想定しています。

薬剤師の居宅療養管理指導の訪問回数と末期の悪性腫瘍の例外

薬局薬剤師の居宅療養管理指導は、原則として月4回を限度とし、末期の悪性腫瘍の者や中心静脈栄養を受けている者については、週2回かつ月8回を限度として算定できる枠組みが示されています。これは厚労省資料の注記として明確に整理されています。

この“例外”は、単に「重い患者だから回数を増やせる」という意味ではなく、病状変化が速い・薬物療法が高リスク・家族の介護負担が急変する、といった在宅療養の特性に合わせた安全設計です。特にオピオイド、制吐、下剤調整、鎮静薬の微調整など、短期間での評価と介入が必要になりやすく、訪問頻度がケアの質に直結します。

一方、訪問回数を増やすほど、チーム内の情報同期が遅れた時の事故リスクも上がります。例えば「医師が用量調整したが薬局に伝わらない」「複数薬局が関与している」「施設での配薬担当が日替わり」などが重なると、変更指示の取り違えが起きやすくなります。したがって、例外回数を使う局面ほど、報告の即時性(FAX/メール等)と、記録の標準化(チェックリスト化、変更履歴の見える化)が重要です。

また、訪問頻度設計には「単一建物居住者」の概念も絡みます。同じ建物に複数名介入する場合、移動効率は上がりますが、建物内で感染症や胃腸炎が流行した場合に同時に複数名が服薬不安定になるなど、“群としてのリスク”が上がることもあります。これは検索上位の解説では点数寄りに語られがちですが、実務上は「施設内の服薬プロセス監査」という視点が効きます(誰が、いつ、どう配薬し、残薬や頓服をどう管理しているか)。

薬剤師の居宅療養管理指導の単一建物居住者と減算の注意点

居宅療養管理指導では、単一建物居住者の人数に応じて単位が変わる評価体系が採用されており、薬局薬剤師は「1人」「2~9人」「10人以上」で区分されます。厚労省資料には、薬局薬剤師の単位数(509/377/345単位)が職種別に表で示され、単一建物居住者の人数で評価が分かれることが明確です。

ここで重要なのは、「単一建物居住者」は“同一日に訪問した人数”ではなく、“同一月に当該建築物で居宅療養管理指導等を行っている人数”という概念である点です。厚労省資料は、同一建物居住者と単一建物居住者の定義の違いも整理しており、月単位でのカウントという発想がミスの温床になりやすいと分かります。

実務で起きがちな落とし穴は次の通りです。

・月途中で死亡・退去・入院があり、人数区分が揺れる(「当初の予定人数」で算定する等、疑義解釈に沿った整理が必要になる場合がある)

参考)居宅療養管理指導における「単一建物居住者」、より詳しい考え方…


・同一建物内にグループホーム等が混在し、カウント範囲を取り違える(建物全体としての人数把握が必要になるケースがある)​
・同一世帯のみ介入しているのに、建物人数で機械的に区分してしまう(例外的整理が必要になる場合がある)​

意外に見落とされるのが、単一建物区分は“請求テクニック”ではなく、業務設計にも影響することです。例えば10人以上の建物では、訪問を効率化しないと採算が合わないため、結果として「1回あたりの観察が浅くなる」圧が生じやすい一方、厚労省側は同一建物の方が滞在時間が短い傾向をデータで示し、評価を調整しています。だからこそ、短時間でも質を落とさないための標準手順(薬剤保管の定位置化、配薬カート、頓服管理ルール、ハイリスク薬のダブルチェック)を施設側と合意しておくことが、医療安全としても経営としても効きます。

薬剤師の居宅療養管理指導の独自視点:残薬と認知機能を早期に拾う

検索上位の記事は「算定要件」「点数」「流れ」が中心になりがちですが、現場で差が出るのは“異変検知”の精度です。その中でも、残薬は単なる節薬ではなく、認知機能低下・うつ・せん妄嚥下障害・家族疲弊など、複数の問題が表面化する入口になります。厚労省関連資料でも、在宅業務で残薬問題を発見した例や、不適切使用(用法違反、用量違反、期限切れ等)の割合が示されており、残薬が医療安全のシグナルになり得ることが示唆されています。

意外なポイントは「要支援レルでも服薬管理ニーズがある」ことです。調査報告では、要支援1~2の軽度でも、服薬拒否などの困難がある場合に在宅での服薬管理ニーズが一定程度見られたという示唆が示されています。つまり“要介護度が低い=放っておいて良い”ではなく、生活課題が薬物療法に直撃しているケースでは早期介入が合理的です。

もう一歩踏み込むなら、薬剤師が「認知機能を疑う根拠」をチームに渡せると、ケア全体が早く動きます。例えば、認知症患者への在宅服薬支援でMMSEの活用が報告された症例報告があり、薬剤師の介入が“服薬支援の工夫”にとどまらず、評価→共有→多職種連携の起点になり得ることが示されています。必要に応じて、医師の診療に資する形で「いつ・どの場面で・どんな見当識の乱れがあったか」「新規薬剤開始後の変化」など、観察情報を構造化して伝えると、鑑別(薬剤性せん妄、脱水、感染、便秘など)に役立ちます。

論文リンク(認知機能評価の活用例・独自視点の根拠)。

認知症患者への在宅服薬支援においてMMSEが有用であった3症例(J-STAGE PDF)

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcmps/7/1/7_2019.0026/_pdf/-char/ja

権威性のある日本語の参考リンク(制度の定義・単位数・単一建物居住者の考え方の根拠)。

居宅療養管理指導の概要・報酬体系(職種別単位、単一建物居住者区分、算定の前提)

厚生労働省「居宅療養管理指導」資料(PDF)

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