薬学管理料とは 点数
薬学管理料とは 点数の内訳と一覧の考え方(服薬管理指導料・調剤管理料)
薬学管理料は「薬剤師が患者個別の状況に基づき、安全・有効な薬物療法を支えるために行う管理・指導・連携」を評価する枠で、現場ではまず“どの業務がどの項目に該当するか”を分解して考えるとミスが減ります。代表的には、処方内容の薬学的分析と薬学服用歴の記録・管理を評価する「調剤管理料」と、情報提供・服薬指導(対面が原則)を評価する「服薬管理指導料」が軸になります。調剤管理料は日数と剤数で点数が動き、例えば内服薬(一定の除外あり)の場合「7日分以下 4点、8~14日分 28点、15~28日分 50点、29日分以上 60点」といった区分で算定されます。
次に服薬管理指導料は、患者区分(再来・お薬手帳など)で点数が分かれ、点数表上「原則3月以内に再度処方箋を持参した患者に対して行った場合 45点」「それ以外 59点」などの区分が示されています。さらに介護老人福祉施設等への訪問で45点の区分があるなど、患者背景や実施形態で枝分かれします。ここで重要なのは、同じ“説明をした”でも、薬歴の活用、患者への対面指導、実施タイミングなどが要件として求められる点で、単に口頭で注意喚起しただけでは要件を満たさないケースが起こり得ます。
現場の運用としては、受付ごとに「①調剤管理(処方の分析+薬歴の記録・管理)」「②服薬指導(対面での説明+必要な指導)」「③医師等への連携(文書での情報提供/疑義照会)」をチェックリスト化し、該当する薬学管理料を“目的別”に当てはめると、点数の取り違えや算定漏れを防ぎやすくなります。
薬学管理料とは 点数の算定要件で差が出るポイント(対面・薬剤服用歴・定型文)
服薬管理指導料の根幹は「薬剤服用歴等と服用中の医薬品等を確認した上で、基本的な説明と必要な指導を対面で実施する」ことにあり、点数表の“行為”の要件を満たすことが前提になります。対面が原則である点は、忙しい時間帯ほど抜けやすいため、投薬カウンターでの実施が曖昧にならないよう、患者への確認事項(服薬状況、体調変化、副作用兆候、併用薬・サプリ等)を毎回一定の型で回しつつ、内容は患者ごとに変えるのが安全です。
また、近年は薬歴記載について「画一的な定型文」への注意喚起が複数の解説で触れられており、監査・審査の観点でも“その患者に必要な指導を判断して記載する”姿勢が求められます。実務上は、SOAPの形式そのものよりも、①何を確認し、②どんなリスク評価をし、③何を説明・提案し、④次回どうフォローするか、が読める記録が強いです。
点数は同じでも、算定の強度(否認されにくさ)は「患者個別性のある記録」と「実施の証跡(何をどう伝えたか)」で変わります。例えば、高齢者でふらつきがある、腎機能が気になる、OTC併用が多い、といった背景がある場合は、相互作用・重複投薬リスク、服薬アドヒアランス、生活状況(食事・睡眠)まで踏み込んだ確認が、結果的に薬学管理料の“対人評価”として筋の通った記録になります。
薬学管理料とは 点数と連携の実務(服薬情報等提供料・文書)
薬局が医療機関やケアチームと連携して情報提供する業務は、薬学管理料の中でも「服薬情報等提供料」として評価されます。例えば服薬情報等提供料1は「医療機関から求めがあった場合に、患者の同意を得て、服薬状況等を文書等で提供した場合 30点」と整理されており、ポイントは“求め(依頼)”と“同意”と“文書”です。口頭連絡だけでなく、文書(トレーシングレポート等)で要点を残すことが制度上の骨格になります。
ここでの実務のコツは、情報提供を「何を、どの粒度で」書くかです。ありがちな失敗は、薬歴のコピペのような長文になり、読む側(医師・看護師・ケアマネ)に刺さらないことです。短くても、①要点(結論)、②観察された事実(患者発言・測定値・残薬状況)、③薬学的評価(何が問題で何が疑わしいか)、④提案(変更案・観察継続案)、⑤緊急度、を押さえると“読まれる文書”になります。
意外に見落とされやすいのは、同意取得の運用です。投薬時に「主治医へ情報共有してよいか」を毎回確認するのではなく、継続的な連携が見込まれる患者(多剤併用、認知機能低下、在宅療養、複数受診)については、同意取得の説明と記録を標準化しておくと、提供料の算定判断もスムーズになります。
薬学管理料とは 点数の典型トラブル(重複投薬・相互作用等防止加算/疑義照会)
薬剤師の疑義照会が処方変更につながった場合に評価されるのが「重複投薬・相互作用等防止加算」で、点数は「残薬調整に係るもの以外 40点」「残薬調整に係るもの 20点」と区分されています。ここは点数が明確な一方で、否認の多くは「疑義照会の内容が“薬学的”に整理されていない」「処方変更の事実関係が曖昧」「摘要・薬歴に根拠が残っていない」など、記録の弱さで起こります。
疑義照会の設計は、電話でのやり取り以上に、記録の書き方で決まります。例えば相互作用が疑わしい場合、単に「併用注意です」では弱く、患者の症状(眠気・転倒・食欲低下など)や併用薬の開始時期、代替案(用量調整・剤形変更・中止候補・モニタリング案)まで示すと、処方医が変更判断をしやすくなります。結果として、薬局側も“処方変更に至った合理性”を説明しやすくなり、レセプト上の整合が取りやすくなります。
もう一つの典型は「残薬調整」と「疑義照会」の境界です。残薬があること自体は患者側の事情(飲み忘れ等)でも起こりますが、処方変更の必要性を薬学的に評価し、医師に照会し、実際に変更されたなら加算の対象になり得ます。反対に、患者の自己判断で余った薬の“使用計画の説明”だけで処方変更がない場合は、別の業務(服薬指導や情報提供)として整理した方が安全です。
薬学管理料とは 点数の独自視点(在宅患者訪問薬剤管理指導料を“建物”で崩すチェック)
在宅領域では、在宅患者訪問薬剤管理指導料の点数が「単一建物診療患者が1人 650点」「2~9人 320点」「それ以外(10人以上等)290点」と区分され、同じ訪問でも“建物内の患者数”で大きく点数が変わります。ここは知識として知っていても、現場で取り違えが起こりやすいのが実情です。特に、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、集合住宅での訪問が重なる薬局では、月内で対象人数が変動し得るため、算定の前提となる「単一建物診療患者数」の把握ルールが運用の肝になります。
独自視点としておすすめなのは、“患者単位ではなく建物単位で先に台帳を作る”ことです。具体的には、建物ごとに以下を固定項目として管理し、訪問スケジュールではなく請求側から逆算します。
- 建物名(正式名称)と住所(番地まで)
- 居住形態(集合住宅/施設等)と訪問先の部屋番号
- 同一月内の当該建物の対象患者数(増減の履歴)
- 算定区分(1/2/3のどれになるか)
- 居宅療養管理指導費など他制度との“請求の住み分け”メモ
これをやると、訪問薬剤師が現場で頑張っても、請求段階で点数区分がズレる事故(高点数で請求して返戻、低点数で請求して取りこぼし)をかなり防げます。さらに、在宅は服薬管理指導だけでなく、残薬、服薬アドヒアランス、転倒リスク、嚥下、腎機能、配合変化など課題が複合化しやすく、トレーシングレポート等で医師へ返す情報の価値も上がります。結果的に「薬学管理料」を点数回収の話ではなく、連携の質を上げる設計として運用しやすくなります。
服薬情報等提供料(点数表・算定要件の原典に近い情報)参考。
調剤管理料(点数の具体区分の確認)参考。
在宅患者訪問薬剤管理指導料(単一建物診療患者数ごとの点数確認)参考。
しろぼんねっと|15 在宅患者訪問薬剤管理指導料(650点/320点/290点)

【※旧レイアウト版】面白いほどよくわかる!調剤報酬 vol.3 薬学管理料編 ー前編ー【令和6年度改定版】: 外来患者に関する報酬、支援に関する報酬 面白いほどよくわかる!調剤報酬(令和6年度改定版)