ワソランの効果と作用機序
ワソランの基本的な薬理効果
ワソラン(ベラパミル塩酸塩)は、カルシウム拮抗薬として分類される治療薬で、心臓や血管に対して多面的な効果を示します 。本剤の主要な適応症として、頻脈性不整脈(心房細動・粗動、発作性上室性頻拍)および虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞の急性期を除く)が挙げられています 。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=52429
ワソランの効果は、細胞外液のカルシウムイオンが細胞内に流入することを阻止するCa++拮抗作用により発現します 。この作用により、心臓の興奮伝導を遅らせ、乱れた脈拍を整える効果を発揮するのです 。また、冠動脈を含む血管を拡張させることで、心筋への酸素供給を改善し、狭心症の症状緩和に寄与します 。
・心房細動・粗動時の心拍数コントロール
・発作性上室性頻拍の発作停止・再発予防
・狭心発作回数および硝酸剤舌下消費量の減少
・安静時および負荷心電図の改善
ワソランのカルシウム拮抗作用機序
ワソランの作用機序は、細胞外液Ca++の細胞内流入阻止に基づくCa++拮抗作用にあります 。この機序により、心筋細胞と血管平滑筋細胞の両方に作用し、治療効果を発現します。
参考)医療用医薬品 : ベラパミル塩酸塩 (ベラパミル塩酸塩錠40…
心筋に対しては、L型カルシウムチャネルをブロックすることで、slow response型の活動電位を有する洞結節や房室結節の自動能や伝導能を抑制します 。洞結節に対しては拡張期脱分極速度を抑制して心拍数を減少させ、房室結節においては伝導性の低下により房室伝導時間を延長させます 。これらの作用により、不整脈の治療効果を示すのです。
血管系に対しては、末梢血管抵抗を下げ、心仕事量を軽減する効果があります 。虚血性心疾患患者への経口投与では、血圧を緩徐に降下させ、心拍数も軽度に減少させることで、心筋酸素消費量を抑制します 。
参考)https://medical.nihon-generic.co.jp/uploadfiles/medicine/VERAP_IF.pdf
・L型カルシウムチャネルの選択的阻害
・洞結節・房室結節への直接作用
・冠状動脈および末梢血管の拡張作用
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00055700.pdf
ワソランの不整脈への治療効果
ワソランは、日本において経口のカルシウム拮抗剤として初めて頻脈性不整脈の効能・効果を取得した薬剤です 。心房細動は最も頻度の高い不整脈の一つであり、加齢に伴いその頻度が増加することが知られています 。
参考)虚血性心疾患治療剤「ワソランhref=”https://www.eisai.co.jp/news/news200810.html” target=”_blank” rel=”noopener”>https://www.eisai.co.jp/news/news200810.htmlamp;reg;錠」 心房細動・粗動、…
心房細動の基本的治療法は、心拍数コントロール、洞調律化(リズムコントロール)、塞栓症予防の三つに大別されますが、ワソランは主に心拍数コントロールに効果を発揮します 。従来は注射剤のみが不整脈治療に使用されていましたが、経口剤の効能追加により、不整脈治療における薬剤選択の幅が広がりました 。
Fast response型の活動電位を示す心房、心室、His-Purkinje線維では伝導時間や不応期はほとんど変化しませんが、slow response型の活動電位を示す洞結節や房室結節では顕著な効果を示します 。このため、房室結節を経由する頻拍性不整脈に対して特に有効です。
・心房細動・粗動における心拍数の適切な管理
・発作性上室性頻拍の急性期治療および予防効果
・房室結節伝導抑制による抗不整脈作用
ワソランの虚血性心疾患における効果
ワソランは、40年以上の実績を持つ虚血性心疾患治療薬として、狭心症や心筋梗塞(急性期を除く)の治療に使用されています 。本剤は冠血管拡張作用と末梢血管拡張作用を併せ持つことで、多角的な治療効果を発揮します。
狭心痛の改善効果として、狭心発作回数や硝酸剤舌下消費量を減少させる効果が臨床試験で確認されています 。また、安静時心電図や負荷心電図の改善効果も示されており、客観的な評価指標においても有効性が証明されています 。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00058941.pdf
冠状動脈拡張作用により冠血流量を増加させ、末梢血管拡張により末梢血管抵抗を減少させます 。これらの作用により心筋への酸素供給を増加させる一方で、心拍数と血圧の軽度低下により心筋酸素需要を減少させ、需給バランスの改善を図ります 。
・冠状動脈の拡張による心筋血流改善
・末梢血管拡張による後負荷軽減
・心仕事量減少による心筋酸素消費量抑制
ワソランの副作用と相互作用の理解
ワソランの主な副作用として、頭痛、めまい、発疹、便秘、悪心・嘔吐などが報告されています 。これらは比較的軽微な副作用ですが、重大な副作用として循環器系や皮膚系の障害が報告されています 。
参考)ベラパミル塩酸塩(ワソランⓇ)では、どのような副作用がみられ…
重大な副作用には、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形滲出性紅斑、乾癬型皮疹等の重篤な皮膚障害があります 。これらの症状が現れた場合には、発熱、紅斑、痒感、眼充血、口内炎等の前駆症状を十分に観察し、速やかに投与を中止する必要があります。
参考)https://faq-medical.eisai.jp/faq/show/1917?category_id=74amp;site_domain=faq
薬物相互作用では、CYP3A4が主要な代謝酵素であるため、同酵素を阻害する薬物との併用時には注意が必要です 。本剤自体もCYP3A4およびP-糖蛋白に対して阻害作用を有するため、これらの基質となる薬物の血中濃度を上昇させる可能性があります 。
参考)https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=2171008F1088
・消化器症状(便秘、悪心)の発現頻度が高い
・皮膚障害の早期発見と適切な対応が重要
・CYP3A4関連の薬物相互作用への注意
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscpt/44/6/44_490/_pdf/-char/ja