ワンパル1号と2号の違いとは何か

ワンパル1号と2号の違い

ワンパル1号と2号の基本比較
🏥

ワンパル1号輸液

耐糖能低下例や侵襲時の開始液として使用

💊

ワンパル2号輸液

通常の必要カロリー量患者の維持液として使用

⚖️

主な違い

糖質量とカロリー量が大きく異なる

ワンパル1号の成分組成と特徴

ワンパル1号輸液は、高カロリー輸液用の糖・電解質・アミノ酸・ビタミン・微量元素液として設計された製剤です 。800mL製剤では総熱量560kcal、1200mL製剤では840kcalとなっており、比較的低カロリーの設定となっています 。

参考)エイワイファーマ株式会社

糖質成分として、800mL中にブドウ糖120g、1200mL中に180gが配合されています 。これは糖質カロリーとして480kcalまたは720kcalに相当し、非たんぱく熱量の主要部分を占めています 。アミノ酸量は800mLで20g、1200mLで30gとなっており、これらが蛋白質源として機能します 。

参考)ワンパル輸液の特徴は?押さえておきたい5つのポイント【投与時…

電解質組成については、ナトリウム50mEq、カリウム25mEq(800mL当たり)が配合されており、体液バランスの維持に必要な成分が含まれています 。ビタミン類では、チアミン4mg、アスコルビン酸100mg、葉酸0.3mgなど、静脈栄養療法時の最新のビタミン推奨処方(AMA/FDA2000)に基づいて増量されています 。

参考)ワンパル1号輸液

ワンパル2号の成分組成と効果

ワンパル2号輸液は、通常の必要カロリー量の患者における維持液として位置づけられています 。800mL製剤で総熱量840kcal、1200mL製剤では1260kcalと、1号と比較して大幅に高カロリーとなっています 。

参考)医療用医薬品 : ワンパル (ワンパル1号輸液 他)

最大の特徴は糖質量の増加で、800mL中にブドウ糖180g、1200mL中には270gが配合されています 。この糖質量の違いにより、2号は1号よりも高いエネルギー密度を実現しています 。アミノ酸量についても、800mLで30g、1200mLで45gと1号よりも多く配合されており、より多くの蛋白質を供給できます 。

参考)ワンパル2号輸液

1日投与量として1600mL(1号800mL+2号800mL)を用いた場合、総熱量は1680kcalとなり、1mL当たり約1kcalという計算しやすい設計となっています 。これにより、必要熱量に対する投与液量の算出が容易になります 。

ワンパル1号と2号の使い分け基準

臨床現場でのワンパル1号と2号の使い分けは、患者の病態と耐糖能によって決定されます 。1号は主に経中心静脈栄養療法の開始時で耐糖能が不明の場合や、耐糖能が低下している場合の開始液として使用されます 。また、侵襲時などで耐糖能が低下している患者にも適用されます 。

参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2018/P20180404001/171575000_23000AMX00458_A100_1.pdf

2号は通常の必要カロリー量の患者の維持液として用いられ、糖代謝が安定している患者に適しています 。特に長期間の静脈栄養療法が必要な患者において、十分な栄養サポートを提供できます 。
適応患者の選択においては、患者の尿量が重要な指標となります 。本剤を投与する場合には、患者の尿量が1日500mLまたは1時間当たり20mL以上あることが望ましいとされています 。これは、高濃度の糖質や電解質の代謝と排泄に十分な腎機能が必要なためです 。

ワンパル製剤の安全性機能と投与時の注意

ワンパル輸液の大きな特徴として、隔壁未開通投与を防止する機能が挙げられます 。容器の構造上、隔壁未開通の状態では針を刺しても薬液は流出しない設計となっており、点滴ルート穿刺口の直前に空室を配置することで、開通作業を行わずに投与できない仕組みになっています 。
この安全性機能により、他のキット製剤で発生しうる開通漏れによる高血糖や電解質異常、嘔気・嘔吐などの副作用を予防できます 。隔壁部分の調整により、隔壁の一部開通も防止する設計となっており、投与時のリスクマネジメントに重点を置いた製剤です 。
投与時の注意点として、ワンパル製剤は脂肪を含まないため、必須脂肪酸欠乏症や肝機能障害等の代謝性合併症を防ぐために脂肪乳剤の併用が必要です 。静脈経腸栄養ガイドライン第3版では、静脈栄養施行時には必須脂肪酸欠乏症予防のため脂肪乳剤の投与が必須とされています 。

ワンパル製剤の薬価と経済性評価

ワンパル1号輸液の薬価は、800mL製剤で1,313円/キット、1200mL製剤で1,717円/キットに設定されています 。ワンパル2号輸液については、800mL製剤で1,399円/キット、1200mL製剤で1,825円/キットとなっています 。
経済性の面では、ワンパル製剤は調製作業の簡便性により人件費の削減効果が期待できます 。従来の高カロリー輸液製剤では、TPN基本液にビタミン製剤や微量元素製剤を個別に混注する必要がありましたが、ワンパル製剤では混注作業の手間を削減でき、ビタミンやミネラルの投与漏れ防止、微生物汚染や異物混入のリスク軽減も可能です 。
また、既承認のTPN製剤よりも少ない投与液量(1600mL)で1日の所要栄養量を補給可能な設計により、水分負荷を抑えたい症例において治療効率の向上が期待できます 。低体重患者や心不全合併例、水分制限が必要な症例において特に有用性が高いと考えられます 。