Versa HD(バーサHD)の機能
Versa HD(バーサHD)の高線量率FFF技術機能
Versa HDの最大の特徴の一つが、フラットニングフィルタフリー(FFF)技術を搭載した高線量率モードです。この機能により、従来の放射線治療と比較して飛躍的な治療時間短縮が実現されています。
FFF技術は従来のフラットニングフィルタを取り除くことで、より高い線量率での照射を可能にします。具体的には、通常の2倍から最大10倍の線量率での治療が行えるため、従来15分から30分程度要していた治療時間を数分に短縮できるのが大きなメリットです。
この治療時間の短縮は、単に患者様の負担軽減だけでなく、治療中の体動による照射エラーのリスクを大幅に減少させる重要な機能的意味を持ちます。呼吸や消化活動による動きのある部位において、動きによって生じるエラーを削減し、線量の集中性を高めることができるため、より正確で安全な治療が実現されます。
また、高性能マルチリーフコリメータAgility™との組み合わせにより、低い漏えい率と高速なリーフ移動により、短時間での高品質な線量投与が可能となっています。特に強度変調照射のような時間のかかる治療においても、大幅な時間短縮を実現しながら治療品質を向上させています。
💡 興味深い事実として、この高線量率モードの導入により、従来は標準的な時間枠での実施が困難だった定位放射線治療(SRS/SBRT)が、通常のタイムスロット内で実施可能になったことが報告されています。
Versa HD(バーサHD)の高精度画像誘導機能
Versa HDは、2D、3D、4Dによる包括的なイメージング機能を搭載し、業界最大級のFOV(視野)により多くの解剖学的構造を可視化できる画像誘導システムを備えています。
高度な4Dイメージガイダンス機能により、体動が原因で従来は見えづらかった腫瘍も視認できるようになり、治療精度の大幅な向上が実現されています。特に、VMAT(強度変調回転放射線治療)照射中にコーンビームCT画像を同時に収集する機能は、治療計画通りに照射が行えているかをリアルタイムで確認でき、高い安全性を提供します。
従来のX線によるIGRT(画像ガイド下放射線治療)機能に加えて、軟部組織の描出能に優れた超音波画像ガイド下でのIGRT機能も搭載されています。X線コントラストが低い乳房や前立腺領域などの高精度放射線治療において、その効果を特に発揮します。
治療室に組み込まれたX線撮影装置により、治療台に患者様が横になった際に、事前に撮影したCT画像とX線撮影画像を自動で照合し、ずれを補正して寝台が動いて位置を微調整する機能も備えています。これにより、治療計画CTを撮影した時の状態を高い精度で再現することが可能です。
Versa HD(バーサHD)のAgility MLC機能特性
Versa HDに搭載されているマルチリーフコリメータAgilityは、高精度な照射野形成において卓越した機能を発揮します。160枚の金属リーフが従来の2倍の速度で駆動し、高精度の治療を短時間で実現する能力を持っています。
Agilityの最大の特徴は、その低いリーフ透過率にあります。従来品と比較してリーフ透過率が大幅に低く抑えられているため、重要臓器および全身に対する不要な線量を効果的に低減することができます。この特性により、治療計画における線量選択の選択肢が広がり、より柔軟で安全な治療計画の作成が可能になります。
さらに注目すべきは、バーチャル1mmリーフ機能です。物理的には5mm幅のリーフでありながら、仮想的に1mmの精度でコントロールできるため、極小ターゲットへの追従性が飛躍的に向上しています。この機能により、小さな腫瘍や複雑な形状の病変に対しても、周囲の正常組織への影響を最小限に抑えながら、高精度な治療が可能となります。
照射範囲は40cm×40cmと広く設計されており、大きな腫瘍や数が多い腫瘍にも対応できる設計となっています。これは特に乳がん術後照射や複数の転移性病変への同時治療において、その真価を発揮します。
📊 臨床データによると、Agility MLCの高速なリーフ移動により、1アークあたりの強度変調ポイントが従来機種の6倍以上となり、より精密で効率的な線量分布の実現が可能になっています。
Versa HD(バーサHD)の自動患者認識システム機能
Versa HDが他の放射線治療装置と一線を画す機能の一つが、非接触での自動患者認識システムです。この革新的な機能により、照射準備中の患者様が自動的に識別され、必要な固定具や照射条件が自動表示されるシステムが構築されています。
自動患者認識機能は、治療体位の再現性を大幅に向上させ、ヒューマンエラーのリスクを効果的に低減します。特に多忙な放射線治療部門において、スタッフの作業負担を軽減しながら治療の安全性と精度を同時に向上させる重要な機能として位置づけられています。
システムは患者様を認識すると、その患者様専用の治療プロトコルを自動的に呼び出し、必要な固定具や位置決め情報を治療スタッフに提示します。これにより、患者様の取り違えや治療設定の間違いといった重大なエラーを事前に防ぐことができる安全機能として機能しています。
さらに、光学式体表面スキャニングによるリアルタイムモニタリングシステム「Catalyst」との連携により、治療前の位置合わせから治療中のモニタリング、呼吸同期照射まで、無被ばくで包括的な患者管理が可能となっています。
この自動認識機能は、プロトコルを中心としたプロセスにより、治療時に医師が行うインプット作業も軽減し、部門内の業務効率化にも大きく貢献しています。
🔍 興味深い臨床応用として、自動患者認識システムにより、疼痛が強く治療計画CT撮影時と同じ姿勢が困難な患者様や、体重減少などで体形が変化した患者様に対しても、コンピューターが最適化を行い、治療計画の再作成なしに治療継続が可能になったケースが報告されています。
Versa HD(バーサHD)の独自呼吸同期機能システム
従来の放射線治療では対応が困難とされていた呼吸性移動への対策として、Versa HDは画期的な呼吸同期システムを搭載しています。この機能は、他の治療装置では見られない独自の特徴を持った先進システムです。
従来の治療では、体幹部の腫瘍が呼吸に伴って移動するため、息を止めたり腹部を圧迫することで呼吸性移動を低減させる必要がありました。しかし、Versa HDの呼吸同期システムでは、呼吸のタイミングに合わせて照射することで、呼吸を制限することなく自然呼吸のまま治療が可能になっています。
特に注目すべきは、DIBH(Deep Inspiration Breath Hold:深吸気息止め)機能です。乳がん放射線治療において、深吸気息止め時の肺野の拡張を利用し、心臓と標的組織との距離を拡大することで、心臓への線量を大幅に削減できます。この機能により、従来は治療が困難とされていた左乳房の放射線治療においても、心臓への影響を最小限に抑えた安全な治療が実現されています。
呼吸同期機能では、呼吸に伴う病変の移動自体を小さくするように、おなか周りの動きを抑える固定具を作成し、治療中の病変の動きを抑制することも可能です。これにより、照射精度が格段に向上し、より正確なピンポイント治療が実現されています。
光学式カメラシステムとの組み合わせにより、体表面をリアルタイムにスキャンし、無被ばくで呼吸パターンを監視しながら最適なタイミングでの照射が可能となっています。このシステムにより、患者様の体表面に位置情報や補正方法を直接投影し、正確な位置決めが行えます。