ヴェノグロブリンの効果と適応症の詳細

ヴェノグロブリンの効果と適応症

ヴェノグロブリンの主な効果と適応症
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免疫補充療法

低ガンマグロブリン血症患者への免疫力向上

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川崎病治療

急性期炎症抑制と冠動脈瘤予防効果

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神経疾患治療

ギラン・バレー症候群の運動機能改善

ヴェノグロブリンの基本的な作用機序

ヴェノグロブリン(献血ヴェノグロブリンIH)は、多数の献血者の血漿から精製された静注用人免疫グロブリン製剤です。血液中に欠乏しているガンマグロブリンを補うことにより免疫力を高め、抗生物質と同時に使用することで感染治療の効果を向上させる作用があります 。本製剤はFc部分を完全に保持したintact型免疫グロブリンであり、正常な補体活性化能を有し、オプソニン効果や血中半減期において生体内のIgGとほぼ同等の特性を示します 。

参考)くすりのしおり : 患者向け情報

ヴェノグロブリンの免疫調節作用として、T細胞レセプターのβ鎖可変部に対する抗体やCD4、HLA-Iなどに対する抗体が含まれており、T細胞機能を低下させリンパ球増殖や抗体産生を抑制する多面的な免疫調節メカニズムを持ちます 。これにより単なる免疫補充だけでなく、過剰な免疫反応の抑制効果も発揮します。

参考)医療関係者ですか?「はい」「いいえ」|(JB)日本血液製剤機…

ヴェノグロブリン治療における川崎病での効果

川崎病急性期における免疫グロブリン大量療法(IVIG療法)は、急性期の強い炎症反応を可能な限り早期に終息させ、冠動脈瘤の発症頻度を最小限にすることを治療目標としています 。特に第7病日以前に治療開始することが望ましく、冠動脈拡張病変が始まる第9病日以前に治療効果を得ることが重要です 。

参考)https://jspccs.jp/wp-content/uploads/j2001_054.pdf

川崎病におけるメタアナリシスの結果では、免疫グロブリン治療を受けなかった患者は治療を受けた患者より20倍以上の確率で冠動脈に後遺症を生じることが統計学的に確認されています 。現在では川崎病患者の90%がガンマグロブリン療法を受けており、アスピリンとの併用により標準的な急性期治療として確立されています 。

参考)川崎病について – 独立行政法人国立病院機構 四国こどもとお…

投与方法は通常、川崎病の急性期において人免疫グロブリンGとして2g/kg体重を12〜24時間かけて投与する大量療法が実施されます 。この治療により全身の炎症を抑制し、冠動脈瘤の発生を効果的に防ぐことが可能となります。

参考)https://medical.teijin-pharma.co.jp/content/dam/teijin-medical-web/sites/ebook/specialty/vek_on08/%E5%85%8D%E7%96%AB%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%B3%E8%A3%BD%E5%89%A4%E3%81%AE%E9%81%A9%E6%AD%A3%E4%BD%BF%E7%94%A8%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB.pdf

ヴェノグロブリンによる特発性血小板減少性紫斑病の効果

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に対するヴェノグロブリンの効果は、血小板数を安全な値(例えば血小板数5万/μL以上)まで一時的に増加させることです 。ITP患者の場合、血小板数や出血症状の有無、ライフスタイルに応じて治療方針が決定され、血小板数を少なくとも3万/μL以上に維持することが目標とされます 。

参考)特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の治療

ITPに対する免疫グロブリン療法の作用機序は、免疫複合体沈着によるⅢ型アレルギー反応の抑制や、患者体内の自己抗体産生の調節によるものと考えられています 。大量の免疫グロブリン製剤を5日間連続投与することで、血小板破壊を抑制し血小板数の回復を促進します。
外科的処置や出産時など、一時的に血小板数を増加させる必要がある場合にも、ヴェノグロブリンは有効な治療選択肢として位置づけられています 。

ヴェノグロブリン治療におけるギラン・バレー症候群への効果

ギラン・バレー症候群(GBS)に対するヴェノグロブリンを用いた経静脈的免疫グロブリン療法(IVIg)は、発症早期(1〜2週以内)から治療を開始すれば有効な治療法として確立されています 。特に重症度がFG 4(中等症)以上の症例では積極的に免疫調整療法を施行することが推奨されています 。

参考)https://www.neurology-jp.org/guidelinem/gbs/sinkei_gbs_2013_05.pdf

GBSに対する免疫グロブリン治療は、免疫グロブリン400mg/kg/日を5日間連続で点滴静注する方法で実施され、現在GBSに対する第一選択治療法として位置づけられています 。血漿交換療法(PE)と比較して患者への負担が軽く、治療の簡便性と利便性から多くの医療機関で採用されています 。

参考)ギラン・バレー症候群 関連疾患 一般社団法人日本血液製剤協会

わが国では2000年12月に初めてIVIG製剤が「ギラン・バレー症候群(急性増悪期で歩行困難な重症例)」の適応を取得し、その後10年間の全例調査により1,000例以上の治療実績が蓄積されています 。

参考)https://medical.teijin-pharma.co.jp/specialty/vek_on13.html

ヴェノグロブリン使用時の特殊な監視ポイントと効果評価

ヴェノグロブリン投与時における血清粘稠度の監視は重要な安全管理項目です。血清粘稠度が2.5cp以上の症例では、脳梗塞や肺梗塞などの血栓塞栓症、あるいは心臓や脳の血管攣縮による重篤な副作用が生じる可能性があるため、慎重な投与が必要です 。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/96/9/96_2046/_pdf

投与速度の管理も治療効果と安全性に直結する重要な因子です。初日の投与開始から1時間は0.01mL/kg/分で開始し、副作用等の異常所見が認められなければ段階的に速度を上げることが可能です 。10%製剤の使用により、5%製剤と比較して投与液量が半分となり、心臓への負担軽減と投与時間の短縮が期待できます 。

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00005012.pdf

治療効果の評価指標として、IVIg治療後の血清IgGは投与開始後に急激に上昇し、通常の血清IgGの3〜5倍に達した後、3〜4日で約半分となる推移を示します 。このような薬物動態の特徴を理解することで、適切な治療効果判定と追加投与の必要性を判断することが可能となります。
日本血液製剤機構による免疫グロブリン製剤の詳細な解説
医薬品医療機器総合機構による安全性情報