上咽頭がんの症状
上咽頭がんの頸部リンパ節転移による症状
上咽頭がんの最も特徴的な症状は、頸部リンパ節転移による首のしこりなんです。咽頭の周りには多くのリンパ節があるため、上咽頭がんは頸部リンパ節に転移しやすい性質を持っています。
参考)上咽頭がん – 19. 耳、鼻、のどの病気 – MSDマニュ…
発見時に頸部リンパ節転移を認めることが非常に多く、初期は自覚症状がない場合も多いため、首のしこりが初発症状となるケースが少なくありません。特に上咽頭がんでは、首のやや後ろ側にあたる後頸三角のリンパ節に転移することが多いという特徴があります。
参考)上咽頭がん href=”https://cancer-c.pref.aichi.jp/about/type/nasopharynx/” target=”_blank”>https://cancer-c.pref.aichi.jp/about/type/nasopharynx/amp;#8211; 愛知県がんセンター
頸部リンパ節転移が見つかった場合、多くは病期Ⅱ以上に分類されます。リンパ節転移がある場合でも、手術で頸部リンパ節を切除しても再発する可能性が高いため、放射線治療が優先して行われることになります。
参考)上咽頭がん 全ページ:[国立がん研究センター がん情報サービ…
上咽頭がんの鼻症状と耳管閉塞
上咽頭がんでは鼻の症状として、鼻づまり、咽頭がん
耳の症状も上咽頭がんの重要な徴候で、耳閉感、難聴、耳鳴といった滲出性中耳炎の症状が初発症状となることがあります。これは上咽頭に耳管開口部があり、腫瘍により耳管の出口がふさがれることで鼓膜がへこみ、中耳に液体がたまる状態になるためです。
のどのがんなのに耳にも症状が出るのは意外に思われるかもしれませんが、耳管開口部を腫瘍が閉塞してしまうことで起きる現象なんですよ。大人の滲出性中耳炎には上咽頭がんが原因の場合もあるため、上咽頭の腫瘍性病変の検査が必要とされています。
参考)咽頭がん|耳鼻科 日本橋 神田 日本橋大河原クリニック
実際の症例として、月に1回の頻度で中耳炎を繰り返し、鼓膜に換気チューブを挿入されていた患者が、後に上咽頭がんと診断されたケースも報告されています。
参考)滲出性中耳炎だと思っていたら上咽頭癌だった! (耳鼻咽喉科・…
参考リンク(滲出性中耳炎と上咽頭がんの関連について):上咽頭癌症例における滲出性中耳炎の合併に関する検討
上咽頭がんの脳神経症状と複視
上咽頭がんが進行すると、頭蓋内に浸潤して複視(物が二重に見える)、視力低下、顔面の感覚障害・痛みなどの脳神経症状が現れます。これらは進行がんでみられる症状で、がんが周囲に広がって脳神経が障害されることで生じます。
参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E4%B8%8A%E5%92%BD%E9%A0%AD%E3%81%8C%E3%82%93/contents/200806-008-VZ
上咽頭は解剖学的に頭蓋底の直下にあり、眼の症状である複視などの脳神経症状から発見されることもあります。中でも障害を受けやすいのは、眼球を動かす外転神経と呼ばれる神経です。
参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E4%B8%8A%E5%92%BD%E9%A0%AD%E3%81%8C%E3%82%93
外転神経は眼球を外側に向けるのに重要な働きを担っており、この神経が侵されることで眼球を外側に向ける運動が障害を受け、ものが二重に見える複視の症状が出現するんです。脳神経症状としては、他にも視力障害、嚥下障害(飲み込みづらい)、構音障害(言葉がおかしい)などの症状が出現することがあります。
頭痛も進行した上咽頭がんの重要な症状の一つで、腫瘍が頭蓋底を破壊して頭蓋内に浸潤することで起こります。
上咽頭がんとEBウイルスの関連性
上咽頭がんの主な原因は、EBウイルス(エプスタイン・バー・ウイルス)の感染であると考えられています。EBウイルスはヘルペスウイルスの一種で、上咽頭がん患者の腫瘍細胞からは高い確率でEBウイルスが検出されます。
参考)上咽頭癌
鼻の奥にある上咽頭は、リンパ組織が豊富に存在する部位であるため、EBウイルスが感染しやすく、増殖に適した環境となっているんですよ。ほとんどの人が幼少期にEBウイルスに感染し、体内に潜伏していますが、感染してもすぐにがんになるわけではありません。
EBウイルスが上咽頭の上皮細胞に感染すると、ウイルスは細胞の増殖や生き延びるための指令を出すたんぱく質やRNAを作り出します。具体的には、LMP1というウイルス関連因子がNF-κBやPI3K/Akt経路の活性化を介して細胞増殖や生存を促進し、EBERsは抗アポトーシス作用や細胞増殖促進作用を示します。
これらの変化が蓄積することにより、正常な細胞の仕組みが壊れ、がん化していくと考えられています。血液検査では、EBウイルス抗体価が高値となるのが特徴です。
参考リンク(EBウイルスと上咽頭がんの関連についての論文):上咽頭癌とEpstein-Barrウイルス
上咽頭がん症状の早期発見のポイント
上咽頭がんは初期のうちは自覚症状がないことも多く、症状が現れても風邪によく似た症状であるため、咽頭がんに特有のものではありません。しかし、風邪と違って症状が1カ月以上続くような場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診する必要があります。
片側のみの耳閉感や鼻症状が続く場合は特に注意が必要です。上咽頭がんは部位の構造上、通常の鼻の穴からの観察は難しく、鼻咽腔ファイバースコープ検査などで観察する必要があり、病状が進行してから発見されることも少なくありません。
以下の症状が続いている場合には、早めに耳鼻咽喉科の受診を検討すべきですよ。
- 片側の耳が詰まった感じや難聴が続く
- 鼻血や血が混じった鼻水が繰り返し出る
- 片側の鼻づまりが続く
- 首にしこりを触れる
- 物が二重に見える
- 原因不明の頭痛が続く
発見が早いほど治る可能性が高くなるため、これらの症状に気づいたら速やかに医療機関を受診することが重要です。特に大人の滲出性中耳炎では上咽頭の腫瘍性病変の検査が必要とされており、耳が詰まる、耳が聞こえづらいといった症状でもこのような病気が原因のケースがあります。
参考)癌 腫瘍
国立がん研究センターがん情報サービスの上咽頭がんページには、詳細な症状や検査方法が掲載されています:上咽頭がん – がん情報サービス