上行性視神経萎縮と視神経萎縮
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上行性視神経萎縮の定義と単性萎縮
上行性視神経萎縮という言葉は、臨床では「下流(眼・視神経)側の障害が起点となり、視路方向に変性が進む(順行性のニュアンス)」を意識して使われることが多く、まずは“萎縮”が病名ではなく病態所見である点を押さえる必要があります。視神経萎縮は、視神経線維の変性・萎縮により網膜神経節細胞の軸索消失が眼底で確認され、視神経乳頭が萎縮して蒼白化し、視力低下や視野狭窄をきたす状態として説明されます。
重要なのは「視神経萎縮=不可逆になりやすい最終像」であり、原疾患のフェーズ(炎症期・圧迫期・虚血期・緑内障進行期など)を外すと、治療可能な時間窓を逃す点です。
小児領域の整理は理解に役立ち、視神経萎縮は単性萎縮・炎性萎縮・緑内障性視神経萎縮に分けられる、という形態学的分類が提示されています。
単性萎縮は“乳頭が腫れた後ではない/グリア増殖を伴わない”などの文脈で語られ、球後視神経炎や圧迫性視神経症など、眼底所見が遅れて出るタイプの鑑別に直結します。
上行性視神経萎縮の原因と緑内障
原因は「視神経そのものの病気」だけでなく、「網膜の病気」からも起こり得る点が、上行性(順行性)を考えるときのコアです。
具体的には、遺伝性視神経萎縮(優性遺伝性視神経萎縮、Leber視神経症など)、代謝異常(Tay-Sachs病、Niemann-Pick病、Krabbe病など)、腫瘍による圧迫性視神経症、外傷性視神経症、中毒性視神経症、視神経炎、緑内障性視神経症などが列挙されており、上行性という語を使わなくても「原因スペクトラムが極端に広い」ことが分かります。
一方、成人臨床で最も頻度として遭遇しやすいのは緑内障関連で、進行すれば視神経が萎縮し機能を失い症状が出る、という流れで理解されます。
緑内障は「眼圧」だけに注意が向きやすい一方で、実際には視神経乳頭・網膜神経線維層・黄斑部神経節細胞複合体などの構造変化をどう拾うかが勝負で、萎縮が“完成”する前に止める必要があります。
また、視神経萎縮の原因として、外傷や薬物中毒(例:シンナーや結核治療薬など)も挙げられており、問診が弱いと“原因不明の萎縮”として固定化してしまうリスクがあります。
上行性視神経萎縮の検査と視野検査
医療従事者向けに整理すると、検査は「構造」「機能」「伝導」の3レイヤーに分けると説明しやすく、まず機能の中核は視力・視野です。
関西医科大学附属病院の解説では、視神経萎縮の評価として視力検査・視野検査・中心フリッカー検査・眼底検査・視覚誘発電位測定などが挙げられ、加えて原因検索のため血液検査なども行うとされています。
ここで実務的に問題になるのは「視野欠損が出る前に構造変化が先行する」局面があり得ることで、OCT等を併用してpreperimetricな段階を拾いに行く発想が重要になります。
視野検査の結果を読む際は、患者説明として“見える/見えない”だけでなく「弓状暗点」「鼻側階段」「中心暗点」などのパターンが鑑別(緑内障、視神経炎、圧迫、遺伝性など)と結び付く点を押さえると、検査の意味が伝わりやすくなります。
なお小児では、視力の発達途上で異常が目立ちにくいことがあり、発達遅延や行動異常がある場合に視機能低下を疑い、年齢に応じた視力・視野・眼底などを組み合わせて鑑別するべきとされています。
上行性視神経萎縮のOCTと視覚誘発電位
OCTは、視神経乳頭周囲の網膜神経線維層(RNFL)や黄斑部の神経節細胞関連層を定量化でき、視神経萎縮(=軸索脱落)を“見た目”だけでなく数値として追える点が、臨床の再現性を上げます。
臨床眼科の解説では、緑内障では網膜神経線維および網膜神経節細胞が非可逆的に消失し、網膜神経線維層の菲薄化が乳頭陥凹拡大や視野障害に先行することがあるため、OCTによる測定が早期検出に有用とされています。
上行性視神経萎縮を“疑う”局面でも、起点が網膜疾患側にあるのか(網膜色素変性、網膜剥離、未熟児網膜症など)を意識し、黄斑部・網膜全体の病変を合わせて読むことで、視神経だけを見て誤診しにくくなります。
視覚誘発電位(VEP)は、網膜から大脳皮質に至る視覚伝導路の代表的検査で、潜在性の視覚異常を鋭敏に検出し得るとされ、視力や中心フリッカー値と組み合わせて解釈する研究報告もあります。
現場の運用では、患者が「見えにくいのに視力表は読める」「訴えが強いのに眼底が決め手に欠ける」といった時に、VEP・中心フリッカーの結果が説明や紹介の後押しになることがあり、萎縮という“完成所見”に到達する前の拾い上げに役立ちます。
上行性視神経萎縮の独自視点と問診
検索上位の一般解説は「原因一覧」「検査一覧」に寄りがちですが、上行性視神経萎縮を臨床で減らす独自視点は、実は“問診の設計”にあります(誰が何を聞くかで、原因検索のスピードが変わるためです)。
例えば薬物・中毒に関して、シンナーや結核治療薬などが原因になり得る、という具体例が公的病院の解説に含まれており、眼科初診でも生活歴・服薬歴を短時間で拾う価値が示唆されます。
小児では母体の感染や胎内暴露が原因になり得る、という記載があり、出生前後の情報を眼科側が取りに行く必然性がはっきりします。
また「視神経萎縮自体を治す治療は難しいので、早期発見し進行を食い止めることが必須」「生命を左右する頭蓋内腫瘍などが隠れていないかを早急に調べる」ことが重要とされ、紹介判断(眼科→神経内科/脳外/小児科)を遅らせないためのチェック項目作りが実務上の“治療”になります。
問診テンプレ例(外来で使える形)
- 発症様式:急性/亜急性/慢性、片眼/両眼、疼痛の有無(視神経炎・虚血・圧迫などの方向付け)
- 既往:ぶどう膜炎、緑内障、外傷歴(萎縮に至る疾患の有無)
- 服薬・曝露:結核治療薬、溶剤曝露(シンナー等)、アルコールなど(中毒性視神経症の拾い上げ)
- 家族歴・小児では周産期情報:遺伝性視神経萎縮や代謝異常、胎内暴露の可能性
原因検索・緊急度判断に役立つ(視神経萎縮の総論、症状・検査・治療の概略)
小児の視神経萎縮(分類、原因スペクトラム、受診のタイミング、頭蓋内腫瘍を含む原因検索の重要性)