ツインラインとラコールの違いと経腸栄養剤の選び方

ツインラインとラコールの違い

経腸栄養剤の基本情報
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ツインラインNF

消化態栄養剤(タンパク質が分解されている)、経管投与向け、A液とB液の2液タイプ

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ラコールNF

半消化態栄養剤(タンパク質がそのままの形)、経管・経口両用、1液タイプ

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共通の注意点

両製品ともNF版はビタミンK含有量が従来品の約1/10に減量されています

ツインラインの特徴と成分構成

ツインラインNF配合経腸用液は、消化態栄養剤として知られる経腸栄養剤です。最大の特徴は、タンパク質がアミノ酸やジ・トリペプチドまで分解されていることで、消化吸収が容易になっています。主に胃や腸に直接投与するための経管栄養向けに設計されています[1][4]。
ツインラインNFはA液とB液の2液に分かれており、使用時に混合する必要があります。この独特の構造には理由があります。A液には脂肪、炭水化物、脂溶性ビタミンが含まれ、B液には窒素源(乳たんぱく加水分解物・アミノ酸)、電解質、水溶性ビタミンが配合されています。これは、1剤化した場合に乳たんぱく加水分解物のアミノ酸と炭水化物のブドウ糖が加熱滅菌時にメイラード反応を起こすのを防ぐためです[3]。
成分面では、乳たんぱく加水分解物と大豆レシチン(乳化剤)が配合されているため、牛乳アレルギーや大豆アレルギーのある患者には投与できないという制限があります[6]。水分含有量は約85%(400mL中約340mL)となっています[3]。

ラコールの特徴と成分構成

ラコールNF配合経腸用液は、半消化態栄養剤に分類される経腸栄養剤です。ツインラインとの大きな違いは、タンパク質がそのままの形で配合されていることです。このため、消化機能がある程度保たれている患者に適しています[4]。
ラコールNFの最大の特長は、チューブを用いる経管投与だけでなく、経口でも摂取可能な点です。これにより、経口摂取が可能な患者の栄養管理の選択肢が広がります[4]。また、植物性タンパク質である大豆タンパク質を配合しており、日本人のタンパク摂取パターンに近づけた設計となっています[4]。
水分含有量はツインラインNFと同様に約85%(200mL中約170mL、400mL中約340mL)です[3]。ラコールNFにも乳糖は含まれていないため、乳糖不耐症の患者にも投与可能です[6]。ただし、牛乳たんぱくアレルギーを有する患者には禁忌となっています[6]。

ツインラインとラコールのビタミンK含有量の変更点

2011年に、イーエヌ大塚製薬株式会社は従来の「ラコール配合経腸用液」と「ツインライン配合経腸用液」のビタミンK含有量を減量した新製品「ラコールNF配合経腸用液」と「ツインラインNF配合経腸用液」を発売しました[1][2]。
この変更の背景には、従来製品が他の経腸栄養剤と比較してビタミンK含有量が高かったことがあります。新製品では、フィトナジオン(ビタミンK1)の含有量を従来の約1/10に減量し、他の経腸栄養剤と同程度にしました[1][6]。具体的には、ラコールNF配合経腸用液では12.5μg/200mLとなっています[6]。
この変更は特にワルファリンを服用している患者にとって重要です。ワルファリンはビタミンKの作用を阻害することで抗凝固作用を発揮するため、ビタミンK含有量の変更はワルファリンの効果に影響を与える可能性があります[1][2][8]。

特に注意が必要なのは以下の2つのケースです:

  1. ビタミンK低含量の経腸栄養剤から従来の「ラコール配合経腸用液」や「ツインライン配合経腸用液」に切り替える場合

  2. ビタミンK高含量の従来製品から新しい「ラコールNF配合経腸用液」や「ツインラインNF配合経腸用液」に切り替える場合

これらのケースでは、ビタミンK含有量の違いによりワルファリンとの相互作用に差異が生じる可能性があるため、ワルファリン投与量の調整が必要になることがあります[1][2][8]。

ツインラインとラコールの適応と使い分け

ツインラインNFとラコールNFは、それぞれ異なる特性を持つため、患者の状態に応じた使い分けが重要です。

ツインラインNFは消化態栄養剤であるため、消化吸収機能が低下している患者に適しています。具体的には、以下のような患者が対象となります:

  • 消化管の手術後

  • 消化吸収障害がある患者

  • 重症の急性膵炎患者

  • 短腸症候群の患者

一方、ラコールNFは半消化態栄養剤であるため、ある程度の消化機能が保たれている患者に適しています。特に以下のような場合に選択されることが多いです:

  • 経口摂取が可能だが十分な栄養を摂れない患者

  • 経管栄養と経口摂取の併用が必要な患者

  • 長期的な栄養管理が必要な患者

投与方法にも違いがあります。ラコールNF配合経腸用液の経管投与時の速度は、通常75~125mL/時間とされています[6]。投与速度が速すぎると、血糖値の上昇や下痢、胃の膨満、逆流、嘔吐などの原因になる可能性があります。また、急速投与後にはダンピング症候群様の低血糖になることもあるため、適切な速度での投与が重要です[6]。

ツインラインとラコールの味と飲みやすさの比較

経口摂取が可能な患者にとって、栄養剤の味と飲みやすさは重要な要素です。特にラコールNFは経口摂取も想定されているため、この点が選択の決め手になることもあります。

栄養剤の味については、一般的に甘さが強く感じられることが多いです。これは高カロリーを確保するために糖質が多く含まれているためです。ラコールNFは経口摂取も考慮されているため、比較的飲みやすい味に調整されていますが、個人の好みによって感じ方は異なります[5]。

医療現場では、栄養剤の飲みやすさを向上させるためにいくつかの工夫がされています:

  • 冷やして提供する(常温より冷やした方が飲みやすいと感じる患者が多い)

  • 少量ずつ時間をかけて摂取する

  • 医師の許可があれば、フレーバーを追加する

ツインラインNFは主に経管投与を目的としているため、味よりも消化吸収のしやすさが重視されています。一方、ラコールNFは経口摂取も想定しているため、相対的に飲みやすさにも配慮されています[5]。
実際に複数の栄養剤を味見した報告によると、栄養剤の種類によって味の印象は異なり、患者の好みや状態に合わせて選択することが重要とされています[5]。

ツインラインとラコールの取り扱いと保存方法

経腸栄養剤の効果を最大限に発揮し、安全に使用するためには、適切な取り扱いと保存方法を守ることが重要です。ツインラインNFとラコールNFの取り扱いと保存方法には、いくつかの共通点と相違点があります。

共通する注意点としては、開封後は微生物汚染と直射日光を避け、できるだけ早く使い切ることが推奨されています。やむを得ず冷蔵庫内に保存する場合は、24時間以内に使い切る必要があります[6]。また、一度口をつけた残液は菌汚染の可能性があるため廃棄すべきとされています[6]。
凍結に関しては、両製品とも凍結を避けるよう注意喚起されています。凍結融解した場合、乳化が不安定になり、油分と水分が分離する可能性があるためです[6]。

ツインラインNFの特有の取り扱い注意点としては、A液とB液を混合した後の安定性があります。混合後はできるだけ早く使用することが望ましいです。

ラコールNFに関しては、経口摂取時の注意点として、一度に大量に摂取せず、少量ずつ時間をかけて摂取することが推奨されています。また、直接食塩を添加することは推奨されていません。これは蛋白の凝集分離や油分の乳化が壊れる可能性があり、経管投与の場合はチューブ閉塞の原因になることがあるためです[6]。

ツインラインとラコールの薬価と経済性比較

医療機関や患者の経済的負担を考慮する上で、経腸栄養剤の薬価も重要な選択要素となります。2025年3月現在の薬価情報によると、ツインラインNF配合経腸用液は10mL(混合調製後の内用液として)あたり9.10円、ラコールNF配合経腸用液は10mLあたり10.80円となっています[7]。

これを1日の標準的な使用量で比較すると、経済的な差が見えてきます。例えば、1日に400mL使用する場合、ツインラインNFは364円、ラコールNFは432円となり、長期使用では一定の差額が生じます。

また、ラコールNFには半固形剤タイプもあり、こちらは10gあたり10.80円となっています[7]。半固形タイプは液体タイプと比較して、誤嚥リスクの低減や投与時間の短縮などのメリットがありますが、薬価は同等です。

経腸栄養剤の選択においては、単純な薬価だけでなく、患者の状態に最適な製品を選ぶことが最も重要です。消化吸収能力が低下している患者にはツインラインNFが適している一方、経口摂取も可能な患者にはラコールNFが適しているなど、患者の状態に応じた選択が必要です。

また、同じメーカーからはより高機能な経腸栄養剤として「イノラス配合経腸用液」(10mLあたり14.10円)や「イノソリッド配合経腸用半固形剤」(10gあたり14.40円)も販売されており[7]、患者の状態によってはこれらの選択肢も検討する価値があります。

経済性を考慮する際には、単純な薬価比較だけでなく、患者の回復速度や合併症リスクの低減なども含めた総合的な医療経済評価が重要です。適切な栄養管理は入院期間の短縮や合併症の減少につながり、結果的に医療費全体の削減に寄与する可能性があります。

以上のように、ツインラインNFとラコールNFはそれぞれ特性が異なる経腸栄養剤であり、患者の消化吸収能力、投与経路、アレルギーの有無、併用薬(特にワルファリン)、経済性などを総合的に考慮して選択することが重要です。医療従事者は両製品の違いを十分に理解し、患者に最適な栄養管理を提供することが求められます。