TrueBeam(トゥルービーム)の機能
TrueBeamは、米国バリアンメディカルシステムズ社が開発した次世代の高精度放射線治療システムです。定位放射線治療や強度変調放射線治療(IMRT)などの高度な治療を短時間かつ高精度に実行できる革新的な機能を搭載しています。
TrueBeam放射線治療の基本機能
TrueBeamの最も重要な基本機能は、がん細胞のピンポイント照射技術です。従来の放射線治療機器では困難だった複雑な形状の腫瘍に対しても、マルチリーフコリメーターを使用して病巣の形状に合わせた照射野を作成できます。
TrueBeam STxでは、中央部に32対の2.5mmマルチリーフコリメーター、辺縁部に28対の5mmマルチリーフコリメーターを備えており、最大40×22cmの照射野設定が可能です。この精密な照射野制御により、正常組織への被曝を最小限に抑えながら、腫瘍部位に必要十分な線量を集中照射できます。
エネルギー選択の幅広さもTrueBeamの特徴で、7種類のエネルギーが選択可能なマルチエネルギー装置を搭載しています。このうち2種類はフラットニングフィルタフリー(FFF)での高線量率X線エネルギーに対応しており、極めて短時間での高精度治療を実現しています。
TrueBeam画像誘導放射線治療のイメージング機能
TrueBeamの画像誘導放射線治療(IGRT)機能は、治療精度向上において画期的な革新をもたらしました。システムにはMV、kV、光学イメージングの複数のモダリティが統合的に組み込まれており、2D・3D画像取得に対応しています。
On Board Imager(OBI)システムにより、治療台上にいる患者の状態を多方向から撮影し、Cone Beam CTを使用して軟部組織の状態まで把握することが可能です。ExacTrac X-rayシステムでは、治療室床に埋め込まれた2方向X線撮像装置を用いて、計画時と実際の患者位置の差をコンピューターで瞬時に計算し、そのズレを自動修正します。
特に注目すべきは、治療中のリアルタイム画像モニタリング機能です。TrueBeam Advanced Imaging Packageを使用することで、治療中に定期的なkV画像撮影と自動マーカー検出を実行し、治療精度を維持します。この技術により、前立腺治療における体内移動の監視と補正が可能になりました。
TrueBeam呼吸同期照射の動的追跡機能
TrueBeamの呼吸同期システムは、動く臓器を追跡する革新的な機能として医療現場で高く評価されています。従来は脳などの動かない臓器に限定されていた放射線治療を、肺や肝臓などの呼吸による移動を伴う臓器にも適用可能にしました。
呼吸同期機能の仕組みは、患者の腹部に設置されたマーカーブロックからの動きデータを、天井設置のセンサーが読み取り、照射タイミングを計算するシステムです。呼吸のタイミング(例:息を吐いた時)に合わせて自動的に放射線照射を制御することで、移動する腫瘍に対しても高精度な治療を実現します。
強度変調放射線治療に対応した呼吸同期システムにより、これまで困難とされていた肝臓や膵臓などの治療の可能性が広がりました。高線量率の活用により照射時間が短縮され、息止め照射や呼吸同期照射での患者負担も軽減されています。
TrueBeam高速制御システムの操作性向上
TrueBeamはフルデジタル制御を実現した初の放射線治療機器として、従来比で1桁高い制御精度を達成しています。超高電圧を使用する放射線治療機器でのデジタル制御は技術的に困難でしたが、TrueBeamではこの課題を克服しました。
操作環境のシンプル化も大きな特徴で、高度に統合されたコンソールにより、患者毎の複雑な操作を的確に誘導します。具体的には以下の機能があります:
- 次に操作すべきボタンの点灯表示 📱
- 装置動作方向の矢印表示
- 複数照射の自動実行
- 全駆動系の遠隔操作
6軸制御のロボティック寝台により、平進方向3軸(X、Y、Z)と回転方向3軸(Yaw、Roll、Pitch)での高精度な患者位置補正が可能です。イメージングによる位置誤差の定量評価結果に基づき、自動的に位置補正を実行します。
TrueBeam放射線治療における独自技術の臨床的優位性
TrueBeamが他の放射線治療機器と一線を画す独自技術として、3Dマーカーレス腫瘍追跡機能があります。この技術は、標準的な直線加速器でテンプレートマッチングと三角測量を用いた自由呼吸下でのkV透視画像による実現されています。
小さな肺腫瘍の65%で追跡が可能であることが実証されており、マーカー埋め込み不要での動的追跡が可能な点で画期的です。ただし、最小サイズの腫瘍では追跡が最も困難という課題も指摘されています。
TrueBeamのHyperArc機能は、多発性転移性脳腫瘍の定位放射線外科治療(SRS)において、ノンコプラナー照射を可能にし、治療計画ワークフローの簡略化と効率的な治療を実現します。1回の大線量照射による治療時間短縮効果は特に顕著です。
臨床データによると、TrueBeamを使用したVMAT(回転型強度変調放射線治療)では、頭蓋脊髄照射において他機種比較で統計的に有意な線量分布改善が確認されています。特に大型臓器への平均線量と線量拡散の両面で優位性が実証されました。
医療安全面では、自動化ワークフローと直感的なビジュアルキューにより操作時間短縮と安全性向上を同時に実現し、患者スループット向上にも寄与しています。これらの総合的な機能により、TrueBeamは現代の高精度放射線治療において不可欠なプラットフォームとして位置づけられています。