糖新生とは簡単にと肝臓と血糖値維持

糖新生とは簡単に

糖新生とは簡単に:3分で全体像
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何のため?

脳などが必要とする血糖を、絶食・運動・ストレス時に切らさないため。

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何から作る?

乳酸・アミノ酸(糖原性アミノ酸)・グリセロールなど「糖以外」からグルコースを合成。

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どこで調節?

主に肝臓(+腎臓)で、グルカゴン/アドレナリン/グルココルチコイドで促進、インスリンで抑制。

糖新生とは簡単に:定義と血糖値維持

 

糖新生(gluconeogenesis)は、乳酸・ピルビン酸・糖原性アミノ酸・グリセロールなど、糖質以外の基質からグルコース(ブドウ糖)を新たに作る代謝経路です。これは「食事由来の糖が入ってこない」「肝グリコーゲンが尽きてくる」といった場面で血糖を保つために重要になります。特に脳は血液脳関門の制約で脂肪酸をエネルギー源として使いにくく、血糖低下は重大な影響になり得るため、糖新生は生命維持に直結する“バックアップ電源”として理解すると整理しやすいです。

医療従事者向けに「簡単に」言い換えるなら、糖新生は次の一文が核になります。

✅「肝臓(と腎臓)が、乳酸・アミノ酸・グリセロールからブドウ糖を作って血糖を守る仕組み」

ただし誤解されやすい点として、「糖新生=解糖系の完全な逆回し」ではありません。解糖系と糖新生は多くの段階を共有しつつ、不可逆段階(調節点)では別の酵素で“迂回”しており、ここが制御の主戦場になります。患者説明では細部を省いても良い一方、臨床判断(薬剤・栄養・内分泌)ではこの制御点が効いてきます。

糖新生とは簡単に:場所と材料(乳酸・アミノ酸・グリセロール)

糖新生が主に行われる臓器は肝臓で、状況により腎臓も寄与します。材料(基質)として頻出なのは、①嫌気的解糖で生じる乳酸、②筋タンパク分解などで供給される糖原性アミノ酸、③脂肪組織で中性脂肪(トリグリセリド)が分解されて出てくるグリセロール、の3系統です。ここまで押さえると、飢餓・感染・術後・ステロイド投与などで「なぜ血糖が上がる/下がるのか」を説明しやすくなります。

臨床での“見落としやすいポイント”は、糖新生の材料が「糖がないから仕方なく作る」というより、むしろ“体内に余っている形を安全に回収して再利用する”側面が強いことです。たとえば乳酸は末梢で産生されやすく、放置すると酸塩基平衡にも影響し得るため、肝での再利用は代謝全体の整合性を保つうえでも意味があります。グリセロールは脂肪酸と違って糖新生へ入れるため、脂肪分解が進む状況(絶食・糖尿病でのインスリン不足など)では、糖新生の“燃料供給”が手厚くなります。

現場向けの説明フレーズ例。

  • 「運動で増えた乳酸は、肝臓に戻ってブドウ糖に作り替えられることがある(回収・再利用)。」
  • 「食べないと、筋や脂肪の分解産物が糖新生に回って血糖を支えるが、過剰だと高血糖側に傾くことがある。」

糖新生とは簡単に:コリ回路とアラニン回路

糖新生の理解を一段クリアにするのが「回路」での整理です。代表がコリ回路(Cori cycle)で、筋肉などで生じた乳酸が血流で肝臓へ運ばれ、糖新生でグルコースに戻って再び末梢で使われる、という往復です。もう一つがグルコース-アラニン回路(アラニン回路)で、乳酸の代わりにアラニン(糖原性アミノ酸)が肝へ運ばれ、糖新生に使われる点がポイントになります。

医療者として大事なのは、「この回路が回る=エネルギーがタダで増える」ではないことです。末梢で“急場をしのぐ”ための代謝(乳酸産生・アミノ酸搬送)を、肝が“後から帳尻合わせ”するイメージで、代謝コストは肝側が負担します。つまり回路は、局所最適(筋が今ATPを作る)と全身最適(血糖を維持し、代謝産物を処理する)の折り合いです。

患者説明に落とすと、次の比喩が使えます(言い過ぎない範囲で)。

  • 「筋肉は“現金”が必要で急いでエネルギーを作り、肝臓は“後払い精算”でブドウ糖を作り直して全身のバランスを取る。」

    医療者間の会話では、ここから「肝機能低下」「重症感染」「循環不全」などの文脈で、回収・再合成がうまくいかない可能性へ自然に話をつなげられます。

糖新生とは簡単に:ホルモン調節(インスリンとグルカゴン)

糖新生は、短期的には酵素活性、長期的にはホルモンによって強く調節されます。基本の軸は「インスリンが抑制」「グルカゴンが促進」で、さらにアドレナリンやグルココルチコイド(コルチゾール)などのインスリン拮抗ホルモンが“血糖を上げる方向”へ寄与します。言い換えると、糖新生は「低血糖を避ける」生理反応としては合理的ですが、糖尿病や慢性ストレス、ステロイド投与では“必要以上に回り続ける”形になり、コントロールを難しくします。

ここで臨床的に重要なのが、「高血糖なのに糖新生が止まらない」状況が起こり得る点です。インスリンが足りない/効きにくいと、糖新生を抑えるブレーキが弱くなり、肝からグルコース放出が続いてしまうため、高血糖がさらに悪化します。血糖が高いから糖を作らないはず、という直感と逆になるので、学生や非専門職に説明するときは「ホルモン(インスリン)不足でブレーキが壊れると、工場(肝臓)が止まらない」とすると伝わりやすいです。

また、ホルモン調節は“病態の読み”にも直結します。たとえばコルチゾール過剰(内因性・外因性)では糖新生が促進されやすく、同時に末梢での糖利用も抑えられやすいため、血糖は上がりやすい方向に傾きます。術後・敗血症・重症肺炎など、ストレス反応が強い場面での血糖上昇を、単に「食べてないのに不思議」とせず、糖新生の視点で説明できるとチーム内の合意形成が早くなります。

糖新生とは簡単に:独自視点の“誤解”と教育(現場での説明テンプレ)

検索上位の解説は「定義・場所・材料・ホルモン」で整っていますが、現場教育では“誤解の芽”を先に摘む方が効果的です。糖新生でよくある誤解は次の3つです。

  • 誤解1:「糖新生=解糖系の逆で全部同じ」→ 実際は不可逆段階があり、別酵素で迂回して調節される。
  • 誤解2:「糖新生=悪(高血糖の原因)」→ 生理的には低血糖回避の要で、悪いのは“過剰・制御不全”。
  • 誤解3:「糖新生が回る=筋肉が減る」→ 確かに極端な飢餓や病態では筋分解が関与し得るが、糖新生の材料は乳酸やグリセロールも大きい(状況依存)。

教育・説明テンプレ(医療従事者がそのまま使える形)を置いておきます。

【30秒版】

「糖新生は、肝臓(+腎臓)が乳酸・アミノ酸・グリセロールからブドウ糖を作って血糖を守る仕組みです。インスリンが抑えて、グルカゴンやストレスホルモンが促進します。糖尿病では抑制が効きにくく、高血糖なのに作り続けることがあります。」

【患者向けに丸めた版】

「食べていないとき、体は肝臓でブドウ糖を“作り足して”血糖を保ちます。ただ、糖尿病やストレス・薬の影響で作りすぎると血糖が上がりやすくなります。」

【チーム内共有の版(看護・栄養・薬剤で共通言語化)】

「糖新生は“血糖を落とさない安全装置”で、同時に“高血糖を作る経路”にもなる。状況(飢餓・感染・ステロイド・インスリン不足)でスイッチが変わる。」

こうしたテンプレを持っておくと、指導時に“言い回しブレ”が減り、糖新生をめぐる議論(栄養投与量、インスリン調整、ステロイドの影響評価)が噛み合いやすくなります。

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糖新生の材料(アミノ酸・グリセロール・乳酸)とホルモン調節(インスリン抑制、グルカゴン/アドレナリン/グルココルチコイド促進)の要点がまとまっている(基礎~臨床の接続に便利)。

ニュートリー:糖新生系(材料・ホルモン調節・糖尿病での悪化)

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糖新生と解糖系の関係、乳酸・ピルビン酸・アミノ酸/グリセロールなどの基礎整理(授業・新人教育の導入に使いやすい)。

看護roo!:解糖系と糖新生(図解ワンポイント生理学)

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