透析用短期留置カテーテルと内頸静脈
透析用短期留置カテーテルの適応とルーチン化回避
透析用短期留置カテーテル(非カフ型の中心静脈カテーテル)は、「緊急に血液浄化が必要」な症例に対して留置する位置づけであり、やむを得ない緊急事態にとどめ、これによる透析導入をルーチン化しないことが重要とされています。
つまり、短期留置カテーテルは“便利な導入ルート”ではなく、“合併症を抱えた緊急用デバイス”として扱う、という思想が出発点になります。
臨床の現場では「AVF/AVGが未成熟」「穿刺困難」「除水・高Kなど待てない」などの事情が重なり、短期留置が連続しがちです。
参考)https://www.jsdt.or.jp/tools/file/download.cgi/23/pdf023.pdf
このとき重要なのは、短期留置を選んだ瞬間から「いつ・何で離脱できるか(内シャント作製・成熟待ち、長期型へのブリッジなど)」を同時に計画し、留置の長期化を“結果として起こるもの”にしない運用です。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt/44/9/44_9_898/_pdf/-char/ja
また、短期留置カテーテルは留置期間の目安として「3週間を超えないようにすることが望ましい」という推奨が示されています。
一方で、旧ガイドラインでも3週間程度を目安とした背景に「中心静脈狭窄の原因になる」点が挙げられており、単に感染だけでなく“将来のアクセス資源を削る”リスクとして意識することが現場判断の質を上げます。
透析用短期留置カテーテルの留置部位と内頸静脈・大腿静脈
留置部位は、鎖骨下静脈アプローチは中心静脈狭窄や閉塞、血胸、上大静脈穿孔などの危険があるため避けるべき、とされています。
左鎖骨下で上大静脈穿孔→血胸・縦隔血腫、右鎖骨下で右房穿孔→心タンポナーデの報告があることも明記されており、短期留置であっても“起きたら致命的”な合併症の回避が部位選択の根幹になります。
圧迫止血が可能という観点では、内頸静脈・大腿静脈アプローチが相対的に有利とされます。
そのうえで感染の観点からは、内頸静脈から留置したほうが大腿静脈より危険性が少ない、という整理がされており、第一選択を内頸静脈に置く思考は妥当です。
ただし内頸静脈は、鼻腔・口腔に近いことから、鼻腔などの保菌巣→手指→カテーテルという経路での感染に注意が必要、とされています。
ここは「内頸だから安全」ではなく、「内頸の利点(感染・圧迫)を得る代わりに、口鼻周囲由来の汚染リスク管理を強化する」というセット運用が現実的です。
留置時の手技としては、Seldinger法で行い、より安全・確実性の観点からエコーガイド下穿刺が推奨される、という記載があります。
短期留置ではベッドサイドで行われることもありますが、飛沫感染の機会を減らすため個室や特定の部屋など、極力清潔な場所で行うべき、とされており「場所の清潔度」も手技の一部として扱うのがポイントです。
透析用短期留置カテーテルの感染対策と消毒・ドレッシング
短期留置カテーテルの最大課題は、出口部感染・カテーテル内感染を含むカテーテル関連感染であり、日々の観察と無菌操作の徹底が最も効く“地味だが強い”介入です。
ガイドラインでは、回路の連結と離脱は無菌的に行い、熟練したスタッフ2名で行うことが望ましい、という推奨が示されています。
また、透析用カテーテルは「点滴などのルートとして使用しないことが望ましい」とされており、透析以外の目的で使うと着脱機会が増えるだけでなく、カテーテル内バイオフィルム中の細菌に栄養を送り込むことになるため避けるべき、という踏み込んだ説明があります。
これは現場で起こりがちな“便利だからつい”を止める強い根拠になり、感染率が高い施設ほど、まずここを運用ルールとして固定する価値があります。
消毒薬については、2%クロルヘキシジン、10%ポピドンヨード、70%アルコールなどが挙げられつつ、クロルヘキシジンがカテーテル感染を最も抑制するといわれている、という記載があります。
一方で、アルコールによる消毒でカテーテル連結部の強度が低下した事例が厚生労働省から報告され注意が必要、という注意喚起もあり、材質と添付文書の確認を含めた“選択の衛生管理”が求められます。
ドレッシングについては、カテーテル出口を透明な滅菌テープで極力外気と接触しないようにしたほうが感染率は低下する、という記載があります。
また、ガーゼ交換やヘパリンロックなどを毎日行うより、頻度を下げて透析日のみにし、その際に出口部観察を行うほうが感染率は低い、という示唆もあり、「触る回数を減らす」こと自体が感染対策になり得ます。
鼻腔の黄色ブドウ球菌保菌(SAキャリア)について、透析患者は高率にキャリアーとなり得ること、鼻腔保菌者にムピロシン軟膏やポピドンヨード塗布が感染予防に効果があるとの報告があることが述べられています。
意外に見落とされがちですが、カテーテルの清潔ケアだけでなく「鼻腔・口腔→手指→接続部」という生活動線の衛生教育(咳・鼻を触る、マスク、手指衛生)まで落とし込むと、内頸静脈留置の感染リスクを実務で下げやすくなります。
参考:短期型カテーテルの部位選択・留置期間・感染対策(GL-1〜10)の根拠
日本透析医学会雑誌 2005:短期型バスキュラーカテーテル留置(PDF)
透析用短期留置カテーテルの合併症とX線確認・血流不足
留置後はX線撮影を行い、カテーテル留置状態の確認に加えて、血胸・血腫など合併症の評価を行う必要があるとされています。
ここは「うまく血液が引けるからOK」ではなく、“位置と合併症のスクリーニング”としての撮影であり、呼吸状態や胸部症状が乏しい段階でも確認する姿勢が安全側です。
血流不足・返血困難の背景には、カテーテル内血栓、カテーテル周囲血栓、フィブリン鞘(フィブリンシース)など多様な機序があり、モニタリングし早期発見に努めることが推奨されています。
血流不足あるいは返血困難時の対応として、ウロキナーゼのカテーテル内封入・持続注入が推奨され、効果がない場合は原因(内腔内血栓か、外側の血栓か)で「同側交換」か「別ルート留置」かを分ける整理が示されています。
また、短期型の血流不足で洗浄・吸引などを行っても効果がない場合には、別ルートからの留置が奨められる、という記載があり、同ルートにガイドワイヤーで入れ替えても血流が得られないことが多い理由として、狭窄・壁在血栓・フィブリン鞘の存在が挙げられています。
「手技の工夫」で粘るほど感染操作回数も増えやすいので、原因推定がつかないままの長期格闘を避け、“撤退ライン”をチームで共有しておくと実務でブレません。
さらに、脱血不良時に脱血側・送血側の逆接続が一時的に流量改善に見えても、再循環率が増大する可能性がある、という指摘があります。
透析量不足(Kt/V低下)という“静かな失敗”を招き得るため、逆接続を常態化させず、造影や画像評価で原因を詰める、という方針が品質管理上は重要です。
透析用短期留置カテーテルの独自視点:看護師トレーニングとサーベイランス設計
感染率は「熟練した看護師のほうが明らかに低い」ため、看護師のトレーニングが重要であり、さらに臨床工学技士も透析に密接に関わる現状では同様にトレーニングが必要、という現場に刺さる示唆があります。
つまり、短期留置カテーテルの成否は“個々のテクニック”というより「誰がやっても同じ品質になる設計(教育・手順・監査)」で決まりやすい領域です。
2011年の記載では、回路の連結・離脱を2名で行うことが感染減少につながる、という考え方が示され、役割分担が明確なほど無菌操作の抜けが減る、という方向性が述べられています。
ここから発展させる独自視点として、短期留置カテーテル管理を「手技」ではなく「プロセス指標」で管理するのが効果的です(例:接続前手指衛生の実施率、接続部消毒の接触時間、出口部観察の記録率、透析以外使用のゼロ化)。
また、施設ごとの感染サーベイランスの実施が望まれる、という推奨があり、感染の発生頻度をモニターし、頻度が高い施設では看護師・患者の再教育を行い、持続的な質改善を進めるべき、という方向性が示されています。
「サーベイランス」は大病院の感染対策室だけの仕事になりがちですが、透析室単位で“短期留置カテーテル日数(catheter days)あたり”の発生を定期的に見える化すると、教育や物品変更の効果が説明可能になり、上司チェックにも耐える資料になります。
参考:カテーテル管理(留置期間、先端位置、ヘパリンロック、無菌的着脱、サーベイランス)の要点
日本透析医学会雑誌 2011:カテーテルの管理(PDF)

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